暗夜熱情オンステージ!


<オープニング>


 7月19日、20日の両日に行われた銀誓館学園の学園祭2009は、無事に終了の時を迎えた。
 今年の学園祭も、大きな盛り上がりを見せ、2日間の学園祭はあっという間に過ぎ去っていった。
 毎年大盛況の水着コンテストは、総参加者が2400人を超えたため、候補者の水着を見て回るだけで日が暮れる程であったし、多数の能力者同士が最後の一人になるまで戦ったバトルロワイアルもまた、熱戦に次ぐ熱戦が繰り広げられたのだ。
 勿論、結社の仲間達と共に準備した結社企画も、例年以上に趣向をこらしたものが多数あり、盛況のうちに幕を下ろしている。

 そして今、一般客は全て家路につき、校舎の明かりも消え、下校を促すアナウンスが流れている。
 だが、まだまだ学園祭は終わらない。
 そう、学園祭の最後を飾るイベント、打ち上げパーティーは、これから始まるのだから。

 さぁ、学園祭終了後のお楽しみ、結社ごとに行なわれる打ち上げパーティーへ、仲間と共に出かけましょう!

●打ち上げ会場、特設ステージ跡地
 グラウンドのあちこちには、結社企画で使われた特設ステージが残されています。
 舞台セットの取り壊しは、学校が休みとなる明日、22日に業者さんによって行われます。だから、今夜はまだ、こうして結社企画の打ち上げに利用する事が出来るのです。
 今、このステージは、打ち上げをする学生達の独壇場。次々と、宴会芸やパフォーマンスが披露されています。
 来賓のお客さんはいないけれど、それは大きな問題ではありません。
 結社の仲間達と一緒に、ステージで盛り上がりましょう!


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<リプレイ>

●さあやって参りました、打ち上げの時間でございます
 校庭に残された特設ステージ。文化祭は終われども、解体まではあと一日。となれば、この舞台付近に集まった面々の目的は一つ。
「みんな、ノッてるー!?」
 風姫の声が響き渡る。おーっ、と聴衆たちの声。マイクを掴んだレニーが舞台の上に躍り出る。Combat Band Ascalonのメンバーが奏でるのは主にロックミュージック。風姫がキーボードに指を滑らせ、レニーが歌うオリジナル曲を盛り立てる。
 出演順を待つ者も観客席で聴衆に徹する者も、いつしかその曲に引き込まれていく。その盛り上がりを活かすように、奏でられる曲は変わっていく。感謝を、希望を、歌い上げていく。

 興奮覚めやらぬ中、代わりに舞台へ上がるのはBastard Swordの面々。
「お前達の協力があったからこそ、このショーは開演できる! 皆、ありがとう!」
 紳士郎――もとい、鼓動覚醒ジャスティビートが爽やかに叫ぶ。正義のヒーロー・ジャスティビートは、銀誓館を乗っ取りに来た悪の組織たちと日夜戦っているのだ!
「これ程の協力者を得られたのも……俺の人望と、撮影技術のお陰だな!」
 先を続けようとした紳士郎の言葉を、凛とした声が遮る。
「余裕ですね、ジャスティビート」
 狼面に槍(のつもりのただの棒)を持った人影はフィリーゼ――いや、舞台の上でその名を呼ぶのは無粋か。
「私はフローズンノワール! 貴方を打ち倒す者です、覚悟を!」
「出たな、悪のネオクレイドールめ! いけー、ジャスティビート!」
 目を輝かせる鉄太。そう、いつだってヒーローの勇気の源は、無垢な子供の笑顔と決まっている!
 助太刀するヒーロー・シルバーJの出現で、さらに場は盛り上がる。フローズンノワールを追い込んだと見えたその時、高笑いと共に現れたのは突撃槍を手にした鎧。槍がちょっぴり重そうに見える。
「あ、あれは白夜のピルム・ムルス!」
「伊達や酔狂のシルフィードではない!本場の突撃槍の戦いを見せてやろう!!」
 高らかに叫ぶのは久恒演じるピルム・ムルス。敵の敵は味方、敵の味方は敵。シルバーJのライバルたる彼は突撃槍の猛攻に打って出る。
「あぶなーい!」
 鉄太の叫び。あわや、と思った瞬間、突然舞台袖からスモークが吹き出す!
「見つけたぞ、ジャスティビート! 嘗ての因縁、此処で決着を付けてくれる!」
 煙の中から現れるは、漆黒の身体に赤き刃を携えた、悪魔の如き悪の戦士――仄暗影侯・ヴェクサシオン。
「ジャスティビートは私の獲物、渡しはしません!」
「ええい、我が邪魔をするでない!」
 陽炎ことヴェクサシオンのコスチュームは圧倒的な完成度。とは言え、
「がんばれシルバーJ!」
「!」
 シルバーJの華麗な活躍により、出番はあっさり終了。所詮悪は滅びる運命なのだ。
 これで再び二対二、固唾を呑んで見守る観客達。そこに再び――
「全てのヒーローは俺の獲物だ…邪魔をするというのなら、貴様等も破壊する!」
「くっクっクッくッ…」
 ――黒煙が吹き出すと共に黒ローブの怪しい人影が乱入。第四勢力と第五勢力が現れたのだ!
「この場ハ我らEBC教団ガ包囲シマしタ。さァ……スポットライトは私ガ頂キます!」
 高らかに笑うベルハーライト。
「タイミングが被っ……いや」
 悪の怪人は引け際をも承知している。ヒーローに必殺技を一発、そこで戒一郎は動く。
「邪気力が高まり過ぎたか……? これ以上は限界か、撤退する!」
 華麗に退場した戒一郎に代わり、雄飛が華麗に参上!
「ゼノカマキリ、この裏切り者め!」
 叫ぶのはフローズンノワール。
「今の俺はもう怪人じゃない、戦士ビースタッガーだ! 行くぞストライク・B!」
 雄飛の必殺技にジャスティビートとシルバーJの力が加わり、いざ必殺の三連攻撃!
「正義のジャスティビートたちは、ちょーカッケーヒーローだ!」
 かくして舞台には平和が戻った。戦えジャスティビート、真に悪を滅ぼすその日まで!

