あなたにはキメ台詞が足りないわ!!


<オープニング>


 進路に迷う大学三年生、重里くんは今日も就職活動の帰り道……暗い顔をしている。
「自分のアピールポイントを作れ! とか言われてもなぁ……」
 どうやら就職指導の担当者に、なにやら強いことを言われたらしかった。
「自己紹介で面接官のハートをつかむのだ! なんて、それができりゃ苦労しないって……」
 重里くんは平均的な学生だ。大学も、たまたま受かった学校に行っているにすぎない。
 特に何が得意というわけでもないし、夢中になれるものがあったわけでもない。
 好きなのは漫画やゲームくらいだが、そのクリエイターを目指すというほどでもないし。
 そもそも、自分が何をしたいのかもわからないのだ。それを考え始めると、ひどく、悩む。
 というわけで今日も考え考え、彼は自宅までの道を歩んでいる。
「あれ?」
 早く帰ると就職活動の状況について母親からうるさく訊かれるので、今日は知らない都市をふらふら、時間つぶし目的で歩いていた重里くんは、いつの間にか暗い路地裏に迷いこんでしまっていた。
「『自己アッピール道場』だって? 『見学自由。お入りください』……ねぇ」
 くすんだ黄色い看板を見上げて、古ぼけた建物に入ってみる。
 普段の彼なら、きっとこんな怪しい場所には立ち入らなかったはずだ。
 けれど最近の彼は自信をなくしていた。こんな看板に吸い寄せられるくらいに。
 ドアを開けると、リノリウム床の広い会場であった。
 講師らしきモジャモジャ髪にモジャモジャヒゲの男が、スーツ姿の若者達に怒鳴っている。
「アッピールだ! 台詞でキめろ! お前らのキメ台詞を見せてみろ!」
「押忍!」
 若者達はいずれも、ギラギラと赤信号みたいな目の色である。
 やばいかも……と、恐る恐る後じさろうとした重里くんに、突然!
「そこのお前! キメ台詞だ! アッピール、来い!」
 モジャ髭講師が丸太みたいな腕振って、ずびしと教鞭を向けたのである。
「え……その……いきなり言われても……」
「遅ーい!」
 モジャヒゲが教鞭を一振りすると、これが突然クラッカーみたくパーン、と音立てて破裂した。
 普通のクラッカーと違うのは、これが重里くんの首を吹き飛ばしたところだ。

「超絶眼鏡少女、キャタッツァーみつえ、さーんじょう! とやー!」
 振り切れた元気っぷり!
 舞子・みつえ(中学生運命予報士・bn0230)が階段途中から、大ジャンプして現れた!
 着地! 脚立(キャタッツァーの由来?)を両腕で頭上に抱えて着地した!
 ぐぎっ、と音がした。足、ひねった?

