<リプレイ>
● この街は犯罪で溢れている。 人々は良心と呼ばれるものを忘れ去り、相手を出し抜くことを考える……。 そうしなければ生きていけない。 ここはそんな街だ。そう、ドン・ナイトメアがいる限り――。
● 正面の自動ドアが開き、二人の男を招き入れる。 エントランスホールに姿を見せたのは蒼穹・克(碧羅蒼天・b05986)と黒菱・涅雅(覇鬼・b62200)。 共にと素早く周囲に目を走らせ、 ……居ない。 この広いエントランスホールに、誰も居ない。 本来であれば、まずは声を掛けてくるであろう受付嬢も不在になっている。 「これは……」 「ああ……罠だ!」 二人は同時に飛び退る。 何かが煌いた。刃――アームブレイド?! しかし、次の瞬間には人の姿どころか刃すら見当たらない。 が、 「姿は消せても、攻撃の癖は消せないぜ」 応えるように空気が揺らぐ。 いる。 姿は見えないがどこかにシャドウがいる。 涅雅は昔のことを思い出しながら、それを探す。
俺とシャドウは、かつて同じ暗殺組織の一員として、数多くの死線を潜り抜けてきた。友情と呼べるような感情はないが、奴の戦闘を一番近くで見続けていた分、戦法は熟知している……。
「どうやら闇纏いを独自に進化させたようだな」 ふっ、と笑ったようにまた空気が揺らぐ。 「お久しぶりですね……あの時のカレーの恨み、晴らさせて頂きます!」 克も姿を見せぬシャドウに声を掛け、 「何度か手合せしましたが、紙一重の勝負で決着をつけることは出来ませんでしたね。ですが、今回は2対1、勝たせてもらいましょう」 覚悟を決めたその眼差し、静かに力が高まっていく。 顕現せし、その力をもって、 「今回のスパイスと行きましょうか」 克が何かを投げた。 赤い物――消火器?! シャドウが気付いたときにはもう遅い。床に激突して消化剤が一気にエントランスホールに広がった。 「……なるほど、少しは考えてきたようだが」 シャドウの声だ。 まだ余裕が見える。しかし周りは白い靄に包まれて、動けば一目瞭然。 さて、どこからくる? 「くだらんな……」 左?! 「この程度で私を止められるとでも?」 今度は右?! 空気はいささかも揺らいでいない。ということは何処かに通信機でもあるのか?! 「だが、背中を預けられる仲間の存在。それが今の俺とお前の決定的な差だ」 そう言って鮫のように笑う涅雅。 じりじりと高まる緊張。僅かな揺らぎすら見逃すものかと五感のすべてを動員する。 「そろそろ終わりにしよう」 「……最後の一撃は、威力の高い空中からの攻撃。それがお前のポリシーだったな」 ぼそりとつぶやいた涅雅の言葉。 それに反応したのか、大きく靄が揺らいだ。 「やはりこうくると思っていましたよ……! あなたのクセは見切っています!」 「これが俺の――影(シャドウ)だ」 克が飛ぶ! 涅雅が足元から赤き影を呼び起こす! 「……!」 用意周到な罠だったのだと気付いたときにはもう遅い。 赤き手に大きく引き裂かれたところを、克が無数にも映る連続の蹴りで叩き落す。 「……ぐはぁ」 シャドウは地に叩き付けられ、そのまま横たわった。 いや、直後に歯を噛み締めて体内に仕込んだ爆弾のスイッチを入れる。 凄まじい爆風に、思わず目を瞑り――開ければ、そこに人の居た痕跡は残っていない。 「シャドウ、彼とも別の形で出会えていれば……」 克は壮絶な死に同情を禁じえない。 だが、倒すべき敵は他にもいる。 「お前でも一人で逝くのは寂しいだろう。今すぐナイトメアの首を取って来てやる」 最後にそう声を掛け、涅雅は次なる戦いへと向かった。
