<リプレイ>
● 傍若無人。 彼らの行いは、その言葉が意味する通りであった。 欲望という欲望を、破壊という破壊を、いたずらにぶちまけている。 (「滅多な事では怒らない自信はあったけど、これは駄目だ……。だってあいつら!!」) 無髪・萌芽(路傍の草・b53356)の目に、助けを求める女生徒の姿が映った。 まだ、幼い。 初等部の低学年だろうか。怯えて、すくんでしまっている。 「ほらほらぁ、早く逃げないと酷い目に遭うぜぇ」 そして、薄ら笑いを浮かべるデビルドッグの強化不良達。 魔手はゆっくりと伸びて、女生徒の肩を掴もうとしている。 「卒業生として見過ごす訳にはいかない……ましてや、こんな柄の悪い輩にはな」 伸びた手を、黒霧・慎(蒼黒の使者・b26081)が掴んだ。 「ああん、誰だテメェ」 だが、意に介した様子は無く、 「さあ、不良の相手は俺達がするから今の内に離れた方が良い」 「……はいっ」 「おい! なにシカトしてくれてんだ――がはああああっつ」 強化不良の体がくの字に折れた。 「人のシマでなにしとんじゃ……じゃなくて学園の皆になにしてくれとんじゃ!」 腹部に、九戸・政美(アローヘッド・b52690)の強烈な蹴りが突き刺さっている。 「文句あんなら、あたいらが相手してやる!」 「ふざけたまねしやがって!」 いきりたつ不良達。 「まあ、待て。どうやら、こいつらが天竜サンの言ってた邪魔者ってヤツなんだろうよ」 止めに入ったのは、悪知恵の働きそうな男だ。 おそらく、こいつがデビルドッグの現リーダー、アクドウに違いない。 「でけえツラが出来るのも今のうちだ。さあ、いい声でさえずってくれよ」 「それは、こっちのセリフや。ここまでやってくれるなら、それなりの覚悟ありなんやろうな?」 中川・始(オルタナティブ・b22310)が睨みを効かせる。 後ろの方では、他の仲間が避難誘導をしているはずだ。 ゆえに多少は無茶であっても、先に進ませる訳には行かない。 「ツラだけでなくて、口もでけえみてえだなぁ! あああっ?!」 「……これだから不良ってヤツは」 上がった怒声に、慎がぼそりとつぶやく。 当然、続くのは先ほど以上の怒り。 加えて、 「そっちのが人数は多い癖に。なんだガキと女相手にびびってんのか?」 「デビルドッグだっけ? 本当に犬だな。まあ、躾の時間だ。面貸しな!」 「このっ! やっちまえ!!」 政美と、萌芽の挑発に、不良達は猪突猛進に突っ込んでくる。 「人の言葉も理解できない駄犬は、これでも喰らえ!」 そこに、萌芽が懇親の力で消火器を地面に叩き付けた。 能力者として本来の力を発揮したそれは容易く消火器自体を破裂させる。周囲に消化剤が一気に吹き上がって、白い靄を生み出し、 「な、なんだこりゃ?!」 「あっ、あいつら逃げていきますぜ!」 「追いかけるんだよ!」
そうやって不良達の目を引き付けている間に、一般人の避難は進んでいた。 「いまからあいつら追っ払うから巻き込まれない様に逃げてて」 八乙女・舞華(高校生真土蜘蛛の巫女・b54352)が高等部の男子生徒に呼びかける。 「いや……しかし」 一般生徒の中にも勇気を持って不良達に立ち向かう者がいる。蛮勇ではなく、自分達の共同体を守ろうという純粋な思いからだ。そして、彼もそのひとりである。 「わたしたちは大丈夫ですから早く逃げてください」 さあ早くと、香坂・弓弦(煌星ミラージュ・b61057)もうながす。 だが、目の前の男子生徒は戸惑いを浮かべたままで動かない。 ――下級生の、しかも女生徒達を残して行けと? 「お願いします。あの下級生達を誘導してあげてください」 更には、如月・りしる(スノウフラワー・b63788)も避難誘導の手を止めて懇願する。 決め手になったのは、 「安心してくれ、彼女達は俺が守から」 氷澄・澪の存在だ。 「……分かった。危なくなったら直ぐに呼んでくれよ」 「ありがとう。でも、大丈夫だから♪」 男子生徒に、舞華は屈託のない笑みを浮かべる。 「さあ、これで逃げ遅れている人も居ないし、みんなと合流するよ! 澪クンは引き続き逃げ遅れている人を見つけたら誘導してあげてね」
