碧い視線


<オープニング>


「うわ、マジでぼろいなぁ……」
「でも、案外荒らされてはいないんだな」
「そりゃこんな山奥まで来る物好きなんてそういないだろ?」
「その物好きがここにいる訳だがな、……ま、こんな所に家建てるのも相当の物好きだよな」
 廃屋は道なき道を進んだ先、山の深い場所に、木々に飲まれるようにして建っていた。
 それほど昔の建物ではないようだが、長い間ひとの手は入っていないのだろう。
 壁面は所々が欠け――、
「でも中に入れそうな場所がないなぁ」
 戸や窓はしっかりと閉まっており、中に入れそうな場所はなかった。
「おい、ここ穴が開いてるぞ」
 1人の声が上がり、駆けつけてみるとそこは裏口。
 ドアノブの四個あたりに、小さな穴が開いていた。
 穴があれば、覗きたくなるのが人の心理か、
「俺一番〜!」
 嬉々としてのぞき込み、始めに見えたのは――碧だった。
「……?」
 いや、なにかおかしい。
 屋内は暗いはずで、色がハッキリ見えるはずはなく、というかその碧は僅かに動いており、よく見れば黒い点が中央にあって……、
「……目?」
 自分で呟いた言葉に驚いたように、のぞき込んでいた男が尻餅をつく。
 慌てて仲間が駆け寄るが、異様な雰囲気に気付くと反射的に周囲を見渡した。
 人がいる。
 3人だ。
 小さな女の子と、男女が一組。家族だろうか。
 男の手にはさびた鉈。
 女はぶつぶつと何かを呟いており、少女は――、
『……』
 碧眼に強い怨みの念を込め、こちらを睨みつけていた。
 
「ん、よく集まってくれた。暑い中すまないな。まあ、涼んでくれ」
 と、まだ明るい放課後の屋上。
 麦茶を集まった能力者へ回しつつ、袴田・緋矢はそれまで読みふけっていた分厚い本を鞄にしまい、黒革の手帳を取り出した。
「さて、依頼だ。山中の廃屋に肝試しに向かった男性3人のグループが、地縛霊に襲われ命を落とした……」
 そしてこれで、終わりではない。
 放置しておけば、第二、第三の犠牲が出ることは必至だ。
「ゆえに倒して欲しい、3人家族の地縛霊を」
 道中の地図を渡しつつ、緋矢は説明を続けた。
 山中の廃屋、その裏手にある勝手口、そのドアノブの横についた小さな穴を、日本人が覗くことが敵出現の条件となっている。
「日本人?」
「……ん、まあ理由は推して知るべし、か。昔は異人に対しての偏見は強かっただろうし、閉鎖的な村落であればなおさら……な」
 が、過去の事だ。
 いま大事なのは敵を知った上で、いかにして倒すか、ということにある。
「戦場は廃屋の裏手となるな。木々はなく、雑草が茂っているがちょっとした広場になっている。戦闘の障害となるものはない」
 その上で、相対するのは3体の地縛霊。
「金髪碧眼の少女と、同じく金髪碧眼の女性。そして屈強な体躯をした黒髪の男性」
 役割としては少女が遠距離攻撃、女性は回復支援、男性が近接攻撃となる。
「またそれぞれ、誰かが危機的状態となると一度のみ強力な能力を使用するようだ」
 戦闘の進め方には注意が必要だろう。
 緋矢はそこまでを語り終え、手帳をしまった。
「先にも言ったが、放置しておけば被害は増すばかりだ。それに……心情的にも、このような残留思念を残しておきたくはない、とも思う」
 だから、と緋矢は頭を下げる。
「君たちの力ではらってやってくれ。想いを残したモノのため、殺された者のため、残された者のために、頼む」

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参加者
紫月・双牙(光焔真牙・b08033)
壷居・馨(真スマイル王子・b08122)
皆月・弥生(夜叉公主・b43022)
伊東・尚人(理の修行者・b52741)
霞谷・氷一(古に幻在せし虚像の裏商人・b55422)
布瑠部・由良(蟲姫様のお通りだっ・b59279)
山科・月子(ディープブラッド・b61466)
東雲・禍音(高校生魔剣士・b72930)



