黄金の記憶〜スニークミッション


<オープニング>


 切り出された石材が運ばれていく。
 それを見据えたのち、仮面のリリスは踵を返した。
 作業場から通路に戻ったところで、向こう側から背の低いリリスが歩み寄ってくる。
 当然のように仮面は装着済みだ。
『何か異常はあった? エニス』
『ううん、まったく異常無かったですよ、パトラちゃん』
『そう、良かった。じゃあ、また後で会いましょう』
『うん、まったねー』
 返事をすると背の低いリリスは、作業場の方へと向かった。
 あのまま進んでピラミッド内を半周して戻ってくるのが、彼女の巡回コース。
『さあ、私も続けよう』
 気を引き締めるようにつぶやくと、残ったリリスは奥へと進んだ。
 彼女はこの辺りのエリアの巡回担当であり、二人が出会うのはあの通路の中でのみ。
 他のリリス達の巡回コースと交わることがないので、エニスだけが彼女と接触する形になっていた。

「みんな、聖杯戦争ご苦労様だった。そんなところに悪いが急な依頼だ」
 山田・大五郎(高校生運命予報士・bn0205)はそう言ってから本題に入った。
「戦争直前に入った情報で『仮面のリリスと古代エジプト風の衣装を着たリビングデッド達が、岐阜県の山中でピラミッド風の建築物を建造している』事が分かった」
 このままピラミッドが完成してしまえば、何が起こるか分からない。
 そこで、みんなにピラミッド建造を阻止する作戦を行ってもらうことになった。
「潜入捜査により、ピラミッドで働くリビングデッド達は、マアトの羽事件の時に倒したリビングデッド達である事が分かった」
 つまりは、このリビングデッド達は『たとえ倒してもピラミッドの力により蘇ってしまう』ということだ。
 この力がある限り、ピラミッド攻略はかなり難しい。
「そこで、みんなの出番だ。リビングデッド達に気づかれないようにピラミッドに潜入し、仮面のリリスを全て倒してきて欲しい」
 もちろん、ここに集まった者達だけでそれは不可能だ。
 だが、作戦に参加する者は他にもいる。
 別の運命予報士から同じような依頼を受けていることだろう。
「仮面のリリスを全て倒す事ができれば、ピラミッド攻略の道筋が見えてくるはずだ」
 つまるところ少数精鋭による、リリスの暗殺。
 それが、今回の依頼である。
「ピラミッドには、体に包帯をまきつけてリビングデッドのふりをすることで潜入することが可能なことが分かっている」
 それを利用して内部に潜入。のちにリリスを暗殺して脱出。
「難しい依頼となるが、これ以外に方法がない。みんなの力で何とか成功させて欲しい」
 大五郎が頭を下げると、集まった者達から同意の声が返った。
 それに感謝の言葉が返り、説明は更に続く。
「みんなに担当してもらうのは、パトラと、エニスというリリスだ」
 仮面や衣服は同じだが、背丈が違うので直ぐに区別がつくだろう。
 背の大きい方がパトラ。低い方がエニスだ。
「二人はピラミッド内を巡回していて、ある通路でのみコースが合わさる」
 大五郎は簡単な見取り図を広げ、それがここだと指し示した。
 近くには作業場があり、リビングデッド達が十体ぐらいいる。
 しかし、倒しても蘇ることを考えれば、足止めや、何らかの策略を仕掛けて出来るだけ障害にならないようにしたい。
「もちろん、二人のリリスをいかに早く倒すかも重要だ」
 能力は次のようなもの。
 パトラが炎を操り近接単体を炎の檻に閉じ込め、エニスが風を操り近接単体の回復と強化を行ってくる。
 二人とも戦闘を長期化するような能力を持っているだけにきちんと対策が必要だ。
「あと脱出だが、作戦が上手くいけば、ピラミッド各地で同時に事件が発生することになる。その混乱を利用すれば強行突破する事も可能だろう」
 逆に言えば、そのタイミングを逃して取り残されると脱出は難しくなる。
 なので、この機を逃すことだけは絶対に避けるべきだ。
「というわけで、今回はかなり特殊だ。しかし、やらねばならない。決して簡単な依頼ではないが、慎重かつ大胆に挑んで欲しい」
 最後に大五郎はピラミッドの簡単な見取り図を渡し、能力者達を激励した。