「もっと大人しく、ついてこれんのか!」 攻撃を掻い潜りながら、政美が怒鳴る。 「うっせえんだよっ!」 しかし、一旦火の点いた不良達が止まる訳もなく。むしろ凶悪な顔で追い駆けてくる。 「ケンカ売ってきたのはそっちだろうが!」 おまけに喚(わめ)き散らしながらだ。 不良達の統率が取れていないのと、地の利が能力者側にあることで、今のところ無難に攻撃を凌げている。だが、いかせん数が違いすぎる。このままでは、いずれ取り囲まれてしまうだろう。 (「場所を移すのはひと苦労だな……。正直、私は衆目の眼前でも一向に構わないけど」) 竜造児・咲耶(機竜操士・b28506)が打ち込まれた金属バットを払い除ける。 ダメージは最小に抑えているが、痛いものは痛い。 (「……折角授業サボって寝てたのに……。私の安眠を妨害する事がどれ程罪深いか教えてやる……」) 怒りを胸の内に秘め、渡り廊下を駆け抜ける。 あと少し……あと少しで、
「ここなら人目もありませんし、けちょんけちょんにされてブザマな姿を見られることはありませんよ」
「……なっ、なに?!」 拓けた場所には、弓弦を始めとして先ほどまで避難誘導に努めていた能力者の姿があった。 待ち伏せを受けたと知って、不良達は色めき立つ。 しかし、 「なんでぇ、可愛い子がいるじゃねえか」 「どうした? お兄さん達に遊んでほしいのかぁ?」 女性ばかりと見て、彼らは表情を緩める。 (「不良さん怖いなぁ」) りしるはそんな不良達の様子に恐怖が先に立った。 (「でもそんな事言ってられないよねっ、頑張らないとっ!」) いや、不良達の下種な視線を跳ね除けるように瞳は強い意志を称え始めた。
● 戦場を新たにして、向かい合う能力者とデビルドッグ。 これまで抵抗らしい抵抗を受けていないのと、能力者の半数以上が女性であることに、不良達は余裕の表情を浮かべている。 「さぁ来なさい屑共。特別にお前達の土俵で戦ってやる。その上で、力尽くで、潰す」 咲耶の鋭い視線が不良達に突き刺さった。 だが、 「おい、聞いたか?」 「恐怖でいかれちまったんじゃねえか、こいつ」 実力を推し測ることもなく、不良達は嘲う。 その様子に、舞華は嘆息すると、 「銀誓館を襲うとかいい度胸してるね。ウサギ狩りに来たつもりなのかもしれないけど、あいにくここに居るのは獅子の群れだよっ! アンタ達野良犬が牙をむいたらどうなるか教えてあげるよっ!」 一気に言い放ち、得物を向ける。 もっとも、不良達はそれでも分かっていない。 加えるならば、能力者達が既に攻撃の手を進めていることにすら気付いていない。 「……な、なんだ、この霧?!」 「うおっ? 力が……?」 広がった魔蝕の霧によって、半数以上の不良がうろたえ始める。 「思った通りの反応ですね」 弓弦のそれが反撃の狼煙。 「ここはお前らチンピラのくる場所じゃない、出てけ!」 同時に、政美が地面を蹴っている。 「番長式喧嘩ファング!」 彼我の距離を三歩で埋めると、敵の懐で三日月の軌跡を描き出す。 「ぐはあああ!」 「こ、このっ……って、何だ? こりゃ?」 仰け反ったのとは別の不良が、舞華の伸ばした魔法の茨に気付いた。 もっとも時既に遅く、体の半分が捕まってはもう逃れる術は無い。 更に、 「筋も通せない不良なんて!」 