<リプレイ>


 7人の仲間に続き、前行く面々の状態を把握していた皆月・弥生(夜叉公主・b43022)が草むらを押しのけ、
「ここ、ね」
 額の汗を拭い呟いた眼前、それはあった。
 運命予報士の告げたとおり、山深い場所で森に飲み込まれるようにしてある廃屋。
 周囲の状況も、聞き、予想していたモノと大差はない。
 ただ、この暑さは実感してみるまで分かるものではなかったが。

 廃屋の外周を回り、裏口へと向かう。
 戸はすぐに見つかり、穴もあると分かっていれば簡単に見つけることが出来た。
「さて、お膳立ては整いましたか。……相手は異国人差別した結果の過去の亡霊、でしたねぇ」
 飄々とした風に言う霞谷・氷一(古に幻在せし虚像の裏商人・b55422)に、伊東・尚人(理の修行者・b52741)は視線だけを向ける。
「差別と偏見はいつの世にも付きまとっていますからね。彼らの心情を理解することは出来ません。ただ今はこれ以上悲しみを増やさない様にするだけです」
「日本人は、大人も子供も『自分とは違うもの』に敏感過ぎるよねぇ。僕もこんな外見だから、小さい頃は色々あったしねぇ」
 金の髪を風になびかせ、緑の目で遠くを見る壷居・馨(真スマイル王子・b08122)。
 そんな彼に、戸の穴の前へ立った布瑠部・由良(蟲姫様のお通りだっ・b59279)は振りかえった。
「阻害され虐げられて、気持ちは判るが……同情はせんよ」
 感情を出さない表情で言うと、穴へ向き直り、
「相手よりも強い力は本来振るうべきではないのじゃからな……その力も怨みも、儂等が受け止めてやるのじゃよ」
 背中で皆の準備を促す。
 応じて各々がイグニッションカードを取り出す中、そのカードを見つめ山科・月子(ディープブラッド・b61466)は言葉を零した。
「異なる種を排斥する……私達には切実な話ね」
 自分たちとて常識の外側にある存在だ。
 その在り方が世に知れた時どうなるか。
 受け入れてくれる者が居ると信じたいが、否という者が殆どだろう。
 これは過去も、今も変わりはしない。
「……なんてね。センチメンタルだったかしら」
 視線は氷一へ向けられた。
「ふむ、確かに俺たちは通常から少し外れた存在ですし……まあ俺にとって人は客・友人・客以外の3種と捉えさせて貰ってますがねぇ……」
 どこか人を不安にさせる笑みでの思わせぶりな回答に、
「……恨みつらみ数あれど、迷い出たなら滅すが必然」
 東雲・禍音(高校生魔剣士・b72930)はすでにイグニッションを果たし、敵が現れるだろう地点を見つめたままに断ずる。
「まぁ、そういうことですねぇ。アレは『客以外』ですから」
「そう……どうかした?」
 ふと、視線に気付き、月子がその視線を正面から受けた。
 弥生だ。
 彼女は少し驚いたようにして、すぐに微笑みを浮かべると軽く首を振る。
「では、そろそろ始めましょうか?」
 前線となる位置で斬馬刀を背負った紫月・双牙(光焔真牙・b08033)が皆を見回し、
「うん。じゃあ、宜しくね!」
 馨の声を聞き、
「覗くなど趣味ではないのじゃが……これも役目。さぁ、始めようかの」
 由良が穴から中を覗く。
 碧い目が、こちらを見つめ返していた。


