お菓子とランララと幸せと…

● お菓子とランララと幸せと…

 ランララの試練を乗り越え、女神の木の下を訪れたリエンは、軽く辺りを見回した。
 ナナとは、ここで待ち合わせていたのだが、まだ彼女の姿は無いようだ。
「リエンさん、お待たせなぁ〜ん♪ お菓子一杯作ってきたなぁ〜んよ☆」
「ああ、ナ……」
 そこに、満面の笑顔と共に現れたナナの声に、リエンは振り返ると一瞬言葉を失う。
 彼女の両腕の中には、大きな大きな袋いっぱいのお菓子。
 そのすぐ後ろには、ナナが召喚したらしいフワリンがいて……その背中にも、お菓子がたくさん載っている。
「すげー……」
 思わず、お菓子を見つめて、それしか言葉が出ないリエン。
「フワリンさんもありがとうなぁ〜ん」
 その間にナナは荷物を降ろすと、そうフワリンへと告げて……その次の瞬間、効果時間が切れたらしく、フワリンは姿を消す。
「とと」
 放り出される格好になった荷物は、我に返ったリエンがキャッチする。
 そのまま2人は、お菓子の一部を女神の木の前で奉納すると、さえずりの泉の方へと歩き出す。

「ナナがリエンさんにお菓子食べさせてあげるなぁ〜ん☆ ……はい、なぁ〜ん♪」
 泉のほとりの一本の木の下に腰を下ろすと、ナナはひとかけらのチョコレートをつまむ。
「いただきます……うん、とっても美味しいよ」
 そのチョコレートを食べたリエンは、1つ頷くと、今のナナと同じようにチョコレートを手にする。
「それじゃあナナも。はい、あーん」
「なぁ〜ん♪」
 ぱくん、とそれを口にすると、ナナは「リエンさんに、お菓子食べさせてもらっちゃったなぁ〜ん」と、照れ恥ずかしそうに赤くなる。
「もう1つ、いる?」
 まだまだあるから、と振り返りながら、リエンはまた次のお菓子を手にする。

「……こうしてナナと一緒に時間を過ごせて、とっても嬉しいよ」
 2人で一緒にお菓子を食べて過ごしながら、ふとリエンが口にした言葉に、ナナも笑顔で頷き返す。
「大好きなリエンさんと一杯のお菓子に囲まれて、ナナは幸せものなぁ〜んね♪ ずっとずーっと、いつまでもこの時間が続いて欲しいなぁ〜ん」
 リエンさんと一緒にいられる、この時間が……。そう心から思いながら、ナナはリエンにキスをする。
「ナナ……大好きだよ」
 ずっと、いつまでも。
 こんな風に平和な時間を、2人で一緒に過ごせるように……そう願いながら、リエンは柔らかい笑みを返す。
「……リエンさん、あの、その、ナナの……お誕生日が……。ううん、やっぱり何でもないなぁ〜ん」
 その顔を見つめて、ふと何かを口にしようとしたナナだったが、何でもないと首を振ると、またリエンにお菓子を食べさせてあげようと、袋の中に手を入れるのだった。


イラスト: 小林蕪