<リプレイ>
● 嵐が巻き起こる特殊空間へと人々を引きずり込み、その命を奪い取るという赤いブーツを履いた男の地縛霊。 彼が特殊空間を作り出すという川原までやってきた能力者達は、作戦行動中に一般人が巻き込まれないようにするため、予め持ってきておいた看板等を用いて人払いの準備を開始した。 「いやぁ、良い天気ですね」 こんな事でもなければのんびりと釣りでも楽しみたいところだと思う天川・竜馬(雪中飛鳶・b58153)。 確かに空には青空が広がり、川はせせらぎ、一見すればのどかな光景が広がる場所であった。 「でも早起きはつらいかもー!」 と、元気いっぱいに不眠を訴える少年、織兎・ラジェリ(深遠より来たる・b74133)。 能力者とはいえ彼はまだ小学生、本当ならこの時間はまだまだのんびりと布団に入っていたい年頃であるのかもしれない。 「嵐を呼ぶもの、か。たいそうな背景のわりに、やってることがただの通り魔とはな」 地縛霊をあざ笑うかのように雲乗・風斗(ヴォームティンクラウド・b51535) がそう呟く。 確かにどれだけ派手な場所や出で立ちで戦おうと、地縛霊のやっている事は弱い者いじめでしかない。 「ランニングシューズじゃなくてブーツって……」 暑苦しい格好をしたゴーストだと思う宮草・佳菜(誠情なる魔法士・b26724)。 確かに冬場ならともかく、夏場に現れるゴーストにしては季節はずれな格好をしていると言えなくないかもしれない。 「赤いブーツを履いた地縛霊。なんか意味深なような、そうでもないような……」 果たして彼の姿に何か深い意味があるのだろうか。 気になる様子の桜井・まどか(残花有情・b50032)であったが、とりあえずはちゃちゃっとやっつけちゃおうと気合を入れ直す。 「あんまし共通点ってわかんないよね?」 まどかの呟きに答えるかのようにしてそう言う麻田・駿喜(ヤドリギ使い・b23751)。 何かあったのだろうかと考える彼であったが、何かあったのだからいたのかと納得し、とりあえず深く気にしない事にした。 「履いたら死ぬまで踊り続ける赤い靴って話は聞いたことがあるけど……ブーツ?」 ヒーロー願望でもあった人なのだろうかと考える皆月・弥生(夜叉公主・b43022)。 だがこれはおとぎ話でも特撮番組でもない。 罪もない人を害する者は打ち滅ぼさなければならない。 「特撮ヒーロー?っぽい相手ですね」 東風・雄吾(小さな村の神主見習い・b61916)もまた弥生と似たような印象を抱いていたが、なんとなく何かが間違っているような気がするため、地縛霊には遠慮なく退陣してもらおうと考えていた。 「さて、やるか」 一般人がやってきた場合は強硬手段をとってでも追い返そうと考えていた青神・祈赤(凶剣・b15162)であったが、どうにかそういった事態にはならずにすんだようである。 「私自身は非力ですので、みなさんを全力で治癒しますね」 そう皆に自分の役目を語るリーナ・ファルメール(氷河に咲く雪花・b46977)。 彼女の身近には川原に近しい人が多いらしく、だからこそ今回の地縛霊の行動を見過ごしておくわけにはいかないと憤りを感じている様子であった。 彼等は一団となって道を進み……やがてぽつぽつと雨が降り落ち、やがてそれは嵐となって能力者達を襲う。 そして……そんな嵐とともにやってきたのは赤いブーツをはいた1人の男。 『イグニッション』 彼の姿をなんとか捉えた能力者達はすぐさまカードを起動させて戦闘態勢へと移行し、地縛霊に敢然と立ち向かっていくのであった。
● 「覚悟しな……俺の風はこけおどしじゃない」 強風などものともせず勇ましく前進していく風斗。 彼の気合は自らの枷を破壊し、そうする事で彼の体は高速戦闘モードへと移行する。 「さーて、いこっか」 気合を入れつつ、風斗の後を追っていくまどか。 地縛霊へと近づくにつれ、彼女の皮膚に虎の模様が浮かび上がり、黒い髪の毛がぶわぁっと逆立っていく。 そしてそんな2人を見送りながらラジェリはぴょこっと可愛らしい狐の耳としっぽを生やし、 「固まってみてくださーい!」 妖力を制御して妖狐の守護星とされる七つの星の輝きを光臨させる。 残念ながら地縛霊には何の変化も見られなかったが、幻楼七星光の効果によって彼自身の能力は十分強化された。 「ならこれで……」 七つの星の輝きが消え去った直後、すぐさま地縛霊の立っている辺りに魔法の茨を発生させる駿喜。 茨は地縛霊の腕を、足を、体全体をからめとっていき、その動きを封じ込める事に成功したのであった。 「敵の攻撃方法は跳び蹴りか」 確認するかのようにそう呟きながら地縛霊へと向けて全力疾走する祈赤。 彼は常人には考えつかないような限界を超えた覚悟を行う事によって肉体を構成し、力を高める。 「あー、ひょっとして私達の立ち位置って悪の……?」 と、自分達の立場についてあれこれ考えつつ、弥生もまた虎紋覚醒を使用。 髪の毛は逆立ち、いくつもの虎の模様が皮膚へと浮かび上がった。 そして佳菜、竜馬の2人は前衛のパックアップに回るために彼等のやや後方へと移動していき、 「みなさんがんばってくださいね」 リーナもまたその場に位置したまま仲間達を鼓舞しつつ、両手のアイスガントレットへ、 「私たちも頑張りましょう」 雄吾は錫杖へと白燐蟲を纏わせ、彼等の武器は白くぼんやりとした光によって包まれ、攻撃力が上昇していくのであった。