「痛たたたた……あ、大丈夫、そんなダメージ受けてないから」
 荒い息して涙目で微笑み、必然的になんだか瞳輝かせてみつえは告げるのである。
「と、こんな感じでね、激しいキメ台詞を披露してみよう……って話」
 まだちょっと痛いみたいだが、それでも彼女は元気そうに説明した。
 都内某所、『自己アッピール道場』なる、いわゆる能力開発のセミナーみたいな場所があった。
 なんだかんだで随分前に倒産したらしいのだが、この跡地に地縛霊が出没しているという。
「それが、この、キメ台詞大好きなゴーストたちなんだ」
 不幸にして約一名、ここに迷い込み命奪われた青年がいるらしい。
「放置すればますます、犠牲者が増えかねないよね。みんなでやっつけちゃって!」
 廃ビルの二階がその会場跡であり、ドアを開けるとそこは特殊空間となっている。
 一見したところ貸し会議場といった風情だ。パイプ椅子と簡易の机が用意されている。
「熱血指導を行っているヒゲモジャ髪モジャかつ四角い眼鏡の地縛霊がここにいるんだ」
 地縛霊は「お前のキメ台詞を披露しろ!」といった無茶振りをしてくるらしい。
「自己アピールができなければ襲ってくるよ。できても……襲ってくるけど」
 一緒やんけ! と言うなかれ、決定的に違うところがある。
「格好いいでも可愛いでも、ファニーでも不思議ちゃんでもなんでもいいから、個性を感じさせる印象的な自己アピールができれば、敵の攻撃は鈍くみたいなんだねえ」
 あるいは動きが遅くなったりするかもしれない。
「逆に、戸惑ったり地味だったりすると激しい攻撃を受けることになりそうだよ」
 命がけのアピールというわけか。
 地縛霊は教鞭を爆発させて攻撃する。振ると破裂音、ならびに強い炎熱がほとばしる。
「炎熱弾は三方向に分裂するよ。食らうと魔炎ダメージになるし、あたりどころが悪いとこちらのアビリティが封じられちゃうからね」
 圧倒されたというわけだろうか。
 なお、熱血モジャ講師は微少だが、十秒ごとに自動で生命力を回復するという。
「他には、スーツ姿の若者ゴーストが五体。うち四体はアピールが弱い相手には強くなり、ナイスキメ台詞のある相手には驚いて弱体化するようだね。講師と同じだね」
 パイプ椅子や机で殴りかかってくるのみだが、案外力があるようだ。やはり自動回復がある。
「残る一体はリビングデッドだよ。首無しのスーツ姿、ヨロヨロつかみかかってくるはず」
 最弱の相手らしい。特殊能力もないので、さっさと退治するか最後に片付けるかするといい。

「自己アピール、と改まって言われると難しいかもしれないけれど、要はさっきの僕みたいに」
 と、なぜか再度、脚立を持ちあげてみつえは言うのだ。
「ハジけた感じでガーン! とやってみるのがいいかもね。内気な人も、今回だけ別人、くらいの気持ちでチャレンジしてみて!」
 みつえがやったように、ステージネームでも名乗ってみてもよかろう。
「ばかげたゴーストだけど真面目にかからないと危ないかもよ。がんばってね!」
 と笑顔で手を振って、物陰に隠れて呻くみつえであった。
「足痛いよぅ〜」

マスター:桂木京介 紹介ページ
 自己紹介? 苦手です。桂木京介です。

 といったわけで、オリジナルキメ台詞を作ってみたい人、あるいは、作ったキメ台詞(ポーズも可)を使ってみたい人、はたまた、これまで地味だったのであえて、パーンとハジけて新境地を開拓してみたい人、等々、どんな人でも歓迎いたします。銀誓館に入学したばかりの人や、依頼参加経験のない人もお気軽にどうぞ。

 戦場は、広々とした会議場です。机やパイプ椅子がありますが、簡単に蹴散らせる程度の量なので、さほど戦闘の邪魔にはならないでしょう。

 それでは、次はリプレイでお会いしましょう。
 ご参加、お待ちしております。
 桂木京介でした。

参加者
如月・皐(ファイアフォックス・b00939)
姫咲・ルナ(ピンクの月夜は仔猫の想い出・b07611)
高天崎・若菜(真龍を目指す土蜘蛛の大黄龍将・b19366)
ティセ・パルミエ(猫ふんじゃった・b34291)
アンディ・サイゾウ(白にして霧雨・b52313)
佐藤・瑠衣(天真爛漫な魔法少女・b58487)
七星・文(萌えと燃えの道を逝く者・b63675)
柿木坂・みる(わたしは此処にいる・b63721)
萌月・薺(盾の騎士・b65253)
夜代・伊織(孤高の一匹ナマケモノ・b66197)