 まず月子が動いた。
 続くのは尚人に弥生、やや遅れて禍音と双牙。
 敵で突出してくるのは黒髪の男。
 サビの浮いた大ナタで地面を引っ掻きながら能力者の前衛陣と接触した男は、土と共に得物を振り上げる。
 対し月子は黒燐奏甲を発動。
 詠唱兵器より吹き出す黒い盾で、上段よりの一撃を受け止め口元に笑みを宿した。
「負の連鎖をここで断ち切るわ」
 その声に応じるように、敵左手へ回り込んだ尚人が龍尾脚で足を払う。
 と、尚人は突然の寒気を感じ視線をその源へ向けた。
 地縛霊の少女が、こちらを見ている。
 碧い、氷のように冷め切った、しかし痛々しい程の恨みの念を持った視線に射貫かれ、
「……っ!?」
 引き起こされる2つの異変。
 布槍とリボルバーガントレットに内蔵された回転動力炉が動きを止め、なにかが体に入り込むような強烈な違和感に襲われる。
 また、自身がいま打撃を与えたばかりの男は、後方、女より伸びた赤みがかった光に覆われ、その傷を癒されていく。
 回復した男は顔を尚人へ向けた。
 だがナタが振りかぶられるより早く、両者の間を金の輝きが抜ける。
「無理しないでさがってねー! これ以上回復はさせないよ? 大人しく痺れていてね!」
 馨が放った雷の魔弾が女を打ち、男には禍音が飛びかかり上段からの一撃が下より跳ね上がってきたナタとぶつかり、火花を散らす。
「……敵ならば、滅すまで」
 男は禍音と刹那のあいだ拮抗すると、強引に押し返し距離を取る。
 そうして別角度から来ていた由良の呪いの魔眼の力を、
『オォオォー!!』
 響き渡る咆哮と共にナタで叩きつぶすと足下で湧いた気配に向き直った。
「アナタはどんな声で鳴くのかしら?」
 低い体勢で構えた月子の髪が風もないのになびき、次の瞬間その身ごと消える。
 男は本能的といえる動きで大ナタの自身の引き寄せガードの構えを取った。
 途端、甲高い金属音が連続で響き、受けきれなかった幾らかの攻撃が男の身を削る。
「あら、なかなかやるのね」
 飛翔突撃の勢いも衰え飛び退く月子に代わり、高速で突撃してくるのは氷一。
「さて、過去の亡霊には悪いですが……こちらも野放しにはしてあげられなくてですねぇ……」
 無数のプログラムの並べた瞳を薄く開き、大きく振りかぶった一撃に高密度の詠唱プログラムを纏わせ、
「限界を超える一撃を受けて下さいねぇ……!」
 撃ち込む。
 氷一の持つ詠唱兵器が高速の回転音を響かせ、そして止まる。
 自身の武器をも止める程のアビリティ・プロトストランダムの一撃は確かに効果を現した。
 双牙が撃ち込んだ黒影剣を男は受け止めるも、その大ナタに力は見えず、黒の刃はナタを押し切り、男を切り裂く。
 女は男を癒そうとするものの、馨より受けた二発目の雷の魔弾にその動きを止められていた。
『なんで? なんで私達を虐めるの……?』
 少女が呟き、声は波と成って周囲へ広がり、能力者達の体を打つ。
 衝撃を受けながら、答えたのは弥生。
「私達が貴方を解き放つ」
 呪いの魔眼で力を失った男を切り裂けば、ハッとした表情で少女がこちらを見る。
 憎しみが伝わってくる。
 それしかないのだ。
 彼女と、その家族が残した残滓が内包する感情は。
 だから消さねばならない。
 残ってしまった想いと、その犠牲を防ぐために。そのためならば、
「好きなだけ怨めばいい」
 この身が呪われようと、構わないのだから。

