譲れねえもの


<オープニング>


 駅の近くにある寂れたゲームセンター。
 受けるイメージどおりに最新のゲームは無く、既に十年以上が経過した古いものばかり。
 とはいえ、価格設定が当時のままであることを鑑みれば、それなりの需要も見込めそうなものだ。
 そう……ここがスクラッチと呼ばれる不良グループの根城でなければ、だ。
 加えるならば、その存在は風前の灯火に近く……。
「おい、いい加減にしろよ。仲間内で争ってる場合じゃねぇだろう!」
「……でもよぉ」
「こいつが……」
「いい加減にしろって言ってるだろう!」
 リーダーらしき男の言葉に、争っていた二人が同時に顔を背けた。
「しかし、どうするんだよ? このままじゃナイトキッズの連中には太刀打ちできないぜ」
「分かってるよ、分かってるけどなあ……」
 有効な手段なんて無いことは、誰もが知っている。
 まともにぶつかれば勝てる見込みなんてない。いや、策を講じても難しい。
 ならば逃げるのか……?
 苦虫を噛み潰した表情のままで、思考が止まる。
「確かに勝てねぇだろうよ……。だけどよ、ならなんで、お前達はこうして雁首揃えてんだよ?」
 リーダーが周りの連中ひとりひとりに目線を向けていく。
 みんな、どこかでくすぶっている。
「あいつらのやり口は知ってるよな?」
 当然だ。
 連中のろくでもないやり口に反吐が出そうだ。
「で、放っておいたらどうなる?」
 浮かんできたのは彼らの親しい顔だった。
 いっつも文句を垂れながら安値でバイクを直してくれる、おやっさん。
 俺達がたむろしてても笑顔で接してくれる、ここのの(ゲームセンター)じっちゃんばあちゃん。
 俺達のことをカッコイイって言ってくれる、後輩達。
 浮かんでは消え、また新しい顔が浮かぶ。中には小憎たらしい奴もいる。だけど、そんものも含めて滅茶苦茶にされるのは……嫌だ!
「無理強いはしねぇよ。バカなことをやろうとしてるって自分でも分かるからな」
「じゃあ、仕方ねぇよな」
「ああ、俺達バカだしな!」
「てめえら……」
 リーダーに仲間達がうなずきを返していく。
 もう言葉は要らない。

「いまどき、お涙ちょうだいかよ」
 
「誰だ?!」
「俺の名は天竜頭蓋。テッペンを獲る男だ!」
 入り口に立つ不敵な男。
 その後ろにはナイトキッズの連中が続く。
「お前らみたいな小物に時間をかけてる時間はないんでな。ここで引導を渡してやるぜ!」


「よく来てくれた。是非とも頼みたい依頼がある」
 山田・大五郎(高校生運命予報士・bn0205)の声に力が篭っている。よほど、思い入れがあるのか纏う空気すらいつもと違って見えた。
「ナイトメアビーストのひとり『バッドヘッド』天竜・頭蓋の動きを掴んだ」
 彼の持つ能力は『不良グループひとつを支配下におく』こと。
 加えて、彼の支配下に置かれた不良達の一部は能力者並の力を得た強化不良になる上に、頭蓋のグループは別の不良グループとしか運命の糸が繋がらないのだ。
 つまりは『不良グループ間の抗争』でしか倒すことが出来ない。
「というわけで、みんなにはスクラッチと呼ばれる不良グループに潜入してもらいたい。むろん、その上で頭蓋の野望を打ち破ってくれ」
 もし頭蓋を放置すれば、彼とその配下達は他の不良グループを襲い続け、勢力を拡大していくだろう。むろん、その過程で多くの血が流れることとなる……。
「分かった。じゃあ、そのスクラッチっていう不良グループのことを教えてくれ」
「うむ、スクラッチはあちらこちらであぶれた連中が集まって自然に出来たグループだ」
 悪い遊びもするが、基本的に自分達が楽しいと思ったことをやっている。
 むしろ気の合う連中達が集まって騒いでいるというのが、最も適切であろう。
「だが、こういった形ゆえに結束力は固い」
 潜入するには彼らから信用されなくてはならない。
「幸いというべきか、頭蓋のグループの攻勢を受けているため、彼らは苦境に立たされている。心の底では少しでも仲間が欲しいと思っていることだろう」
 ならば、いかに信用してもらうか。
 当然、彼らもスパイではないかと疑いの目を向けてくるだろう。
「そこで彼らの行動理由が重要になってくる。彼らが勝ち目がないと分かりつつも戦いを続けているのは、つまはじきにされた自分達を構ってくれる人達を守りたいからだ」
 ある意味、義侠心ともいえるその行動。
 ならば、同じ思いには応えてくれるに違いない。
「仲間になるもしくは協力態勢を作ることができれば、ほどなく抗争になるだろう。当然みんなには頭蓋と十人の強化不良の相手をしてもらいたい」
 ナイトキッズは他にも二十人近くのメンバーを有しているが、こちらはただの不良であるため、スクラッチのメンバーに任せて構わない。
 みんなが戦っている間は彼らだけで、もたせられるだろう。
 それよりも頭蓋や強化不良の相手をさせないように注意が必要だ。
「頭蓋は普通のナイトメアビースト程度、強化不良達は三分の二程度の技量といったところだ」
 ゆえに力押しで構わない。
 むしろ、豪快に行ってスクラッチの連中を力づけてやって欲しい。
「説明は以上だ。頭蓋を倒し、奴の侵攻を食い止めてくれ」
 その言葉を背に、能力者達は教室をあとにする。
 彼らと共に戦うために。
 彼らの思いを守るために。

