<リプレイ>
●名乗り 夜も深けてきた。 だが、エドガー&ベルナルド探偵事務所には、そのメンバー全員が揃っている。 いつもの定例報告。 それだけの予定であったのだが――トントントンと響く、ノックの音。 「こんな時間に一体誰が……?」 エドガーが顔を曇らせる。 他の面々も嫌な予感を感じて、隠していたそれぞれの得物に手を伸ばす。
ドン!
「たのもーー!!」 「そんな乱暴に……?!」 勢いよく扉が開き、その先にはドアを押し開けた御桜・八重(花手毬・b40444)と、それを止めようとする鳴神・盟華(建御雷神の巫女・b75641)の姿があった。 「「敵襲か?!」」 突き刺さる視線。 二人に、いや二人だけでなく、その後ろに居る六人にも。 「……何者だ?」 「手合わせ願おう。なぜ来たかくらい、わかるだろう?」 問いには答えず、新深・有希(深淵の蒼・b65132)が『闇声哀唱』を構えた。 「……やはり、敵か」 彼らは一様に武器を取り出す。 長剣が三、長槍が二、獣爪が二、ライフルが二、能力者達はそれを素早く見て取る。 「決闘を申し込みに来ました」 今度は、鴻上・奈々(グリッサンド・b58888)がはっきりと目的を告げた。 「………」 しかし、それは彼らの予想外。 浮かぶのは戸惑い。そして困惑だ。 「決闘だと……?」 「そう、そちらは9騎士、こちらは8名だが、場数を踏んでる。少しくらいの人数差は、場所代だと思ってくれていいぜ? ……事務所、荒らしちまうしな?」 不敵にもニヤリと笑う、神崎・真希(優しき路傍の石・b75013)。 それで、彼らの表情が引き締まる。 目の前に居るのは強敵だと直感が告げている。油断など出来る相手ではない……! 「用件は分かった。しかし、ひとつ分からないことがある。……なぜ決闘なのだ? ここが分かった以上、不意を討とうと思えば出来たはずだ?」 「オジサンたちは真正面から正々堂々と戦いたいだけだぜ」 龍宮・神奈(覇天翠龍・b57328)がそう言っても目には疑いの色が残る。 まあ、無理もない。 能力者達とて同じ立場なら、素直に信じられたかどうか……。 「……フッ。ならばこれで分かるだろう」 言って、ジョフロア・モンストルレ(シュネルベフェールスハーバー・b15471)が仰々しく騎士の礼を行う。 「我等名前を銀誓館!」 「「何っ?!」」 驚いたのは彼らだけでなく、能力者達も同様。 何故なら、多くの者達が銀誓館の名を秘するつもりであったから。 だが、名乗りは上がった。 そして、 「正しき誓いの名の下に、世界に仇なす悪を討つ……恨みは無いがノイン・リッター、滅ぶべし!」 ジョフロアが手袋を脱いで、彼らの足元に投げ付ける。 賽は投げられた。 もう結果を見るしかない。 「あっははははははは………なるほど、噂のギンセイカンとはこういう連中か」 最後に「失礼」と言って、エドガーは襟を正す。 「いいだろう、お受けしよう。遥か東方の島国から足を運んできたのだ。その腕、存分に振るわれよ!」 もはや、迷いは見えない。 「ちょっとは相談して欲しいね。まあ、やるんだけどな」 ベルナルドも、他の面々も。 (「戦うことに誇りを持てること、素直に尊敬するし、ちょっとだけ羨ましい……かも」) 奈々がゆっくりと二本のナイフを抜く。 高まる緊張。 (「エドガーには親近感を覚えるな……そういえば能力者とは戦争以外で闘うのは初めてか」) ゆえに全力で行くと、嘉納・武道(柔道番長・b04863)が拳を前に出す。 応じるようにエドガーが長剣を前に出した。 「青龍拳士、嘉納武道……参る!」 そして――開戦!
