生樹の誕生日〜猛暑に納涼! レッツ肝試し!!


<オープニング>


「……っ、あっ……つい……! 本州の夏って、なーんまらあっついよぉ〜……ボク、気温20度越したらもうムリ……」
 学園の屋上に出てきた、月島・生樹(中学生運命予報士・bn0202)は日陰を探してその場にぺたんと座り込んでしまう。
「確かに、北海道と比べたら本州の夏は過ごしにくいかもですね……あ、あれとかどうですか? 怪談とか肝試しとか」
「う〜ん……それってさぁ、よく話しには聞くけど、ホントに涼しくなるのかなぁ?」
 五條・梅之介(高校生魔弾術士・bn0233)の提案に、首を傾げてみせる生樹。しばしの間の後、ちょっとやそっとじゃ涼しくなんないよ〜、と気だるい声が返ってきた。
 そんな会話があったのは、何日か前の話……

「……と、いうわけでして、生樹は北海道育ちなので暑さに弱いみたいなんです……」
 話を聞いていたあなたに、梅之介は困ったような笑みを向けた。
「それでですね、今月の23日は生樹の誕生日なんですけど……納涼と誕生会を兼ねて肝試し大会をしたいなぁ、と思ってるんですよ」
 肝試しの会場となるのは夜の山。暑さにやられ気味の生樹を涼しくさせてあげられるような肝試しコースを皆で作るのだ。
「生樹は肝試しの納涼効果を疑っていたので、おもいっきり怖い仕掛けとか演出とかしちゃって良いと思います……肝試しの本気をみせてやるんです」
 ちなみに、肝試しの効果を倍増させるため、当日までこの計画は生樹にバレないよう内密に進められる。
「山の中ですから、使役ゴースト達も一緒に参加できますね。肝試しの後はケーキとか、皆で持ち寄ったものを食べながら、ちゃんとしたお祝いもしてあげたいんです。もしよろしければ、一緒に参加しませんか?」
 肝試し大会と誕生会のサプライズパーティーの計画が、今、始まろうとしている……

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参加者
NPC:月島・生樹(中学生運命予報士・bn0202)




<リプレイ>

●肝試しスタート!
 夜の山中。目の前に続いている山道の入り口に、『肝試し大会スタート地点』と書かれた垂れ幕が掛かっている。
「お誕生日おめでとうございます、月島さん」
「あ、ありがと! えーと……あのさ、この肝試し大会って……?」
 振り返った生樹に、イセスは懐中電灯を手渡しながら真剣な表情を作ってみせた。
「気をつけて下さいね。あのコース、本当に幽霊が出るんです……白い着物に、長い黒髪。顔半分は血にまみれ……真っ赤な手毬を持った女性の幽霊が……」
 ぽそり、ぽそりと呟かれる幽霊の噂に青ざめていた生樹の後ろから、今度は薄い笑みを携えた成美が、携帯音楽プレイヤーを差し出してくる。
「ふふふ……さあ、このヘッドホンをどうぞ」
「う……ん、なんか、もうすでに先の暗闇が重いっていうか……」
 ヘッドホンから流れてくるのは、怖いと評判の怪談話。生樹の表情は、明らかに固まりつつある。
「さ、頑張りましょう。最後まで到達した証に、これを持って行ってゴール地点に置いてきて下さい」
 そう言って先を促した景綱は、お腹にチャックがついているクマのぬいぐるみを生樹に手渡した。
「そ、そうだね! せっかくの大会だしね! よーっし、いっくぞ〜……」
 最初の一歩がなかなか踏み出せないのか、スタート地点で意気込むだけ意気込んで、足踏みしている生樹の肩を、誰かが軽く叩いた。
 振り返ったそこには、白い着物に長い黒髪。顔半分を血に染めた女性が真っ赤な手毬を持って立っている。女性は口元だけに、ニコリと笑いを浮かべたかと思うと、一瞬にしてその姿を消した。
 しばしの間の後、山道の奥へと消えていった叫び声。 
 イセスは手の中にあるイグニッションカードを見つめた後、ちょっとやり過ぎたかな? と心配そうに呟いた。
 暑い夏の夜。肝試し大会のスタートです。