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参加者
紫月・双牙(光焔真牙・b08033)
ルゥ・シルヴァン(三日月を駆るケモノ・b47794)
南雲・レイジ(烈火の剣侠児・b47935)
御崎・清音(御崎流格闘術師範代・b51187)
伊東・尚人(理の修行者・b52741)
ウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・b57572)
四条・要(絶対理性・b59329)
一橋・智巳(月光橋の守護者・b72282)



<リプレイ>


「ダメだ」
 思いを乗せた言葉は、リーダーのひと言によって霧散した。
「どうしてだ? 俺にも、あんた達と同じく守りたいものがある。このままナイトキッズの奴を野放しにしておけば俺の大切なものにも危害が及ぶ。だから、俺をナイトキッズと戦わせてくれ!」
 伊東・尚人(理の修行者・b52741)が口を荒げて、詰め寄った。
 無理も無い。仲間の、自分の思いを一蹴されたのだ。
「せめて理由は聞かせてもらいたい。俺も、俺の友も、このままじゃ納得できない!」
 南雲・レイジ(烈火の剣侠児・b47935)も食い下がった。
 他の能力者からも追求するような鋭い視線が飛んでいる。いや、それだけではない。同じスクラッチのメンバーからもうかがうような視線がリーダーに送られていた。
「……正直に言えば申し出はありがたい。だが、あんたたちが加わってくれても勝てる見込みなんて無い。あんたたちの思いが確かだからこそ、この戦いには加えられねえ」
 その言葉にスクラッチのメンバーが「ああ、確かにな」と口元を緩める。
 気のいい連中だからこそ、逆に能力者達を遠ざけていく。

