<リプレイ>
●ばれんたいんでぃ〜思いをこめたチョコ作り 2月13日、その夕方。 校舎内の端っこにある家庭科室に、14人の男女が集まっていた。 前に立つのは、発起人の中学生程の女学生……集まった皆に、嬉しそうに頭を下げる。 「今日は、みんな集まってもらってありがとうございます♪ みんなで一緒に、頑張って美味しいチョコレートを作って、意中の人のハートをゲットしましょうね〜っ♪」 嬉しそうな彼女の声は、恋に焦がれた女の子そのもの。 そんな彼女に微笑みながら頷く綾上・千早(中学生退魔士・b02756)。 「そうねっ、バレンタインのチョコは乙女の嗜みなのですっ! 頑張って美味しいチョコ、作りましょうねっ!」 同年代の少女同士……どこかその意識は、知らぬ間に共有されているのかもしれない。 そんな彼女達……から少し離れた所では、手伝いとして連れてこられた奈那生・登真(中学生退魔士・b02846)がぼーっと横目にしながら。 「ふぅ……それにしても、贈られる相手は不憫ですね。男の手が入ったチョコを受け取る羽目に為るとは」 そんな登真の言葉に対して、獅郎・朋也(蝙血の夜・b00979)は微笑を浮かべながら。 「男の手が入ったチョコ……それを蔑ろにする事は無いでしょう。男であっても、チョコを贈りたいという気持ちは変らない! そう、真心込めて誠意を込めて作ればきっと気持ちは伝わるんですよ」 そして、更に緋勇・龍麻(龍の伝承者・b04047)が続く。 「そうですね……確かに日本では、女性が男性にチョコを贈る日となっているけど、世界的には男性が女性にプレゼントをしてもOKな日。幸せは分けると倍になるというし、ね」 確かにチョコレートを女性から男性に贈ると言うのは日本だけの伝統と言われている。 世界にとって、バレンタインデーは男女相互に愛を確かめ合う日。それは男性も女性関係ない日。 「ま……余り手を出さないようにしましょうかね。どうやら……やる気になっているようですし」 登真が横目で千早を見る……発起人の少女と、そして氷月・雫(宿命を背負いし楽天主義者・b03574)も一緒になって、チョコレート作りの最初の手順……湯煎を用意して。 「それじゃあチョコレート作りやな? まずはどうすればいいんや?」 「まずは、カカオマスをこの湯煎で暖めながら練るんですよ。水が入らないように注意してくださいね?」 少女の言葉に、ボウルを水に浮かべて最初の作業に取りかかり始める。 「……これがチョコレート作りか? なんていうか……バレンタインは準備段階からデリケートに作らないといかないんだな?」 「そうだね、チョコレート……中々作るのは難しそうだけど、でも……頑張って一人で作るんだもんっ!」 爆手・クラシャ(恋椿・b09664)と、そして姫咲・ルナ(桃色月夜に生まれた仔猫・b07611)の言葉に、くすくすと笑う貴船・沙耶香(高校生霊媒師・b03179)。 「そうですね……慌てず、ゆっくりと……この段階が、一番大事ですから、ね」 と、沙耶香の言葉に、クラシャと雫は頷くのであった。 「……正直、良く分からないな。唯の友達にあげる友好の印なのか……それとも、異性としての愛情の表れなのか……。好きには違いは無いけれど……こんな気持ちはバレンタインのせいなのかな……?」 ぽつり、とチョコレートを冷やしながら、ルファーレイン・クリストス(白燐の癒し手・b07565)が小さく呟く。 学園生活……だからこそ、恋愛感情が生まれるのかも知れない。でも……まだちゃんと理解出来てないのか……その思いは少し揺れていた。 「好きな気持ち……ですか。私が思うには、バレンタインは……一つのきっかけだと思うんです。そう……何かに背中を押して貰わないとダメな時ってありますよね? 今が、そうなのかな……って、思ったりするんです……」 顔を赤くする穂乃村・翠(高校生符術士・b01094)。 「そう……かな。きっかけか……」 既に夕焼けに染まり初めている空を見上げながら、ルファーレインがぽつり呟く。 「きっかけかー。大好きな人にプレゼントを渡す日だし、精一杯頑張って、美味しいチョコレートを作るんだ♪ クラシャお姉様も、初谷お姉様も同じ気持ちだよね?」 ルナが、とても嬉しそうに呟くと共に、初谷・嘉(一介のゾンビハンター・b05407)と、クラシャに尋ねる。 「……ま、まぁ、そうね。