●このコース、切り抜けられるか!
「き、ききちゃんー、一緒いこー!」
 コースの途中で待っていてくれたのか、ルナが少しだけ上ずった声で駆け寄ってくる。同じようにしてコースの途中にいたらしい、さなと水澄花も一緒だった。
 合流を果たした四人。一行は真っ暗な山道を、拙い明りの懐中電灯を頼りに進んでいく。
「ききちゃんは怖いの、平気……? 私はお話するのは好きだけど……」
「そーだ! ただ怖がるだけじゃつまらないから、一番最初に悲鳴出した人がアイスを奢るってのはどうだ?」
「ボ、ボクはまだ平気だよっ! いいの? そんな約束して……」
「きゃっ!!」
 突然、一番後ろにいた水澄花が短く声を上げて前方を指さした。瞬間、まず声に驚いた三人の肩がビビクン! と跳ねる。
 無意識に身を寄せ合い、恐る恐る確認するその方向。道の真ん中で、一人のお坊さんが背を向けて座禅を組んでいた。
 生ぬるい風に乗ってくる読経の声。誰かの仕掛けだろうか。
「普段ゴーストと戦っているのに、それでもやっぱりドキドキしちゃう」
「い、いやー。手作りとはいえ、なかなかリアリティあるんだなー、ははは……」
 少しずつ、ゆっくりと近づいてみる。
 すると、今度はどこからともなく、読経に交じって変な音が聞こえてきた。女性の悲鳴にも似た甲高い音が、どんどん近づいてくる。
「キャー! あそこ! ほら、何か見えるのね!?」
 ルナが指さした木陰。白い着物を着た女性がぼんやりと立っていた。その横には、怪しく揺れる、人魂の炎。
『恨めしや……』
 かすれた声。今、確かに聞こえた!
「あ、あそこ光って……ぎゃあああっ!?」
「わーー!! 早く逃げ……あわわ、どうしようっ!? 前にいるお坊さんも何かヤダ……っ?」
 一斉に上がる悲鳴。もうアイスだの奢りだのの勝負どころではなかった。パニックに陥った一行。慌てて逃げ道を探していた生樹は、何かにがっしりと肩を掴まれる感覚を覚え、思わず振り返った。
「タ……スケ……テ……」
 目の前に映った青白い顔。口の端から滴る鮮血。そして、赤く汚れたボロボロの服。助けを求めるように見開かれた目と自分の目が合ってしまう。
「……っわああぁあ! ゴメン! ボクにはたぶん助けらんないー!!」
 掛けられた腕を振りほどいた生樹が、またもや全力ダッシュで駆け抜けていく。
「効果抜群でしたね……」
 木陰で釣竿に垂らした火の玉を操っていた克乙は、幽霊の格好に扮した相方のサキュバスキュア、乙姫と顔を見合わせて頷き合う。
「これか本当に怖い肝試しってやつだよ、月島」
 気合の入ったメイクと演技を披露した龍麻が、くすくすと笑いながら小さくなっていく背中を見送った。

 立ち止まって気がついた。一人になってしまっているという事実。
 他の皆はちゃんと逃げられただろうか。そう不安に思いつつも、近くの木に掛けられた矢印の標識を見つけた生樹は、気を取り直して歩き始める。
「あれ? 生樹ちゃん。もうここまで来たんだね。一緒に行こうよ」
「あっ、弥勒君っ! よかった、心強いよ! ありがと〜」
 少し行った所に、見慣れたクラスメイトの姿があった。明るく笑って差し出された炭酸飲料を受け取った生樹が、安堵の息を漏らす。
 ジュースを飲みながら歩く。上がっていた息も整ってきたと思ったその時、急に弥勒が立ち止まった。
「ちょっと待って……今、何か寒気がしなかった……?」
「えっ、そ、そうかな……」
 ぎくり、と固まった生樹は、注意深く辺りを見回してみた。時折、不気味な何かの鳴き声と変な音楽が聞こえてくる。
 これは何か来る! ここにきてやっと学習した生樹は気合を入れて構えた。
 突然、目の前に、ゴトン、と音を立てて転がってきたマネキンの首や腕。これには一瞬びっくりしたが、まだまだ余裕である。
「ワァーーーーっ!」
 次に、いきなり揺れた木陰から声を上げて走ってくる誰か。しかし、これまた見慣れたクラスメイト。顔を隠していたものの、間違えるはずもない。
「も〜、綺羅ちゃん、おどかさないでよ〜」
「えへへ、ごめん、ごめん〜」
 手で隠していた顔をすっと上げる綺羅。この時、思いも寄らぬ事態が起こった。
 無いのだ。目も、鼻も、口も……
「……っ! か、顔がっ……!?」
「ん? ボクの顔に何か付いてます?」
「や、そうじゃなくて、顔が……っぎゃーー!!」
 振り返ると、さっきまで普通だったはずの弥勒の顔も、何故かつるりと何もない状態に。そして、その更に後ろの暗闇の中で、二つの骸骨がゆらゆらと揺れているのを見てしまった。
 生樹はとうとう声を上げて走り出した。
 大事なクラスメイト達の顔が抜かれて骨になってしまった。そんな訳の分からないことを思い、この時初めて、少し涙が出た。
 まあ、骸骨の正体は、もう一人のクラスメイト、外印だったのだが……
 白熱する肝試しのコースはまだまだ続く。

