● 聖花祭の夜

 出会ってから、早3年目のランララ聖花祭を迎える。
 マオーガーとルーシェンは、静かに朝露の花園を歩いていた。
 空には美しい月が浮かんでいる。
 月明かりに照らされた花も、太陽の下で見るよりも趣があるように感じる。
 夜に眺める花園。
 マオーガーは、良い場所を見つけ、そこに腰を下ろした。
 次いで、ルーシェンも隣に座る。
「綺麗だな……」
「それは、月のことかえ? それとも、月影に浮かぶ花じゃろうか?」
 静かに問うルーシェンの言葉に、マオーガーは笑みを浮かべた。
「ルーシェンに決まってるだろ」
「な、何をいうておるのじゃ、マオ殿はっ」
 マオーガーの言葉に、ルーシェンは頬を染め、軽く小突いた。
「そう照れなくてもいいじゃねぇか。まあ、ここの花園が綺麗なのは確かだからな」
 そういって、マオーガーはルーシェンの肩を抱く。
「こら、また勝手に……」
「いいだろ? 俺達夫婦じゃねぇか」
 むーっと何か言いたげなルーシェンだったが、まんざらでもない様子。
 マオーガーに抱きしめられながら、そっと、その身をゆだねた。
 背中越しに感じる、暖かな温もり。
「へっくしっ!」
 突然、マオーガーがくしゃみをした。
(「妾は暖かいが、マオ殿は寒いのじゃな……」)
 鼻をすするものの、マオーガーは寒いとは言わないし、そんな素振りも見せていない。
 いや、ルーシェンには手に取るように分かる。
 愛する妻に心配させないよう、平気な顔をしているのだ。
 とはいっても、やせ我慢で寒さが凌げるはずはない。
「仕方ないのう」
 くすりと微笑み、ルーシェンは自分の持っていたストールをそっと、マオーガーへと掛ける。
「ありがとな」
「これでお互い暖かいじゃろ?」
 二人は微笑み、ゆっくりと空を見上げた。
 夜空に浮かぶ、美しい月。
 その月明かりに照らされて、花達が輝いて見える。
「綺麗だな……」
「そうじゃな……」
 二人は一緒になって、瞳を細めた。

イラスト:深町匡