<リプレイ>

 風雲! 自己アッピール道場なる異空間、激震す!
 真四角の眼鏡、モジャ髪とモジャヒゲの講師地縛霊が叫ぶ。
「道場に立ち入るのは何者だ! 名を名乗れィ!」
 ただし、と地縛霊は目を赤く光らせた。
「半端な名乗りには罰を与えるぞ! キメ台詞だ、来い!」
「いいでしょう。お聴きなさい」
 ドアの蝶番がきしみ、そこからすっと、長い脚をした女性が姿を見せる。都会風のショートカット、装着したアームブレードも、違和感なく収まっている。
「我々は銀誓館の能力者、あなたたちの暴走を阻む者。かく言う私は」
 と言って彼女は、剣を頭上に巡らす。鋭利な刃から、焔が赤い尾を曳いた。
「ほとばしる炎・如月皐」
 如月・皐(ファイアフォックス・b00939)、色香と強さの同居する美がそこにあった。
「ぬう……見事! して、横にあるは誰か。名乗るが良い!」
 しまった、夜代・伊織(孤高の一匹ナマケモノ・b66197)は息を呑んだ。
(「本当はこういうの苦手なんだよね〜。まずいな〜」)
 どんな名乗りを上げるか考え考えしてここまで来たが、思いつかなかったのだ。入った途端にこの展開とは思ってもみなかった!
 こうなったら、ためらっている時間はない! 伊織はスカートの裾ひらり、回転させて大音声、
「自己主張と自己主張のぶつかり合う狭間に、己が醜い欲望を満たさんとする者よ、その行いを恥と知れ! 人それを……『外道』と言う!!」
 叫ぶと不思議と落ち着いた。イグニッションカードを抜き、ぴたり、敵の眼前に構えて、
「イグニッション! マクシミリアン美少女(?)悪魔男爵伊織ちゃん! 参上です!」
 己を解放する。生物上の性別は男だけれど、かく堂々たる美少女ぶりの伊織を、誰が男の子と思おうか! 胸がスッとした。快感、かもしれない。
「食らいやがれです! 飛翔瞬刃符!」
 そして伊織はトランプを投げて切るように、呪殺符ともども締めくくったのだ!
「こちらもやりおる!」
 これを受けて、一歩後退した地縛霊はふと視線を上げて見た。道場壁際のバルコニー、高台に身を屈める少女を。ティセ・パルミエ(猫ふんじゃった・b34291)を。
「そこのお前もアッピール! カモン!」
 カモンと来たか。ならばとティセ、跳ぶ。
「可哀想なゴーストさんのためにカカッっと登場なのです」
 軽やかに空中四回転半、音もなく着地して顔を上げ、マジカルロッド、バトンのように素早く回す。その切っ先、猫手がついたぴこぴこ尖端をびしりと向けて、
「ねこのきもちを伝えてあげるのです、このにくきうで!」
 頭に猫耳ヒップに猫尻尾、際どいミニスカ&白ニーソで電撃登場!
「登場ポーズはキメが効いているが、名乗れておらんぞ!」
 地縛霊に指摘されハッとなり、彼女は慌てて言い添えた。
「はにゃ! ティセ・パルミエ推参っ! パートナーはモーラットのシマちゃんなのです!」
 ティセのミスを突いて精神的優位を得たか、再度ヒゲは前進する。
 このままじゃ危険だ! 姫咲・ルナ(ピンクの月夜は仔猫の想い出・b07611)は懸命に自分に言い聞かす。
(「今回の私は別人、別人……」)
 深呼吸して三角帽子、被り直し扉の影からダッシュ! 手近な机に飛び乗る!
「悪いことする子は、私の真っ赤な炎でお仕置きしちゃう!」
 フワフワピンクの髪なびかせる。華麗にキュート、登場は成功だ。だが次が難しい。ロッドを一転させてキャッチ、指と一緒に……向ける! 成功!
「その名は!」
 ヒゲが絶妙のタイミングで問う!
「使い魔ルーの『愛』と書いて攻撃は、どんなカレーより熱々なのね☆ ゴシュジンサマに再会するまで、負けるわけにはいかないのっ♪」
 天使の笑顔でウインク、ロッドに結んだリボンも光る。モーラット『イヴ』もルナの肩に乗り、威嚇するような顔(といってもあまり怖くないのだが)をした!
