ナッキスタイル 制裁、拳語(コブシガタリ)!


<オープニング>


 廃倉庫の真ん中で、男達が円を組んで座っていた。
「湘南アトムスク、木更津自警団、南房天使……この辺で三竦みしてた連中がたった一週間で総潰しにされた」
「それも別地区からの新参勢力だ。一部の兵隊もそっちに流れて、相当な規模になってるらしい」
「そろそろ俺たちも、中立だなんて言ってられなくなったな……」
 壁に大きく描かれた『P拳』のロゴマーク。
「こっちもなんとか凄腕を味方につけて、連中のボスを……」
 その時である。
「どうするって?」
 廃倉庫の入口に、天竜頭蓋が立っていた。
「お前……」
「ボスの天竜だ。俺の名前が分かったなら――」
 拳を鳴らして、彼は言う。
「くたばりヤガレ」
 
 ジャックキングの配下、バッドヘットの天竜頭蓋。そのコピーが動き出した。
 彼は能力を使い不良グループ一つを配下に入れ、ある地区のグループを制圧しようとしている。
 止めに入りたい所だが、生憎銀誓館グループじゃあ運命の糸が繋がらない。
 そこで……
「相手側のグループに入って、一緒に戦ってやろう……っつーわけか」
 机に腰掛けた女が、後を繋ぐようにして言った。
 赤いジャケットとパンツルック。炎の拳を持つ女。
 ファイアフォックス、揚羽夏希である。
「そいつらを野放しにすれば、どっかの誰かが泣くだろう。私等の知らない所で、知らない誰かが死ぬだろう」
 揚羽夏希は立ち上がり、拳を鳴らしてこう言った。
「――だから、天竜頭蓋をぶっ飛ばす」
 
 襲われる予定のグループ。名を『ピースナックル』。
 港町の廃倉庫をアジトにする少数グループである。
 彼等の信念は、拳による平和。
 グループ抗争が一般の人々に被害を齎す時にのみ、拳を振るって民を守る。アウトローにして正統派の不良グループである。
 今回は、彼等が求める助っ人戦力としてグループに加わって欲しい。
 グループ入りの方法は簡単。
 アジトに出向き、ボスと殴り合って拳の真っ直ぐさを見せれば良いだけのこと。
「俺達が今までやって来たのと、大体同じだ。難しくもなんとも無いだろ」
 そう言って笑う夏希を横目に、予報士は説明を続けた。
「彼等の仲間に入ったら、そのすぐ後に天竜のグループと戦いだ。名前はマッドカンフー。略してM拳。数にものを言わせたグループだよ」
 大体の連中はP拳の猛者達が引き受けてくれる。
 が、問題は天竜の力によって特に強化された精鋭達だ。
「天竜を含めた強化M拳。合わせて9人」
 ふと、集まった人数を数える。
「アビリティは?」
「無いね。全員素手。天竜も流儀に付き合ってか、刀を腰にぶら下げたままだ」
「ふうん……じゃあ、決まりだな」
 夏希が、少し楽しそうな顔をして顎を上げた。
「天竜含めたM拳9名……素手で殴って、ぶっ飛ばす!」

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参加者
天鳥・てふてふ(真電脳魔女っ娘・b00248)
山田・龍之介(サーフライダー・b02920)
寿・司(鈍器使い・b11590)
緋沢・真理(迅雷の夕闇・b24768)
皆月・弥生(夜叉公主・b43022)
東雲・影虎(白にして烈風・b53232)
夢月・詩祈(中学生真貴種ヴァンパイア・b57535)
四条・要(絶対理性・b59329)
NPC:揚羽・夏希(代表的真ファイアフォックス・bn0001)




<リプレイ>

●ピースナックル
 これまでの内容を割愛する。
 P拳リーダー落華正治が繰り出した強烈な顔面ストレートを、真理は鼻っ面で受け止めた。
 骨の軋む音が一層激しく響くが、真理は微動だにしなかった。
「……な」
 殴れば必ず相手が倒れると言う触れ込みの拳が、まるで通用していない。
 それだけではない、彼女の目はまっすぐに正治の目を見つめていた。
「無粋なクラッチジャンクどもをぶちのめすんだろ。ボクらも混ぜてよ」
 右ストレート。その一発で、正治は吹っ飛び廃材の中に突っ込んだ。
「リーダー!」
 廃材の中から腕が上がる。
「良い拳だ。それに、天竜って奴にも匹敵する。……合格だよ」
「ありがとう。よろしくね!」
 真理は笑顔でそう言った。
 アジトの防護シャッターがぶち破られたのは、正にその瞬間である。

