「…良いのか?」「…はい、お任せします。」

● ―星の下、抱擁と契り―

 星降るような空を見上げながら、二人はゆっくりと星屑の丘を歩いていく。
「……もう、今日の一日も終わりなのですね」
 カムナは感慨深げにそう呟いた。
「……そうだな……今日は一日で色々見たから、少し疲れたな……カムナはどうだ?」
 優しく問いかけるのは、トワ。
「そうですね、少し。……でも、楽しかったと思います」
 カムナはそういって微笑を浮かべる。
「ん……俺も、カムナと一緒に居られて、楽しかった」
 トワも同じく微笑を浮かべ。
「――私も、トワさんと一緒で良かったです」
 カムナはそういうと、星を眺め……夜風に吹かれて、僅かに身を竦ませた。
「……この時間になると、流石に冷えるな……カムナ」
 トワはそっと、カムナの肩に手を回し、抱き寄せた。
 肩に合った手を、すっと腰に動かして、向き合う形で、カムナの体を腕の中に納める。
「こうすれば、少しは暖かいだろう……?」
「……ぁ、そうですね……」
 照れたように頬を紅く染め、カムナは頷いた。
 腕の中にいるカムナを見て、トワは小さく微笑む。
「……ん、カムナも暖かいな」
「……はい、トワさんの体、温かいです」
 カムナは、少し緊張していた。

 とくん。

 もしかしたら、この高鳴る鼓動をトワに聞かれるのではないかと。
「カムナ……もう一度きちんと言って置きたい事がある」
 カムナの頭を撫で、トワは静かに口を開いた。
「……はい、何でしょうか?」

 とくんとくん……。

「俺は……カムナと、出来る限り、一緒に居たい……受け入れて、くれるか……?」
 それはトワからの告白。
「――嬉しいです。 ……私からもお願いします。これからも私と一緒に居て、私を支えて下さい」
 まっすぐにトワを見つめながら、カムナはそう告げた。
 トワは緊張した面持ちで、もう一度訊ねた。
「い、いいのか……?」
「はい……お、お任せします……」
 そして、交わされる熱い口付け。

 もう二人の耳には、周りの音など届いていない。
 聞こえるのは、頬を撫でるような、涼しい風。
 まだ、二人の時間は、始まったばかり………。


イラスト: 氷樹一世