萌芽の演出するダンスパフォーマンスが不良達から身体の自由を奪っていく。 「さー、いっぱい凍える思いをして後悔するといいよっ」 「竜の逆鱗に触れた事を後悔しろ」 そこに、りしると、咲耶の範囲攻撃が飛んだ。 吹き荒れる氷雪と、駆け抜ける雷光。 初めから全力――ここまで耐え凌いできたのが、一気に爆発する形となって不良達を襲う。 「ちぃ……やってくれたなぁ!」 「女子供を狙うとは、さすが不良様だ。真似する気にもならんが」 「……がはっ」 「礼は返させてもらう」 慎の断罪ナックルが弱っていた不良に止めを刺した。 「な、なにやってやがる。変な力を使うとはいえ、数は少ねえんだ。取り囲んでフクロにしちまえ!」 アクドウもかなり慌てているのか、声が裏返っている。 しかし、荒事には慣れているのだろう。 時間が経つごとに、不良達もこちらへの対処が出来るようになってきた。 「忙しくなりそうだけど、お願いね?」 「もきゅ」 りしるの言葉に、モラピュアのすぅが水色のリボンを揺らしながら駆けていく。 こうして戦いは能力者達がリードする形で長期戦の様を見せ始め、 「しつけえ連中だっ!」 不良達に苛立ちが浮かび始めた。 「ヒーローがこの程度で倒れるわけなかろー!」 攻撃を弾き返すように、政美がクレセントファングを一閃。 そこに背後から不良のひとりが掴みかかるも、ひと足早く牙道大手裏剣が他の不良も巻き込みながら炸裂した。 「6歳の子供だっているんだぞ! 割れたガラスで怪我をしたらどうするんだ!」 怒りのままに、萌芽が叫ぶ。 「くそったれが、なんでこいつら倒れねぇ!」 不良達の焦りが募る。 能力者達の技量を見誤っていたこともあるが――誰も倒れないという事実が最も大きい。 それを支えているのは、 「残念っ! アンタ達の毒なんて全部アタシがかき消してあげるよっ!」 舞華の慈愛の舞が仲間の身を蝕む毒を浄化していく。 敵に回復能力が無い以上――このままの状態を維持できれば自ずと勝利が手に入る。 だが、敵に油断があったとはいえ、未だに数の差を覆すには至らない。 「……こりゃ、片付けんのも大変やな」 始が苦痛に顔を歪める。 取り囲まれぬように立ち居地を調整しているが、前線に立つ限り敵の居ぬ場所の方が珍しい。加えて、敵の攻撃に付加した毒は嫌らしいほどのしつこさを持って、その身をさいなむ。 「けど、これだけ暴れてくれたんや。片付けさせてもらうで、きっちりとな!」 黒影剣が走る。 始は不良のひとりを剣の峰で叩き伏せると、次の目標に挑みかかった。
● 光の槍がまた不良のひとりを打ち倒した。 (「ここはわたしが守りたい大切な場所なんです。それを土足で踏みにじるなんて……」) 弓弦が次の狙いをつける。 怒りを攻撃に加えて、そのまま撃ち込んでいく。 しかし、思いだけで数の差は埋まらない。後衛である彼女の目には多くの敵を受け持つことになった前衛の苦戦が手に取るように分かってしまう。 「回復してる時に、巻き込まれちゃダメだよーっ」 りしるが攻撃の合間に、すぅに呼びかける。 返事はあったものの混戦に巻き込まれて既に位置把握も難しくなってきた。 「まともに当たっても屑が塵に変わるだけよ。然したる変わりはないわ」 敵を切り崩そうと、咲耶の手に電撃が集う。 極限まで高められたそれが一条の線を引いて駆け抜ければ、 「……数だけは厄介だ」 慎を初めとして前衛を務めていた能力者が一角を切り崩して包囲を抜け出した。 「みんなの不安もまとめてアタシがかき消してあげるよっ!」 「そうだ、絶対に負けられない!」 舞華の慈愛の舞と、萌芽のヘブンズパッションが立ち向かう気力を後押しする。 「もきゅ!」 いや、すぅも同じく。 「さあ、ヒーローのヒーローたるゆえんを見せてやろう」 政美がエアシューズを駆る。 