● 君に贈る、雪雫の花冠

「わぁ……とても綺麗ですね、アモウさん」
 朝露の花園に咲く白い花々を見渡して、目を細めながら、そうサナはアモウを振り返った。
「ああ。今日は天気も穏やかだし、過ごしやすい1日になりそうだな」
 そう頷き返して、アモウは空を見上げる。
 高く澄んだ青い空。それがまるで、自分達を祝福しているかのように思えるほど、アモウは幸せだなと、今の時間を噛み締める。
 去年、恋人同士として過ごした時間を、今年は夫婦として迎えている。
 その事実がとても嬉しくて、言葉で表せないくらいに幸せだ。

「……サナ、これを……」
 大切な大切な、愛しい人……サナ。
 彼女の横に立ち、アモウは花の冠を取り出した。
 それは、今日この日にサナへと贈る為、何日も前から準備していた物だ。
「わぁ……」
 サナは、その純白の冠を前に、嬉しげに目を細める。
 それはまるで、去年アモウと2人で夫婦の誓いを交わした、あのホワイトガーデンに咲いていた花を思い起こさせるような物だったから。

「俺の苗字、フィオールは『花』を意味するのだと、サナは教えてくれたな」
 今日はランララ聖花祭。聖なる花の祭りの日……。
 思えば、彼女に本物の花を贈った事は無かった。
 誓いを交わしたあの日、サナは自分に、とても素敵な花冠をくれた。
「だから……今度は、俺からお前に贈ろう」
 溢れるほどの思いを込めた冠を、両手で大切に抱え上げて、アモウはサナの髪に、そっとそれを乗せた。
(「サナの心に、いつまでも咲き続ける花となれますように……」)
 その、願いに似た想いを込めながら、アモウは指先を離す。
「ありがとう、アモウさん。……似合ってます?」
「ああ、とても」
 見上げるサナの笑みに、深く頷き返して、アモウは続ける。
「……サナ。愛してる」
「私も、愛してる……」
 伸ばされた腕はサナの体をぎゅっと抱きしめ、同時に、アモウの背にも腕が回る。
 見つめあう視線は、その瞳は、どちらも幸せに満ち溢れていて。

(「誰よりも深く、お前を愛してる――」)
(「誰よりも深くあなたを愛してる――」)

 互いの気持ちを重ね合わせながら、2人は深く、口づけを交わした。



イラスト:鳥居ふくこ