●寿・司(鈍器使い・b11590)
 なだれ込むM拳連中。先頭をきった強化体がP拳の新人を殴り飛ばそうとしたその瞬間、司がその腕を掴み揚げた。
「……お前がやろうってのか」
「よろしく。どちらかが倒れるまで存分にやりましょう」
 途端、司の頬に叩き込まれる拳。
「スカしてんじゃねえ!」
 司は一度後転して身構えた。
 そこへ強烈な蹴り。
 司はガードも間に合わずに即頭部を強打。地面で顔を摩り下ろした。
 その間、司がにやりと笑う。
 このまま叩きのめそうと近寄ってくる男は、司の顔を見てニヤリと笑う。
「お前」
 喋った途端、男の顔面を思いっきり殴る。
 振り上げた男の腕を拳で弾き、そのまま強烈なフック。更に逆の腕でフック。
「くは、ははは……」
「はははは」
 二人は壮絶に笑いながら拳を叩きつけ合った。
「楽しいなあ殴り合い! そっちはどうよ!」
「喋ってる暇なんかあるかあ!」
 アッパーカットが炸裂。司の爪先が地面から離れる。
 ギリギリで着地したかと思いきや、司は身を屈めて男の腹にストレートを叩き込む。
 男はくの字に折れ曲がると同時に、組み合わせた両手を司の背に振り下ろす。
 二人は両手を掴み合い、パワーゲームへと転がり込む。
「これだ。これだよ……いくぜM拳!」
 大きく仰け反る司。引っ張られる男。
 司はそして、バネのように振り戻し、強烈なヘッドバットをぶち込んだ。
 血を吹いてぶっ倒れる男。彼はそのままぐったりと動かなくなった。
 司は彼を見下ろして、血の混じった唾を吐き捨てる。
「楽しかったぜ、M拳野郎」

●天鳥・てふてふ(真電脳魔女っ娘・b00248)
 襲い掛かる巨大な強化体を前に、てふてふは本を開いていた。
 難解な本を左手に。右手は優雅に髪をかき上げている。視線はあろうことか本に向けられている。
「こっち見やがれ!」
 てふてふの顔に向けて放たれる拳。
 が、それは彼女の右手に止められた。
 腕の周りに魔法陣が展開する。
「てめえも、強化体……」
「違うわ」
 瞳が動き男を捉える。
 左手に本を開いたまま、てふてふは半歩前へ。男の顎に己が拳を叩き込んだ。
 思わず仰け反る男。
 そこへ、更に右のラッシュが襲う。
 人はこの戦い方を無粋と呼べるだろうか。
 それには否と応えよう。
 この拳には信念があり、願いがある。
 誰も文句を言えない、彼女だけの世界がある。
 男にラッシュを加えながらてふてふは語りだす。
「大切な誰かを守る為に戦術を学び訓練を重ね、相手を観察し分析し、最大効率を叩き出す、私が信じる最高の戦い方よ」
 振り上げられた男の腕を左右同時に弾き、男の頭を髪ごと掴んで左右に振り回す。
 男の足が地面から離れたその途端、てふてふは彼の顔を近くのワゴン車に叩き付けた。
「私が磨いてきたものが、上っ面なテクニックではないことを教えてあげるわ」
 本が閉じられ、回転しながら宙へと飛ぶ。
「舐めるな、脳筋」
 全身の魔力を乗せた右ストレートが、男の顔面をとらえ、ワゴン車の側面を盛大に凹ませた。
 ずるずると崩れ落ちる男。てふてふは踵を返して歩き出す。
 その左手に、本が戻った。