「ここのじっちゃん達さ、良い顔して笑うよな。今時あんなにやさしそうな人は珍しいよな。俺もな、あんたらと同じで、大事なモン全てをぶっ壊してく輩を許せねぇんだよ」

 唐突に語りだしたのは、一橋・智巳(月光橋の守護者・b72282)。
 リーダー前に歩み出ると、
「ほら、握手しようぜ? 想いが同じなんだ。握手を交わしたらもう仲間、だろ?」
「聞こえなかったのか? あんたらは勝てるときを待て!」
「じゃあ、この町がどうなってもいいのか!」
「うっ……」
 返答に困っているうちに、智巳はさっとリーダーの手を握る。
「ほら、仲間だ」
「……強引な奴だ。いいだろう、認めてやるよ。この『三人』はこれから一緒に戦う仲間だ」
 リーダーが示したのは、尚人、レイジ、智巳。
「待て、どうしてボクたちが入っていない」
 そう、ルゥ・シルヴァン(三日月を駆るケモノ・b47794)を初めとして女性陣が入っていない。
「そりゃ、分かってんだろう。あんたたち、女じゃねえか」
「なっ?!」
「ナイトキッズの奴らは女だからって手を緩めてくたりなんてしねえ、傷もんにされるぞ」
「そんなことは分かってる。うちのヘッドは大怪我させられたんだ。許してなんかおけるか」
 ルゥがリーダーと睨み合う。
「ルゥちゃんの言うとおりです。ナイトキッズのやる事がわかっているからこそ、もうあんな思いのする人達を出したくはないんです」
 そこに、御崎・清音(御崎流格闘術師範代・b51187)が加勢に入った。
「もちろん戦う術は持ち合わせています、それは――」
 清音が、ウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・b57572)と、四条・要(絶対理性・b59329)に目配せを送れば、二人も真摯に思いを口にする。
「お願い、みんな優しくて、ええチームやったんや……ボクじゃ大したことはできへん、でもほんの少しでも力になれるんなら、なんか手伝わして!」
「護りたいのだろう? わたしがなしえなかったことをおまえたちはなしとげよ。これ以上、やつらの被害を増やしたくはないのだ」
 リーダーの目に、ぎりっと歯を喰いしばった要が映った。拳は血が滲みそうなほどに硬く握りしめられている。思わず顔を背けてしまったが、その思いは痛いほどに伝わった。
 だが、
「ダメだ、やっぱり連れて行けねえ」
 あくまで拒み続ける。
(「どうしても拒まれるなら拳で語り合ってでも――」)
 ルゥがかくなる上はとリーダーに近づこうとすれば、
「もしかして、私のことも除け者にする気じゃないだろうね」
 スクラッチの女性メンバーがリーダーの胸倉を掴んだ。
「い、いや……」
「やっぱり、そのつもりだったわけか。いいよ、こっちにだって考えがある。あんたら、私が仲間に入れてやるよ。こんな話の分からない連中は放っといて一緒にやろうじゃないか」
「お、おい」
 リーダーが慌てて仲間を見るが、諦めたような仕草をしている。どうやら話は決まったようだ。
「ホンマにカッコええなー! ワルにもやっぱ信念っちゅーか筋がないとあかんよね。その思い、絶対に守ってみせたる!」
 ウルスラが女性メンバーに駆け寄っていく。

「話は聞かせて貰いました、私も行きましょう」

 そこにコロッケの袋を抱えてひょっこりと、紫月・双牙(光焔真牙・b08033)が現れた。
「……また増えた。あんたもこいつらと同じか?」
「いいえ、私は絶対的で独善的で超利己的な理由で動く、ただの悪い大人です」
「訳分かんねえな」
「まあ、ここが気に入っただけです。それ以上に戦う理由が要りますか?」
「そうだな。……ああっ! もうどうでも良くなってきた。理由なんて必要無え!」


「やれやれ、とんだ茶番に出くわしたもんだ」
 長引いた話し合いが終わりを迎えた時、出入口にひとりの男が姿を見せた。
 天竜・頭蓋――この事件の元凶だ。
「銀誓館の連中も来ていたとはな。どこまでも邪魔をしてくれるぜ」
 その言葉に続いて、頭蓋の後ろからナイトキッズのメンバーが次々と現れる。その数、三十人弱。対して、こちらは能力者達を入れてもその半分に届かない。
 何とも圧倒的だ。力と恐怖による絶対的な支配。それが頭蓋のやり方なのだろう。
(「こんなやり方、許せません……必ず阻止しないといけませんね」)
 清音がいつでも走り出せるようにタメをつくる。
「まったく、天竜君も解ってないですねぇ。悪には悪の美学ってものがあるんですよ。それに潰すんじゃなく取り込む方が良いでしょうに」
「ほざけ」
「では魅せましょう、悪の在り方を」
 言って、双牙が飛び出した。
「皆、負けないでくださいね……」
 清音や他の能力者達も同様に。
 スクラッチのメンバーが反応するよりも早く、敵の真っ只中へと切り込んでいく。
「アンタでいいや。ちょっと相手してよ」
「……なっ?!」
 ルゥが走り込んだ勢いのままに強化不良を殴り飛ばした。
 むろん、狙いは頭蓋と強化不良。間違っても一般人に相手させる訳には行かない。
「ボクの動きについてこれる?」
 エアシューズを駆ったウルスラが敵の直前で霧散したように消えうせた。上?! まるで重力を無視したような宙返りで強化不良の頭部を強襲!
「隙だらけだ」
 今度は、要が顎を思い切り突き上げる。
「ぐはっ!」
 見れば、他の能力者も敵の中に入って切り崩している。
 先制を許して、敵は完全に浮き足立った。
 ただ、ひとりを除いて、
「血祭りになりたいのはお前か?」
 頭蓋が日本刀の切っ先を、双牙に向ける。
「血祭りにはなりませんが、天竜君の相手は私です。先ほどコイントスで決めましたから」
 双牙の言葉に、智巳が残念そうな表情を浮かべる。
「余裕だな。だが、直ぐに後悔させてやるぜ」
 頭蓋が獰猛な獣の顔をのぞかせる。
 戦闘、開始!