 立ち止まり、肩で息をする。心臓は、まだ早鐘のように鳴っていた。
 大きく深呼吸をした生樹は、懐中電灯をしっかりと握り、改めて前へ進む。
「ううう……うう……く、苦しい……っ」
 途中の道に、髪の長い女の子がいた。脅かし役の人にしてはどうも様子がおかしい。
 うずくまった彼女は、苦しそうに咳き込んでいる。生樹は慌てて女の子に走り寄った。
「だ、大丈夫?」
「突然、む……胸が……ごほっごほ……っ」
 口に当てた手から、赤い血のようなものがポタリと落ちる。助けを求めるように、赤く染まった手が伸ばされた。
「しっかりっ……って、えぇっ!?」
 伸ばされた手を掴んだ生樹は驚愕した。手が、手首ごとスポンと抜けたのだ。ゆるゆると頭を上げた女の子。その顔が、鬼婆のように恐ろしく歪んでいた。
「手を返せ〜!!」
「ぎゃーー!!!」
「ごめんごめん〜驚いた? 眞子だよ〜」
「ふぇ? なんだ、眞子ちゃんか〜。びっくりしたよ〜……!! うっわぁぁあっ!?」
 ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。
 鬼婆のお面を剥ぎ取った眞子の顔。またしても、つるりと何もない。
 何だろう。これがデジャヴとかいうやつだろうか。
 叫びながら走っていると、前を歩く二人組みに遭遇した。近づく足音に振り返った顔。よかった。のっぺらぼうではない。
「どうも。お花見の時も会ったんですが、覚えてますか?」
「うん、もちろん……ちょ、ま……ごめんね、走ってきたからっ……」
 ゼイゼイ、と息を吐く生樹の顔を、京は少し心配そうに覗き込んだ。生樹が落ち着くのをしばらく待ったところで、暇はスッと手を差し出す。
「生樹クン、怖くない? ね、手繋ごう!?」
 そう言って、生樹の手を取った暇。空いているもう片方の手では、しっかりと京の上着の裾を握っている。
「別にオレが、こ、怖がってるとかそういんじゃなくて……生樹クンが怖いだろうと思って……い、言ったんだからねっ。京クンも、逃げないように掴んでるんだからね! 全然怖くないよ!」
「うわ、何だあれ! ぎゃー!」
「「ぎゃーー!!」」
 わざとらしく叫んでみせた京の声に、女子二人は本気で驚く。それはなぜか。後ろから血まみれの大男が走って追いかけてきていたからである。
「わー! うわーっ!!」
「ちょ、せ、先輩……! 大丈夫ですって! あれ、連司ですってば……あれ?」
 勢い余って抱きついてくる暇をなだめていた京が首を傾げた。自分と、暇と、追いついてきたフランケンシュタインの連司。
 気が付くと、一人足りなかった……