●すべてはプリンのために
 星めぐりのうたの結社企画は演劇喫茶。そんなわけで、後夜祭もカーテンコール調だ。何が起こるのかと待つ龍麻たち観客の前で、いよいよ幕が開く。
 かつん、と杖をついて現れるのはアンコウじぃやこと優。同時に、焦った顔の浦島太郎こと奏夜が下手から走り出る。
「ようやく逃げ出せた……竜宮城は怖い所……ハッ、そこに見えるはアンコウの!」
 アンコウじぃやは人の良さそうな笑みを浮かべたまま、華麗に舞台を横切――
「こら無視すんなー!」
 ――れなかった。
「これは浦島殿。ワシの胃薬と提灯、役に立ちましたかの?」
「役に立ったよ! 立ちすぎですよありがとうよ!」
「泣く程とは、譲った甲斐があったのう。ほっほっほ」
 飄々と去っていくアンコウじぃや。下手から現れた夫婦に道を尋ね、袖へと消えていく。反対側へ去っていく浦島太郎の、背中がちょっと煤けている気がする。
「ダーリン♪」
 ここで主役は夫婦に交代。劇の衣装はそのままに、踊りながら舞台を巡る二人。奥様の名前は椎、旦那様の名前は雪貴。ごく普通の二人はごく普通に結婚しました。でもただ一つ――奥様は魔法少女だったのです!
「奥さま、大好きですよ♪」
 そんな二人の元に大変な危機が迫っていることを、二人はまだ知らなかったのです……。
「クケケ〜!」
「あ、あれは!」
 突然上手から現れたのは、恐ろしいサメ! ……の姿をした翠。
「な、なんで劇終わったのにこんな格好を……」
 ティリナの衣装はうっかり乙姫様のまま。とはいえ、出てしまったものは仕方ない。
「こら! いい加減にしなさい!」
「クケ〜!」
 乙姫衣装の裾をたくし上げ、果敢にツッコミを入れるティリナ。
「って、あれ?」
 突然、ツッコまれた翠の背後に、謎のワゴンが迫る! 逃げ去る奥様とダーリン、サメではなくワゴンから逃げるティリナ。
「さー楽しいパレードのはじまりだよっ! ……ってまだブレーキ直ってないよこのワゴンっ! 止まらないーっ!」
「皆さま、今日はどうもありが……へきゅ!」
 なんと恐ろしい交通事故でしょう。サメに激突したワゴンの上でぐったりしているのは影だ。そこへ横から割り込む竜一、もとい新生ギャラクシー☆ナイト!
「チーフ! 貴方の野望、このギャラ☆ナイが打ち砕いてみせる!」
「やれるものなら……あ、あれ?」
 胸を張る影だったが、ワゴンが再び動き出す。
「ああ! 何するんだよーっ!」
「まだ何もしてな……い、いや! これこそギャラクシー☆ぱんちの威力だ! そういうことにしよう!」
 いわゆる自損事故というやつである。それはさておき、これで残るはあと一話。
「幸せの黒焦げプ……あぅ!」
 りぃん演じる月のうさぎは、幸せの黒こげプリンを運ぶ前に暴走ワゴンの餌食に。合掌。
 影のワゴンが走っていった先で、更なる悲鳴が上がる。
「轢かれてる人もいるみたいだけど、ほどほどにね」
 沙宵はしっかり救急箱を持参している。そんなカオスの中でふとシキの視界に入ったのは、舞台袖に立つセドリックの背中。
「よし! みんな、この浮き輪につかまるんだー!!」
 襲いかかるシキ、しかしその謎のかけ声があったが故にセドリックの回避も早い。
「あれ?」
 勢い余って舞台へ転げ出るシキ。僕らお客さんなんだから、と言いかけたセドリックは、ばったり倒れたままのシキをちょんちょんとつつく。そんな二人をしばらく見つめていたジュリエットことジブリールは、ふわりと舞台の上に現れて手を伸ばす。
「二人とも、いつまで舞台の上にいるの?」
「ネージュ……あ、プリンの山が君を呼んでるよ」
 セドリックの説得がよく効いたようで、がばりと起き上がるシキ。二人の手を取って、ジブリールはプリンパーティの会場へ向かう。
「星めぐりのうたの団員も、そうでない者達も、我が鬼の宴へようこそ! 安心しろ実は俺も団員じゃない! では、プリンパーティーの始まりだ〜!」
 皆を城に招きプリンパーティを開く鬼、を演じる照明の声に、倒れていたりぃんが起き上がる。
「ジュリエットさん、幸せのプ――」
「ジュリエット!」
 月のうさぎを押しのけ、謎の男、もといロミオが差し出すのはプリンパフェ。
「どうして、みんな幸せのプリンがなくても幸せオーラ出しまくりなの?」
 そうか! とりぃんは立ち上がる。
「幸せとは、自分の手で掴むものなのね!」
 一方のプリンパーティ会場では、照明や夕維をはじめとするメンバーが着々と準備を進めている。
「鬼さんから頂いたレシピ本と心意気、それらを胸にいざプリン道を進みます」
 語る間にも泡立て器を握る手は止めない。夕維の笑顔と手つきのコラボレーションはまさにプリン道のそれ。
「ワゴンが止まらないー! プリン食べたいのにーっ!! あたしにもぷりんーっ!」
 影の乗ったワゴンがどこかへ走り去っていく。
「はい、あ〜ん♪」
 椎と雪貴の周囲には、何だかプリンより甘いオーラが溢れている。
「ぷりんぷりん〜♪」
 ティリナは竜一の抹茶プリンを手にしてご機嫌だ。
 ジブリールのプリンには花火が飾られ、夕維のプリンはタマゴ形プリンに顔を描いた『不思議の国の王様プリン』。結社や劇の雰囲気ををイメージしたプリンに混じって、シキはなにやらプリンタワーをこしらえている。
「二日間お疲れ様ー! 楽しかったわ♪」
 暑い夜にプリンは美味しい。スプーンと皿を配りながら、沙宵は皆に声をかけて回る。
「ぷーりーんっ♪」
 プリンに飛びついていたアレンは、翠に「お誘いありがとうなのですよー♪」と声をかける。それから、プリンを抱えたまま奏夜の元へ。
「おつかれさまっ」
「アレン。劇どーだった?」
「楽しかったー♪」
 頬にプリンをくっつけながら、アレンは笑う。
「お前達は我が息子のロミ夫とロミ緒ではないか!」
 照明の声。もう、一体誰がどんな設定になっているのやら。
 そうこうするうちにも、学園祭の終わりは刻一刻と近づきつつある。華やかな終幕の舞台は、華やかだからこそ終わりが来るのを寂しく感じる。
「もう終わりか。もっとやりたい事あったよなぁ……」
 ロンドの呟き。終幕に投げ込まれた一輪の青薔薇は、舞台の上で咲き誇っている。
「終わりじゃない。フィナーレは来年へのオープニングセレモニーだよ」
「あぁ、そっか」
 崇之に笑いかける。また来年。来年の今頃には、きっとまた後夜祭だ。そう思えば、待つのも楽しいもの。
 想うことも、言いたいことも、言葉にできないほどに募っているから……だから、今は一言だけ。
「ありがとう」
 プリンで、乾杯。

