乱裸羅でも特攻んでいくんで夜露死苦

● 君の着替えを守ると誓う奥義

「あの、ダフネさん……ランララ聖花祭に、欲しい物ってありませんか?」
 ゼオルは勇気を振り絞って、こう訊ねてみた。
「欲しい物?」
 ダフネはゼオルに尋ねられて、にこりと微笑んだ。
「僕、特攻服が欲しいな♪」
 そのダフネの一言。
(「こう、もっと男性が大切な女性に贈る時に、渡すようなものを欲しがってくれはしないのでしょうか……」)
 がっくりと肩を落とすゼオル。
「どうかした?」
「い、いえ……な、なんでもありませんよ」
(「まぁ、ダフネさんらしいと言えばらしいのですがね……」)
 苦笑を浮かべながら、ゼオルは当日までに渡すプレゼントの準備を始めるのであった。

 そして、当日。
「うわあ、本当に用意してくれたんだ♪ ありがとう!」
 ゼオルから渡されたのは紺色の特攻服。背中と前には、赤い文字の刺繍がなされていた。
「喜んでもらえて、嬉しいですよ」
 ダフネの喜ぶ姿を見て、ゼオルは瞳を細める。
「じゃ、さっそく袖を通してみるね」
「え? ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」
 慌てふためきながら、ダフネを木の側へと連れて行き、自分のマントをダフネの前に広げた。
 後ろは木、前は自分のマントで防御は完璧である。
「君の着替えを守ると誓う奥義です」
「ありがとう、ゼオルさん」
 そういって、さっそくダフネは着替えを始める。
(「………何か嫌な予感が……」)
 ダフネの着替えを守るゼオルだったが、後ろで着替えるダフネの様子が何故か気になる。

 その予感は現実のものへ。

「よいしょっと」
 ばさりと、ゼオルの目の前に何かが掛けられた。
「え?」
 それはダフネの着ていたシャツであった。
「だ、ダフネさんっ!?」
「うわっとっと、急に動かないでよ」
 ゼオルの腕に柔らかい感触が伝わる。
 胸だ。
 しかも何も下着をつけていない。
「あああああ、そそそそそ、そのっ! ととと、とりあえず、早く着替えてくださいませっ!」
 慌てふためくゼオルの様子を楽しげにダフネは眺めていた。
「はーい♪」
 しばらくした後、特攻服を纏ったダフネが現れた。

「はあ、終わりましたか……」
 着替えている最中、もうどっきどきだったゼオル。
「うん終わったよ。なかなかいいね、これ。気に入っちゃった♪」
「それは良かったです」
「あ、そうだ! ゼオルさんも着替えたら?」
 そういって手渡されたのは、白い特攻服。
「え? こ、これって……私もその白い特攻服に着替えろ、と言うんですかー!?」
 そう叫ぶゼオルに背を向け、ダフネは駆け出す。
「僕を沈めたいなら、命がけでくることです!」
 先ほど着たばかりの特攻服を翻しながら。
「ええい、いつまでも振り回されてばかりと思わないでくださいよ! 直ぐにダフネさんを夢中にさせてあげますからね!」
 ゼオルも特攻服に腕を通しながら、駆け出した。

 二人の逃避行は何処まで続くのか?
 それは二人だけの胸の中に……。


イラスト: 牧 ちさと