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参加者
星・聖(青藍の黒き風・b13484)
片桐・綾乃(猫を被った直情系お嬢様・b19717)
深水・渉(鋏角衆・b32656)
羽鳥・氷女(誓の護帝・b45222)
黒稜・和樹(軽口マシンガン・b45430)
王仁丸・六説(夜行六咫烏・b58592)
赤銅・氷刄(吸血蝙蝠・b63539)
新深・有希(深淵の蒼・b65132)



<リプレイ>


 ピラミッドの周りでは、ミイラ達の手によって作業が続けられていた。
 しかも和気藹々と楽しそうに、だ。
 能力者達もミイラに姿を変えて、そんな中に混じり――、
(「こんなところに突然ピラミッドを建てたりして……、いったい何を考えてるんでしょうね。やっぱり人の目とかは気にしてないんでしょうか」)
 包帯でくるまれた顎に手を当てて、赤銅・氷刄(吸血蝙蝠・b63539)が考える。
 何せ、コンビニに行くようなミイラ達だ。気にしていない公算の方が高そうに思えた。
(「リリスを倒せば何か変わるのかー……思えば能力者関知できないし、何とかの羽を駆使できたんだから、何かありそうだよね」)
 深水・渉(鋏角衆・b32656)もミイラ達の中に紛れ込みながら考え中。
 実際にやってみないとは分からないが、これしか突破口が無いのが現状だ。
(「潜入……他にも潜っている仲間たちとの連携。これは絶対に成功させないとな」)
 加えて、星・聖(青藍の黒き風・b13484)が思い浮かべたように今回は他の仲間達とも連携している。自分達の失敗は作戦全体に影響しかねない。
(「土ぼこりで汚した甲斐もあってか、今のところ怪しまれてはいないようですね」)
 周りを見て、王仁丸・六説(夜行六咫烏・b58592)がとりあえず現状に安堵した。
 入り口まであと少し、このまま問題なく進めれば良いのだが――果たして上手く行くのか?
 渉の提案もあって、ピラミッドへ近づく前に作戦を確認して齟齬は埋めた。
 明らかに目立ちそうであった聖のモラや、片桐・綾乃(猫を被った直情系お嬢様・b19717)の長杖といったものはイグニッションカードの中だ。
(「このまま気づくなよ」)
 新深・有希(深淵の蒼・b65132)の意識が自ずと腹の辺りに向けられる。
 そこには事を起こすために用意した発炎筒が括りつけてあった。
「こー見ると、包帯ってエロイよな」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
 だが、黒稜・和樹(軽口マシンガン・b45430)は緊張する仲間達を尻目にミイラ達と談笑中。
 木を隠すなら森の中というが、良い迷彩になっているようだ。
(「……静を仮面のリリスに変装させられれば、もっと簡単だったんだけどな」)
 手の中にあるイグニッションカードを握り、自らのサキュバス・ドールのことを思い浮かべる。
(「まあ、無理なもんは仕方ねぇか。もうしばらく我慢してろよ」)
 そして気持ちを切り替えると、また談笑へと戻っていく。
(「ああやって、周りに溶け込めればな……」)
 羽鳥・氷女(誓の護帝・b45222)がそれを見ながら、目立たないように苦慮していた。
 女性の上に背が高い。おそらくこの面子の中ではミイラ(老人)に扮するのに最も不適切であろう。ゆえに極力喋ることなく、ここまで進んできた。
 そして、その苦労はいよいよ報われようとしている。


