【彼とたこ焼きとハリセンと…】

● 良き雰囲気+期待=勘違い!?

 ぼんやりと星屑の丘にやってきたアシュレイ。
「ん?」
 遠くから見知った顔が近づいてくる。
「る、ルエア、なぁ〜ん!?」
 なんと、そこには可愛らしいルエアの姿が。

 一方、ルエアの方はというと。
(「珍しく一人なんやのか?」)
 可愛い女の子と一緒に居るアシュレイの姿を、ルエアはよく見ていた。
 なのに今日は一人だけのようだ。
 思わず声をかける。
「今日は珍しい1人なんやな?」

「あ、ああ。そうなんだ、なぁ〜ん」
 ルエアに声をかけられ、どきまぎしてしまうアシュレイ。
 はっきりいって、心臓ばくばくである。
「た、立ち話もなんだから、ここに座ろう、なぁ〜ん」
「あ、そうやな♪」
 アシュレイに言われて、ちょこんと座るルエア。
 可愛いエンジェルのルエア。
 アシュレイにとって、ルエアは特別な女性であった。
 そんなルエアから、素敵な提案がなされる。
「そうや、たこ焼きしかないけど食べる?」
「え? 食って良いのか? ありがとう、なぁーん」
 差し出されたたこやきを、美味しそうに頬張るアシュレイ。
 もう、幸せの絶頂であった。
「たこ焼き、美味しいよ。さすがルエアの作ったたこ焼きだな、なぁーん」
「そうなん? 嬉しいわぁ」
 そういって笑顔を見せるルエアに、アシュレイはもう、どこかに飛んでしまいそうであった。
(「いつ見ても可愛いよなぁ〜。俺はルエアの1番にはなれないけども、今のままの関係でも……ね……」)
 そう、可愛らしいルエアを見つめていると。

 ぐぐっとルエアの顔が急接近!

「え……な、何!?」

 その直後、何かを期待しているアシュレイの目の前に現れたのは。

「……へ?」

 すぱぁーーーーーんっ!!

 気持ちのいいハリセンの音が響き渡った。

「く、クリティカ……」

 がくりとアシュレイは、ちかちかする目を閉じた。
 もうここに彼の意識はない。

「いやはや、こんなところに変な虫がおるとはな。驚いたわ」
 アシュレイの頭に付いていた虫を叩き落して、ルエアは、満足そうな笑みを浮かべている。
「ん!? アシュレイはん、一体誰にやられたんや?!」
 ルエアは気づいていない。
 自分の虫に対する一撃が、アシュレイまでも巻き込んでいたことに。

(「ああ、遠くでルエアの声が聞こえる……」)
 倒れているアシュレイは、ちょっぴり幸せそうであった。


イラスト: 波黎 ひろみ