守り抜く意志 掲げる力


<オープニング>


 耳をつんざく悲鳴が響いた。
「無事か!?」
 丸々と太った豚妖獣をパイルバンカーで押し退け、一人の男が叫ぶ。彼のすぐ後ろには、痛みに腕を押さえる少女の姿がある。しかし苦痛に歪んだ表情をすぐに正し、少女は頷いた。
 構え直したガトリングガンの照準を、眩いほどに純白な巨大ワニへ向けて。
「吹っ飛べこの色白ワニ公ッ!」
 銃弾を撃ち出す音が、虚空に散らばった。


「能力者さん、大いなる災いとの戦い、お疲れ様でしたー」
 いつもと変わらぬ緩い笑みは、能力者達の帰還を知り浮かべずにいられないといった様子だ。
 しかし、井伏・恭賀(高校生運命予報士・bn0110)が直後に告げるのは、当然今回の任務に関する話で。
「伊豆の山には、まだ妖獣がうろうろしてるんだ。でね……」
 一旦言葉を区切ると、集った能力者達の顔を確認してから、恭賀は続きを紡ぐ。
「その妖獣と戦ってる人たちがいる。ゴーストチェイサーさんだよ」
 聞き覚えがありすぎる名に、一瞬緊張が走った。
 多くのゴーストチェイサーは、あの壮絶な戦いの後、姿を消したと能力者達も聞いている。
 だがあの山中では、戦っている者達がいうと恭賀は言うのだ。戦いが終わったことを知らぬわけではない。そうなると、彼らが妖獣に戦いを挑んでいる理由も、大方想像がつくだろうか。
 恭賀は能力者達に考える暇を与えず、急いで彼らの許へ向かって欲しいと続けた。
「このままじゃ、ゴーストチェイサーさんの体力も持たないんだ」
 技を使い切ってもなお、彼らは退くという手段を選ばない。選ばずに対峙している。
 ゆえに、現場へ向かったらすぐに能力者達には戦闘へ加わってもらうことになるのだが――。
「一つだけすっごく大事な注意事項があるよ〜。耳かっぽじってよーく聞いて欲しいんだー」
 重要なことだから、と恭賀が念を押した。
「今回は、ゴーストチェイサーさんを影ながら援護するだけにしてね」
 いまいち意味がわからず首を傾げた能力者へ、恭賀はこう話す。
 ゴーストチェイサーの人々は、自分たちの力で今戦っている妖獣の群れを撃破できれば、それ以上無理なことはせず撤退してくれるだろう。
 反対に、銀誓館学園の能力者達が妖獣を倒して戦いを終わらせてしまえば、彼らは留まってくれない。そんな状態で再び妖獣と遭遇してしまえば――今度こそ間違いなく、命の火は掻き消える。

「妖獣はブタポッド一体と、白いワニ一体、あとアーマードタートルが二体だね」
 微妙に厄介な組み合わせである。
 ゴーストチェイサーは男子三人と女子一人。先述したように、いずれも技はこれ以上使えないため、通常攻撃のみを行う。
 男子組がパイルバンカーで躊躇い無く敵へ突っ込み、彼らとさほど距離をおかずに女ゴーストチェイサーがガトリングガンで射撃するスタイルを取っている。
 ブタポッドは一先ず後回しに、一人がワニを真正面から引き受け、残り二人がアーマードタートルへ総攻撃を仕掛けている。とはいえブタポッドものんびり待ってはくれない。
 ゆえに女ゴーストチェイサーが狙われたのだろう。
「見た目でしか判断できないのが辛いけど、ワニを抑えてる子が一番体力の消耗も激しそうだよ」
 能力者が到着する頃、白いワニを抑えている少年は、回復手段も持たぬ中で強打を受けていたため、状態は芳しくない。肩も上下し、息苦しいのか絶えず激しい呼吸を繰り返し、嫌な汗がどっと垂れている――彼の疲弊具合は火を見るより明らかだ。
 もちろん、他のゴーストチェイサーも体力は決して万全ではない。逆に言えば妖獣達も無傷ではないのだが、外見から体力を見極めるのは――瀕死でもない限り――困難だろう。
「……気をつけていってらっしゃい、能力者さん。彼らのためにも、どうか頼んだよ」
 恭賀は最後に彼らへ頭を下げ、願いを寄せた。

