● 月下輝花

 見上げれば美しい月が見える。
 その月明かりは、二人のいる朝露の花園を仄かに照らし出す。
「朝露を含んで煌く花も良うござりまするが、月光を浴びて輝く花も本当に美しくて……」
「ああ、そうだな」
 セラフィンの言葉に、オーディガンは頷く。
 ふと顔を上げて、セラフィンは幸せそうに瞳を細めて、オーディガンの顔を見つめた。
「少々、お時間が遅くなりましたが、お会いできて良かった……。今年も、ご一緒に参加することが出来て嬉しゅうございまする」
 呟くようにセラフィンはそう、オーディガンに告げる。
「俺もだ。セラフィンとまた、ランララで一緒に過ごせる事が幸せで……嬉しい」
「まあっ!」
 セラフィンは嬉しそうに微笑み。オーディガンもにっこりと微笑みかける。
「わ、わたくしも、わたくしもオーディガン様と同じ事を思っておりましたわ」
 こくこくと何度も頷きながら、嬉しいと呟くセラフィン。
 だが、嬉しくて勢い良く、何度も頷くのが原因で。
「あ、あら……?」
「セラフィン?」
「なにか、天地が回っておりまする……」
「セラフィン、セラフィン?」
 オーディガンの呼ぶ優しい声が徐々に遠のいていった。

「……ん」
 しばらくした後、セラフィンは目を覚ました。
「オーディガン……様?」
 気づけば、セラフィンはオーディガンの腕の中で横になっていた。
「気分はどうだ?」
「もう……大丈夫でございまする」
 起き上がろうとするセラフィンをオーディガンが止める。
「もう少し休んでいた方がいい。無理するな」
「……はい……」
 恥ずかしそうに頷きながらも、セラフィンは幸せを感じていた。
(「こうして抱きしめられて、ぬくもりを感じるたびに、愛おしさで心が満たされまする……」)
 言葉に出来ない思いが、募っていく。
 花園を眺めていたオーディガンが、再び、セラフィンへと視線を移した。
 二人の視線が合い、思わず微笑む。
「やっぱり……綺麗だな」
「とても綺麗な花でございますから……」
「そうじゃなくて、セラフィンが、だ」
「わ、わたくしっ!?」
 そういわれて、セラフィンは思わず頬を赤く染めた。

(「普段口にするのも恥ずかしいことを言えたりする……。それはやはり、セラフィンだから彼女には伝えたいとそう思うのかもしれない」)
(「こうして抱きしめられて、ぬくもりを感じるたびに、愛おしさで心が満たされまする……」)
 オーディガンとセラフィンは心に思いながら、そっと寄り添う。
(「ずっとずっと、お傍に居ることが出来ますように。ずっとずっと、貴方の花で居られますように」)
 オーディガンの温もりを感じながら、セラフィンはそう願うのであった。

イラスト:よつもと かつみ