<リプレイ>
●想いの色 色とりどりの棒硝子が、灯りを受けて煌く。 「似合うのは赤か青だと思うんですが…」 揃えられた硝子を前にして、色のセンスに自信のない夜刀のように悩む者もいれば、綺麗な硝子がたくさん、と瞳を輝かせて選ぶ花影のような姿もあった。 「花、火には気ぃつけろよ。ヤバイと思ったら呼べ」 そんな彼女に声をかけ、京斗は深い瑠璃色の硝子や止め玉用の黒を手に取る。瑠璃の中には銀を浮かばせ、宇宙を思わせる物を作る予定だ。淡い水色の組紐も、結び方までこだわって決めている。 頷く花影は、菫色と桃色を手に、明け方の朝焼けを思い浮かべる。その玉には白く細い三日月と、風を顕す透明な青、ほんのり桃色の白い花弁を踊らせて、青紫の彩紐に通し根付のようにするつもりだ。 「白地に青や緑で三日月模様…綺麗でしょうねぇ…玖珠さんはどうします?」 「白と薄桃の水玉模様の青い物を作りたいです」 その横では縁樹がほわりとした笑顔で連れに問い、壱帆の声を弾ませた答えを聞いている。 頑張りましょうと意気込む縁樹に、壱帆はこっそり指南をお願いしながら、楽しげな笑顔で一緒に作業を始めた。 ぶかぶかのエプロンと保護眼鏡を装着した微は、真剣な瞳で青硝子を芯棒にくるくると巻きつけていた。後で黄色を乗せて綺麗な夜空を描けるかは今にかかっている。 普段は笑ってばかりの輝も、貰い物の持参の作業ゴーグルを付け、気を抜かずに透明度の高い赤を巻く。コイツはどうしよっかなァ、とぼやきながら、シンプルなマーブルの為加える白を手に取った。 形と色の綺麗な物を目指す恭平も、薄めの桜色を溶かして芯に乗せる。濃い臙脂色の和風の紐に通し、日頃の感謝の礼に誰かに渡すのもいい。 礼の為にと考える人は他にも多く、薄水色の玉をコテで整えている嵐もその一人だった。薄鼠色の組紐を傍らに、玉の上に一つ二つ赤い花を散らし、凛とした物を目指す。 バレンタインの贈り物でも、渡す人によってその意味も違えば、渡すのは女性だけでもない。 こっそりと彼女の為に形や模様そのままのシンプルな赤い物を作る、恭介のような姿もあるのだ。 こっそりといえば、緑の少し混じる淡い色合いにアクセントを加え、淡い青の紐に合うような魚の泳ぐ水中をイメージした玉を作っている御幸もそうだ。驚いて欲しいから密かに、愛を込めて試行錯誤を繰り返している。 やはり贈り物は驚きと共に、と考える息吹と涼音は、二人で助け合い作っていた。 「硝子ってやっぱり繊細なんだ…」 扱う難しさに何となく感心しながら、息吹は薄蒼の玉に黒のマーブル模様をつけ、楽しげに涼音を見やる。後で黄色の紐を通せば世界に一つの素敵な記念になるだろう。 「トンボの形はムリかな〜っ」 何かちょっぴりもどかしげにそわそわしながらも、息吹は青の玉に合う素敵な模様の紐を探している。 ついつい彼におせっかいを焼いて、紐探しの協力を終えた憐は、渡す相手はいなくともそれはもうしっかり器用に硝子を巻いていた。火を使うからと周りに気を配り視線をやると、苦手な炎に一生懸命向かう棘の姿が見えた。好きな空と水の色を使い、気持ちを込めて透明と青のマーブルに挑戦している。 感情を出すのが苦手な分、彼を思い浮かべたエメラルドグリーンに思いを込め、魁斗はその中に銀を混ぜ、二色が緩やかな螺旋を描くように硝子を炎にかざす。 「魁斗の瞳の紫に白い星を散して…俺の瞳の緑も加えたマーブルも作るんだが、紐は革がいいか?」 大切な相手を思い、愛を込めて硝子に彩を与えていた美輝の問いに、後で茶の皮紐を合わせようと考えていた魁斗は頷いて返す。 大切な人への物だから、龍麻は橘の花をモチーフにした細工に、時間と手間を惜しまず全力で取り組み、恋人の為にと材料一つにもこだわる日向は、玉や紐を恋人をイメージした青系統に揃え、黒で羽根の、水色で流れる風の模様を描く。 