念に一度の機会をフイにするのも……なぁ……ってな」 「私は……日頃の感謝を込めてですね。学園生活を共にするパートナーとして、お返しをしないというのはあまりにふがいないという物ですから」 ルナの言葉に、二人とも……素直に言葉を返す。 ……ルナの純粋な言葉はどこか安息感を覚えさせてくれるような、そんな気がした。 そして……チョコレート作りも次第に終盤に移る。 次々とチョコレートを完成させていく……。 ちょっと形が崩れていたり、試行錯誤の跡が残っていたりするのはあるけれど、色々な気持ちを込めたチョコレート……一つ、一つには、真摯な思いが詰まっていた。 そんな中で……一番早く、一番上手にチョコレートを作っていたのは伊吹・晃(中学生フリッカースペード・b18214)。 そしてその手際の良さを……関心しながら見詰めているのは兄の伊吹・彰(中学生フリッカースペード・b16443)。 彰の方は……中々作るのに苦労しているようである。 「本当に晃は上手だな。どこで料理を覚えたんだ?」 「ん……まぁ、色々と趣味で作ってたから。兄さん……そんな作り方じゃ、チョコがチョコじゃなくなっちゃうよ?」 少しおぼつかないその手元に、ふぅ、とため息を吐く晃。そして。 「全く、心配だなぁ……仕方ない、めんどくさいけど、教えてあげるよ」 どこか手際の悪い彰に、手を取って教え始める晃。 そんな二人は仲の良い兄弟……誰の目から見ても、それは明らかだった。 ●愛の込めたチョコレート 「これで良しっ……と。後はチョコレートが冷えて固まるまで待つだけだね? それじゃ、この時間を使ってメッセージカードでも書いてみようか♪」 全員のチョコレートを冷蔵庫に入れた後、発起人の少女がそう告げる。 バレンタインデーのメッセージカード……懐に持った恋人の写真を見ながら、その思いを記していく。 「……バレンタインにチョコを贈るのは、祖父以外では初めてですね……まぁ、本命チョコには叶わないかもしれませんが……自分の満足の行く物は出来ましたね」 そう嘉は呟きながら、メッセージカードを記す。 『貴女の好意に、私を必要としてくれる気持ちに感謝を』 ただ一文、シンプルな言葉を記す嘉。 同様に、朋也も、翠も、龍麻も……そして雫も、純粋に思いの丈をメッセージカードに記していく。 『日々の感謝と愛情を込めて、朋也より』 『わがままなわたしですけれど、隣にいさせていただいても良いですか? 翠』 『いつもありがとう、大好きだよ 龍麻』 『愛するメルへ いつもいつも傍に居てくれてありがとう。 時々、うちなんかが恋人でええんかなって思うけど……うちはメルが大好きや! これからもうちの恋人でおってな? このチョコは、感謝と愛を込めての贈り物や♪』 そんなメッセージカードが、一人、一人できあがっていく中。 ルファーレインは、その文面を悩んでいた。 頭に『砥束・英十さまへ』と書いた後……その筆が止る。 彼との今までの学園生活……そのきっかけを思い出しながら。 「……今更丁寧ぶっても、仕方がないか……」 そう呟くと共に、そのカードを握りしめて。 『ヒデトへ、 今だから言える事なんだけど、最初に逢った時かな? 君から初めて手を握られた時は、 「なんで、こんなに簡単に受け入れてしまったのか……」 不思議でならなかったよ。でも、少なくとも今なら判る……。 私はキミに会って、少しだけ変った。 そして、感謝すべきキミに……コレを贈ります』 「……これで、大丈夫……かな……」 ルファーレインは、俯きながら……そう頷いた。 そんなメッセージカードを書いている中、沙耶香はルナに話しかけていた。 「……そういえば、猫さんって、チョコ食べたらいけないんでしたっけ……?」 そんな問いかけに、ちょっと小首を傾げるルナ。 「んー? ……別に大丈夫だと思うけど、どうしたの?」 「いえ……私の好きなあの方、魔弾術士の方なので……」 ルナも魔弾術士。そして……彼女が好きな相手にどこか通じる所があったり。 (「大好きというか……可愛いというか、見守っていたくなるような……そんな、感じですね……」) 「……沙耶香お姉様、どうしたのー?」 目を逢わせてくるルナに、手を振る沙耶香。 「あ、何でもありませんわ。そう……ルナ様は、その方を好きになったのはどうしてなのかしら?」 にこっと微笑む沙耶香に、ルナは目をきらきらさせながら。 「うん……まーくんは、年齢や身長の事……私が気にしている事を理解してくれれて、私は私のままでいいよって言ってくれたの。