 中に入ると、まず人工的な明かりが能力者達を出迎えた。
 明かりの元はホームセンターで売られているような普通の照明器具だ。電源は大型のバッテリーから取られ、まるで逆に発掘作業中のように見える。
(「今更ながらに大変な任務を請け負いましたね。敵の暗殺と撤退をこなしつつ可能なら内情を探れれば良いのですが、そちらに関しては本体班が居るので暗殺をしっかり行いましょう」)
 六説が周りに目を配りながら、決意を新たにする。
 更によく見て行くと、作業場の様子が徐々に分かってきた。
「(ここで行われているのは石材の加工と設置のようですわね)」
 小声で、綾乃がつぶやく。
 今も運び込まれた石材のひとつがミイラ達の手によって壁の一部へと変わった。
「(そして、あれが問題の通路ですわね。あの通路に十体ものミイラが詰め掛けたら、突破は難しいです。ミイラを通路に入れない工夫が必要ですわ)」
 綾乃が、有希に視線を向けると小さくうなずきが返った。
 この二人が足止め班としてその役目を担う。先ほどの言葉にもあったとおり、能力者達の生還を左右する重要な役目だ。
「(加えて、リリスが一緒にならない場合が最高なのですが、様子見を続けてしまうと他チームとの連携や足止め班が危険に曝される可能性もありますね)」
 六説も問題点を指摘する。
 これは事前の相談で纏められなかった問題点。
 現場を見れば良い案も生まれるかと思ったが、やはりそう容易ではない。
「(ともかく、俺達――暗殺班は早く通路に行こうぜー)」
 時間だけが過ぎて行く現状に、氷女が仲間達を促す。
 その言葉に従って、暗殺班の七人は気づかれないように分かれて通路へと向かうが、
「おや、お前さんらはどこの担当じゃ?」
 運悪く、聖が呼び止められた。
「新入りだから勝手が分からないんでな……」
「おお、そうなのか。何なら案内してやろうか?」
 咄嗟の言い訳も、ミイラのアットホームな対応に逆の効果を生もうとしている。
「お前さんは西の作業場じゃのー」
 そこに、渉が割って入った。
 ここで邪魔されてはたまらないと、しきりに大丈夫だと言って取り繕う。
 ミイラはまだ何か言いたげだが、

 ――ゴロン、ゴロン。

 後ろから聞こえてきた大きな音に慌てて振り向いた。
 どうやら、石材が転げ落ちたようで、
「すいません、すいません」
 大きな声で、綾乃がしきりに謝っていた。
「すまない。不慣れなもので手元を誤ってしまった」
 有希も同様に謝って注目を集めている。
(「足止め班がうまくやってくれてる間に、と」)
 仲間に目配せして、和樹が通路の中に入り込んだ。
 他の仲間達も今のうちにと侵入していくが――渉はふと足を止めた。
(「あれ? あの細い通路。位置的に入り口の近くにあったのと繋がっているんじゃないのか?」)
 明かりも灯らず、人がひとり通れるぐらいの細いもの。
「(急げっ!)」
 だが、それも仲間の声で直ぐに頭の中から消えていく。
 むしろ未だ残る問題点の方が気になるところで、能力者達には言いようのない不安が蓄積していた。


 通路は話どおり三人が並んで戦えるだけの広さがあった。
 能力者達はそんな通路のわきに身を潜め、息を殺している。
 三分ほど経っただろうか、カツンと足音が聞こえてきた。鳴り止むことはなく、それは通路の奥から近づいてきている。
(「たぶん、あれがパトラか」)
 背丈から、和樹はそう判断した。
 まだ、もうひとりのリリスが姿を見せる様子は無い。どうやら、パトラのみのようだ。
「(話しかけてきます。油断したら一気に行きましょう)」
 小声で仲間達に伝え、氷刄が通路に姿を見せた。
 歩み寄ってきていたリリスはその姿に足取りを緩める。
「石材を運ぶのを手伝うように言われたんじゃが……、作業場はどこっじゃったかのう」
 氷刄が話しかけるも、しばし沈黙。
「……困った人ね。どこの作業場に向かう予定なのかしら?」
 いや、単に呆れていただけのようだ。
 ミイラの中身が能力者であることなど気づく様子も無く、無造作に歩み寄る。
「何やってるのか知らないけどな……嫌な予感しかしねーものは先にぶっ潰すに限る!」
 不意を突いて、氷女が襲いかかった。
 同時にタイミングを計っていた他の仲間達からも攻撃が飛ぶ。
 その中には不快に赤く点滅するものも混じっていて、
「悪いね、逃がしたくないんだ」
 渉の放ったオトリ弾がパトラの運命を決定づけた。