根付を作る小夜の後ろで、エレンが姉の為に透明感を残した赤に花の模様をつけた玉をそつなく作り上げている。形になった物を見て、これなら喜んでくれるだろう、と微笑した。 大切な人の笑顔を想い、苦戦しながらも緑地に赤い菊の花を丁寧に乗せていた英世に、彼女にでもあげるのかしら、とからかうような声がかけられる。 「君のはプレゼント用かい?」 彼の問いに声の主で在る蜜琉は決めてないわと返し、青に金の混じった玉の制作にかかる。素敵なのできるといいわねぇ、と隣の斑に話しかけると、彼女は頷いて素敵なの作ろうね、と嬉しそうに笑った。縁日の水風船のように、薄い空色にマリンブルーを細く絡ませ、黄と赤で斑点をつける。紐も同色系を用意して、青基調の繊細で華奢な物を目指した。 可愛らしい歌が流れてくる先では、はぁとくまさん柄を作るジークヴァルトと、赤と白の可愛らしい桜花柄を作るヴォルハルトが、背中合わせに阿吽の呼吸で道具を渡し合っていた。 「…って、み、見るなよ!」 口ずさむ歌を止め、ファンシー過ぎて恥ずかしいとくまさんを隠すが時既に遅し。こっそり覗き込んで楽しげに笑う相棒に、彼は真っ赤になっていた。 愛車と同じ色合いの朱と茶のマーブルを作っていた俊一郎は、綾乃に火傷に気をつけろ、と声をかけるも、自分が火により過ぎて慌てていた。ちなみに彼、この後合わせる紐に小一時間悩む事になる。 その様子を見て綾乃と一緒に慌て、笑いながら、稜は渡す人に似合うような白と青の線を引いた赤い玉を作っている。楽しげな笑顔で会話しながら、二人や周りで一緒に作業している人も、紗響にコツを聞いて、硝子を整えていく。経験のある彼は、彼女に合いそうな涼やかな水色に凝った細工を施して、後は白い紐を通すだけになっている。 でーきたっ、と嬉しそうに声を上げ、舞夢は汗を拭う。除冷剤で冷やすそれはさくらんぼのように可愛らしく、濃い橙に桜色の小さな粒が散っていた。 「先輩のも見せてっ」 彼女と一緒に、気になっていた弥琴も顔を出す。彼の作った黒地に白い花の咲く玉には、変わらない笑顔と限りない幸せを願う思いが込められていた。 綾乃は夜空に漂う白燐蟲を想像した物を作っていたようだ。 その隣で笑っちゃうくらい真剣に、薄緑の中に白の桜を描いていた朝日は、皆の物に目を移して、 「たくさんだと宝石箱を開けたみたいじゃのう♪」 と瞳を輝かせ楽しげな笑顔を見せた。 少々手間取りながらも狼は凝り性の良を参考に、透明な中に桜の花弁が舞う、春を感じる物を作っている。感謝と親愛を色にこめ、透き通る心に閉じ込めた。 「こういうのも楽しいですね」 自然に微笑み、小織は深い紺色に小さく水玉を付け小さな星空を作っていく。あまり器用でないから細い黒革紐を通すそれは少し不恰好だけれど、気持ちは硝子のように透明だ。 「どれも一点物の可愛い出来だね。上手上手♪」 しょんぼり肩を落とす彼女の頭を撫でて笑顔で言う良は、透明な紫に中白小花の玉を、濃紫の組み紐のストラップ土台に、白い紐編みで白の中花つきに仕上げていた。 優しくしてくれた人への贈り物にと透明な硝子に上手く青の花を描く榊は、三人の様子を見て嬉しくて仕方のない様子で笑う。 出来に自信がなくとも、大切なのはその心と笑って過ごせる今、だ。 青硝子に月を浮かべていた龍臣は、こんな所を主に見られたらきっと思い切り笑われるのだろう、と少しだけ困ったように笑んだ。感謝の意を、小さな思いを、この輝きに託す。 世話になっているお返しに、彼の好きだと言った紺を元に銀箔を練りこみ、雛乃は懸命に夜桜の風景になるよう、桜を描いていく。 