●緋沢・真理(迅雷の夕闇・b24768)
「誰かの為の力って、シンプルだけど貫くのは難しい。力を振るってる今なら分かる」
 相手の飛翔蹴りをガードで受けながら真理は呟く。
「だから、ボクはピースナックルを心から尊敬するんだよ」
 相手が突っ込んでくる。
 真理はキックで牽制。モーションが崩れた瞬間に一気に詰め寄った。
「いいねいいねこの戦い方。昔を思い出すよ」
 右フック。
 ストレート。
 連打。
 連打。
 連打。
 連打。
 連打。
 連打。
 最期はアッパーカットで相手をぶっ倒した。
「今この時、ボクの拳に勝てるものは無い!」
 真理は身構え、そして笑った。

●皆月・弥生(夜叉公主・b43022)
「今の私は不良だから、こっちの流儀でやらないとね」
 腰に下げた剣をそのままに、弥生は拳を抜いた。
 突撃してくる強化体。そのパンチを、首の動きでかわして見せた。
 風に動いた髪に拳が隠れ、直後には相手の腹にパンチを叩き込んでいる。
 が、同時に右ストレートが弥生の顔面に直撃した。
 軽く仰け反る弥生。だが足はその場から1ミリも動かなかった。
 体勢を戻した弥生の口は、歪に歪んで笑っている。
「てめぇ痛みが……」
「まさか、滅茶苦茶痛いに決まってるでしょ」
 男の顔面にパンチ。もう一度パンチ。
「でも」
 そして弥生は、男の首を掴み上げた。
 片手で強烈な連打を叩き込む。
「私は心の痛みを知っている」
 自分の無力に涙した時。
 理不尽に押し潰された時。
 大切な人を、大切な絆を切り捨ててしまった時。
「心のあげる悲鳴と痛みを知ってる」
 身体を捻った男の膝蹴りが弥生の腹に命中。
 続いて屈み体勢からの足払い。弥生は思わず足を取られコンクリートに背中を打ちつけた。
 一瞬口から空気が抜ける。
 追撃の踏みつけを三発連続転がって避け、弥生は素早く起き上がる。
「私の名前に賭けて」
 ローキックを踏ん張って耐える。
「私を支えてくれる人達の存在に賭けて」
 ハイキックを側頭部で受けて耐える。
「音を上げるわけにはいかないのよ」
 相手が焦って体勢を変える瞬間に、弥生は右腕を目一杯に引き絞った。
「歯を食いしばれ!」
 打ちつけ、振りぬかれる右ストレート。
 きりもみ回転して廃材に突っ込む相手を眺め、弥生は長く息を吐いた。
「心が折れる痛みっていうのは、こんなもんじゃないぞ」

●東雲・影虎(白にして烈風・b53232)
「行くぜー!」
 跳躍した影虎の回し蹴りが大男の側頭部を正確に捉える。
 が、男は微動だにしない。代わりに強烈なパンチを繰り出してきた。
「あ、うわっと!」
 空中で仰け反ってパンチをかわす影虎。
 無言のまま身構える大男。誰がどう見ても、巨人が子供をいたぶる寸前の光景に見えることだろう。
 だが影虎は、拳を構えてにやりと笑った。
「オレの心意気を見せてやるんだぜ!」
 振り下ろされた拳を右に飛んでかわし、もう一発を転がって回避。
 大男の股下を潜って抜け、膝に蹴りを食らわせた。
「どーした、オマエの心はその程度か!」
 振り向き様のキック。
 影虎は屈んで回避。
 振り回すように繰り出された腕と脚を、影虎は全てジャンプとスライディングで回避し続けた。
 が、物事には限界がある。
 フェイントで出されたパンチに引っかかり、影虎の腹に強烈なキックが叩き込まれたのである。
「ぐあっ!」
 空中を一回転して鉄パイプの山に突っ込む影虎。
 激しい金属音の中、起き上がろうとした影虎は足を取られて転がった。
 仰向けになった影虎の腹を踏みつける大男。
「う、ううう……」
 しかしそんな状況でありながらも、影虎は表情を変えなかった。
 笑っていたのだ。
「ホンキで来なよ、ホンキで」
 怪訝な顔をした大男の脛を思いっきり蹴飛ばす。
 よろけた隙に離脱。影虎は高く跳躍した。
「ガキだからって舐めんじゃねーぞ」
 空中で身を捻る。
「負けてなんかやらねーぞ!」
 影虎のパンチが、大男の顔面を強打。
 大男は銃撃でも食らったかのようにもんどりうってその場に倒れた。
「楽しかったなー。終わったら打上げだ」
 地面に大の字に転がり、影虎は笑った。