● 「覚悟しな……俺の風はこけおどしじゃない」 そう言い放ちながら素早い身のこなしで高速移動を行い地縛霊を翻弄した後、空高く舞い上がる風斗。 彼は己の足で三日月の軌道を描きながら地縛霊目がけて落下していき、その頭頂部へクレセントファングによる強烈な一撃を炸裂させ、地縛霊は頭から地面へと叩きつけられる。 「私の前に立ったこと、後悔させたげる」 己の内に潜む吸血衝動を溢れさせるまどか。 彼女は戦場を駆け抜ける黒い疾風と化してあっという間に地縛霊へと距離を詰めて襲いかかり、彼の体から血液やエネルギーを奪い取っていった。 その直後、稲光が辺りを照らし、 「わわわわわー!ぴかっごろごろごろー!みたいな!」 と元気いっぱいに驚きながらも、再び狐の耳としっぽを生やしたラジェリはその稲光に負けないくらいの輝きを7つその場に光臨させ、地縛霊の体を石化させた。 「敵が一体だろうと全力出すのみっ!」 相手がどんな状況であろうと手加減するわけにはいかない。 駿喜は地縛霊がいる地点へと向け、自然の慈悲に満ちた巨大な植物の槍を飛ばし、それは目標の足元へと突き刺さると大量の木片をまき散らしながら爆発を巻き起こし、地縛霊の体へとダメージを与えていく。 どうにかして地縛霊は反撃に転じようとするが……動けない。 「蹴りだけでも人を殺すには十分な威力を持っているようだが、能力者相手に一撃必殺という程ではないな」 そう判断しつつ、生命活動を限界ギリギリまで低下させる事によって作り出した氷を両手の長剣へと纏わせ、それらを地縛霊の両肩へと勢いよく叩きつけ、その瞬間武器を覆っていた氷が砕け散っていった。 「続けていくわ」 目を瞑り、瞳へと禍々しい怨念を込める弥生。 そして彼女がカッと目を見開いた瞬間、地縛霊は体を内側からズタズタに切り裂かれ、体をガクガクと激しく震わせて苦しむ。 その間、佳菜はこの場一帯に霧のような幻影兵を作り出す。 これにより、能力者達は全ての攻撃が遠距離にいる相手であっても届くようになったが、 「遠距離からの攻撃も可能になったけど油断せずに」 と彼女は言葉を付け加え、気が緩まぬよう声をかける。 「……終わりだ」 次いで竜馬が強く一歩踏み込みながら電光剣を地縛霊の腹部へと突き刺し、火花をまき散らせ、 「天川さん」 そんな竜馬の元へ、自分にとって一番大切な存在の元へと駆け寄り、彼の武器へと白燐蟲を纏わせて強化するリーナ。 「とどめです」 そして白燐蟲を弾丸へと凝縮させ、地縛霊へとむけてそれを発射する雄吾。 彼が放った白燐侵食弾は嵐をものともせずまっすぐとんでいき、地縛霊へと直撃。 その瞬間に白燐蟲が地縛霊の体内を食い荒らし……、 「……グッ」 地縛霊はその場に崩れ落ち、しばらく唸り声をあげていたが……やがてそれもおさまり、ゆっくりとその姿を消し去っていったのであった。
● 「人目につかぬよう、速やかに看板を撤去しましょう」 いつまでもそれらが置いてあっては一般人の迷惑となる。 地縛霊が消え去ったのを確認すると、すぐさま先程の地点へと向かっていく雄吾達。 時折、涼しい風が辺りを吹き抜けていく。 風斗は用具を回収しつつそれを肌で感じながら、 「嵐を呼ぶ男……ってことなのかな。風と共にってわけじゃないが、去りやがれ」 そう言って地縛霊に別れを告げ、心地よさそうに風を浴びる。 「うーん、風が気持ちいいね」 この涼しさこそが夏の醍醐味という感じだなと思い、微笑むまどか。 そしてラジェリは楽しげに川がさらさらと流れていく様を見つめ、 「いいよねー。水が流れてると涼しい気がするんだよね!」 にこにことしながらしばしの間、じっとそれに見入っていた。 「家に帰って夏休みで出された課題でもしようっとなのだ」 片付けが終わるなり、佳菜は仲間に先んじてさっさと帰還していった。 彼女達は能力者であると同時に学生でもある。 やるべき事は他にもたくさんあるのだろう。 そんな仲間を見送りつつ、 「さ、ちょいとお付き合い願えますかね?」 と、リーナを誘う竜馬。 「はい♪」 無論リーナがそれを拒むはずもなく、2人は連れだって川沿いを歩き始める。 途中、リーナの表情を伺いつつ、腕を組むくらいは許してもらえないだろうかと考える竜馬であったが……そんな彼の想いを察したのか、 「天川さんがご無事で良かったのです♪」 満面の笑みでそう言いつつ、リーナは竜馬の左腕に手を伸ばし、ぎゅっと抱きしめ……2人は仲睦かしく、仲間達から遠ざかり、2人だけの時間を過ごす。 「早起きは三文の得と言うけれど。さて、この場合得をしたのは誰になるのかしらね」 そんな事を考えつつ、空を仰ぎ見る弥生。 ……嵐は過ぎ去った。 青い空、白い雲、川のせせらぎに心地よく吹く風……この穏やかな風景を汚す者はもう誰もいない。
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参加者:10人
作成日:2010/08/08
得票数:楽しい4
カッコいい8
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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