● (「かつては、この刀以外に信じるものなんて無かった……」) 樹・吉野(永訣のサウダージ・b16185)が扉に手をかける。 (「けど、今は違う。背中を任せられる相棒がいる」) 後ろに視線を投げかけ、 「わたしの命は預けたわよ、優実」 声と共に素早く扉を押し開ける。 そのまま雪崩れ込むように中に押し入れば、出迎えた銃弾がその残滓をなぞっていく。 「そこね、ダンサー!」 葉中・優実(花蝶風月・b17825)が扉を盾にしながら二丁拳銃で反撃。 だが、飛び交う銃弾を舞うようにしてダンサーも難を逃れた。 「久しぶりね、ダンサー。いえ、朱雀姉さん……」 吉野の声に踊りが止まる。 まるで見定めるようにダンサーは吉野を直視して……。 「一子相伝の古流剣術『稜威鬼流』その当主の座を妹である私に奪われ、力のみを求める殺し屋に身を落としたとは聞いていたけど」 「……だから、なに?」 吉野に対して浮かぶのは冷笑。 そこに居るのはかつての姉ではなく、血を求めるただの修羅。 「死んでもまた会いましょう……あなたが殺した相棒の口癖よ。覚えてる?」 ならばと、優実が二丁拳銃を構え口元に笑みをつくる。 「ええ、懐かしいわね。さしずめその銃で敵討ちといったところかしら?」 「そう姉の形見よ。装弾数は4発……けど、撃ち尽くす前に仕留める。あなたを狂わせたドンにも一発あげないといけないもの」 「……そうね。どうせ当てることは出来ないのだから、死出の旅路には身軽な方がいいわね」 互いに睨み合う。 もう引くことなんて出来ない。 「いくわよ、相棒!」 「朱雀姉さん……、決着を付けましょう」 優実が銃火を切り、吉野が間合いを詰める。 飛来する銃弾を上半身の動きだけで避け、闇を纏わせた『真鉄』が走る。 「当主の証、この刀を手にするために技を磨き続けた、あの頃の姉さんはどこにいってしまったの?」 ダンサーはそれを舞踊による変則的な動きでかわすと、返礼に銃弾を飛ばした。 「そう……、わたしの知っている朱雀姉さんは……もういないのね……」 剣劇と銃劇。 まるで相克の螺旋のように死の舞踏が続く。 くるくると、狂狂(くるくる)と。 「……言いたいことはそれだけ? なら――死になさい」 ダンサーの背面撃ち?! 目標は優実だ。 回避不能なタイミングで凶弾が迫る。 一瞬、優実の背後にぷぅの姿がだぶって見え……。 「……悪いけど心電図を真っ平らにできるほど穏やかなハートはもちあわせてなくってね」 耐えた。 満身創痍ではあるが、闘志はいささかも衰えていない。 「まさか……はっ」 「これが、わたしに出来る最後の手段……」 間隙を突いて、吉野の必殺剣が! ダンサーは無理な体勢で回避運動を取り――目を見張った。 吉野が刀を投げ捨てて組み付いてきたのだ。 「優実、わたしと一緒にダンサーを撃ちなさい!」 「……っ、バカなことはやめなさい」 足掻けども振りほどけない。 「死んでもまた会いましょう? 次はオフィスよりもカフェがいいわね……姉も好きだったし」 優実がダンサーの瞳を真っ直ぐに見据えて、引き金を引いた。 轟く銃声。 倒れ込む、吉野とダンサー。 「大丈夫?!」 慌てて優実が駆け寄る。 吉野が返す目には、確かな強さが。 「馬鹿ね……、こういう時こそ笑ってみせるものよ? ハードボイルドに、ね」 そして、胸から取り出したのは姉の写真が入ったロケット。 ちょうど何かにぶつかって、ひしゃげていた。
● 長い廊下。 リューン・クリコット(夜闇を斬り裂く明星・b22495)の歩みはゆっくりと、そして確かに。 この先に両親の敵がいる。 父親の元弟子であり、突如凶行に及んで両親を殺した憎むべき男が。 隣を歩くアイリス・ゴールド(偽運命予報士・b71070)にとっては兄弟子に当たり。 あの日、行方をくらませてから追い続けてきた男だ。
そう、すべては復讐のために!
