貰ったチョコで餌付け中

● ちょこっとチョコレート

「ランララ、ランララ〜♪ らんららら〜ん♪」
 キティは朝からおおはしゃぎしていた。
 久し振りに恋人とデート出来るのだから無理も無い。
 黒いノソリン尻尾を振って、雪のように白い髪を風に靡かせる。
 勿論恋人のバルアも久し振りに彼女と会えることを喜んでいるし、行事ごとには興味が無いながら、彼女が喜んでくれるのならランララ聖花祭も捨てたものではないと思った。
 朝露の花園に咲いていた白くてふわふわした小花を見て、まるでキティのようだと頬を緩める。
 丁度良いから休憩しようと声を掛け、彼女の腕を引いた。
「そのまま座ると服が汚れるから、キティは俺の膝の上な」
「なぁ〜ん♪」
 バルアの言葉に、嬉しそうに声を上げるキティ。
 じゃんじゃじゃーん、と彼女は綺麗にラッピングした箱を手渡した。
 ランララ聖花祭だからお菓子が貰えるのか、と気付きながらバルアは箱を受け取る。
「ありがとう……って、妙に軽いんだが」
 箱を振るとからから音がする。
「は、箱のわりに量が少ないとか、そんなことないのなぁ〜ん!」
 キティはぶんぶんと首を振る。
「美味しく出来たか味が心配で、いっぱい味見とか、そんなことしてないなぁ〜んよっ」
 嘘がつけないのは彼女の美徳だと思う。
 慌てて取り繕う可愛い姿を見ながら、バルアは早速一口頂くことにした。
「ん、見た目のわりに美味しいな」
 一生懸命の手作りチョコレートは見た目の悪さに反してなかなかの味だった。
 キティが味見しすぎてしまったことも頷ける。まあお前が作るモンなら何でも美味しいしな、と笑いながらバルアは彼女を撫でてやった。
 バルアはチョコレートをひと欠片取って、彼女の口の中に放り込んでやる。
 食べさせてもらった彼女はますます嬉しそうな蕩ける笑みを浮かべた。
 更にもう一個、彼の手で口の中に入れて貰えた彼女は、大喜びで抱きついて来た。
「バルアンが喜んでくれるなら、お料理とか頑張ってやってみようかなぁ〜ん?」
 健気な少女に、彼は「次は酒に合う普通の料理が良い」と微笑んだ。
「出来れば、毎日ずっと。ついでに依頼から帰った時、いつもお前が出迎えてくれたら嬉しいんだが」
 まだ早いか、とバルアが笑う。
 キティは良く判らないのか首を傾げて彼のことを抱き締めた。
 いつもは恥ずかしくて出来ない分、と幸せそうに目を細める。
 これからもずっと仲良しでいられますようにと願った。
「えへへ……キティの一番はバルアンなぁ〜ん」
 バルアは微笑み、彼女を優しく抱き返す。



イラスト: 鳥居ふくこ