『オォオオォォー!』
 大気を振るわせる大音声。
 前線やや後方でダークハンドによる攻撃を行っていた禍音すら衝撃として感じるほどの雄叫びは、はたして接近していたメンバーに影響を与えていた。
「やらせる訳には……!」
 無事だった双牙が切り込むも、男は自ら肩を刃にぶつける。
 思いのほか硬い皮膚と、最大威力を出せるポイントを外されたことで傷は浅い。
 男はそのまま双牙を押しのけると、やや崩れた体制から強引に大ナタを振るった。
 攻撃の軌道上にいるのは、マヒ状態の氷一。
 それでも間一髪、自らの攻撃で止まっていた詠唱兵器が動き出し――また止まった。
「……おや?」
 少女が、こちらを睨んでいた。
 なるほど、と思った刹那、衝撃が体を襲う。
 構えた武器も能力を失っていては意味がない。
 さらに追撃を仕掛けようとする男へ、距離を詰めてきた禍音と、尚人が取り付き行動を阻害する。
「大丈夫、落ち着いて。皆が時間を稼いでくれるわ」
 月子は視線だけを向け言うと、ローリングバッシュで男へ突撃。
「不運じゃったな」
「まぁ元々自分で分解しちゃってますけどね。いやぁ、大した怨念です。よほど恨んでたんでしょうねぇ……」
 駆けつけ、黒燐奏甲を施す由良に、氷一はミストファインダーを発動しながら笑って応じる。
「ゆえに、主の力がまだ必要じゃよ。倒れぬよう、まだまだ働いてもらうからの」
「了解ですよ」
 傷があらかた回復し、立ち上がる。――その時だった。
『ダメェエェェー!!』
 少女の絶叫が響き渡り、場にいたほぼ全員の詠唱兵器が停止したのは。
「なに……?」
 男を追い込んでいた禍音の刃が弾かれ、逆に薙ぎ払われた一撃を受けわずかに吹き飛ぶ。
 双牙は紅蓮撃で強引にダメージを通すも、危機はさらに追い打ちをかけようとしていた。
 マヒしていた女が動き出す。今、男を回復されてはさすがに厳しい。
「大人しく痺れてって、言ったでしょ!」
 今だ沈黙したままのサンダーピラーで馨は雷の魔弾を撃つ。
 ダメージは期待できない、ただマヒは……効いた!
「そう好きにはさせん……!」
 より標的の多い方へと向かい始めた男の前に尚人が立ちはだかり、その行動を阻害する。
 個々が奮戦する中、いったん後方にさがった月子は、自身の詠唱兵器が回復の兆しを見せているのを確認し、
「キミなら、合わせられるでしょ?」
 傍らで、戦況を伺っていた氷一へ、クスリと笑いかけた。
「……無論ですとも月子嬢」
 氷一はニヤリと返し、動き始めた電光剣を振るい、霧のレンズへ狙いを定めた。
 月子が駆ける。
 傷つき、男と距離を取った仲間達の間を抜け、最後まで奮戦するも横っ腹に一撃を受けた双牙の横を抜け、
「行くわ」
 低い姿勢から、斜め上方へ向けた飛翔突撃。
 男はその動きに気を取られ視線を下に向け、結果、上段より霧のレンズを越えてきた氷一のプロトストランダムの直撃を後頭部に受けた。
 衝撃に落下してくる頭部へ、ローリングバッシュが激突する。
 連続する斬撃に、男は顔を切り裂かれ――膝を着いた。

「む、こちらも動き出したようじゃな」
 由良に黒燐奏甲を施して貰っていた禍音は、彼女の声に自身の得物を見ると、
「……感謝する」
 一言残し、次なる標的、女へと突撃した。
 すでに武器封じから復帰した仲間達が攻撃を加えているその渦中に自らも飛び込む。
「くぅぅー。地味に面倒くさい!」
 背後より聞こえてくるのは少女に武器封じを受けた馨の憤然とした声。
 女を序盤、唯一狙っていたためだろうか……地縛霊の少女も執拗に狙っている気がする。
 だが、ほぼ唯一の攻撃担当であった男が倒れた今、あとは女の回復力を上回る火力で押し切るが肝要だ。
 一撃離脱を行った氷一と入れ替わるように女に接近し、容赦のない黒影剣の一撃を叩き込む。
 女が苦しげな表情で回復を行おうとするが、
「……油断ね。その隙を突かせて貰うわ!」
「切り裂く」
 月子、そして弥生の魔眼が回復したその分を削り、さらに毒に冒す。
『なんで? なんで……!?』
 少女の声が、再び戦場で彼女らに害する者に襲いかかる。
 尚人は衝撃を一度、二度とその身に受け、しかし踏み堪えると女の懐に入り込んだ。
 ハッと、見下ろしてくる女を見返し、
「この間合い、とったぞ!」
 しかと両足で大地を踏み込み、右の手の先へ集中させた気を打ち込む。
 白虎拳士の最強技、白虎絶命拳。
 女は驚愕の表情を張り付かせ、弾け飛んだ。
「迷い出てしまえば、こうなるが必然よ」
 禍音は少女へ向き直る。
 少女は……より深い憎しみの念を瞳に宿し、こちらを見ていた。

