<リプレイ>
●わんこの戯れる高原で 『わんわん!』 『がうっ、がうっ!』 天高く上る太陽、そして雲ひとつ無い青空。 遠足を行うには、これほど絶好の遠足日和もないだろう。そんな快晴の空の下、戯れる3匹のわんこ達。 見た目は、普通のわんこ。どう見ても、普通のわんこ。 「……日本の犬って、こんな大き、な種があるの、ね」 たどたどしい日本語でラヴィニア・アッシュハート(ベイグランド・b58212)がそう言うほど、わんこ達は巨大だった。例えるなら、一番大きいわんこが象サイズで、残りはライオンサイズ。 日本どころか、世界中探したとしても、こんなにでっかいわんこはいないんだけどね! 「こんないい場所に生まれたから、きっと美味しいもの食べて大きくなりすぎたのね……」 あまりに巨大な姿を見ながら、姫咲・ルナ(ピンクの月夜は仔猫の想い出・b07611)は遠巻きにわんこ達を眺めている。 いや、相手は妖獣ですから。良い物を食べたとしても、こんなに巨大にはなりませんから。 それはともかく、ここに集まった彼等――すなわち能力者達の目的は、このでっかい3匹のわんこを倒す事だ。 「わーい、わんこです。いっぱいもふもふするのです」 「大きいのと小さいのと、心ゆくまでモフモフするぞー」 あれ、違った? 十六夜・魅月(金色子狐・b59529)と遊馬・静流(鬼哭の刀剣・b42562)は、倒す事よりも『一緒に遊ぶ事』を考えているらしい。 その巨体に突撃されたり、お手と指示してぺしんと叩かれたりもするだろうが、それでも遊びたいという気持ちの方が強いようである。 「遊ぶのは良いんだけど、あの巨体と遊ぶとなると……大変そうよね」 「あの巨体でタックルはごめんだな」 下手をするとお手の一撃でぺしゃんこになりそうなちびっ子、アトラクシア・アルフォンス(ちびっ子騎士・bn0260)の言葉に、笑いながら真咲・久遠(螺旋の月・b01439)がそう答えた。 いや、あの。遊ぶんじゃなくて、倒さないといけないんですけど……! 「はっ! いけません、例え可愛らしくとも妖獣は妖獣ですの」 目の前で戯れるわんこ達の、あまりの可愛さに目を奪われていた岩永・千陽子(銀鏡の舞巫女・b70321)が、はっと思い出したように言う。 そう、相手は妖獣なんです。倒さないといけないんです。 「妖獣でなければ、お友達になりたかったところですね……」 「倒さないといけないのが、残念ですね」 本当に残念そうにしている川澄・華凛(黒の剣閃・b53304)と天薙・風音(風を求める翼・b40038)だが、妖獣とはお友達になれない宿命なのだ。 ここはひとつ、涙を飲んで――! 「ワンコは可哀想かもだケド、いっぱい遊んであげた上できっちり倒しまショー♪」 結論をまとめた灰・エミ(幻惑道化師・b20182)の言葉に誰もが頷く。どうやら涙は飲んでも、やること……すなわち、一緒に遊ぶという事柄だけは外せないらしい。 そう決まれば、善は急げ。 『わん、わんっ!』 楽しそうに吠えているわんこ達へと、我先にと駆ける能力者達。 「ちょっと皆、早いわよ!?」 (「アトラさんとも仲良くなれれば、嬉しいですね」) 先を行く仲間達を必死に追うアトラクシアを眺めながら、リース・コンテュール(白狐に誘われた者・b45906)は楽しい思い出が作れたら、と考えていた。 戦闘、もとい遊ぶには邪魔だと、置いてきた荷物の中には皆で持ち寄ってきたお弁当が入っている。心行くまでわんこ達と戯れた後は、このお弁当を皆で食べる事になっていた。 気分はもはやピクニック。可愛いわんこと遊べるオマケ付、と言ったところか。
