≪食う寝る遊ぶ。≫食べ放題! 寝放題! 遊び放題!


<オープニング>


 バイキング式のレストランのある1階へと踏み込んだ途端、奇妙な違和感が、能力者たちを包み込んだ。
「全部……食ベル……」
「喰イ……ツクス……」
 テーブルの上にかがみ込み、腐りかけた身体に食べ物を詰め込んでいた2体のリビングデッドが、能力者たちに気づき、手にしたフォークとナイフを振り上げる。
「なぜ、こんな場所にゴーストが……?今日は、チラシ通りに『食べ放題! 寝放題! 遊び放題!』の予定だったのに……」
 がっくりと肩を落とす加賀見・眠斗(天穹の魔導士・b16661)の手から落ちたチラシを、香宮・風蘭(あたたかな風・b34141)が拾い上げた。
「仕方ないよ、これって、1年前のだもん」
「ええっ!?」
「ボク、ちょっと変だと思ったんだ。このビル、まるで廃墟みたいだったし」
 チラシをのぞき込んだ綾織・みつき(アイロネイア・b39657)が、おおらかな口調で言う。
「カレーが食べられなくて、がっかりだよ……」
 と、黒依・しろ(食う寝る遊ぶ・b49029)が、ため息をつき、
「1年ほど前、火事で大勢の犠牲者を出して営業停止になったアミューズメントパークって、ここのことじゃないのか?うかつだったな」
 神原・マキ(深山育ちの鬼げんこつ・b54363)が、眠斗の肩を叩いた。
 振り返ると、入ってきたドアは消えている。
「出口は、あそこしかない……みたいです」
 榊・祐(ママはフランケンシュタイン・b57309)が、フロアの奥の階段を指さした。
「理由はどうあれ、僕たちがやるしかない、ということか……」
 黒咲・海之(翡翠の刃・b57520)が身構え、
「ああ、そのようだな」
 と、すでにその気になっている高坂・柚馬(天衣無縫の射手・b53965)が頷く。
「「「イグニッション!!!」」」
 能力者たちは、声を合わせて叫び、一瞬で起動を完了した……!

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参加者
加賀見・眠斗(天穹の魔導士・b16661)
香宮・風蘭(あたたかな風・b34141)
綾織・みつき(アイロネイア・b39657)
黒依・しろ(食う寝る遊ぶ・b49029)
高坂・柚馬(天衣無縫の射手・b53965)
神原・マキ(深山育ちの鬼げんこつ・b54363)
榊・祐(ママはフランケンシュタイン・b57309)
黒咲・海之(翡翠の刃・b57520)



<リプレイ>

●1階
 ナイフとフォークを手に立ちふさがる2体のリビングデッドに対して、能力者たちは、ふたつのグループに分かれた。
 向かって右のリビングデッド担当のA班は、前衛が香宮・風蘭(あたたかな風・b34141)、神原・マキ(深山育ちの鬼げんこつ・b54363)、後衛が綾織・みつき(アイロネイア・b39657)、加賀見・眠斗(天穹の魔導士・b16661)。
 左のリビングデッド担当のB班は、前衛が黒依・しろ(食う寝る遊ぶ・b49029)、榊・祐(ママはフランケンシュタイン・b57309)の使役ゴーストの真フランケンシュタイン、後衛が祐、高坂・柚馬(天衣無縫の射手・b53965)、黒咲・海之(翡翠の刃・b57520)。
「これでもか! ってくらい食べ放題しようと思ってお腹空かせてきたのに〜! ちゃっちゃと片付けて、仕切り直ししなきゃだね! それにしても……あぅ〜……お腹が空いている時にこの空間は酷なんだよ〜……」
 周囲に溢れる、いかにもおいしそうな見かけのごちそうに気を惹かれつつ、みつきは仲間―――特に、先頭に立つ風蘭がダメージを受けたときには、すぐに治癒符を投げられるよう、気を配っている。
「わたし達は『食べ放題』出来ないのに、ずるいっ!」
 と、風蘭は、リビングデッドとの距離を一気に詰めた。
「まさかこんな所でゴーストと会うとは……加賀見……チラシの期限をよく見ておけよ」
「ふふふ……カレー食べられなかった恨み、思い知るといいのですよ! あ、もちろん後で、みんと先輩もおしおきね?」
 海之としろは、そんなことを言いつつ、それぞれの持ち場へと向かう。
 ちくりちくりと仲間に責めらた眠斗は、やや涙目だ。
「つーか、うちの母ちゃん、1年前のチラシまで、溜め込んで置くなぁっ」
 それでも、後方へと下がりつつ、気合いを入れ直す。
「でも、これもなんかの縁か……きっちりゴースト片付けさせてもらうぜ!」
 祐が、「ママ」と呼ばれている真フランケンシュタインに、ゴーストガントレットで強化パーツを装備させ、マキは、風蘭のすぐ後ろに立つ。
「食べ物の恨みは怖いんだからね?」
 恨みを込めながら、風蘭が、クレセントファング!
「風蘭ちゃんっ、やっちゃえ〜♪」
 みつきの応援が効いたのか、完璧な三日月の軌跡は、見事にリビングデッドを蹴り倒した。
「綾織、香宮、後衛は任せろ! 思いっきりやって来い!」
 魔弾の射手で、自分の攻撃力を上昇させた眠斗が、中心になって戦うふたりに、声をかける。
「あ、食べ物には誘惑されんなよ」
 そう付け加えることも忘れない。
「ゴハン食べにきて、逆に食べられちゃうワケには行かないよねっ! むしろウチにも食わせろーっ!」
 そう叫びながら、フェニックスブロウで戦うしろだが、もちろん、リビングデッドが食い散らかしたごちそうに手を出すつもりはない。そんなことをしたら、きっと、お腹を壊してしまうにちがいないのだ。
「流石にあれは食えないよなぁ……」
 軽くため息をついた柚馬が、雷の魔弾を撃つ。
 さらに、真フランケンシュタインのママの電撃を受けて、B班担当のリビングデッドは、動きを止めた。
 そして、A班担当のリビングデッドは……
「見よ! ボクらの食い意地〜っ!」
 みつきの放ったクロスボウの矢で、ナイフとフォークをしっかりと握ったまま、とどめを刺された。

