<リプレイ>
● 大勢の生徒達で賑わう教室では、硝子のブレスレット作り開催中。 各テーブル毎数人ずつ着席し、配布されたビーズキットや工具を用いて、皆お揃いのデザインブレスを作成。 「硝子って一つ一つ微妙に色合いが違うのね…」 「篝先輩のビーズも綺麗ですー」 絶佳が丹念に見つめる硝子の色は、贈る相手の炎のイメージで赤、久遠は落ち着いた色彩の赤と黒。 「恋人がいる奴らは、羨ましい限りだ…」 久遠達を肩越しに見ていた太郎は、友人の千絵子と参加だが、既に千絵子にも彼氏が居るので密かに溜息だ。そういう千絵子は、太郎のブレスが誰へ行くのか気になってたりする。 「私は元気のお守りとして贈る予定ですよ」 喜んで貰えるか不安でも、女は度胸ですと、そんな千絵子を太郎は応援したい。 皆の想いは様々。 渡す相手を心に思い浮かべ、龍麻も浩司も一粒一粒選び出して行く。 (「学園に転校してまだ数ヶ月で、まさか俺に大切に思える人が出来るとは思わなかったな」) 幸せは分けると二倍。彼女の笑顔が一番好きだからね、と浮かぶ静かな笑み。 (「うわあ。そいつの事考えながら、作ってみようと思ったのに」) 考え出したらオレ、もしかしてアイツの事良く知らない? って浩司の結論。 今はまだ知らなくても、大事なのはこれからの事。 これから沢山アイツの事を知っていって、もっと仲良くなれますように! そう、それだよ。その気持ちが選び出した最後の一粒に力強くこめられた。
生きる意味の一つでもあるくらい心の拠り所で、大切な人への贈り物。 願わくば、あの人に幸あらん事を…。 傍に居続けて欲しいなんて、想いの重み…は、私の我侭なのですけれど…。 そんな静かに硝子を握り締めて目を閉じている響姫の姿を、アトリは向かいの席で垣間見て、声を掛けてくれた累に教わりつつ、仄かな憧れを胸に抱く。 私も大きくなって好きな人が出来たら、その人に大好きって伝えられるのかな。 最後迄、自分の手で丁寧に……一個ずつ丁寧に。 (「光を大事にするようにビーズを革紐に通し、透明度と光を楽しみたいんだ」) 累はアトリを応援しつつ、自分の手の中の硝子を見つめていた。 「……あぁ。胃がキリキリしてきたの、ですッ」 大好きな人の瞳の色も意識して、意識して…移りゆく空も思い出しながら、ちゃんと渡せるか考えていたら奈月の気持ちは不安に塗り潰されてしまう。 大丈夫大丈夫。 届きますように。喜んで、くれますように。
「あのねっ。サバイバル技能には自信あるんだよっ」 別のテーブルでは、一生懸命に硝子ビーズを通そうとして、ぱらぱら空しく解けさせながら奮闘中の蒼雅や、最初は通すだけだから簡単だよって思ったのに、力作業は苦手で、しゅーんとしているステラが居た。 硝子玉って見てると、とっても綺麗。 んん、素敵だからこそ、作るのはこんなに大変なんだね。と、二人で額の汗を拭いながら 「おねーさん。手伝って貰っていいかな?」 堅い金具止めを前に戸惑っているステラ達を、にこにこ眺めながら雛姫は手伝ってあげる。誰かを守りたいって気持ち…こめられたらいいなって、思うよね。
「むむー。私はちっちゃい子じゃないわよ! 間違えないでよ! 手伝って貰う必要も無いわ!」 高校生だけどちっちゃい背丈の火蓮は、通りすがりの親切な人達に唸っていた。 この硝子が妹にはどんな風に見えるのか、想像するのは楽しい。けれど、手先の不器用さは何ともし難く。 「でも、あ、あの…やっぱり手伝って欲しいかも…」 と、観念して、大雑把で不器用かと思いきや意外と器用な瑞杷と漸夜達周辺の人間に助けを求めた。 「…手伝うには、私…へたくそですが…頑張ります」 「私は小さい頃から楽器一筋だったから、器用さは任せなさいだよ」 翼も小さく拳を握り締め、優しい淡い青を選んでいた悠歌も火蓮のブレスの手伝いに参加する。 