「やりおるな、使い魔ルーとやら!」
 やった! ルナは内心拍手だ。
 他のゴーストがじわじわ迫りつつあった。ルナの足首を掴もうとした不埒な霊に、漆黒の腕が延びて一撃する!
「『2010年・護ってあげたい人狼部門』第1位! 柿木坂研究所調べで! べ、べつに護ってくれなんて言ってないんだから……! こんな風に人を護ることだってできるし……」
 でも、うれしかったな♪ と小さく付け足す。おお、その姿! 舞台中央、左右の手に長剣、構えて立つ少女剣士!
「戦場を駆け抜ける黒い風! 二刀使いの龍殺し(ドラゴンバスター)!!」
 ダークハンドの主は無論彼女、その名は、
「柿木坂みる参上!!」
 柿木坂・みる(わたしは此処にいる・b63721)に気圧されて、不埒な地縛霊は尻餅ついて天を仰いだ。自軍の不利にもかかわらず、ヒゲ地縛霊は嬉しげに手を打ち鳴らす。
「21世紀の自己アピール『ツンデレ』というやつか! 大いに良し!」
「ならば拙者は、16世紀と21世紀のフュージョンにて参ろう!」
 サクッ、ヒゲ男の後頭部に手裏剣が突き立った。
「うぐっ! ……曲者め、名を名乗れィ!」
 振り向いたヒゲは手裏剣に触れもしない。アッピールこそが彼の求めるものだから!
「HAHAHA! 天が呼ぶ! 地が呼ぶ! 宇宙(そら)が呼ぶ! 若者を守れと俺を呼ぶ!」
 快活な笑い声と共に、反対側のバルコニーから忍びの者が現れる!
「この刃は未来(あす)が為! 一心不乱の希望の為に!」
 空手の型のように、告げながらポーズを決めていく。絶好調だ!
「拙者の名はアンディ・サイゾウ! 悪しきゴーストを倒す為、ここに見参!」
 と締めくくるや二本の指揃えて敬礼! アンディ・サイゾウ(白にして霧雨・b52313)の笑顔からこぼれた歯が、白く、白く輝くのであった!
「敵ながら天晴れ! こやつらも憧れておるぞ!」
 ヒゲの言う通り、スーツの地縛霊たちはアンディに見とれているではないか。
「うちの新人のアピールも見るがいい!」
 ヒゲも対抗したくなったのか、首なしリビングデッドの背をドンと押した。されどリビングデッドは、おろおろと何歩か歩いただけで、コテンと倒れてしまう。
「しっかりするんだ! そのようなアピールでは先が思いやられるぞ!」
 これを叱咤する声はヒゲにあらず、シールド装備の小学四年生、萌月・薺(盾の騎士・b65253)その人ではないか! 右腕に盾! 左腕にも盾!
「そこの盾娘、ならば見本を示せィ!」
 ヒゲは呼ばわった。
「望むところ!」
 得たり! 聞け、薺のアッピールを!
「私は銀狼の騎士団、団員No374の萌月薺!! 前衛に立ち味方を守る盾である! いかなる攻撃だろうと我が愛用の丸盾で防いでくれるわ!」
 ぐうん! 名乗りつつ盾をブン回す! その勢いが敵をたじろがせたのは言うまでもない!
「合格である! ……うぬぅ、あまりにアッピールの達人ばかりよな。羨ましくあり褒めたくもある。だがこのままでは我らも敗北は必定、名乗りは弱けれど力はあるはず! 者どもかかれ!」
 ヒゲはようやく自分の立場を思い出したか、手下をけしかけ攻めさせる。
 だがゴースト団先頭がいきなり、雷弾受けて吹き飛んだ!
「ひっさつ! サンダーボルトはっしゃなのよ!!」
「見事なカウンターよ! 娘、その名を問わん!」
 どうしてもヒゲは名乗りを聞きたいらしい。
 雷弾発射の余熱でくすぶるロッドを回転、胸のところに静止させて佐藤・瑠衣(天真爛漫な魔法少女・b58487)は、にこりと笑顔を向けた。
「まほーのせかいをすくうため、やってきたのがこのせかい。へいわをまもってこきょうをすくうよ! わるいこはスィート☆シュガーがおしおきなのよ!」
 瑠衣はその真の名(ということにしている)を名乗り胸を張る。
「ス、スィート☆シュガー……貴様がそうだったのか! 初耳ではあるが」