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参加者
元宮・虎次郎(清めの音・b22423)
在灯・淘汰(唐獅子・b46202)
楠木・みさき(弓弦羽・b50130)
白蜘蛛・命(白き幻蟲の姫君・b54871)



<リプレイ>

●掲げる力
 草葉を擦って走り抜ける音を、耳の端で聞いた気がする。
 丸い瞳を鋭く細め、少女は構えたガトリングガンをけたたましく暴れさせた。
「吹っ飛べこの色白ワニ公ッ!」
 銃弾を撃ち出す音が、虚空に散らばる。白い巨体を押さえていた仲間の少年が、腕へ巻きつけた包帯を撫でながら少女へ礼を述べた。
 祈りか覚悟か。包帯へ篭めた想いを秘めて、少年がその身体に見合わぬ杭打ち機を掲げる。間近で瞬時に打ち込まれた杭は、白いワニを身悶えさせた。
 そして苦痛の勢いを殺さずに、小柄な彼を尾で叩く。弾かれた身体がふらついた刹那、その背を支える温もりを知り、少年は振り返った。
 自分よりも頭一つ分背の高い少年――元宮・虎次郎(清めの音・b22423)がそこには立っていて。
 何を告げるでもなく、先ず虎次郎は黒燐蟲の加護を彼へともたらした。
 困惑の眼差しが返る中、敵との距離を見定めた楠木・みさき(弓弦羽・b50130)が古より祖霊を召喚する。
「ボクたちみかたなんだよ! あんしんしてたたかって!」
 みさきが向けた祖霊は、ワニと対峙する少年へ注がれた。
 他の敵へ向かっていたゴーストチェイサーたちも、突然の訪問者に気付き心ばかり振り返る。何か言いかけた彼らの意識は、しかしすぐにゴーストへと引き戻されていく。
 今は、余所見をしている余裕など無い。
「チェイサーさん、こちら銀誓館だヨ」
 所属を名乗ったのは白蜘蛛・命(白き幻蟲の姫君・b54871)だ。許しを乞う舞いが、戦場を清らかに包み込む。
「……こっちも結構、消耗してて……協力しよう」
 訥々とした喋りの中へ篭めた命の提案に、ゴーストチェイサーの一人、体格の良い男が声を張り上げた。
「俺らだけで倒せる! 余計なことすんなッ!」
 とどろいた大声に一瞬びくりと身体を震わせ、在灯・淘汰(唐獅子・b46202)は屈みこんで真蜘蛛童の望月を撫でる。囁くように、けれどしっかりと指示を伝えれば、望月は了承の意でも示すかのように尻を揺らし、歩き出した。
 先ほど虎次郎に支えられた少年も、唇を結んだまますっくと立ち上がり、真っ直ぐ妖獣を見据える。そして、ゴーストチェイサーの腕部を覆うパイルバンカーが、重たそうな見目にも関わらず軽々と敵へ向けられていく。
 対する二体のアーマードタートルは、ずっしり居座り硬い守りを崩すことなく、ゴーストチェイサーたちの攻撃を受け続けていた。
 自由気ままそうに跳ね上がり、ブタポッドが女ゴーストチェイサーへ突撃する。彼女は突き出したガトリングガンで ブタポッドの猛打を辛うじて退けた。
「少年の消耗が激しい。タートルは抑えるからこちらに援護を」
 虎次郎がガトリングガンを抱える少女へ黒燐蟲を寄せながら、ゴーストチェイサー達に呼びかける。ワニへと攻撃が集中するよう促す作戦で。アーマードタートルの近くにいた大柄な男と、リーゼントの男が仲間を案じるように僅かながら振り返る。
「山坊主、ゲンさん、僕は大丈夫です! 自分の相手を優先してください!」
 しかし、それを拒んだのはワニへ突撃した少年だった。
 ふと、虎次郎は嫌な予感に駆られ眉根を寄せる。
「かたまったらだめだよ! 妖獣のいないほうにとんで!」
 みさきもすかさず叫び、広げた蜘蛛の糸で妖獣たちを絡め取る。数え切れないほどの糸が群れの動きを鈍らせても尚、ゴーストチェイサ―は耳を傾けようとしない。
 頭に血がのぼって聞こえないのだろうか。いやそんなことはないと、みさきは考えを巡らせる。
 先ほどから、こちらの訴えも指示も跳ね返すかのように、ゴーストチェイサ―は我武者羅に戦っていた。技を使い切っても退かずに妖獣へ挑んでいると、予報士も告げていたほどに。
 それほどまで死闘を繰り広げる彼らは、何を想い、何を願い、ここへ立っているのか。
 ――受けた恩は、必ず返す。
 胸に秘めた決意で喉を潤し、淘汰はゴーストチェイサーたちを誘導しようと口を開く。
 アーマードタートルからなんとか遠ざけるように。けれど誘導するべく言葉も届かない。否、確かな想いを言葉にできなければ届くことはなく、もどかしさが募るばかりだ。
 蜘蛛の糸からもがき逃れたブタポッドへと、淘汰の連れる望月が息を継ぐ間も与えず、吐いた糸を巻きつかせる。動きを封じるべく用意した術が、順調に効いていた。
 その時、アーマードタートルの撃ち出した弾が、山坊主とゲンさんと呼ばれた二人へ炸裂する。巻き上がる粉塵が、その威力を示して。
「無茶しすぎだヨォ……」
 ゴーストチェイサー達をはらはらしながら見守る命は、かぶりを振り再び舞い始める。
「で、でも、みんながいたから、勝てたんだよネ……」
 祈りを篭めた舞いの癒しが、仲間も、ゴーストチェイサーも救っていく。
 彼らの切なる願いを、その熱意を乗せて。