「ようやく、ようやく見つけたよワンにぃ」 アイリスの視線を受け止め、ワン・ショットが左手で帽子を押し上げた。 そして返答代わりにと、口元に不敵な笑みをつくる。 「にゅ、探しましたにゅ。両親の敵、覚悟ですにゅ!」 「待って」 攻撃を始めようとするリューンを、アイリスが止めた。 そう、聞きたいことがある。 それを聞くまでは、 「どうして、師匠を殺したの?」 「………」 「なんで、なんでなにも答えてくれないの! ワンにぃ!」 「結局、理由なんて無かったですにゅ」 留められたリューンが再び攻撃態勢に移る。 同調するようにワン・ショットもまた腰の拳銃に手を伸ばしていく。 「この時をすっごく待ってたですにゅ。絶対負けないですにゅ」 「……そうか、それは楽しみだ」 互いにゆっくりとしたモーションで、更にスピードを落とす。 場を包むのは静寂。 しかし、この間もイメージの中で見えない戦いが続いている。 僅かな動き、息遣い、ほんの僅かな動作ですら、相手の先を制するために必要なもの。 一秒がまるで二倍にも三倍になったかのような濃い時間。 「……!」 先に動いたのはリューン。 だが、それよりもワン・ショットの銃が先に咆哮を上げた! 飛来する凶弾。 そこにアイリスが踏み込む。 二本の仕込み杖が一瞬のきらめきを残す。ついで訪れたのは身を引き裂くような衝撃だ。 「くぅぅ……」 苦痛にうめくアイリス。 しかし、それによって生まれた時間は無駄にはならない。 間隙を突いてケルベロスオメガがワン・ショットに飛び掛る。むろん、避けようと身をよじるが、 「――いまですにゅ!」 光が一筋の線を描いて駆け抜けた。 腹部を撃ち抜かれたワン・ショットは大きく身を崩して倒れこむ。 「やったですにゅぅ、アイリスお姉ちゃん、ダロス、ありがとうですにゅ」 リューンが素直に喜ぶ。 だが、それには目もくれずアイリスは急ぎ駆け寄った。 「ワンにぃなら今のは対処できた筈、どうして」 「……ふっ」 ワン・ショットの傷は深い。もう助かることは無いだろう。 「にゅ、なぜ両親を殺したのか教えてもらいますにゅ」 その問いに、ワン・ショットは顔を背ける。 このまま墓場に持っていくつもりだ。 「もしかして、妹を人質に取られているの?」 表情がこわばる。 沈黙を保っているが、真実は明らかだ。 「そう、そういうことだったんだ。ごめん、ごめんねワンにぃ。ボクは、ボクは!」 「にゅ、にゅぅ、そんな理由があったですかにゅ……」 「知られたくなかった。知れば……お前達は悲しむからな」 ワン・ショットは昔のように優しい笑みを浮かべる。 そして、そのまま息を引き取った……。 「おやすみ、ワンにぃ。……行こう、この先に本当の仇がいる」 アイリスに首肯し、リューンは決意を露にする。 「ドン・ナイトメア、絶対に許さないですにゅ」 戦いはまだ終わっていない。
● 俺の名はレイジ、本名じゃねえ。rage……激情を意味する言葉さ。 僅かばかりの金と、【ある物】を求めて、雇われ殺す。 それが俺の日常だ。
「ドン・ナイトメアに興味はないが、ブレイドといったか」 「ああ」 南雲・レイジ(烈火の剣侠児・b47935)にブレイドはゆっくりとうなずく。 「お前の女を殺したのは俺だ。あの女は【いい物】を持っていた……」 その言葉に殺気が膨らむ。 「そうか……他の連中もやられたことだし、暇を貰おうかと思っていたんだが」 鋭い一撃! 切っ先がレイジの真横を駆け抜ける。 「気が変わった。その命、貰い受けよう」 今度は切り返し! それをバックステップでかわしてレイジが反撃に移る。 まずは上段への突き――体勢が泳いだところに強引に体ごとぶつかっていく。 火花が散った。 互いの刃と刃がぶつけ合い、力と技を打ち込みあう。 「この剣の名はリーファか?」 