●スーパーわんこタイム 『きゅーん?』 突然の来訪者に、首をかしげながら様子をうかがうわんこ達。 「ふに、やっぱり可愛いですねっ」 「思ったより大きい……でもわんこ!」 体が大きくても、やはりわんこである事には違いない。首をかしげる仕草に、風音やエミの頬が緩んでいる。 「わんこが3匹……。なんとも、和んでしまいます」 巨大であることにさえ目をつぶれば、華凛の言う通り、本当に和める光景だと言えよう。そんな雰囲気の中、静流が勢い良く前に出ると。 「カモン、フルボッコ!! モフモフまみれになれる期待でいっぱいの私に、怖いものはない!」 両手を広げて『おいで』のサイン。身体を張って、わんこ達と戯れるつもりのようだ。本人はおっきいわんこだけに的を絞り、ちっこいわんこは仲間達に任せるつもりだったようだが――。 『わんっ!』 そんな思惑など、わんこ軍団には関係ない。ちっこいわんこが2匹同時に飛びついてきたかと思うと、太陽を背に飛ぶおっきいわんこの影が彼の視界に映った。 と思えば、落下してくる巨体。 「わんこさんに飛びつかれるとか羨まし……、じゃなくて大変ですの!」 慌てて祖霊降臨で、千陽子が彼の傷を癒していく。見れば、回復をした彼女の表情は、狙い通りにモフモフまみれになれたせいか、とても幸せそうだ。 わんこ特有の暖かい体温、そしてふかふかの毛並み。 ゴクリ――! 誰もが生唾を飲んだ。それほどまでに、ふかふかなのか! 幸せになれるのか! 「ルナ、いっきまーす!」 誘惑に耐えかねたのか、ダメージ覚悟でルナが勢い良く飛び込んでいく。あわよくば背中に乗ろうと考えていた彼女は、見事におっきいわんこの背中に乗り、もふもふもふ……。 このままわんこが動き出せば、一緒に風になれるかもしれない。 『もきゅー……』 「っと。イヴ、一人ぼっちにしてゴメンね」 その様子に、彼女が使役するモーラットピュアのイヴが寂しげに鳴けば、慌てて離れるルナ。どんなに可愛いわんこであっても、この2人の絆を砕くことはできないようだ。 そうこうしている内に、風音の投げた導眠符がおっきいわんこを眠らせて、ちっこいわんこにデモンストランダムをエミが叩き込んでいった。 「こっちもカワイイ! でも、おっきいわんこでもふもふしたいネ♪」 ちっこいわんこも確かに可愛い。だが、一気に3匹ともと戯れようとすれば、大打撃を受けるのは必至である。 「気持ちはわかるが、おっきいわんこ以外には……残念だがな」 自身も遊びたい衝動を抑えながら、久遠が森王の槍を放つと、魅月も幻楼火でそれに続いていく。 さらに華凛が暴走黒燐弾でちっこいわんこの1匹を倒せば、アトラクシアのクレセントファングに援護され、ラヴィニアのジェットウィンドがもう1匹をも永遠の眠りにつかせていた。 『zzz……』 一方、ちっこいわんこが倒されたことも知らず、おっきいわんこは眠り続けて目を覚ます気配はない。 「これ、ちょっとスリルだよな」 いつ目を覚ますかわからないわんこ相手に、そっと近づく久遠。目を覚ませば、また眠らせたりしないといけないが、近づいている以上攻撃を喰らう可能性が高い。 起きないように、起こさないようにと、ドキドキしながら近づく能力者達。 「わあ……ふわふわのもふもふです……」 「に、にくきゅうも、ぷにぷにしていいです?」 首の辺りに魅月が抱きつくと、柔らかな肉球をぷにぷにと突付くのは千陽子だ。そして背中にはラヴィニアとアトラクシアが乗り、ふかふかの感触を楽しんでいる。 さすがは巨大なわんこ、少女2人に乗られても、どうという事はないようだった。 「ん〜……ふわふわです、このまま眠ってしまいたくなりますね」 「この感触、さすがわんこです。……可愛い……」 さらにはリースがお腹の辺りに抱きついて眠そうに眼を擦ると、隣で華凛が感触を楽しんでいた。すると、お腹の下から静流が這い出て来る。 