●そしてまた、新しい日々が始まる
 舞台の周囲に集うのは、これからの出演者ばかりではない。無事に結社企画の上演を終えた銀星社の面々は、のんびりと寿司をつまんでいる。
「みんな、楽しかった? 結構スケジュール的に無理させちゃったりもしたけど」
 見事に審査員特別賞を受賞した『贋作・森羅蒼鷺亭殺人事件』。結社に集まって、練習をして、舞台に立って、今に至るまで。未亜の問いに、優は笑顔で頷く。
「本番前はどうなるか心配だったけど、無事、うまくいってよかったですよねー」
「観客としても、楽しませて貰った」
 シェルリードが口を開く。深雪が迷惑をかけていなかったか、と小声で優に訊ねれば、彼女は笑いながらシェルリードと隣の深雪へと視線を移す。
「シェル?」
「え? いや俺は別に何も、ただその……」
 深雪が軽くシェルリードを睨む。夫婦漫才、という言葉を思い浮かべながら、楽しそうに二人を見つめる優。
「でもまさか、初めて演劇に携わって、しかもしれが賞を戴くことになるなんて……」
 機会があればまた、と深雪が笑う。
 ふと、皆の会話を聞いていたさくらの目から涙が零れた。
「小野寺さん?」
 心配そうな表情の未亜に、心配いらないと首を振ってみせる。
 まるで夢のようだ。さっきまで自分が舞台の上にいたことが。役を演じきれたことが。皆と稽古をしたことが。こうして、友達に囲まれていることが。
 能力者として戦う身なれど、お芝居も続けよう、と。そう思えるのも、手を引いてくれた未亜のおかげ。
「やっぱり結社、続けましょうよ」
 最初は、学園祭が終わったら解散するつもりだったけれど……優の言葉に、未亜はしばらく考えて。
「もし、みんなが楽しんでくれてたのなら……もうちょっと、続けてみようかな」
 仲間達の表情を見れば、迷いは晴れていく。