「……なっ?!」 レイジの言葉にブレイドが動揺を見せた。 その隙を突いて一気にエレベーターの壁に押し付ける。 「……やはりな。お前の女と同じ名前か」 応えはない。 だが、怒りに燃える双眸がはっきりと答えを示している。 「剣は道具、それに名前をつけるような軟弱な奴が俺を殺せるかね?」 「……なめるな!」 ブレイドがレイジを跳ね除ける。 強引に一撃。続けて鋭い一撃を。 怒涛のラッシュにレイジの二の腕に傷が走る。頬に赤い線が走る。 だが、その時――エレベーターが止まった。 扉が開く。
ブレイドと俺はフリーランスの護り屋で、相棒だった。だがブレイドは大切な者を護れず、復讐に身を焦がすようになり、俺と袂をわかった。だが、今はドン・ナイトメアを殺すために、奴を……ブレイドを、殺す。全ては……目的を果たすためだ。
「久しぶりだな」 雹牙堂・カイナ(誇り高き守護騎士・b67028)が飛び込んできた。 「なに?!」 咄嗟にブレイドが剣で受け流す。 「俺は決して謝りはしない」 「……」 「なぜなら、ナイトメアシティの人々を悪の手から護るために、こうすることが必要だからだ」 この間も打ち交わされる剣と剣。 「『護るというビズに誇りを持つ』。それが俺達の合言葉だったな……相棒」 「古い話を……もうそんなこと忘れてしまったさ」 ブレイドが剣を横薙ぎに払った。 カイナがバックステップで距離をとる。 「変わってしまったな」 「……かもしれん」 前にカイナ、後ろにレイジ。挟まれた形となったブレイドは呼吸を整える。 「だがなあ! 前しか見れねえのは今も昔も変わらねえな!」 レイジが今までとは比べものにならない勢いで襲いかかる。 カイナも必殺の一撃をもって。 ブレイドもまた同様。 それぞれの刃が命を求めて交じり合う。 一拍の間を置いて――ブレイドが崩れ落ちた。 「さらばだ」 カイナが剣を握り締めたまま、もう動かぬ男の顔を見つめる。 涙の代わりに、ぽたりぽたりと固く握り締めた拳から血が流れ落ちた……。 隣ではレイジも男の顔を見つめ、 「俺はレイジ。……rage、【激情】に駆られた命を狩る、それが俺の渇望」 それが名前の由来さ、とつぶやきカイナへと向き直る。 「いいな、レイジ。俺達が仲間なのは、ドン・ナイトメアを倒す時までだ」 「そう来ると思ってたぜ。お前の眼は濁りもしてなけりゃ、虚ろでもねえ。護るんだろう?」
ああ、そうだ。 そして奴を倒したら、彼女の仇はブレイドに代わって俺が討つ。 そう、レイジ。お前は俺が倒す――。
● 「あなたは分身……なら、言う事は一つ。死んでもまた会いましょう。悪夢でね」 優実の声を最後に聞いてドン・ナイトメアは倒れた。 「皆お疲れさまでしたにゅ〜。皆のハードボイルドカッコ良かったですにゅ〜♪」 終わったと、リューンが歓喜の声を上げる。 これで、この街にも平和が。 悪夢に囚われた人々も意識を取り戻すことだろう。 「さあ、果たし合いだ。いくぞ、レイジ……!」 「ああ、死合おうぜ。さあ、お前はどんな【レイジ】を見せてくれる!?」 「あら?」 「あの二人、まだやる気ですね」 カイナとレイジが剣を抜いて向かい合う。 「まあ、いいんじゃないですか」
ここはそんな奴らが生きる世界。 不器用に、己のスタイルを貫く奴らが生きていく世界だ――。
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参加者:8人
作成日:2010/11/05
得票数:楽しい2
カッコいい17
ロマンティック3
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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