 変なところノリのいいヒゲなのだ。このときさらに一本の矢が、飛来してヒゲ男の額をブチ抜いた。ヒゲは床に仰向けに倒れつつも、半身だけ起こして射手を探す。
「何やつ!」
 すると窓際のカーテンに、少女のシルエットが浮かび上がる。なんと見事なその髪型よ! お嬢様伝統のヘアスタイル、つまり、
「トレードマークは縦ロール!」
 凛乎、気高く声上げてカーテンを薙ぎ払う!
「萌える心で皆を愛し、燃える心で敵を撃つ! 魔法銃士・七星 文 降臨っ!!」
 クロスボウを持ったまま、腕をくるくる巡らせて、七星・文(萌えと燃えの道を逝く者・b63675)はポーズを決めた。交差させる腕の角度、完璧!
 さらに文はカーテンの陰にささやく。
「あ、これはおサキさんの分ですのよ、掲げて登場して下さいまし」
 するとそこからそそくさと、サキュバスがフリップボード掲げて出現した。ボードには丁寧な書体で、『文ちゃんの愛で目覚めた正義の心! ゴーストの力でゴーストを討つ! コスプレ従者おサキ 降臨!』と書いてあるのだった! ちなみにおサキはスーツ姿である。
「痛快痛快! かくなれば貴様らを殺して、アッピール道場の師範代に迎え入れてくれるわ!」
 変な情熱を燃やしてヒゲ、さらに手下をけしかける。
 わあっ、と情けない声上げて、ゴーストたちは散り散りになった。黒燐弾の炸裂に呑まれたのだ。
「まだこれほどの使い手がいようとはな! お前のアッピールを見せてみろ!」
「勿論です!」
 扉の向こうから、つややかな黒髪、長身の少女が現れる。ファッションモデルだろうか? 否とよ、彼女はモデルではなくむしろ雀士、
「……私は牌と共にあり。闘牌に生き、そしてまた闘牌に死に行く者。麻雀とはこの世の理を以って、卓の上に現れるもの。そう、卓の上ではあらゆる事が渦巻く混沌の大地……其れを極めし者のみが名乗る事を許される名、それがこの私、四神を統べる者・黄龍!」
 高天崎・若菜(真龍を目指す土蜘蛛の大黄龍将・b19366)、ここにあり!
「四神の力集いて……是なる驕れし者、黄泉国(よもつこく)へと導きましょう!」
 若菜は天に誓うかのように、赤手をはめた腕を掲げる。いや待て、本当に赤手か? 巨大すぎる棍棒のような? しかもそのボディに『人生、リセットしてみない?』と書かれているような??
「以上十名!」
 伊織がガンナイフ閃かせ、
「HAHAHA! 拙者らの勇姿、胸に抱いて消滅するでゴザル!」
 アンディは印を結び、
「じこアピールはだいじだけど、きょうせいはイケナイなのね」
 瑠衣がウインクして宣言、ここで全員、前後二列の横並びになって決める! 思い思いなれど、妙に統一感のあるポーズを! 決まった!
 中央には皐、彼女が締める。
「この世ならざるもの。お前の居場所はここじゃない」
 同時に全員、「ここじゃない!」と声を合わせ復唱するのだ!!
「おお、こんなアッピールを見たかった……」
 なんだかヒゲは戦意を喪失している。座り込んで涙まで浮かべているではないか。だが、
「あれみて!」
 瑠衣が叫んだ。
「!?!〜!?」
 声なき叫び上げて首無しリビングデッドが、果敢に挑みかかってきたのだ。ヒゲの不甲斐なさに怒っているようでもあった。だが奮戦虚しく、
「炎の魔弾なのです〜、絶対外さないのです!」
 ティセが火焔の塊で返り討ちにしていた。リビングデッドは火達磨! 消し炭となって亡びた。
「えへへ、燃えました?」
 手でピストルを作って銃口の煙を吹き消すポーズ、とことんキュート格好いい今日のティセだ。
 されどリビングデッドの特攻は無駄ではなかったはずだ。これで地縛霊たちは奮起したのである。
「火炎弾なら負けぬ!」
 ヒゲが教鞭より、三方向炸裂の炎を投げてきた。うち二発はルナに集中するも、
「わわわっ、アブナイ!」