●夢月・詩祈(中学生真貴種ヴァンパイア・b57535)
 可憐な少女が居た。
 名を詩祈。
「さあ、全力で……戦い、ます」
 途切れ途切れに喋りながら詩祈は身構えた。
 銃もナイフも手に持たなず、一見すれば無力そうな少女は、男と相対していた。
「……聞こえねえな、ガキ」
 しかし、相手はM拳。女子供だろうと容赦せず、いきなり蹴りを放ってきた。
 詩祈は瞬間的に後退して蹴りを回避。彼女には銃は無いが、大事な友達から学んだテクニックがあった。
 が、しかし。
 詩祈の肩に丸太のような足が激突した。一発目がフェイントだったのである。
「あぐっ!」
 身体を曲げて地面をバウンドする詩祈。
 男がゆっくり近づいてくる。
「戦うと、決め、たら……」
「ああん?」
 地面に両手をついて、詩祈は上半身を起こす。
「迷、うな……覚悟を、決めない、奴は……」
「聞こえねえよ」
 男が近づいてくる。
 詩祈が、小さな足を地面に立てた。
「何も得ない」
「だから、聞こえねえって……!」
 男が飛び出す。
 太い腕を振り上げ、詩祈の顔面へと繰り出す。
「そして」
 詩祈の顔が上がった。
 その両目を見て、男は一瞬硬直する。
「勝負を諦めるな!」
 詩祈のアッパーカットが、隙を見せた男の顎に直撃。
 男は半回転して地面に後頭部を強打。そのまま伸びて動かなくなった。
「……です」
 ゆっくり構えを解く詩祈。
 ぐらつく視界の中、少女は天井を見上げた。
「はっきりしゃべらないと……ですね」
 まだ少しだけ言葉を途切れさせたまま、詩祈はその場にばったりと倒れた。

●四条・要(絶対理性・b59329)
 要は戦っていた。
 相手の腕を最小限の動きでいなし、体勢を利用して小刻みに攻撃を加え、覚えた型を的確に使って攻撃を機械のように打ち込み続ける。
 効率的で打算的な、本来なら最も強いとされる戦い方だった。
 だが……。
「弱え」
 要の掌底を胸に受けた男は、首をこきりと鳴らしながらそう言った。
「な……」
「ハートが乗ってねえ。どこでお勉強したのか知らねえが、そんな拳じゃ……」
 引き絞られる腕。
 効率も何も無いパンチが、要の顔面を正面から打ち据えた。
「何も貫けやしねえぞ!」
「――!!」
 宙を舞う要。
 天井の照明が目にまぶしい。
 光が広がり、滲み、そして、要の意識は暗転した。
「――」
 昔、機械のような少女がいた。
 少女はある人に救われ、学園と言う場所へと映された。
 仲間ができた。
 友達ができた。
 機械に、感情が生まれた。
「――」
 ある人の言葉を思い出す。
 亡き師父が。
 友が。
 暗転した要の背中をそっと……そして強く押した。
 機械の胸に、血の炎が灯った。
「拳に魂を込めろ……」
 光が見える。
 光はしぼみ、天井が見えた。
「わたしはわたしである為に、この拳を振るうのだ……要」
 要は宙で回転。地面に両脚をつけ、身構えた。
 それまでの構えではない。その辺のゴロツキと同じ、不恰好で無様なファイティングポーズだった。
「さあ、私の拳とお前の拳。どちらが上か勝負と行こうか」
「……それだ」
 男と要。二人は同時に地面を蹴り、同時に駆け出し、同時に身を捻り、同時に腕を引き絞り、そして同時にただのパンチを繰り出した。
 要の頬にパンチが突き刺さり、男の頬にパンチが突き刺さる。
 炎のような、人間の血液が出す熱さが、男の頬を焼く。
「うおおおおおおおお!!!!」
 拳を振りぬく。
 それは人間の拳であり、要の拳であった。
 そして、男を殴り倒した、勝利の拳であった。
 肩で息をしながら、要は自分の胸に手を当てる。
「師父、皆……」
 その胸は、人の鼓動を鳴らしていた。