「……あいつら一体何者なんだ?」
 リーダーが呆然とつぶやく。あのナイトキッズを、押している。
 いや、強化不良以外のメンバーが能力者達に襲い掛かり始めると形成は途端に悪くなった。
「スクラッチ! ぼ〜っとしてんじゃねぇよ! こっちの不良どもは任せるぜ! 譲れねェモンはその手で護って見せろ!」
 智巳が檄を飛ばした。
 その言葉にはっとなる。この戦いは――俺達の戦いだ!
「助っ人の連中ばかりに、いいかっこさせるな! 俺たちもいくぜっ!」
 能力者達の邪魔をしようとしていた連中に、雄たけび上げながら殴りかかっていく。
 力任せに、だが気合は十分に。
 そして、あっという間に一般人同士での乱戦が構築された。
「助かった、一人ならやばかったかもな」
 レイジが助けに来てくれた礼を言うと、次いで大声を張り上げる。
「そう俺達は一人じゃない! 共に闘う大切な仲間がいる! 笑顔で帰りを待ってくれる護りたい人がいる!」
 だから、
「ただ力を振うやつらに、負けるわけがない!!」
「「おおっ!!」」
 呼応して声が重なり合った。

「大切なものの為に戦う。その思いを無駄にさせる訳にはいきませんね。私も全力でやらせてもらう」
 尚人が対峙したのは二人の強化不良。
「強がったところで何ができるよ。結果は何も変わらねえ!」
 数の利と武器の強みで攻めてくる。
「判ってないな」
 冷静に敵の動きを読み取り、最小の動きでそれをさばく。
「何だそれは? そんな軽い攻撃など通用せん! お前達に本当の攻撃を見せてやる」
「……この野郎っ!」
 強化不良のひとりが恐怖にかられて突っ込んできた。
「この間合いとったぞ!」
 それに合わせて体重の乗った右のカウンターが炸裂する。
 左頬を打ち抜いたそれはたやすく意識を刈り取って、まずはひとりを床に這わした。

「へへっ、運がよかったな。俺は優しいからよ。あんまり痛くないようにしてやるよ。もちろん、この戦いが終わった後もなぁ」
 下種な笑みを浮かべているのは、清音の前の強化不良だ。
「なるほど、そう言えば負けたときに言い訳出来ますもんね。手加減したって」
「なっ?! 言ってること分かってんのか?」
「これでもこういう荒事には慣れてるんです。後悔する暇はあげません!」
「な、なめた口、聞きやがって。俺がしつけ直してやる!」
 顔を真っ赤にして向かってくる強化不良に、カウンターで正拳が入った。
「無用です。人を護るために鍛えたこの身を舐めてかかったらどうなるか見せてあげましょう!!」
 よろめいた強化不良に、清音の正拳突きがひとつ、またひとつと打ち込まれる。
「な、なめんじゃねえ!」
 声を荒げて、強化不良が掴みかかる。
 強引に力技に持ち込む気だ。
 しかし、間合いがつまらない。
 清音の攻撃に距離を詰める術が無く――いつしか意識は朦朧としてきて、
「はあっ!」
 清音の踵落しがグロッキーになった強化不良に打ち込まれた。
 どさりと倒れる音がする。
「護れる物があれば強くなれるんですよ……」
 既に清音は背を向けて。
 口にした言葉は自分に言い聞かせているようであった。

(「わたしはかつて機械のように生きてきた」)
 要は敵の姿を見て、自らの過去を顧みる。
(「だが、師父に救われ、学園で、友に、仲間に、ライバルに出会い、人としてのあり方を学んだ」)
 それゆえに、
(「師父の愛した、友と笑いあい、仲間と分かち合い、ライバルと高めあう、この世界を護りたい」)
 この戦いには負けられない!
「我が御手は四条を護る要たらん」
 四条とは四情(喜怒哀楽)。それは人の営み、それを護る為に拳を振るう。
 向かってきた金属バットを打ち払い。次の強化不良には先に拳をお見舞いする。
 加えて今回は頼もしい相棒もいる。
「背中は任せたぞ、ウルスラ」
「任されたで!」
 ウルスラは要の背中を守るように移動。
「さあ、手加減無しでブッ飛ばしたる! かかってきいやぁ!」
「なめんなあ!」
 踊りかかった強化不良の視界からまたウルスラの姿が霞んで消えた。
 気が付けば、間合いが詰まっている。
「ボクのアッパーは冗談抜きに痛いで」
 狙いは一点、ウルスラの拳が天を打ち抜くように顎を突き上げた!

