悠久に流れゆく時間の中で、過ごすランララの甘い味。

● 悠久に流れゆく時間の中で、過ごすランララの甘い味。

 うずうず。
 そわそわうずうず。
 ナリュキは一人、彼が来るのを待っていた。
「ナナギはまだかのぅ?」
 そわそわしながら、ナリュキは待つ。
 今日はランララ聖花祭。
 だから、今日は素敵な日になるだろう。
「うう、待ちきれんのじゃ……」
 素敵なお菓子のプレゼントを持って。

「すまない、遅くなったな」
「まあ、仕方あるまい。今年もなかなかの試練じゃったからのぅ」
 やっとさえずりの泉で合流を果たした二人。
 二人きりになれる場所に座り、いよいよナリュキが待ち望んでいた至福の時間が始まる。

「うまく出来てると良いのじゃが……食べてほしいのじゃ……♪」
「これは……」
 ナリュキがプレゼントしたお菓子。
 それは甘さを抑えた水羊羹と梨羊羹であった。
「………ありがとう」
「どういたしましてなのじゃ。それよりも、ささ、食べてみるのじゃ」
 ナリュキに押されるかのように、ナナギはまず、梨羊羹を口にする。
 そして、つぎつぎと食べていく。
「ちょ、ちょっと待ったなのじゃ」
「ん?」
 ナナギに見つめられ、少しどきっとしてしまう。
「み、水羊羹も食べてみるのじゃ……」
「ああ……ありがとう」
 ナリュキから今度は水羊羹を受け取り、ぱくんぱくと食べて行くナナギ。
「う〜〜」
 思わずナリュキは、唸ってしまう。
 ナナギが食べている間にナナギの膝の上に乗れたのはいい。
 だが……まだお菓子の感想が聞けていない。
 しかも……早くしないと羊羹もなくなってしまう。
 焦る思いだけが募っていく。

 ナリュキの本当の願い。
 それは口移しで羊羹を食べあう事であった。
「にゃ〜ナナギよーちょっといいかぇ……?」
 ナリュキは行動に出る事に決めた。
「ん? どうかしたのか?」
 食べる手を休め、ナリュキを見ているナナギ。
「羊羹の感想……まだ聞いていないのじゃ」
 その言葉にナナギは、あっという声をあげた。
「悪かったな……この羊羹が美味かったからつい……」
 そう謝るナナギにナリュキは、ぎゅっと抱きつきキスをした。
「ん……」
 二人の口の中で、甘い羊羹が溶けていく。
「にゃははー、やっぱり一緒に食べるとおいしいのじゃぁ〜、ナナギ大好きじゃよー♪」
「ナリュキ……」
 一瞬、むっとした顔を浮かべたが、それもすぐに笑顔に変わる。
「敵わないな、ナリュキには……」
「早く感想を言わないナナギが悪いのじゃ〜」
 くすくすと二人は微笑みあう。
 ナリュキはそのまま、ナナギの膝の上で、至福の時間を過ごした。

 二人の時間はまだ続く。
「さて、そろそろ帰るか」
「うむ。帰った後は夜まで飲み明かす約束なのじゃ!」
 どうやら、今日は遅くまで眠らせてもらえないようだ。
「飲みすぎるなよ」
 そういって、二人はゆっくりと丘を降りていく。
 日の落ちていく丘を後にして、次の場所へと向かうのであった。


イラスト: 山葵醤油 葱