● Diva Song

 のどかな日差しが二人を包み込む。
 星屑の丘で、歌が聞こえた。
 ちょっぴり変わった、幸せそうな歌が……。

「試練を乗り越えてっ〜♪ そしてーふたりはー♪ むーすーばれーるー♪」
 楽しげにリュエルは、そのチョコレートケーキにナイフを入れた。
「ららら〜オンナの〜友情〜うつくーーーしいー♪ ゆーじょーうー♪ オトコなんて〜め〜じゃないわぁ〜♪」
 リュゼットも楽しそうに歌いながら、リュエルの切り分けたケーキを受け取る。
「あー♪ こころのままにぃー♪ つ〜き〜すすむ〜の〜よ〜〜♪」
 次にリュエルは小さなフォークをリュゼットに差し出した。
「すてきーなーめがみのー♪ しゅくふくー♪」
 リュゼットは微笑みながら、そのフォークを受け取る。
「「と〜わ〜に〜つづきます〜よう〜に〜♪」」
 最後に二人揃ってハモりながら、同時にケーキにフォークを差し入れたのであった。

 そう、この歌は二人の歌。
 今日のランララ聖花祭を祝い、作った歌であった。
 もちろん、歌の歌詞も二人が作ったものである。
 女の友情を歌った歌、それは丘の上からも良く聞こえたことだろう。
 もっとも、歌詞の全てを聞き取った者は、そう多くはないだろうが……。

 気が付けば、二人のケーキも、持ってきたお菓子も全てなくなっていた。
 日も暮れて、空には星が瞬きはじめている。
 楽しい時間、幸せな時間の終わりは、すぐそこまで来ているようだ。
「これからも、ずっと仲良くしていただけますか?」
 リュエルは微笑みながら、そっと、リュゼットに訊ねる。
「もちろんですわ」
 リュゼットもにっこりと微笑み返した。

 二人だけの幸せな時間。
 ふと見上げた夜空に、一筋の流れ星が見えた。
 リュエルは願う。

 この静かな楽しい時が続くように、と。

 まだ肌寒い風に少し身を震わせながら、リュエルは、隣にいるリュゼットと夜空を楽しむのであった。


イラスト:飛水 あーや