 2体の敵を撃退した後も、テーブルに並んだごちそうは消えなかった。
 どうやら、この建物全体が特殊空間になっていて、抜け出す唯一の方法は、上のフロアへと続く階段を登り続けることらしい。
「あの、ごはんは後にしましょう? ゴーストを倒さないと〜」
 祐が、好物の肉に釣られかけていたマキを連れもどして、能力者たちは、2階へと向かった。

●2階
「うぉ、あっち〜! なんだこりゃ!?」
 短い休息の後、2階の扉を開けたマキは、目を丸くした。
 上ってきた階段は途切れていて、今度は、フロア中央にある階段を使わなければ、上の階へ進むことはできない。
 が、ものすごく蒸し暑い上に、ところどころから不規則に噴き出す湯気で、不意に視界が遮られる。
「ここは……サウナか? あっちいな。さっさと片付けて、美味いもんでも食いに行きたいが……」
 柚馬は、しろ、マキと横並びで、用心しながら湯気の中を進む。
「こんなところ早く出……はっ、冬にこっそり増えた分、ここで落としておかないと……!?」
 と、言いかけたしろだが、いきなり顔に湯気を浴びて、悲鳴を上げた。
「……って、むりむり、暑いの無理ーっ!」
 後ろからついていく5人も、暑さに負けそうだ。
「あつくてのぼせそうです……ママ……」
 祐が、真フランケンシュタインのママに訴えたとき、先頭グループのマキが、炎に包まれたリビングデッドの燃える爪に、肩口を切りつけられた。
「あちちっ! 水っ、水風呂どこだー?」
 水を張った風呂に飛び込んだマキに、みつきが、治癒符を投げる。
「……ふぅ〜〜」
 ほっと息をつくマキ、そして、柚馬としろを、もう一体のリビングデッドの、眠り攻撃が襲った。
 すうすう……
 寝息を立てはじめた柚馬、眠りは免れたものの魔炎の追撃効果に苦しんでいるマキを、眠斗の浄化の風が癒す。
「こんな所で寝ちまったら蒸し肉まんになっちまいます! 高坂先輩、眠りの打破はオレに任せてください!」
「悪い、助かった!」
 目覚めた柚馬は、しろ、水を滴らせているマキとともに1体のリビングデッドを囲み、海之に向かって叫んだ。
「そっちは頼んだ!」
 頷いた海之が、2体目のリビングデッドに、導眠符を投げつける。
「大人しく眠っておけ……!」
 眠りに落ちた2体目のリビングデッドに、祐が穢れの弾丸を、風蘭がフレイムキャノンを撃ち込んだ。
 1体目には、しろが、クレセントファングを放ち、続いてマキが、牙道砲で吹き飛ばす。
「こんなもんと一緒に、食って寝て遊ぶなんてごめんだぜ!」
 と、叫んだ柚馬の雷の魔弾が、最後に、リビングデッドを貫いた。
「事件がなかったら、みんなが一日中楽しく過ごせる場所だったろうに、でも、それだけに人の想いが留まりやすかったのかもなー」
 湯気の中に倒れ伏したリビングデッドを見下ろして、マキが言い、能力者たちは、階段を上った。

