● 【ランララ聖花祭】星屑の丘で

 彼は、シンヤはとてもがんばっていた。
 己のボケ体質を封印して。
 けれど……彼の前に立ちはだかるのは、幾重も連なる辛い試練。
「おわっ!」
 落とし穴に落ち。
「あ、あれ? 間違えたか?」
 左右の道を間違え。
「またふりだしかよーっ!!」
 気がついたらスタート地点に立つこと数え切れず。
「負けるか、コンチクショウ! 一刻も早く、最愛の人の隣へ行きたいんだ。好きだー!」
 ちょっとボロボロになりながらも、シンヤはまた、丘を目指して走り出した。

 ふわふわのマフラーを手に、リシェはシンヤが来るのを、ずっと待っていた。
 リシェの持つマフラーは、仲良しの友人と一緒に一生懸命編んだもの。
「………喜んでくれるかな、なの………」
 シンヤが自分のプレゼントに喜ばなかったことはない。
 だが、それでも思ってしまう。
 不安な気持ちは、少しずつ膨らんできて……。

「ご、ごめん、待たせちゃって!」
 やっとこさ、待ち合わせ場所にたどり着いたシンヤ。
 その姿にリシェも嬉しそうに微笑む。
 さっそくリシェは、彼の傍に寄っていき、持っていたものを手渡す。
「あのね………リィから、これ………」
 『花添優夜』という名のマフラーを、リシェはそっと、シンヤの首にかけてやった。
 ずっと一緒にいることを願って編んだ、青色のマフラー。
 リシェの想いと心がこもった素敵なプレゼント。
「シンヤさんに、ランララの加護がありますように………なの」
 緊張した面持ちで、そう告げるリシェに。
「あーもうっ、すっげーうれしいっ、ありがとなー!」
 そして、シンヤはぎゅっとリシェを抱きしめる。抱きしめるだけでなく、たくさん頭もなでてあげて。

 俺がもらってる幸福を、君に返せているだろうか。
 君がいれば涙がでるほど幸福で。……いや、涙など、意地でも見せないけれど。
 伝えたい分には足りない気がするのは、気のせいだろうか?
「ほんとにさ、いつもありがとうな? ……すっげー好き」
 シンヤはそういって、唇を重ねた。
 願うのは、一緒に幸せでいること。
 大切な君に、ランララの祝福を……。


イラスト:総裕