『なんで? なんで!? なんで……!?』
 少女が自身に向かってくる能力者達へ、問いかけを投げ続ける。
 なぜ自分はこんな目にあっているの?
 お母さんが悪いの?
 お父さんが悪いの?
 私が悪いの?
「銀誓館みたいに、安心して過ごせる場所が見つかれば良かったのにね!」
 馨の雷の魔弾が少女を撃ち抜き、マヒさせる。
 誰が悪かったとも言えない。
 あえて言うならば、時代と場所が悪かった。
 それだけだ。
「……これでしまいじゃ、早々に終わらせようかのぉ」
 長引かせるだけ惨いだけ。
 由良も呪いの魔眼で攻勢に加わる。
 弥生、月子もそれにあわせた。
 少女はとっさに両手で顔を守るも、両肩と右脇腹が内側から裂かれ、少女は苦悶の表情で恨みを飛ばす相手を探す。
「恨むならば恨め。──俺だけを」
 自らその前に飛び出た禍音が、黒影剣の一撃を少女の顔面に降らせた。
「まあ、こちらもお仕事なので」
 動きが鈍った少女に氷一のプロトストランダムが直撃し、少女が飛び退こうとするのを双牙が足を斬りつけて止める。
「もう憎しみあう必要はない。静かに眠るがいい!」
 尚人の白虎絶命拳が至近でヒットする。
 ビクン、と震えた少女は、
『ナンデ、ナンデ、ナンデ……』
 まだ想いを残していた。それほどまでの憎しみがあったのだろう。
「……」
 能力者は、無言で処断の一撃を放つ。
 少女は呟きを最後まで零しながら、消滅した。


 黙祷を捧げ、一同は目を開いた。
 月子が皆を見回し、
「終ったわね」
「ええ、彼女らには哀悼と感謝を送りますかねぇ、今の文明は異国人のおかげですし」
「あら、行くの?」
 氷一は軽く会釈すると、追いかける間もなく姿を消した。
 残された7人はしばしその名残を見送り、ふと馨が廃屋を見上げた。
「まぁ、もぅこれで、好奇の視線に脅かされずに済むんだね」
「差別から生まれた悲劇。過去の何があったか分かりませんが、今は家族三人が静かに幸せに過ごしている事を願わずにはいられません」
 弥生が頷き返せば、由良は少女が消えた場所へ視線を向ける。
「……時代が悪いとも、誰が悪いとも今更じゃから、すまぬとも言えないがの。次の生があるなら、……また家族一つに過ごせればいいと、願うばかりじゃ」
「あとは、出来れば今後ここを訪れる人が、この場所を荒らさない事を願いましょう」
 弥生があたりを一周見回すのを待って、
「では、帰りましょうか」
 双牙が声をかけ、面々は元来た道を歩き始めた。
 途中、月子が廃屋を振り返る。
 そこにはまだ禍音が佇んでいて――月子はしょうがないという風に微笑むと皆の後を追いかけた。

 チンッ、という音は禍音が刀を収めた音だ。
 晴れ渡る青い空を見上げ、零れるのは深いため息。
「異物は排斥される。それが世界の在り様だ」
 それはもちろん、自分たちも含めて。
 散っていった少女の思いを想い、禍音は空を見続けた。


マスター:皇弾 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/07/22
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