大好きな義姉が喜んでくれる事。大切な妹の為。いろいろ想像したら楽しい作業になるね。 五人で、のんびりまったり〜のほほん〜と、長閑に黙々と作業が進んでいた。 漸夜の心の中では『あいつ』が怪我をしないよう、無事に帰還出来るよう、一粒に願いを込めて繋ぎ続けていく。 「そういえば今日って、バレンタインデーじゃなかったっけ?」 結社の仲間で誘い合って参加した姫沙乃の不意な言葉に、バレンタインは明日だよーと、瑞杷達から声が掛かる。 「クレッセント・ブレスレット」 三日月色の硝子を集めて作るかぐやや羽根色硝子で作るすずめ、それと織女は黙々と皆の明るい会話に耳を傾けながら、可愛いブレスを作っていた。
そして、女の子達の間で囁かれるのは、やはり贈る相手の話題。 「花ちゃんは気になる人とかいないですか〜?」 「ミオンは誰にあげるの?」 お互いに聞き合う事は同じ。赤色を握るミオンも、青色硝子を手にした花も目を合わせて、瞬間にくすくす笑い出す。 悧瑜は器用な印象ではないので、心配しながら手元を見ていた菜子にも。 「日頃仲良くして下さっている方に贈るものを作りたいなーって」 菜子は笑って云った。 「落ち着いてー、慌てなくてもビーズは逃げないのですよー」 「はわー! ありがとうなのですよー!」 細かい物作りが得意な緑樹は、來夢を教えながら助けている。 皆、皆、誰にあげるかは、お互いに内緒だねっ。
「日本ではバレンタインに何か貰わないと、負け組だってね」 オーストラリア出身のジョーに、そんな訳あるか──!! と、殺気視線が突き刺さった。 義理チョコだって貰えない人は居るんだよ……。そこ、判ろうよ。 「のめりこんでしまった…これはもう巨人用ブレスだ…」 黙々とビーズ繋ぎ作業をしていた那拓の手元には、延々繋がれた大縄跳びも出来そうなロングビーズ。 だが一方、不器用で出来ない人も居たりする。 「ぐがぁああ!! ビーズめ、おのれビーズの分際で人間様を馬鹿にしやがって!!?」 突然、恭平が逆ギレし、机上のキット枠や工具全て卓袱台返しで引っ繰り返し、傍に居た那拓や時間を人一倍掛け繋いでいた紗夜のビーズも、一緒に吹っ飛ばし分解させた。 「♪〜…って、あ──!!」 「またやったの? ファー」 ついでに連鎖するように鼻歌歌っていたファルルゥと、彼のそそっかしさを嗜めようとしたファイナリィも豪快にばら撒いた。 「「「………」」」 床に色とりどりの硝子ビーズがきらきら……その一帯に居た全員が無言になった。 巨人用は、小人さんのブレスに…。 大切な一粒一粒もばらばらに。 「あっ…も、申し訳ありませんっ」 彼に似合うか思い浮かべながら繋いでいた硝子玉達を、半泣きになりながら拾い集める紗夜と、暫し零れた硝子の粒が光を受けて輝く様に見惚れてしまうアリア。 「「「………このメイド男がっっ!!」」」 俺、不器用なんだよなーと遠い目をする恭平に、場に居た皆が非難轟轟、一斉に殺気視線! 「あはは。皆のビーズが混ざっちゃったね。でも、気にしない気にしない♪」 ファルルゥの楽天的な言葉に、皆は頷いて拾い始め、余波で、こっちでもビーズをばら撒いた悧瑜達のビーズを拾う花楓の足を、敬介は思いっきり踏んづけた。 恋人になってから、初めて共に参加した催し。八方美人の花楓の態度に嫉妬を覚える! 「コレで済んで良かったなっ」 「敬…」 睨付ける敬介に、甘く微笑む花楓に年上の感が漂う。後に完成する互いを想い合い、繋ぎ合せた硝子玉は二人の心を透かすように煌くだろう。