 最後に舞台を飾るのは、内田オフィス同好会の面々。手際よく機材を運び込む。
「毎年やってれば流石に覚えるものだな……感慨深い」
 元々は音楽など素人だったのに、と明がつぶやく。大きな機材も複数人で運べば怖くない。後夜祭だけでもお手伝いできて嬉しいです、とブリギッタはほっと息を吐く。
「今年の学園祭もこれが最後……」
 有終の美、とは言うけれど、やはり一抹の寂しさは拭えない。
「良かったら皆さん、ご一緒に歌って下さいね♪」
 えり子とイレーナに渡された歌詞カードにあるのは、龍麻もよく知る有名なあの歌。
「あ、そろそろ出番なの! 落ち着いて、落ち着いて……」
「ルナちゃん、大丈夫だよ、大丈夫だよ」
 ここは年上のイレーナが、そっとなだめて、緊張をほぐす。
「よしっ、がんばっていこー!」
「うん、頑張っていこうね!」
 ひとつ深呼吸して、ルナとイレーナも舞台の上へ。
 明が手にするのはサックスとハーモニカ。その隣に立つ千早のチェロは、一回り小さい分数サイズ。以前はぴったりの大きさだったはずのそれが、最近なんだか持ちにくくなってきたのは、千早の身体が分数チェロに比べて成長しすぎたせいだろうか。
 演奏の直前、ぴりっとした緊張とわくわくに満たされた、この瞬間が千早は好きだ。ブリギッタは観客席に視線を移す。肌へと祭の余韻、覚めやらぬ熱気、そんなものたちが触れていく。
 三年の月日をその音の奥に響かせながら、明のサックスが豊かな音色を奏ではじめる。
 歌詞のとおり、上を向いて。そこに広がる空、輝く星々に、ルナは目を見開く。イレーナも星に見入っていた。
 月の輝く夜もいいけれど、星の夜も美しい。
「皆で笑い皆で歌う夜に……♪」
 曲はいつの間にか弾き語りへ。えり子の声が伸びやかに会場を包んでいく。
 終わりを惜しみながら。客席にも舞台にも、たくさんの笑顔が咲いていることを喜びながら。仲間と共に歌えることに感謝しながら。あふれる気持ちを歌に乗せて、歌う。
 歌に、音色に、篭められた想いはきっと、大切な思い出へと変わっていくのだろう。


マスター:田島はるか 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:42人
作成日:2009/08/04
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