妙に気合を入れた響器の白い花模様を付けたピンクのとんぼ玉は、微妙に歪で花に見えにくくなってしまったけれど、一生懸命さは伝わってきた。 何だか近づきがたいオーラを背負い、贈りたい相手の為に真剣に桃色と空色の可愛らしい物を作っていた燈護も、ようやく納得いく物を作り上げ、僅かに笑みを零した。 不器用ながらに奮闘する真魔の横で、宗司は器用に作り上げている。真魔は衝撃を受けながらも、宗司のサポートを受けて何とか完成させた。 「人間やろうと思えばできるものだー…」 「後のお茶会も楽しみだな」 満足げに嬉しそうに微笑む真魔に、宗司は芝居がかった調子で言ってつられるように笑んだ。 作業着にエプロンをつけ、鉢巻締めて終始皆を手伝っていた円は、ほとんどの人が作り終えたのを見て、やっとじっくり制作にかかる。首からかける為用意した長めの紐と、色々撮って回ったデジカメが傍らにあった。 熱を取った玉を水につけ、ゆっくりと棒から外して夢中になっていた雫翠は息を吐く。青地に雫のような白の水滴を、緑地に濃い緑で四葉のクローバーを描いたものを、じっくりと眺める。 丁寧に洗った物に、今度は紐を通していくのだが。 「〜ッなっんっで! 通らねえんだコレ!」 甲太郎はなかなか通せず苛立ち吠えていた。彼女に喜んで貰いたいと、大好きな恋人の瞳を思わせる玉を傷だらけの手に握り、紐と格闘している。 随分と時間をかけて紐を通し終えた翼は、何度も繰り返して作り上げた玉を灯りの光に透かした。 「どれもとっても綺麗だよね。私ももっと、可愛いのが作りたかったんだけど」 これが一番喜ぶから、と顔を綻ばせる里奈は、指にかけたたくさんの黄色と少しの緑を混ぜて作ったとうもろこしのようなストラップを見つめる。 それも可愛いですよ、とおどおど語る翼は、不器用なりに一生懸命できたと満足そうに笑った。 不器用な人も器用な人も、思い思いに綺麗なとんぼ玉を完成させている。一つ一つが一層美しく見えるのは、きっと、その硝子にはいっぱいに想いが、詰まっているからなのだろう。
●想う心 作業を終えてお茶会の会場にやってくる人々を迎えたのは、紅、蒼、翠の玉を一つのストラップに作った亮の淹れた茉莉花茶のいい香りと、手作りのクッキーやシフォンケーキを振舞う蒼夜の微笑みだった。 「初めてだから拙いですが…逆に手作りっぽくて微笑ましいでしょう」 作った硝子のように澄んだ心と思いを持てたら、と願う彼の横で、おっかなびっくり青のシンプルな玉を作った結那が、アールグレイのシフォンケーキやお茶を振る舞い、裏方に徹して一仕事の後の一息に貢献していた。 まだ人の少ない会場では、ハーブやミントの紅茶を入れて差し入れている椿と、作った玉をころころ指先で転がして手作り品に手を伸ばす一が、綾乃も加えてオレンジペコをお供にのんびりと世間話をしている。 「家族の為の予行として豚肉の蜂蜜煮を作ったのですが…」 蒼子は遠慮がちにそれをテーブルに並べる。美味しいと微笑む綾乃に蒼子も嬉しそうに微笑んだ。 ぴしっと服装を決めた長身のシェフ陸王は、制作でお腹を空かせた人にこの前摘んだ苺を使った苺チョコを配っている。お気に召したかい、と問われた綾乃は、満面の笑顔でこくこくと頷いた。 人が増えていくにつれ賑やかさを増す会場で、旋と歌織はのんびりと、溶かして固め直したチョコと甘さ控えめのブラウニーを囲んでいる。お互いの手作り品を口にして、歌織さんには敵わないと呟きを零す旋に、 「女の子の真心がこもったチョコだもん、美味しいに決まってるよ」 歌織はそう返して、喜んでくれるといいねと微笑んだ。 ほんわか暖かい雰囲気に、賑やかな楽しさ、それから、甘い空間のできているテーブルもある。 