「飛びつかれてなんぼー、つぶされてなんぼー……。さあ、甘噛みのサービスはいつだ?」 「眠ってるヨ……?」 希望のサービスをしてくれるはずのわんこが眠りこけている事をエミに告げられ、『なんてこった』と言いながらも、皆と同じように抱きついていく静流。 目を覚ませば、きっと甘噛みしてくれるのだろうと期待しつつ、額の辺りを撫でていった。 『がう?』 ふと、ぱちりと目を覚ますわんこ。背中に乗っていたラヴィニアとアトラクシアの2人を気にする事無く立ち上がると、きょろきょろと辺りを見渡していく。 恐らく、一緒にいたちっこいわんこを探しているのだろう。だが、すでに2匹共が倒されてしまっている。 「わー」 背中にのったラヴィニアがその高さに喜んでいるも、遊ぶ時間の終わりは近づいていた。 『ぺろぺろ……。ぱくり』 甘噛みサービスを希望していた静流は、希望通りにべろべろ舐められた上で軽く噛まれたが……あれ? 何やら甘噛みどころかぺろりといかれそうな雰囲気である。 「可愛がりたい気持ちもわかりますが、油断しすぎてもダメですよ」 慌てて暴走黒燐弾を放ち華凛が引き剥がすと、それを皮切りに飛び交う攻撃。 「可愛いですけど、ごめんなさいっ」 「わんこさん、次は幸せに、なってくださいです」 倒すのがとても惜しい、そんな可愛いわんこに、心を鬼にして千陽子と風音が攻撃を仕掛けると、仲間達もそれに続き。 「どうか安らかに……おやすみなさい」 最後に放たれたリースの結晶輪が、おっきいわんこを永久の眠りにつかせていった――。
●高原ランチタイム 惜しみつつもわんこ達を撃破した能力者達。 次に待っているのは、待ちに待ったランチタイムである。 「アトラちゃんダイジョーブ? ケガは……」 「ないわよ、皆がいたからねっ!」 お弁当を広げながら尋ねるルナに、アトラクシアは元気いっぱいにそう答えた。わんこ達と戯れる中で、その巨大さゆえの強烈な一撃を喰らってしまう者もいたが、倒れた者は1人としていない。 それぞれが互いを援護する態勢をしっかりと取った上で遊んだ事が、功を奏したといえる。 「もふは偉大ってな。犬を飼ってみたくなったぜ」 戦いを振り返りながら、久遠もお弁当を広げていく。その中にはクラブハウスサンドや、砂糖の入った甘めの卵焼きがぎっしりと詰まっている。 向こうで広げている風音のお弁当の内容も、どうようにサンドウィッチであった。 「あ、サンドウィッチ美味しそう、私のお弁当ちょっとあげるから、交換とか……」 広げられたサンドウィッチにアトラクシアが目を向けた矢先、空から様子を眺めていたハンター、襲来。前にもあった光景が、思い切り彼女にフラッシュバックしていく。 そう、ハンターの名は、鳶。 「……ま、またなのっ!?」 あっと言う間の出来事だった。蓋を開けた直後のアトラクシアの弁当を、襲い掛かってきた鳶が荒らしていったのだ。 慌てて振り払いはしたものの、荒らされた弁当は地面に落ち、泥だらけ。 「……ずーん」 せっかくのお弁当が台無しになり、ずーんと落ち込むアトラクシア。だが、救いの手はそこかしこにあった。 「あの、よろしければ……」 「アトラさんの分、用意しておいてよかったです」 前もって多めに準備していたのだろう、華凛とリースがこぞってアトラクシアの分のお弁当を取り出した。さらには、久遠や風音にもおすそ分けされ、鳶に台無しにされたお弁当よりはるかに多い量が目の前に並んでいる状態。 「そこのちっこいの、弁当少し分けてやるから元気出せ」 「ち、ちびって言うなぁっ!?」 久遠にちっこいと言われてぷんすか怒る彼女を見れば、お弁当を喪失したショックはもう感じられない。 ――いただきます! その言葉と共に始まる、楽しいランチタイム。 