 通路からの物音に作業場にいるミイラ達が一斉に振り向いた。
 どうやら事が始まったらしい。
 足止め班の陽動工作はこれで大きくタイミングを逸した。いや、むしろ事を起こすタイミングがきちんと決まっていなかったのだから合わせようがなかったと言うべきである。
「火事じゃー! 水を汲んでくるのじゃー」
 慌てて、綾乃が発炎筒に火をつけて石材の陰に放り込む。
「火事だ! 火事だ!」
 有希もそれに便乗する形で大きな声を上げ、準備した発炎筒に着火していく。
「一体何じゃ、この煙は……?」
「火なんぞ、使った覚えがないのじゃが」
「それよりも通路の方で何か起こっとるぞ!」
 だが、タイミングが悪かっただけに効果は今ひとつ。
 かといって更に、しかも迅速に、妨害工作を仕掛けるとなれば、秘密裏に行うのは不可能。
(「……そうか、パトラは一度この作業場に来てから通路に行ってエニスに会うのだから、それを目安にすれば良かったのですわね」)
 運命予報士の言葉を思い出し、綾乃がある事に思い至った。
 けれど、もう過ぎたこと。
「止むを得んな。荒っぽくやるしかない」
「仕方がありませんわね」
 有希と、綾乃は視線を交わすと、次いで現れたのは蜘蛛の糸と魔法の茨であった。

「迅速に行くぞ!」
 聖の伸ばした影が、パトラを切り裂く。
 既に能力者達の攻勢の前に、パトラは青息吐息だ。
 そこに通路の奥から足音が聞こえてきた。
「パトラちゃん!」
 どうやら、もうひとりのターゲット――エニスのようだ。
「……敵襲だ!」
 単的な、パトラの返答。
「無能ですね、仮にもここの警備を任されている立場なら本物と偽者の区別ぐらいできるようににしておくべきなのでは?」
「くっ……」
 すかさず投げられた、氷刄の言葉に表情が歪む。
 合わせて繰り出された炎の魔弾よりも、言葉の方がよほど痛そうだ。

「もきゅ! もきゅ!」

 しかし、状況は絶えず変化している。
 聖のモーラットが警告を発した。
 作業場の方から、駆け寄ってくるミイラ達。
「勘づかれちまったか」
 思わず、和樹が舌打ちする。
「こうなれば、一気に倒す!」
 聖が間合いを詰めて闇を纏わせた長剣を一閃。
「渦子さん、突撃ー! なんなら、鋏角囓りで歯形つけてもいいよ」
 渉もこの機を逃すまいと真シャーマンズゴースト・シャドウに指示を送りながら攻撃を集め、
「これで終わりですよ」
 最後に、六説のスピードスケッチが決まるとパトラの姿は消えていく。
「ああっ、よくもパトラちゃんを!」
 代わる様にエニスが到着。
 そして、挟み込むように反対側からは四体のミイラ。
「こいつらの相手は最低限にとどめるぞ」
 ミイラ達へと向きあい、聖が告げる。
「ああ、そして手早くだな。こっちに四体ってことは向こうが苦戦してるぜ」
 氷女の脳裏に不安がよぎった。
 作業場の方からも既に戦闘音が聞こえている。
「何にせよ、倒すしかないってことだろ?」
 和樹が促すように問いかければ、仲間達が無言のままにうなずく。
「予定とは順番が逆になっちまったが、ここで倒させてもらうぜ!」
 その声と共に、サキュバス・ドールの静も動いた。

 大方の予想通り、足止め班は苦戦を強いられていた。
 ミイラ達を自分達の方へと引きつけるために、早い段階であからさまな敵対行動を取ったからだ。
「皆さんが通路を脱出するまで、何としてでも時間を稼ぎますわ」
 強気な口調で、綾乃が告げる。
 だが、使用するアビリティは徐々に回復用へと変わりつつあり、
「もう少し気づかれるのが遅ければ、他の手段も取りえたのだがな」
 ミイラの攻撃を払いながら、有希が毒づく。
 土蜘蛛の檻を放ったことによる封術が今は限りなく重い。
 仲間達が戻ってくるまで耐え切れるか、かなり危うい状態であった……。

