● チョコと共に君を

 ランララの試練を乗り越え、待ち合わせ場所で合流したセリオスとティエラン。
 さまざまな場所を回り、楽しんでいた二人。
 いつしか時間は夜になっていた。
 たどり着いた先は、星屑の丘。
 綺麗な夜空を眺められる場所でもある。
 セリオスとティエランは、草原に腰を下ろし、空を見上げる。
「あの、セリオスさん……」
 おずおずと、ティエランは綺麗にラッピングされた包みを差し出した。
「受け取って、くれますか?」
「もちろん」
 にっと微笑み、セリオスはその包みを受け取る。
「ありがとな、ティエラン」
「いえ、喜んでもらえるだけで充分です……」
 照れたように頬を染めるティエランを眺めながら、セリオスはその包みをあけた。
 そこには甘いチョコレートがたくさん入っている。
 さっそく一つを口の中へ。
「お味はどうですか?」
 心配そうな声にセリオスは。
「ん、美味い」
 簡潔に感想を述べる。けれど、ティエランにはそれで充分であった。嬉しそうに微笑むティエラン。
「……ん」
 ぱくぱくとチョコレートを食べていたセリオス。
 ふと、何かを思いついた。
「セリオスさ……」
 どうしたんですかと、尋ねる前に。
「きゃっ!」
 セリオスの手で押し倒されてしまった。
「ななな、なっ!」
 慌てふためくティエランを横目に、セリオスは悪戯が成功した子供のような顔で、ティエランを見下ろしていた。
 セリオスは落ち着いた様子で、ティエランの胸にそっと貰ったチョコレートを乗せていく。
「せ、セリオス、さんっ」
 けれど、ティエランは分からない。押し倒されて、胸にチョコレートを乗せられて、どうしたらいいのか分からない。
「ティエラン」
 そんなティエランを落ち着かせるように、セリオスは自分の唇を彼女の唇に押し当てた。
 突然のキスに、ティエランの体の力が抜けていく。
「どうせ食べるなら、ティエランも一緒に食べたいからな」
 ティエランが落ち着いたのを見て、セリオスはそう告げた。
「セリオス……さん……」

 二人の影が重なる。
 暗い丘の上で、また、セリオスは甘いチョコレートを口にする。
 静かな丘で、ティエランの吐息が聞こえた。

イラスト:井住