「ふふ、楽しそうだネ♪」 木の上からその様子を眺めながら、エミはお茶をずずっと啜っていた。1人が好きなわけではないのだが、木の上が落ち着くらしい。 眼下に見えるのは楽しいランチタイムの様子だけではなく、その先に広がる景色までもが視界に映っている。 「ここから見る景色もまた、格別だヨ♪」 絶景を眺めるには最高の特等席であるようだ。彼女はそのまま、仲間達に呼ばれるまで景色に見入っていくのだった。 そんな彼女に見守られながら、お弁当はこの人数で食べ切れるのかすらわからない量が並べられている。 「張り切り過ぎて沢山作ってしまいましたので、遠慮なくどうぞですわ」 そう言いつつ広げられた千陽子のお弁当の中には、たくさんのおにぎりやおかずの数々。 「えっと、いただくです」 「……私も、頂く、ね」 お弁当を作れなかった魅月や、お菓子を用意してきたラヴィニアも混じり、持ち寄ったお弁当を全員で食べていく。 ふと気付けば、何時の間にかエミも誘われたらしく、ランチタイムにしっかりと参加していたとか。 ルナや風音が用意していたコンソメスープも振舞われ、ピクニックの昼食としては、ありえないほど豪華な食事である。 「んん、おい、しー」 「あ、それ美味しそう! 私ももらっていいかな?」 一心不乱にラヴィニアがお弁当にありつけば、ルナが自身の作ったチーズハンバーグと千陽子の作ってきたから揚げを交換していく。 そして、その向こうではリースがなにやらアトラクシアに迫っていた。 「アトラさん、あーんしてください?」 「……あーん」 恥ずかしそうにしながらも、リースに言われるがまま、卵焼きを食べさせてもらうアトラクシア。まんざらではない様子だが、その姿にリースはふと思う。 (「こんなところにも、わんこが……」) どうやらリースにとっては、アトラクシアさえもわんこに見えてしまうらしい。狼変身が出来ることを考えれば、あながち間違いでもないのだが。 そうこうしている内に、どんどん平らげられていくお弁当。 「ふに、良い眺めなのですー♪」 一息ついた風音が、景色を眺めながらそう言う頃には、お弁当箱は全て空になっていた。今はラヴィニアの持ってきていたお菓子が、広げられている。 (「あれがなくなるなんて、な……」) 凄まじい量が広げられていたはずが、それ以上にお菓子を食べている現状を見て、久遠はやれやれとため息をつきながらも、景色に見入っていく。 「……良い思い出に、なりました」 華凛が静かにそう言うと。 「わんこ可愛かったです。私もわんこ飼いたいです」 先ほどの久遠と同じようなことを、魅月も言った。やはり、ここにいるメンバーはわんこ好きばかりのようである。 「それにしても……。鳶にお弁当持ってかれるってスゴイよネ」 「もうそれは忘れさせてよっ!?」 悪夢を蘇らせるようなエミの発言にアトラクシアが唸るが、その様子に全員の顔に笑みが零れていく。 思い返せば、わんこと戯れたり、鳶にお弁当を取られたりと、色々なことがあった。 だが、終わってみれば全てが良い想い出として残っている。今日という日のことは、きっと誰もが忘れないだろう。 戦いと勉強に明け暮れる日々において、こんな1日を迎えられる事こそが、明日への活力に繋がるのだから――。
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参加者:10人
作成日:2010/04/05
得票数:楽しい30
ハートフル1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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