●3階
 ゲーム台が散乱していて、見通しの悪いフロアに辿り着いた途端、海之、眠斗、祐は、2体のリビングデッドの炎の弾の攻撃を受けた。
 あわててゲーム台の後ろに隠れた祐をかばって、真フランケンシュタインのママが、盾になる。
「黒咲先輩、援護頼みます!」
 眠斗が、魔弾の射手で、魔法陣を生成しながら、叫ぶ。
「ゲーム台があるという事は、ここはゲームセンターみたいなものだったのか……? 僕はこういう所に余り行ったことがないのでよく分からないが」
 と、海之が、ゲーム台の後ろから投げた導眠符は、1体のリビングデッドを眠らせた。
 ゲーム台の陰から、みつきが治癒符を投げて、先行する海之、眠斗、祐の傷を回復し、しろと風蘭がフレイムキャノンで、マキが牙道砲で、柚馬が雷の弾丸で援護するが、ゲーム台がじゃまで、眠っているリビングデッドにさえ、なかなかダメージを与えることができない。
「ぼく、背が低いから、よく見えない……」
 と言う祐の穢れの弾丸も、ほとんど当たらない。
「ち、埒が開かねぇ! 祐、ママに頼むぜ!」
 眠斗が叫び、真フランケンシュタインのママは、ゲーム台を押して壁を作りつつ、リビングデッドを、フロアの奥へと追いつめた。
 新たな壁の陰から狙った海之が、眠っているリビングデッドを、水刃手裏剣で討ち取る。
「射撃とは言い難いが……これも似たようなものだろう」
 残った1体のリビングデッドとは、激しい撃ち合いになったが、真フランケンシュタインのママの背を壁に、距離を詰めた眠斗の炎の魔弾、祐の穢れの弾丸、そして、再び海之の水刃手裏剣が、次々に命中し、射撃ゲームのような戦いに、決着をつけた。

●最上階
「ク……クエ、ネ……ネロ、ア……アソ……ベ……」
 4階に待ちかまえていた地縛霊は、オフィスのようなフロアで能力者たちを迎えた。
「みんなでがんばりましょう……」
 祐が、みつき、海之とともに、後衛に位置取りする。
「ここの地縛霊で最後か? うっし、みんなで退治してやろうぜ!」
 マキが、森羅呼吸法で気合いを入れた。
「ああ、どうやらここで最後みたいだな」
 と、頷く袖馬と、眠斗は、魔弾の射手で自己強化する。
「ク……クエ……ネ……ネロ、ア……アソベべべ……!」
 地縛霊が、立ち向かう8人全員を巻き込む白い光の攻撃を放った。
 最もダメージの大きかった風蘭を、みつきが、素早く治癒符で癒す。
「今、回復するからねっ! いたいのいたいの飛んで行け〜!」
 海之も、前衛に出たしろに、治癒符を投げた。
 祐のゴーストガントレットを受けた真フランケンシュタインのママが、地縛霊に突進し、そこで生じた隙に、眠斗が、ゴッドウインドアタックを決める。
「超サイコー! これ一回やってみたかったんだ」
 感激する眠斗。
 そして、崩れかけた自分の身体に白い光を纏って、自らを強化しつつ回復していく地縛霊に、柚馬が、ここまで温存していた炎の魔弾を見舞った。
「食いもん……と、その他もろもろの恨み、思い知れっ!」
 回復が追いつかない地縛霊に、しろと風蘭が、強烈なクレセントファングを、マキが渾身の紅蓮撃を叩き込む。
「とっておきだぜぇぇーー!」
「グ……ウウウ……」
 呻き声を上げながら地縛霊は倒れ、同時に、特殊空間は幻のように消えた。

「お腹空いたね〜、何か食べて帰ろうよー! ……もちろん、みんと先輩のおごりで?」
 廃墟の中で、しろが、皆を誘う。
「はいっ! 行くっ! も〜お腹空きすぎ〜」
 みつきが、さっと手を上げる。
「おっ、いいじゃん!」
 と、即座に賛成した柚馬も、もちろん、眠斗に奢らせるつもりのようだ。
「今度はちゃんとした場所だろうな? もう、こういうのはこりごりだぞ……」
 海之がため息をつく隣で、
「焼き肉に一票!」
 と、マキ。
「よーっし、食べまくるぞーっ!」
 「食べ放題」ができなかったことを、根に持っていた風蘭は、スキップをはじめた。
「え? ええ〜?」
 と、慌てる眠斗を、皆が囲んで、今度こそ、本物のごちそうを目指す。
「いつかここも、また、よいお店になるといいですね……」
 最後に、アミューズメントパークの残骸を振り返った祐が、願うように呟いた。


マスター:関口元 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/04/03
得票数:楽しい17  笑える2 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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