「へっ、強がっても二対一は変わりねえ。しんどくなってきたんじゃなえのか?」
「いや。違うな、俺は今日ここに二人で来た」
 レイジは泰然自若にそう告げる。
「はあぁ? おい、聞いたか?」
「ああ、この野郎は数の計算も出来ないらしいぜ」
 強化不良の様子に僅かに溜息を漏らし、
「まあ、分からんだろうな。なら、見せてやろう。いくぞ、大五郎――ッ!」
 勢いよく襟首を掴むと豪快に背負い投げを決める。
 今日来れなかった友の得意技だ。
 たとえ身は来れずとも思いは連れてきた。
 だから、
「今日は負ける気がしないぜ!」
 次に打ち放った拳が赤い軌跡を残して強化不良を切り裂く。
「さあ、来い! 絶対に貫き通してやる!!」

「どっからでもかかってきな!」
 智巳が手近な強化不良に怒声を上げた。
 頭蓋の相手から外れて機嫌が悪いのもあるが、何よりも、
「例えはみ出し者だろうとも、護りてぇモンは誰にだってある。その決意を笑って蹂躙する様な真似はさせねぇ。否定させてもらうぜェ!」
 これだけは譲れない!
「なに強がってやがる!」
 強化不良の拳が、智巳の顔面を打ち据えた。
 いや、耐えている。
 顔が笑っている。
「ステゴロってのはこうやるんだよ!」
 放った拳が強化不良をくの字に曲げた。

「他人にもらった力で粋がってんじゃないよ!」
 フェイントモーションから、ルゥの足払い。
 動きが見えず、強化不良はかわす動作も出来ぬままに転倒した。
 そこにすかさず、踏み蹴り。
 既に深手を負っていた強化不良は立ち上がることも出来ず、そのまま倒れ伏した。
「さて……よくやっているようだけど、数の差はどうしようもないか」
 ルゥが言ったのはスクラッチのメンバーのこと。
 倍以上の相手によく健闘しているが、そろそろ限界のようだ。
 なら、
「加勢する。傷の深い人は下がらせて」
「す、すまない……」
 ルゥは駆け寄り、ナイトキッズのメンバーを睨みつける。
「で、誰が相手してくれる?」
 彼らが震え上がったのは言うまでもない。

「解ってない、君は決定的に解っていない」
「うるせえ!」
 双牙と頭蓋が真っ向からぶつかり合う。
「上に立ちたいなら魅せてみろ!」
「だからうるさいと言っている!」
 ぶつかり合う鉄拳と日本刀。
「己の在り方を後ろに続く奴等に認めさせろ!」
「黙りやがれ!」
 込める意気。
「自分達がついて行きたくなるようなモノだと!」
「だから力を示しているだろうが!」
 魅せる流儀。
「彼等はソレを持っている」
 双牙が指すのはスクラッチ。
「だから私は助ける気になったんです。ま、それは君達を潰す理由の1割程度ですけどね」
「その口、塞いでやるよ!」
 互いの得物が突き刺さる。
「で、9割はおばちゃんのコロッケが美味しかった。また食べたいと思った。それだけですよ」
「……ふざけやがって」
 頭蓋が致命傷を受け、よろめきながら後退した。
「はっ! 今回も俺達の勝ちのようだな、頭蓋」
 声のした方を見れば、智巳が勝ち誇っている。
 既にナイトキッズは頭蓋ひとり。
「いいだろう、今回も勝ちは譲ってやるよ。だが、次に勝つのは俺達だ」
 鮫のように笑い、頭蓋のコピーは掻き消えた。


「勝った」
 信じられないとリーダーが声を震わす。
「あんたらのおかげで、ナイトキッズを、頭蓋を倒すことができた。ありがとう」
「それは、こっちのセリフだ」
 尚人が手を差し出せば、リーダーがそれを強く握り返した。
 周りを見れば、傷だらけで笑っているスクラッチのメンバー。
 サムズアップしたレイジ。礼を返されて困っているルゥ。ハイタッチを交わしているウルスラ。
 どれも勝利を表している。
「勝ったな」
「ああ」
 智巳が目の前に右手を出す。
 次いでリーダーの右手が勢い良く合わさると、パーンと勝利の音を出した。


マスター:てぃーつー 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/11/14
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