「紅…と迷うの、したの…でも、シギンみたい、薄い、水の色…作る、したの」 優しく微笑み恋人に寄り添って想いの詰まったそれを披露し、曼殊沙華はシギンのは、とねだるように見上げた。 「この紅と銀を抱く幾つもの硝子によ、曼殊沙華と俺だけの一時と想いが閉じ込められてやがるんだぜ?」 シギンは瞳と髪の色を織り交ぜたそれを陽に透かして見せる。揺らめく色と光に目を奪われている彼女に、閉じ込めるだけも勿体無い、と囁いた彼は、そっと口付けを落とした。 甘い。並ぶ菓子よりも何よりも甘い。周りの人がほんのり頬を赤らめている中には、綾乃の姿もある。 「私もこういう時に惚気られたらいいんだけど…」 青に白い花のシンプルな物を作った由衣は、手作りおかきを振舞い皆の作品を見せて貰いながら羨ましげに呟いた。ね? と突かれて、綾乃は照れながら小さく頷く。 「プレゼントしたい人、実はいるとか?」 この時間をめいっぱい楽しむ立花が、からかうように綾乃に声をかけると、真っ赤になっての否定が返される。 「でも、綾ちゃんも恋人さんが出来るの時間の問題なのでは〜?」 ちょっぴり火傷した手に感謝の贈り物である四葉のクローバーの玉を握りながら、更紗は赤面している顔を覗き込んだ。 「高瀬はんならきっといい相手見つかりますよって」 赤が基調のこけし風の玉を手にひふみがそう言って微笑する。ウチにはまだ好いた相手はいないけれど、と続け、今日は予行練習やね、と笑う。 「あやのん先輩〜♪ 猫はどーや、うちに口うるさい黒猫がおるんやけど引き取らへん?」 黒猫を閉じ込めた燈色をかざして、悟はにやっと笑む。綾乃は自分でいいのかと照れて返しながらも、嬉しそうに笑った。 「笑顔が似合うようになってきたねっ」 朱の引かない綾乃の頬を、美空がぷにぷにと突く。美空の玉には笑顔の狸が住んでいた。照れ笑う綾乃と、少し歪なハートチョコや白、紅、緑の三色団子を囲んで、どこのケーキが安くて美味しいだとか、とんぼ玉を意識した団子の作り主の拓人はこの間から更に料理が好きになっただとか、色々な話に花を咲かせた。 緑か青と白の淡いマーブルを作り終えた香介の、お手製ドーナツがテーブルに加わる。勧められて、それに手をつけた綾乃は、そのおいしさに尊敬の眼差しを彼に向けた。 蘭のチョコブラウニーやトリュフ、紅茶シフォン、ルナのチョコとバターのクッキー等、様々な手作り品の並ぶテーブルは随分と華やかだ。 「とってもいい香り、そっちも貰っていい?」 ルナは声を弾ませて蘭と味の評価をし合っていた。お前も一口どうだと蘭に誘われ、呼ばれた綾乃はそこで聞いたルナの言葉に照れて真っ赤になりながらも、どれも美味しい、と微笑む。 ふわりと香る匂いを辿ると、新緑の中を流れる清流のような緑と青のマーブル玉を作り終え静かにトルココーヒーを飲む桃内の姿があった。香りに惹かれた人達や綾乃も彼に淹れて貰う。手間隙かけたそれは、思ったよりも苦くない。 黄の紐に通した黄と青の水玉を透かし見ていた焦行は、その綺麗さにお世話になった人を見た。 「誰かのために何かを作る皆さん、きらきらしてて素敵ですよね」 会場を見回して、ぽつりと呟くその言葉に、綾乃も頷いて同意した。 光を受けてとんぼ玉がきらりと光る。溢れる程の笑顔と様々な想いを抱いて、時間はゆっくり穏やかに流れた。
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参加者:71人
作成日:2007/02/13
得票数:楽しい14
ハートフル19
ロマンティック2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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