●援護
「オラオラァ! くたばれ妖獣!」
 山坊主と呼ばれた筋肉質な体格のゴーストチェイサ―が、パイルバンカーをアーマードタートルの頑丈な肌へ突き立てる。もう一体のアーマードタートルへは、葉を咥えたリーゼント頭の男が抉るように杭を打ちこんで。
 そんな二人へ、虎次郎が駆け寄り黒燐蟲をまとわせた。帯びる癒しは、確かに彼らへ注がれる。一先ずそのことに安堵し、虎次郎は同じ言葉を繰り返した。
「こいつらは俺達で抑える。あの少年の援護を」
 念を押すように紡がれた虎次郎の声に、山坊主とゲンさんが振り返る。
 視線の先、ワニと対峙する小柄な少年は、一人黙々とその白い悪意へ飛びかかっていた。山坊主たちが歯を噛み締め、みさきが幾度となく伸ばした土蜘蛛の檻に囚われたアーマードタートルから、漸く気を逸らす。
 虎次郎へ何か応えるでもなく、彼らは小柄な少年の許へ走る。
「マメシバ! そいつ先倒しやしょう!」
 葉を咥えたままゲンさんが叫び、白いワニへパイルバンカーを照い定めた。蜘蛛の糸を物ともせず動き回っているワニを前に、マメシバと呼ばれた少年が二人へ向けカッと目を見開く。
「僕は大丈夫って言ったの聞こえやがらねーですか、この木偶の坊!」
「き、聞こえやしたって!」
「そうだそうだ!」
 怒声を散らしたマメシバに、二人の男がやや腰を低くした。
 そこに奇妙な人間関係を垣間見た気がして、能力者達は顔を見合わせ苦笑する。互いの視線が重なり、ようやく感じたのは僅かな余裕だ。油断ではなく、当初の目的を果たせたことに対する、小さな。
 ――うーん、上手くばらけて欲しかったけど簡単にはいかないね。
 距離があろうと、固まっていればアーマードタートルが放つ技の餌食となりそうで、みさきは肩を竦めた。
「自分で言うのもなんだけど……後方支援は十八番だヨ!」
 片目を瞑った命が、休む間もなく舞い続ける。漂う癒しを受けて、淘汰は虎次郎へ呼びかけた。
「元宮さん、オトリ弾、いきます……お願い、します」
 控えめながら凛とした淘汰の声を耳朶に受け、虎次郎が深く頷く。直後、どれに向けようか僅かに彷徨った淘汰の目線が定まった。戦場を駆け抜けたのは赤く点滅する弾だ。
 不快な赤で染め上げた揺らぎを仕掛け、アーマードタートルはその弾に煽られ怒りに囚われる。
 しかし、ゴーストチェイサーの少女は周りの状況に気付かないのか、或いは流されずにいるのか、自らに迫ったままのブタポッドへ射撃を繰り返すばかりで。
「あのひとたちを、手助けしないの?」
 小首を傾げみさきが少女へ問いかけるが、邪魔しないで、とにべもなく一蹴されてしまう。今の彼女の瞳には、眼前の敵以外映っていないのだろうか。
 踏ん張った少女のガトリングガンが火を噴き、銃弾でブタポッドの身体を射抜く。苦痛に呻く妖獣をねめつけ、少女はこう吐き捨てた。
「総長の無念は晴らす! テメェラ地獄の底へ落としてやるから覚悟しな!」
 彼女の言葉を聞き、能力者達は瞳を眇める。
 少女だけに限らない。傷も痛みも背負ったまま、生き延びたゴーストチェイサー達がゴーストへ挑む理由は、紛れも無くそこにあったのだ。
 ああ、と虎次郎が嘆きに似たため息を落とす。他のゴーストチェーサーを一瞥すれば、一斉にワニへ杭を打ち込む背が見えて。
 ――やはり何も応えることができないようでは、気持ちが治まらん。
 あの戦で知ったゴーストチェイサー達の行動を、その覚悟を思い浮かべ拳を震わせる。