●揚羽・夏希(代表的真ファイアフォックス・bn0001)
「おいおい、皆白熱してんなあ……」
「お前はどうなんだよ、炎の」
 サングラスの男と夏希は、腕組みしたまま肩を並べていた。
「皆に手間はかけさせたくねえ。三発っきりで決めようぜ」
「…………」
 互いに向き合う。
 ゆっくりと歩み寄る。
「揚羽夏希」
「松戸寛二」
「「クタバリヤガレ!!」」
 夏希のパンチが顔面に入り、寛二のパンチが顔面に入る。
 仰け反って放った二度目のパンチ。拳と拳を突き合わせ衝撃波が走る。
「やるじゃねえ……か!」
 互いに飛び退き、コンクリート床を駆け出す。
「「うらあああああ!!」」
 空中で互いに拳を固め、相手のど真ん中に狙って繰り出した。
 すれ違い、着地。
 寛二のサングラスにヒビが入る。
 夏希が膝を突く。
「勝負……」
「あったな」
 そして、寛二は仰向けに倒れて気絶した。
「愛してるぜ、拳ばっかりの馬鹿野郎が」
 夏希は脱いだジャケットを肩にかけ、瞑目した。

●山田・龍之介(サーフライダー・b02920)
 8人全ての強化体が倒された。だがM拳とP拳の戦いはまた続いている。
 無数の男たちが殴り合い、ぶつかり合っている。
 そんな中で、龍之介はある男と対峙していた。
「天竜頭蓋。お前の相手は俺だ」
「上等だタコ」
 二人はゆっくりと歩み寄り、互いに額をぶつけ合った。
 その額が離れた時が、二人のゴング。
 頭蓋の拳が叩き込まれ、龍之介の拳が叩き込まれる。
「男なら誰でもテッペン夢見らあな、でもよ」
 頭蓋の右が龍之介の肩を揺さぶる。
「お前が目指してんのは本当にテッペンか」
 龍之介のパンチが頭蓋の顔面を打ち据える。
 頭蓋の膝が龍之介の脇腹を曲げる。
「本道は誰かに、いいように使われてるだけだったりしてな!」
 龍之介の左手が頭蓋の頭を掴み、ヘッドバットを叩き込む。
「お前の筋はきっちりあるのかい」
 互いに顔を付き合わせたまま、二人は睨み合った。
「喋んな、今俺らは……殴り合ってんだろうが」
「…………はは」
 二人は同時に唇を釣り上げ、獰猛に笑った。
 その後突如、二人は半歩ずつ下がる。
 風を押しのけるようにして腕を引き絞り、頭蓋が、龍之介が、二人の顔面に強烈なパンチをぶち込み合う。
 一発づつ。しかし強烈に。
 汗が弾け、口から、鼻から血を流しても拭うことを知らず、ひたすら拳を叩き込んだ。
「名乗れタコ!」
 二人同時に腕を絞る。
 全身の筋肉が膨らんで軋み、全身全霊が拳に集まる。
「山田龍之介!」
「天竜頭蓋!」
 直後、二人の拳が交差し、互いの頬に叩き込まれる。
 クロスカウンター。
 その末に倒れたのは、頭蓋の方だった。
「か、は」
 頭蓋の体が消滅を始める。
 皆が見つめる中、龍之介は消え行く頭蓋に問いかけた。
「お前程の奴が、いつまでのジャックの駒で満足か?」
 頭蓋は獰猛に笑って、拳を突き出す。
「んなこと、言葉で訊いてんじゃねえよ。山田龍之介」
「……だな」

 天竜頭蓋と全強化体の消滅により、M拳対P拳の戦いは幕を下ろした。
 天竜と九人のファイター。彼等のことを覚えている者は居ない。
 だが、彼等の拳の熱さだけは、残ることだろう。


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参加者:8人
作成日:2010/10/06
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