 とにかく今日はよく走る日だ。しかし、今は疲労よりも恐怖が強い。また一人になってしまった生樹の懐中電灯を持つ手が、カタカタと震え始めた。
 ゆっくりと進んでいく明り。木陰でそれを待ち構えていた茂理がトラップを発動させた。
「……果たして喜んで頂けるかな?」
 設置しておいた装置により、空高く舞い上がっていく等身大の人形。
『ぎぃぃやああぁぁーー!!』
「うわぁーーっ!!」
 中に仕込まれたスピーカーから大音量で響く悲鳴。それに負けないくらいの悲鳴が、もう一つ上がった。
 ここまできたら、もう何があっても怖いと思う状態のようだ。同じようにして木陰に隠れていた悠樹の、釣竿に吊るしたこんにゃくと濡れたサラシという定番の仕掛け。それが目の前を通過しただけで、飛び上がるようにして驚いた生樹が、とうとうその場にしゃがみ込んでしまう。
 ダメ押しのように鳴り響くホラ貝の音。目を閉じ、耳を塞いで震える生樹に、救いの手が差し伸べられた。
「生樹ちゃん、大丈夫?」
「実流ちゃん! よかった〜、ここで一緒に回ってくれる人に会えたよー!」
「それじゃ、一緒に行こうねっ☆」
 手を繋ぎ、歩き始めた実流と生樹。だが、これは半分罠だった。仲間の脅かし役が潜んでいる場所を知っている実流は、さりげなくその場所を通るようにコースを選んで歩いていく。
 最初に二人の後からこっそり近づいてきたのは夏果だった。ボロボロの着物に、ボサボサの髪。血糊も完璧。
 まずは手始めに、手にしたこんにゃくを二人の首筋に、ぺとりと当てた。
 ちょっと間の抜けた悲鳴と共に二人が振り返ったところで、口元に薄ら笑いを浮かべる。
「う〜ら〜め〜し〜や〜」
 懐中電灯による、顔の下からのライトアップ。古典的だが、何とも言えない凄味がある。
「「っきゃーー!!」」
 本気で逃げる生樹と、ノリで着いていく実流。しばらく走っていくと、何やら古いお堂のようなところに出てしまった。
「……うぅっ……うぅぅぅぅ……」
 お堂の中から何やら奇妙な声が聞こえてくる。誰かが中で泣いているのだろうか。意を決し、お堂の扉を開いてみると、そこにはうずくまって泣いているグルーネルの姿が。
「ぎゃあああああぁぁぁぁっ!?」
 何をそんなに驚愕したのだろう。きょとんとする二人を追い抜き、走り去っていくグルーネル。どこまで行くのだろうか。今日一番の悲鳴を上げた彼女は、闇の中へと消えていくのだった……

 肝試しコースのゴール地点付近。なんとかここまで辿り着いた生樹は、凛と弥琴と並んで歩いていた。
「二人とも……お、音聞こえない……?」
「まさか、聞こえませんよ。いやですね、みこみこったら……それより、ほら、もうゴールですよ?」
「やったーゴールだー! よかったよね……って、あれ?」
 恐怖から解放され、喜んだ生樹だったが、またおかしな事に気がついてしまった。
 さっきまで一緒だった二人が忽然と消えてしまったのだ。振り返った道の真ん中に、凛のモーラット、風が残されていて、もきゅもきゅ、と鳴いている。
「なんで? 二人は?」
 生樹が鳴き続ける風に近づいた時、突然、道の両脇の茂みがガサガサっと音を立てた。
「ばあっ!!」
「わっ!」
「わーーー!!」
「ふふふ、驚きましたか? 油断大敵ですよ☆ 生樹さん♪ お誕生日おめでとうございます」
「驚かせてごめんね? お誕生日おめでと」
 最後の最後で脅かし役に回った凛と弥琴。
 祝いの言葉に、改めて今日が自分の誕生日だと思い出した生樹は、ありがとう、と明るい笑みを浮かべるのだった。

●夜の誕生パーティー!
「「「お誕生日おめでとう!」」」
 始まった誕生パーティー。今日集まった仲間達からのお祝いに、生樹は大きな声でありがとう! と返した。
 肝試しのゴール地点で開かれているパーティーは、明るく賑わっている。
 生樹に驚かせすぎたことを謝ったり、改めておめでとうの言葉を掛けたり。中にはプレゼントを持参してきて手渡す人も、ちらほらと。
 設置されたテーブルには、各自が持ち寄ったデザート類が並んでいる。
「生樹さん、お誕生日おめでとうだよ」
 自身も今日が誕生日だという、水澄花。ありがとう、という言葉の後に、おめでとうの言葉が返ってくる。
「梅之介くん、そろそろいいですよね」
「そうですね、頃合だと思います」
 やんわりと微笑み合った、美桜と梅之介。デザートが並ぶテーブルの上に、ホールのケーキが二つ並ぶ。片方は普通のバースデーケーキ。もう片方は北海道のミルクを使って作ったアイスケーキだ。
「生樹ちゃん、お誕生日おめでとう。これからも仲良くしてくださいね」
「うん! ありがとう!!」
 ケーキを差し出しながら、優しく微笑する美桜に、生樹も満面の笑みで頷いてみせたその時だった。
「ぎにゃーーーっ!!!」
 一つ、大きな悲鳴が上がった。スタート地点で、生樹に手渡されていたクマのぬいぐるみ。抱いていたそれが、突然震え出したのである。
 クマのお腹の中に仕込まれていたのは携帯電話。仕掛けは簡単だが、油断しきっている人間を驚かすには十分だった。
 笑い声が響くパーティー会場。
 思い出に残る楽しいパーティーと、本当に最後まで油断のできない肝試し。
 今年の夏は、楽しく、そして涼しく過ごせそうです。


マスター:海あゆめ 紹介ページ
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いまいち
参加者:24人
作成日:2009/07/23
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