 帽子の鍔を手で押さえつつ、大きな跳躍でこれを避けていた。
「敵さんの弾とどっちが強いか……勝負!」
 アッピール忘れず、ルナは炎でお返しだ。
 熱い火焔弾一発を、若菜は肩口に受けてしまう。しかし!
「黄龍は退かない! 挫けない! 倒れない! より高みを目指すまで……前進あるのみ!」
 むしろ若菜は前に出る!
「さあ、踊りなさいな!」
 文が投じるは緑のスピア、森王の槍だ。破裂する! 
「貴方を撃ち抜く可憐な笑顔!」
 その声は、みる。駆け出し、雑魚ゴーストの只中に斬り込んでいる。値千金の笑顔を振りまいて、
「君のハートにクリティカルヒット!」
 宣言通りの痛烈斬撃! みるは二刀交差させ、ゴーストを十文字に斬り伏せて倒した。
「HAHAHA! 前座に用は無いでゴザル!」
 アンディの拳とアッピール、大爆発!
「超忍法! 螺旋爆水掌!」
 KABOOM! 雑魚はバルコニーまで吹き飛び、窓を破って外に消えていった。
 最前線の薺に次々、霊が攻撃するのだが巧みに盾で防がれている。
「はははっ、効かんなぁそんな攻撃! やる気はあるのかお前達!」
 笑いながら薺は倍返しの一撃を浴びせた。ふらついたその相手に、
「別れを告げろ、貴様を取り巻く、全ての物に!」
 伊織の射撃が命中しその存在を絶つ。これを追うように、
「炎の翼よ、私に力を。燃えろフェニックスブロウ!」
 威勢良く皐が火焔の一刀を下すと、雑魚最後の一体も斃れるのだった。
 返す刀を講師に向け、皐は告げた。
「この地に縛られし者よ。今その鎖、解き放つ」
 戦いは終盤に突入した。講師の地縛霊は自動回復があるとはいえ、アッピール力で完全に気圧されており、攻撃にも防御にも冴えがない。
「迷ったら前へ。その先に見える場所がきっとある。いつか聞いた言葉を胸にわたしは前に突き進む! ……世界の果てで塵になれ!」
 大上段から振り下ろす、みるの一刀はおそるべき威力!
 袈裟斬りされ講師は仰け反る、その胸に、
「スィート☆シュガーをこれからもおうえんしてねっ!」
 瑠衣の雷撃、
「もう、しつこい人は嫌われるのね!」
 ルナの炎が重なり、
「還りなさい、蓬莱の地の先……黄泉国へ!」
 さらに鬼気迫る若菜の紅蓮撃だ。再びヒゲは感激で滝のような涙を流していた。
「拙者の技、とくと見るでゴザル!」
 アンディの爆水掌、そして、
「奥義! 究極!! 神風ェェキィィィィィィクッッ!!!」
 伊織の強力すぎるゴッドウィンドアタックが炸裂、ヒゲ地縛霊は宙に舞う!
 その姿にサキュバスが組み付いた! これ目がけ……
「能力者と使役ゴースト、二人の心を今一つに!!」
 ターゲットロックオン!
「お受けなさいませ、ワタクシ達の必殺連携技!!」
 誰だ! 文だ! 縦ロール髪がぐんぐんそよぐ。
「超大自然爆破!! 魔法銃士ッ、スペシャルッッ!!」
 劇画調でブン投げた槍は地縛霊を貫通し、大爆発したのであった!
「さらばだーっ!」
 ヒゲは絶叫と共に消滅していた。
 さあ、慰霊として宣言しましょう、と皐が呼ばわった。
「ビシっとキメようね!」
 ティセが元気に跳ね、
「うむ!」
 薺も力強く応じる。
「世界結界は私たちが……」
 皐の声に呼応する全員の声。刮目して聞くべし!!
「守る!!!」

 なお全員、翌日は喉が痛かったそうだが、それはまた、別の話である。


マスター:桂木京介 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/04/29
得票数:楽しい18  笑える4  怖すぎ1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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