 通路での戦いは複雑な様相を呈していた。
 能力者達の攻撃を一身に受けるエニスは回復に追われ、ミイラ達が能力者達を追い立てる。
「前衛が倒れたらすぐ変わってやれよー」
 和樹が静に指示を送り、同時に『レヴァンティーナtype‐G』が火を噴いた。
 こうなった以上、片時も攻勢を緩めるわけにはいかない。
「時間がないぞ、多少のダメージは我慢しろ!」
 氷女が檄を飛ばしながら、呪いの魔眼で攻め立てる。
「ああ、回復は私に任せて早く倒すんだ」
 サポートに来ている、シャロンも啖呵を切った。
「……どうやら、タイムリミットがあるみたいだね」
 能力者達の様子を見て、エニスがくすりと笑う。
「仇を取れないのは悔しいけど……思い通りになんてさせてあげないんだから」
「「なにっ?!」」
 エニスが下がった。
 しかも、自己回復を行いながらだ。
「まずいぜっ!」
 言葉を荒げ、六説がスピードスケッチで追撃。
 このまま射程外に逃げられれば――考えたくない事態に陥ってしまう。
「こうなったら……」
 リビングデッドを足止めしていた、聖が陣形を崩してエニスを追いかける。
 戦線を維持するよりも作戦の成功を選び、逃げる背に黒影剣を放つ。
 だが、止まらない。
「……このまま逃げのびて、あっ」
 エニスが痛みで速度を緩めたところに、オトリ弾が突き刺さった。
「……どうかな?」
 放った態勢のまま、渉がエニスを凝視する。
 他の仲間達も一瞬動きを止めて、事の成り行きを見守った。
 エニスが振り向く。
 その顔は怒りに震えていた。
 同時に、能力者達が攻撃を集め、
「人の命を弄ぶとどうなるか……身をもって知ると良いです」
 氷刄の放った炎の魔弾がその最後を飾ることになった。


「始まりましたわ!」
 エニスを倒すと同時に作業場の方から声が聞こえてきた。
 声の主は、綾乃だ。そして言葉の意味は直ぐに理解できた。
「急げ!」
 誰が声を発したのかも分からないほど、能力者達は慌ててきびすを返す。
「時間が無い。このまま押し切る」
 ダメージを覚悟で、氷刄がミイラ達の中に飛び込む。
 他の能力者達もそれに続き、ほとんど押し出すような形で作業場に戻った。

「……遅いぜ」

 言葉だけを残し、有希が崩れ落ちた。
 近くには、綾乃が既に倒れている。
 おそらく止めを刺されぬように彼も無理を重ねたのだろう。
「まずは救出を優先、後にみんなで脱出だよ」
 渉が飛斬帽を投げて先制を切った。
「一人で突っ走るな。連携重視だ」
 仲間達に呼びかけ、聖が敵陣を切り崩せば、
「信頼と実績の! 囮ゴースト!」
 和樹が静をそこに押しやった。
 もう形振り構っている状況ではない。それぞれが生き残るために最善を尽くしていく。
「二人は助け出しました」
 そして、いくばくの時間が過ぎたであろうか。
 六説が二人の無事を告げる――だが、時間をかけ過ぎたようだ。
 ミイラの増援が姿を見せた。
(「シャロンさんも、みんなも、無事に帰すよ。……年長なんだから体はんなきゃ」)
 負けるものかと、渉が前に出る。
 その時、何かが脳裏をよぎった。
 僅かに視線を右に向け、あの狭い通路を確認。
 敵の姿は無い。何より活路はもうそこにしか見出せなかった。
「みんな、あの通路に!」
 声を上げ、右手で指し示す。
 他の能力者達はすぐさま意図を理解して走り出した。
「回復だけは潤沢だかんなー。安心しろや」
「後詰は任せろ。多少のダメージなんて覚悟の上だ!」
 和樹と、氷女が最後尾につく。
 ダメージを受けるたびに黒燐蟲と白燐蟲が舞い。
 能力者達はただひたすらに走り続ける。

「――光だ!」

 そう、ただひたすらに。
 光が差す、その先へ。
 次第に光は増していく。そして心地よい風が能力者達を出迎えた――。


マスター:てぃーつー 紹介ページ
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いまいち
参加者:8人
作成日:2010/04/14
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冒険結果:成功!
重傷者:片桐・綾乃(猫を被った直情系お嬢様・b19717)  新深・有希(深淵の蒼・b65132) 
死亡者:なし
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