なぁ〜んとわんだふる♪

● 幸せ一杯チョコ一杯

「あ、あれ? ここ、何処?」
 どうやらリーンは、試練の途中で迷子になったようだ。
「でもでも、お兄ちゃんと約束しているんだもの、がんばらなくっちゃっ!」
 だが、めげたりはしない。麓から見える女神の木を目指して、リーンはまた進み出した。

「同盟って素敵なところなぁ〜ん!」
 リーンの兄、ジオもまた、嬉しそうに試練を越えていた。
「アスレチックを楽しんだ後、チョコが食べれるなんて……」
 そういって、ジオはぼんやりと空を見上げた。
「リーンちゃんがチョコ作ってくれるらしいなぁ〜んから楽しみなぁ〜んよ」
 ジオはうきうきと女神の木の下へと向かっていった。

 数時間後。
 二人は無事、女神の木の下で合流を果たした。
「な、何だか恋人さんたちがいっぱいで、何だか恥ずかしいの……」
「どうかしたなぁ〜ん?」
「う、ううん、な、なんでもないの……あ、あそこに座ろうよ、お兄ちゃん」
「わわ、そう引っ張らなくても大丈夫なぁ〜んよ」
 良い場所を見つけたリーン。お兄ちゃんの手を引き、ベストポジションを確保した。
 そして、二人はその場所に揃って座る。
「はい、お兄ちゃん。私からのプレゼントよ」
 リーンはそう言って、この日の為に用意してきた、お兄ちゃん餌付け用、すぺしゃるちょこを渡した。
 リーンの愛情がめいっぱい詰まっている美味しいチョコだ。
「ありがとうなぁ〜ん」
 あぐらをかいて、ジオは受け取ったチョコを一つ、口に入れようとした。
 が、しかし。
「なぁ〜〜ん?」
「あ、ご、ごめんね。間違って触っちゃった」
 耳を触られると力が抜けてしまうジオ。へなへなふらふらしている。
「お兄ちゃん、大丈夫? わたしの膝枕で少し休んで。ね?」
「すまないなぁ〜んよ」
 言われるままにジオはリーンの膝枕を受け入れる。寝転びながらジオは貰ったチョコを一つずつ食べて行く。
「美味しいなぁ〜んよ♪」
「お兄ちゃんにそう言ってもらえると、なんだかとっても嬉しいな♪」
「ななぁ〜ん」
 びくりと体を震わせ、ジオはまた力が抜けた。
「あ、また触っちゃった……」
「き、気をつけるなぁ〜んよ」
 そういうジオの頬がほんのり赤く染まっていた。
 いつも見慣れている妹の顔。
 だが、こうして寝転がりながら、妹の顔を眺めると、別人のように感じてしまう。
 そのせいか、ジオはなぜか、ドキドキしてしまうのだ。

(「可愛いお兄ちゃん……お兄ちゃんのお耳はわたしの、なの」)
 心の中でそう囁きながら、リーンはなおも、ジオの耳を触っていた。
「ふなぁ〜〜ん」
 それでもジオは幸せそうな顔をしている。
 と、ふいに。
「大好きなぁ〜んよ」
「え? お兄ちゃん、今、何ていったの?」
「わ、わわ、聞いていなかったなぁ〜ん? な、ならいいなぁ〜んよ」
「ダメダメ、ちゃんと聞かせてっ」

 幸せな兄妹の幸せなひと時。
 それはまだ、はじまったばかり……。


イラスト: トイ