「借り物の力でいい気になって、壊すことにしか使えない。そんな弱っちいやつらに、わたしたちが、一歩だって後れを取るもんか!」 弓弦の光の槍がそれを追い駆ける。 「ふ、ふざけんじゃねええええ!」 むろん、不良達とてそれを黙って見ているわけもない。 何を言っているのか分からないような雄叫びを上げながら凶器を振るってくる。 「ここが正念場や、いくで!」 始が体捌きでひとり目をやり過ごし、二人目の出鼻を挫くように黒影剣を叩き込んだ。 横合いから迫ってきた不良は、 「――いい加減、見飽きた」 雷光一閃。 咲耶の放った最後のプロトヴァイパーが刈り取っていく。 不良達の数に、能力者達は巧みな連携。 力と力がぶつかり合い、互いの攻勢が強まる。 「よりにもよって過去どんな戦争でも壊さなかったティンカーベルを奪おうなんて、アレと烏を壊さない為に皆必死にメガリス確保してきたんだからっ!」 舞い続ける、舞華も自ずと力が入っていく。 勝つために――ひとつの方向へと力が揃う。それが戦いの趨勢を決めた最も大きな理由であり、能力者達と不良を分かつ決定的な差となった。 そう、力の意義を持つ者と持たざる者の決定的な差である。 「これで最後だよっ!」 吹き荒れた氷雪によって、アクドウを含む三人の不良が倒れた。 りしるが勝利を示すように『氷華』を高く掲げれば、残った不良達がその手を止める。 「ただの破壊の為の力など所詮この程度だ。まだやると言うのなら、貴様らの体の方があのガラスのようになるが?」 慎が睨みを効かせる。 不良達は震えながら得物を手放していく。それを見届けてから、慎は意識を手放した……。
● 「手こずらせてくれたけど、所詮は子供の遊びレベルね」 咲耶がつぶやいた。 終わってみれば、不良達の戦いは何とも杜撰(ずさん)なものであった。 だが、それを正面から受け止めた能力者達も被害は大きい。前衛を努めた三人は良く耐えたものの、圧倒的な数に押し切られる形で三人共が深手を負っている。 「頭蓋のところにいけんのが残念やな」 「一発殴ってやろうと思ってたのに……って、いたた」 始と、政美が悔しさと痛みに顔を歪めた。 「詳しく話を聞きたかったところですけど、もう校門の方に人が集まっているようですね」 弓弦が走っていく人影を目で追いかける。 誘導を含め、時間が掛かった分だけ出遅れているようだ。 「防具が直るまで休んでおきたかったが、遅れては元も子もない」 咲耶が動ける仲間達を促す。 「……まだヤツに加勢するようなら遠慮なく潰すよ?」 ふん縛られた不良達を、萌芽が一瞥。 彼らは身を竦ませている。それに、 「あとはお任せしますね」 「ああ、任せろ。如月はしっかりな」 「はい」 りしる達は不良達を、澪に任せて頭蓋の元へと向かう。 さあ、最後の仕上げへ。 「大丈夫ですか?」 そこに二階から声がかかった。 どうやら校門へと向かう能力者達を見た一般生徒が、心配して声をかけてきたようだ。 だから、舞華は高らかに言う。
「もう大丈夫だよっ! 不良なんて見掛け倒しだからね♪」
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参加者:8人
作成日:2010/11/30
得票数:カッコいい16
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冒険結果:成功!
重傷者:中川・始(オルタナティブ・b22310)
黒霧・慎(蒼黒の使者・b26081)
九戸・政美(アローヘッド・b52690)
死亡者:なし
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