だから私、一生懸命頑張って作ったこのチョコレートで、まーくんに喜んで欲しいの♪」 嬉しそうに告げるルナ……そのメッセージカードには。 『初めてが一杯詰まったプレゼント、受け取って欲しいな♪』 踊るような字で書かれているその文字に、見ている沙耶香も幸せな気分になる。 そして沙耶香はメッセージカードに。 『元気いっぱいのボニーさんが大好きです。これからも、宜しくお願いします』 と、記したのであった。 そうして……メッセージカードも書き終わった所で、発起人の少女が。 「それじゃあ……最後に告白の練習でもしようしよう♪」 どきどきわくわく……爛々とした瞳の少女がいた。 どうやら他人の告白を見て、自分の告白の参考にしたい……などと思っていたらしい。 ……まぁ、それはさておき。 きょろきょろと周りを見渡す千早。そして……ある意味わかりやすく。 「しまったー、肝心の告白する相手が居ないー」 ……棒読みでそう叫ぶ千早。 そして……ちらりと登真の方を見て……。 「と、とゆー訳で今年は、ナナを相手に練習のみって事でー。た、只の練習ですよ?」 ぎこちなく、にっこりと微笑む千早。対しての登真は……微妙に浮かない顔をしながら。 「……何だかんだで幼馴染ですし、引き続き付き合ってやるとしましょうか」 「よ、よし、決まりっ。そ、それじゃあ……行くわよっ?」 チョコ……に見立てた箱を持って、登真の前に立つ千早。 「……えー、あの、貴女がす、す……」 「す?」 微妙に、飄々と帰す登真。 「す、す……スキヤキっ!」 顔を真っ赤にさせてチョコを差し出す千早。 「……チョコじゃ無くて、か?」 「……だー、違う違うーっ、こんなのじゃないっ!」 わたわた、と慌てる千早。 そんな彼女に、登真は。 「……駄目でしょうかね、これは……」 ぽつり、自分だけに聞こえるよう呟くのであった。
……そんな二人の一方、クラシャは龍麻を相手に告白の練習をしていた。 彼の写真を見詰め、そして……目の前の龍麻を見詰める。 「くぅ……恥ずかしい……」 ちょっと顔を逸らすクラシャ。 「顔を逸らしたらダメですよ。大丈夫、本人じゃありませんから」 にっこり微笑む龍麻。ある意味それが逆効果なのだが……それはさておき。 「……こ、これ……チョコレート……食べて、くれ……」 顔を真っ赤にしながら箱を渡すクラシャ。 箱の上にのせられたメッセージカードには。 『まだ無理するなよ、体を大事に……。……愛を、込めて』 今文章に出来る、精一杯の気持ちを、クラシャはメッセージカードに記していた。 ……最後に告白の練習をするのは、晃と彰。 彰が晃を恋人に見立てて、チョコレートを渡そうとするが……兄は直ぐにあがり初めて、顔を真っ赤にしてしまう。 告白を待つ方の晃は……そんな兄の姿に。 「仕方ないなぁ……兄さんは。……こうやるんだよ?」 そう告げると……潤んだ瞳で、色っぽく兄を見つめる。そして。 「ずっとずっと……貴女の事だけを見ていました……」 ……と告げ、兄の胸に飛び込んでいく。 「このチョコレートごと、ボクを受け取って……?」 ……ある意味、その言葉は止めを刺す言葉だったかもしれない。 彰は……今までにない、一番甘い言葉を……棒読みで答える。 「……いますぐ、お前を食べちゃいたいよ……?」 抱きしめようとする彰に、晃はひらりとその手を逃れ……携帯から写真を撮る。 「……兄さんの変なポーズ、ばっちりおさめちゃったね。ふふ……でも、こうすれば恋人はいちころさ」 「……」 顔を更に赤くする彰。そんな光景を……発起人の少女は見詰めながら。 「ふふふ……みんな顔赤くしてる♪ さーてと……そろそろチョコもできあがったみたい……だね。それじゃみんな。明日は頑張りましょうねっ♪」 そんな少女の微笑みと共に、バレンタインデー前日の夕陽は落ちていくのであった。
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参加者:13人
作成日:2007/02/13
得票数:楽しい12
笑える2
ハートフル1
ロマンティック1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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