『共に過ごす幸せの時間』

● The time of happiness with you.

 ランララ聖花祭の日。キースとルシアは、朝露の花園を訪れていた。
 キースの手には、ルシアから贈られたクッキーが。
 ルシアの手には、今日が誕生日である彼女の為にと、キースが用意した鳥籠が、それぞれある。
「本当に……とっても、可愛い……」
 籠から出した青い鳥を見つめて、ルシアは嬉しそうに目を細めると、キースにありがとうと、心からのお礼の言葉を告げる。
「ルシアこそ、クッキー、ありがとうな」
 そうお礼を言い返して、キースはクッキーを口に運ぶと、とっても美味しいよと笑う。
「……それにしても、綺麗な空だな……」
 高く澄んだ青い空。それを少しだけ覆い隠しながらも、ゆったりと流れていく白い雲。
 つい見上げると、思わず笑みをこぼしてしまう程の光景があって……2人は、一緒にそんな空を見上げながら、静かで穏やかな時間を過ごす。

「昔は……こんなにも空が綺麗だったなんて、知らなかったな……」
 つい草の上へと寝転んでしまいながら、キースはそう呟きを漏らす。
 こんな風に、空を見上げた事なんて、1度も無かった。
 そんな余裕なんて無かったから……。
「……今こうして、こんなにも綺麗なものを見れるのは、ルシアのお陰なんだろうな……」
 ぽつりと、どこか照れた様子で呟くと「ありがとう」とキースはルシアを見上げて微笑む。
「ううん……そんな、こと……」
 小さく首を振る、そんなルシアの様子に、キースは更に微笑みを深める。
(「俺は……守っていきたい。この幸せの時間を……ルシアと一緒に過ごす日々を……」)
 こんな風に、過ごす時間を……温かい気持ちを、ずっと手放したくないと、そうキースは思う。

「……ルシアは、どう思う?」
 でも、彼女は一体どう思っているのだろうかと、ふとそれが気になって、ルシアの顔を見上げる。
 自分の気持ちが伝わっていて……そして、彼女の気持ちもまた、同じだったら……とても、嬉しいのだけれど……。
「私、も……そう、思ってる……。この時間、が……いつまでも、続くと……いいな……」
 キースの髪に、そっと指先を絡めながら、ルシアはこくりと頷き返す。
 ――2人の気持ちは、一緒なのだ。
「………キース……ありがと………」
 ルシアは微笑みながら、そっと彼の耳元に唇を寄せると、そう囁くように紡いだ。
 いつもありがとう、という感謝の気持ちを、伝えておきたいと思ったから。
「俺の方こそ……」
 そんなルシアへと、キースもまた微笑み返して……2人はまた、身を寄せ合いながら、空を見上げるのだった。


イラスト: ミヨシハルナ