***ランララ生花祭 〜チョコと仔狐とらぶらぶと〜***

● 二匹の仔狐

 2月14日、ランララ聖花祭のその日。
 イヴスティルとデュランシェルの2人は、さえずりの泉を訪れていた。
 泉のほとりに並んで座った2人は、持参した沢山のチョコレートを周囲に広げると、それらに順番に手を伸ばす。
「あ、これ美味しいよ。ほらほら食べてみてよ」
「どれどれ? ……お、ホントじゃん♪」
 程よい甘さのミルクチョコレート。
 ちょっぴり苦いビターチョコレート。
 アーモンドの入ったチョコレート。
 しっとりとした生チョコレート。
 純白のミルクチョコレート。
 それから、それから……。
 数え切れないほどのチョコレートに、2人は舌鼓を打つ。

「なぁなぁ、チョコ両端から一気食いしてみねぇー?」
「一気食い?」
「そっ。どっちが多く食べるか勝負しよーぜ!」
「へ〜、面白そうだね。でも負けないよ?」
 イヴスティルの提案にデュランシェルが頷くと、イヴスティルはここぞとばかりに細長い1枚のチョコレートを取り出す。そこには既に、真ん中を示すラインが引かれており……ここまで先に食べた方が、勝利という訳だ。
 その端と端を、2人がお互いに手にして……スタートの合図で、同時に食べ始める。
 ぱりぱりぱり。
 もぐもぐもぐ。
 お互いに負けじとチョコレートを食べていく。見る間にその量は減っていき……そして。
「オレの勝ちだねっ」
 先に真ん中のラインを越えたのは、デュランシェルの方だった。最後のひとかけらを飲み込んで、そう勝利の声を上げるデュランシェルだが……。
「へへ……すきありっ」
 そこに、すささっとイヴスティルが近付くと、そのままデュランシェルに抱きついて、ちゅっとその頬にキスをする。
「わ……!」
「えへへー、ビックリした?」
 咄嗟の事に、思わずまばたきするデュランシェルに、にししっと笑うイヴスティル。そんな彼の様子に「もうっ」と口にしたデュランシェルは、ふとあるものに目を留めて、それを手にする。
「そんなヤツにはこれだっ」
「わ、にーが〜」
 反撃だとばかりに、イヴスティルの口にデュランシェルが放り込んだのは、とっても苦いビターチョコレート。それじゃあ……と辺りを見回したイヴスティルは、とってもとっても激甘のミルクチョコレートをお返しだ。
「それじゃあ次はね……」
 2人はチョコレートを見回しては、交互に相手の口に放り込んでみたり、あるいは気になる物は自分自身でも食べてみたり……そうして、山のようにあるチョコレートを食べ合いながら、2人は昼下がりの泉のほとりで、のんびりとした1日を過ごしたのだった。


イラスト: 総祐