●守り抜く意志
 虎次郎が淘汰へと繋がる道に立ちはだかり、怒りに駆られたアーマードタートルの行く手を阻んだ。
 しかし山中で完全に道を塞ぐには、人数が足りなさ過ぎる。
 淘汰は、のしのしと足音重たく迫り来る亀をよそに、もう一体のアーマードタートルへ不快さで形を成した弾を撃ち出す。主へ妖獣が迫るのを見て、真蜘蛛童の望月が戸惑うように彼を見遣っていて。
「望月、指示通りきちんと、やるんだよ」
 返された言葉に、望月は再びアーマードタートルへ糸を吐き出す。
 そんな淘汰の影へ別の影が重なり、咄嗟に飛斬帽を構えた。叩きつける一撃を耐えた視界の隅、女ゴーストチェイサ―がブタポッドの強打にふらつくのが見える。
 慌てて命が祖霊を招き、彼女のガトリングガンへ這わせていく。けれど、命へ意識を投げかけることもなく、少女はただ目の前の敵のみを撃つ。整わぬ呼吸も、渇いた喉も気にせずに。
「うちらは負けないッ、総長の、総長たちのためにも……!」
 丸みを帯びた巨体を左右に揺らすブタポッドを射抜いた銃弾は、そのまましぶとい相手を虚空へと掻き消していった。
 緑溢れる山中へ、無数の蜘蛛糸が網を張る。みさきはその糸に獲物を封じ込めようとするが、我に返っていたアーマードタートルが一体、その呪縛より逃れた。
 望月が吐き出した糸さえ取り払い、疲弊した少女へ迷わず走っていく。虎次郎が彼女の前で盾となり、その片手で黒燐蟲を少女へ添えた刹那。
「らあぁぁッ!」
 大地を揺るがすような雄叫びと共に、山坊主が妖獣へと飛んだ。しがみつき突きたてたパイルバンカーが、肥えた堅い守りをも打ち砕き息の根を止める。
「や、山坊主ゴメンっ」
 僅かに弱々しい音を含んだ少女へ、山坊主は口角をあげて笑むのみで。
 能力者達も彼女と同時に気付いた。ワニの姿は既になく、集中砲火で倒した三人のゴーストチェイサーが、漸く彼女との合流を果たしたことを。
 能力者達による回復で体力こそ保てているものの、彼らに溜まった疲れは計り知れない。それでも、彼らが武器を収める気配は無く。
「しぬかくごでたたかえるなら! いきてしあわせになるかくごだってできるんだよ!」
 みさきの叫びを背に、山坊主とゲンさんが地を蹴った。緩くかぶりを振り、みさきは幾度目になるか判らぬ蜘蛛の糸を生み出す。
 タイミングを合わせ、淘汰が点滅を繰り返す弾を放ち、糸を掻い潜ったアーマードタートルを憤りの感情で侵食する。
 ここに集った能力者たちも同じだ。悔やみもあるし、悲しみも抱いている。
 けれど今は。今目に映っている光景と人々を護ることが、今は何よりも。
 ――生きてたら……いいことあるんだよ。
 揺れた瞳をまぶたで隠し、みさきはもう一度光を受け入れた。彼の、そして能力者達の瞳に、しかと見えている。
「行きやしょうマメシバ!」
「おおですよ! 総長の仇、僕達でがっつり取りやがります!」
 ゲンさんとマメシバが、杭の発射機構の駆動音を揃えた。痺れで身動きの侭ならないアーマードタートルの肌を、容赦なく食い破る。貫通した杭の跡が生々しく残った――かと思えば、余韻すら残さずアーマードタートルが溶けるように失せていく。
 闘志の色が、ゴーストチェイサー達の顔から抜けていくのが見えた。