章人は淡いピンクや橙を。是空は紅と蒼を。それぞれの硝子玉を選び出す。 是空は大切な祖母の形見を手に、章人の為に丁寧に繋ぎ合わせ、その丁寧ながらも覚束無い彼女に章人は、そっと手を重ね合わせ、指に指を添え、 「何だか大切な想いが繋がっていく感じがして良いな」 彼女が大切にしているのは形だけのモノではなくて、それを贈りたい章人そのものだという事…伝わりますように。
「この作業は自分との闘いだ…絶対に完成させてやる!」 「人生そういう事もあるさ」 ふるふる震える手先の慊人の肩に遥斗は、手を置き励ます。その遥斗の手の温かさや繋がれていく硝子粒に友情の片鱗を見た。 (「俺等の関係も、この硝子みたく…繋がって…」) 共に一緒に過ごす時間、誘ってくれた遥斗に感謝を送りながら。
「今度来る時にはよ、ナリナリへのらぶ筋友情ブレス☆もこさえてやるからな」 成章は、紅と銀を思わせる一粒を摘む相棒のシギンを見遣る。 「硝子は無垢で、そこには思いはないから…」 「誰かだけの想いの色に染めて貰いやがるのを、待ち焦がれてやがるんだろうなあ」 この色に何を見ますか? この色が何の色に見えますか?
「「キウイ色っ」」 弥琴に見せられた碧の硝子粒を見て、隣同士で作業をしつつ話をしていた陸王と、話を聞いて赤面していたエドは率直に答える。金具の取り付けに難儀している弥琴に、陸王がにこやかにペンチで手伝う様を、周囲の少年達は、「おおっ」と感心して見守っていた。 青白の透明な硝子を集めて作ったブレスは、優の手の中できらきら。 ひかるも、はみかみ笑いながら、碧色の粒を指先に摘んでみた。 願うのは、大好きな人達が何時も幸せでいる事。 有難うと感謝の気持ちを、沢山沢山詰め込んで! 「「喜んでくれるかなぁ〜」」 ひかると優が同時に呟くと、弥琴もエドと陸王も、ぐっと親指を突き出した。 「小此木君は、誰かにブレスを贈るつもりなのかい?」 「それとも、ライバルの彼にあげるのかしら?」 那拓と蒼耶と翔香の問いかけに、赤かった顔から蒼白したエドが脂汗を流し硬直した。
──俺のブレスは、母ちゃんに差し押さえられてマス…。
差し押さえって何──っ?! 「僕は兄に日頃の感謝をこめて、ですね」 瑠璃色の硝子を手に包み込み、柔らかく微笑む蒼耶の表情は、それを贈った時、自分の頭を撫でる兄の姿を思い浮かべたのか幸せそうだった。 「私も日頃からお世話…って云っても同性の先輩で色恋とは無縁だけどね」 翔香の胸には沢山の感謝が詰まってる。
いつも構ってくれて、 空元気な自分を心配してくれて、 元気を分けてくれる大切な大切な人への贈り物──。
● 近くの公園。陽だまりの下に集う恋人達。 「「一口頂戴♪」」 お互いのクレープをルナと雅秋は、甘いカスタード、甘くないツナと共に口の中に含みあう。 やっぱり大好きな人と美味しい物を食べるって、スゴク幸せ♪ 「ねぇ、他の種類も食べたいな…ダメ?」 「じゃあ、今度またデートした時ね?」 雅秋の優しい手がルナの白いマフラーに触れながら、安らぎの約束を交わした。
「ほら…こ、これで借りは返したからなっ」 「有難う! 買ってくれたクレープの甘さ以上に甘いハニーの愛、確かに受取ったよ!」 チョコ味に噛み付く詩織は、壱之介に日頃の借りがあるから、それを返しただけで。 「調子に…乗るなっ!」 デートと勘違いしているのは、この馬鹿だけだと、詩織の膝蹴りが壱之介の股間に入る。 芝生に倒れつつ「痛い…でも…幸せ」の余韻に浸る彼に対する態度と気持ちが自分でも釣り合ってないって思う、かな。
