● 初花月の思い出 〜空の星と大地の灯火〜

「これは、もしかして……」
「そうや、旦那様を驚かせよって思うて作ったんや。その……喜んでもらえると嬉しいわぁ〜」
 少し照れた様子で、カガリは用意したお菓子を差し出した。
 内緒で用意したお菓子は、夫でもあるタケマルにも驚きと喜びを与えてくれたようだ。
「ありがとうございます、カガリさん」
 その一言さえあれば、カガリは充分であった。

 カガリとタケマルは、このランララ聖花祭に来ている。
 楽しい思い出を作るために、カガリは春っぽい服を着て、めいっぱいおしゃれをしてきている。
 一方、タケマルもいつもの服装の上にインバネスコートを羽織り、いつもとは違う雰囲気をかもし出していた。カガリにとっては、そんな姿も新鮮に見えてくる。
 様々な場所を巡り楽しんでいた二人。
 いつしか日も暮れ、カガリとタケマルは星屑の丘へとたどり着いた。
 丘に登ると、急に視界が広がる。
 空には満天の星々。
 地上に目を向けると、灯りを灯し始めた町並みが見えた。
 星も美しいが、人々が生活しているという生の息吹は、彼らに僅かながらの感動を与えたようだ。
「素敵ですねー」
「そうやねー」
 二人は見晴らしの良い場所に腰を下ろして、二つの風景を楽しむ。
 時折、顔を見合わせ、笑みを浮かべて。

「カガリさん……」
「ん?」
 タケマルの声に振り返るカガリ。見れば幾分、緊張している様子。
「普段、あまり伝えられないんで……」
 そう前置きして、タケマルは再び口を開いた。
「私は……カガリさんのことが好きで、今もずっと好きで、カガリさんのことを愛してます。……いつもありがとうございます。これからも……一緒にいて、ください……」
 それを聞いたカガリはきょとんと。
「突然どうしたんや? 何を改めて……」
 だが、それもほんの数分。カガリはその言葉の真意に気づいた。
 めったにしゃべらないタケマル。その彼がカガリへと自分の気持ちを伝えようと、必死になって言ってくれた言葉。真っ赤に照れながら、震える声で伝えてくれた言葉。
 それはなによりも嬉しい贈り物。
「旦那様ーっ!!」
 思わずカガリは、満面の笑顔で、隣に居るタケマルに抱きついた。
「うちこそ、大好きやっ! ありがとうな、旦那様! 本当に嬉しいわぁ!」
 ぎゅっと改めて抱きついて、その温もりに触れながら、カガリは続ける。
「おじいちゃん、おばあちゃんになっても、よろしなの」
 その甘い言葉にタケマルも瞳を細める。
「ええ。その……こちらこそ、よろしくお願いしますね」

 二人は寄り添いながら、町の明かりを眺めていた。
 平和で暖かでないと、輝く事も見る事も出来ない灯火達。
 そんな灯火達を眺めながら、二人は微笑みあうのであった。

イラスト:白々白米