●行く末は
 静寂が終わりの名残に浸る暇などなかった。
 ゴーストチェイサ―達は手を取り合い、互いの無事を確認していて。
「ゴチさん……あ……ゴーストチェイサー、な」
 恐る恐るといった様子で淘汰が呼びかけると、自力で歩ける四人の少年少女が一斉に振り返る。
 眼差しは疲労こそ露わにしているものの、遭遇当初とほとんど変わらないように思えて。
「ふぇぇ……ボクもう限界……」
 力なく座り込んだ命を見下ろし、山坊主が鼻を鳴らし言い捨てる。
「礼とか期待してんなら……他所当たれよ」
 言い終えるや否や、彼を始めゴーストチェイサーは皆さっさと踵を返してしまった。端から会話を却下されたようにも感じ、能力者達は目を瞬かせる。
 違う、と真っ先に唇へ想いを刷いたのはみさきだ。
「……ずっとね、ごめんなさいと、ありがとうしたかったんだよ」
 大きな戦いの後、みさきが紡ぎたかった言葉だった。訴えたい気持ちも、知りたい願いも多くあれど、みさきはそれ以上首を突っ込もうとしない。
 無理には引き止めない。それが彼の方針でもあったから。
「先の戦いでの借り、返せてよかった」
 徐に頷いた淘汰が、穏やかな調子で述べて。
「またあいたいよ。だよね、虎次郎」
「ああ。また……逢えるか?」
 みさきと虎次郎の投げた問いには応えず、マメシバが一度だけ立ち止まる。
 そして、能力者達を振り向くことなく口を開いて。
「一応、ですけど。お礼は言っておきます」
 ――ありがとうですよ。
 微かに零したマメシバの小柄な姿もまた、他のゴーストチェイサーを追い、暗くそびえる木立の向こうへと沈んでいった。
 交わる術もなく姿を眩ませた彼らを見送り、淘汰は傍らに寄り添う望月へと屈みこんだ。
「……生き急がなくとも、良いじゃないか」
 望月は、艶を帯びた漆黒の頭を主へ擦り付けるだけで、何も応えずに。

 耳を澄ましても、彼らが奏でる戦の音が響いてくることは、二度となかった。


マスター:鏑木凛 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:4人
作成日:2009/02/24
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
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