「「よしっ! 皆でサッカーやろうぜ!」」 ボールを指先に乗せた高斗と小太郎達の声が重なり、広い公園内に響く。 思いっきり、皆一緒にサッカーだ! 「おにーさん方、お願いしますっ。ボクも遊んで!」 「「私も混ぜてっ」」 熾輝がぺこりと頼むと、正剛がリフティングで肩鳴らしする横で、夕祈と杏樹もスカートを翻しながら元気に挙手した。 「俺本来はGKだけど、FWも得意なんだぜ?」 遼は高斗のボールに目を留めて笑う。 「「勝負だ!」」 正剛と遼、小太郎とエドがボールを取り合って駆けり廻る。ゴール? そんなもん要らないよなっ。ボール追い掛け回して行こうぜっ。 夜火も交えて、小学生相手に大奮戦。 「パスいくぜーっ。うぉりゃぁーっ」 「小学生にかわされた?!」 夜火をするりとかわして小太郎がボールを蹴ると、ひょいと高斗がトラップして、熾輝達に軽くボールをパスする。正剛が長い距離を蹴り出すと、空汰も合流してチビッコ達全員は、わーっと犬っころのように公園の果て迄追い駆けては、瞬く間に全員戻って来た。 「俺ってサッカーの才能ないのかも〜」 と、溜息つく夜火に「皆、元気だよなあ」と零れ球拾いついでに、昼食代わりのクレープを平らげた後、いつの間にか参加して来た雨水が相槌を打った。 皆、穏やかに流れる時間に身を任せゆく。 二人でベンチに座る燈辻と朝樹は、少し瞬をずらしながら互いの横顔を見つめた。 「これからも、俺はお前の傍にいるから…」 朝樹の笑顔に添えられる小さな呟きは、元気に駆ける周囲の歓声に掻き消され、燈辻の耳迄は明瞭に届かなかった。 でも朝樹が笑うなら、それ以上は何もいらねーや。と、燈辻は笑う。
チョコケーキ、ガトーショコラに紅茶とココア♪ 「皆も食べてねー♪ くーた。クレープのてんこ盛りはやめなさいっ」 護刃が目をきらきらさせて苺クレープを食べる空汰の口の周りを拭いて軽く窘め、他のチビッコ達、皆用にと、おやつを沢山用意して待っていた。 周囲に座った遼達は、バナナチョコプリン味ー。 遠く恋人達を見ながら、ほわほわしている夕祈。 「ホントは今日…」 でもまだ恋人とかじゃないから、お誘い出来なかった…もじもじしてしまう。 「「ロシアンルーレット?!」」 クレープ屋台で注文したという双一が持ち込んで来た中身不明なクレープ。 早速、周囲の皆で、はむっ! 「ん。真に美味しいのぅ…やはり、おなごは甘い物が好きなのじゃ」 苺と生クリームと抹茶小豆の甘いクレープを引当て、ご満悦の霞を尻目に、 「「ギャァァア! 何じゃこりゃぁあ!?」」 口の中一杯に鬼も泣くと噂のハバネロ味が広がり、喉を抑えて悶絶する双一達数名の前で、平然と濃縮ハバネロを食べて、生き残ったのは文一人だけだった…。
皆で休憩している最中に公園内をジョギングし終えたひかりが戻って来た。 おつかれさんーと、皆に声を掛けて貰いながら、ひかりは真っ直ぐエドや小学生達の傍にやって来る。 「私とプロレスごっこしてみませんか?」 !! エドは真っ赤になって、あろう事か遼と小太郎の背中を押して差し出した。 「「ええ? なんでぇ?!」」 何て云うか…ひかりが年上の女性なので照れたらしい。そういえば、熾輝からのキスも夕祈の「あーん」も正剛や高斗の背に逃げて回避した気がする。 そこへ、ズドッとひかりの肘がエドの腹に入った。 ぐほっ! その時、杏樹にも後ろ頭をポンとされて囁かれた言葉に、エドも笑って囁き返す。 「一日たっぷり遊んだら、また勉強と部活、そして能力者の仕事を頑張るのです!」 闊達に健康的な汗を輝かせ、眩しいくらいに笑うひかりに皆頷いた。
いつもおつかれさま。これからも頑張って!
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参加者:70人
作成日:2007/02/13
得票数:楽しい32
ハートフル23
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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