●五分と五分 まず、機先を制したのは能力者だ。 「……狩猟は狼さんの専売特許ってわけじゃないんだぜ?」 ハンティングモードを取って、真希がベルナルドの動きを止めようと前にでる。 「やれやれ、俺の相手はこんなガキかよ」 言葉とは裏腹にベルナルドの長槍は鋭く、そして容赦が無い。 最初からフロストファングの洗礼。 「せめて、ああいう可愛い子がよかったなぁ」 攻撃の間も軽口が絶えない。 加えていうなら、視線が逸れている。 「チャイナ服の裾翻し、一足早い花吹雪、お見せしましょう!」 白燐蟲を操り仲間の強化を図っている、八重へと。 「よそ見してんじゃねえ!」 真希が感情を露にしてパイルバンカーを突き出す。 いや、フェイント! 本命はベルナルドに巻きついていく闘気のチェーン。 「ちっ……引っ掛からない上に、そっちもブラフかよ」 慌てて、ベルナルドが長槍を間にかます。 「アンタの相手は俺だ。……逃げるなんて言わねぇよな?」 「本当は野郎の相手なんて嫌なんだけどなぁ……仕方ねえ!」 早くも相手の裏をかこうと読み合いが始まっている。 技量が同じなだけに僅かな隙が、命取り。 一挙一動のみならず、周りの状況や言葉も、すべてが駆け引きの材料だ。 しかし、何事にも例外はある。 「……貴殿を苛む悪夢のことは、自分でも分かっているだろう」 目の前の人狼騎士に悠然と語りかけている、ジョフロアは一騎打ちを所望した。 先程とは真逆。 周りを排して、互いの技と知略のみの戦いを、だ。 「いいだろう」 「ありがたい。……聞いてのとおりだ、周りも手出しは無用」 「こちらも、な」 互いにライカンスロープを使いながら向かい合う。 両陣営ともそれを見て、二人を戦力から除外した。 「この際に及んで説明や説得はしない! 戦い終わった後……敬意と共に、お伝えさせて頂こう。我等を取り巻く世界の、真の姿を」 「ほう、それは楽しみだ」 「では、行くぞ!」 交錯するジョフロアの長槍『エクスティンクトゥス』と、人狼騎士の古めかしい長槍。 激しく打ち合って火花が飛ぶ。 もっとも他の者達は、もうそれに気を配る余裕も無い。 「まあ、こうなるのかなと思ってたけど、いざ直面すると結構きついぜ……」 巧みな連携攻撃の前に、神奈は防戦一方。 有希と二人で、四人の人狼騎士と打ち合っているのだ、無理も無い。 「耐え切ってやるッ!」 『大烈牙』を前に押し出して猛攻を凌いだところに……今度は零距離からのクロストリガー?! 「もらった――がっ!」 それを横から、奈々のクロストリガーが妨害する。 「させませんよ――って、わっ!」 今度は、奈々に銃弾の雨。 「大丈夫! いま治すから!」 唯一回復をメインに据えた、八重はひと息つく暇も無い。 (「次? 次は? ――わたし?!」) 目に映る十字架型の紋様。しかも――三つ! 回避もガードも間に合わず、瞬く間に全身に激痛が走る。 「それ以上は……!」 盟華が裂帛の気合に乗せて雷の嵐を巻き起こす。 「……体が?!」 ひとりの動きが鈍った。 だが、人狼騎士達はそれでやり過ごしたと思ったのだろう。 ゆえに先程の攻撃に合わせて、降り注ぐ有希の強靭な蜘蛛の糸が完全に不意を突いた。 「これも戦術だ。悪く思うな」 更に二人。 これで生まれた時間で回復を。 「もうこれで大丈夫。がんばってね!」 危険領域を僅かに脱する。 しかし、 「サンダーバードまで混じっているとは……厄介な連中だ」 人狼騎士達の目が、盟華に向いた。 自分達にとって誰が一番の脅威であるのかを見て取ったようだ。 「狙いは鳴神さんに絞ったみたいだね」 「なら、先に潰すまでだ」 「来るぞ!」 意思の疎通を済ませると、再び限界領域の戦いが始まる。 高く響いていく剣戟。 「上手くは行かんな……言葉にすれば簡単なんだが」 仲間達のタイトロープな戦いを横目に見て、武道とエドガーが共に歯噛みした。 戦いは変則的に、集団戦と、一騎打ちが混在した形に変貌している。 「まったくな……」 言葉が途切れると同時に、左正拳で龍顎拳を叩き込んだ。 向こうからもフロストファングのお返し。 共に仲間を気遣えども、今は仲間を信じて目の前の敵と戦うのみ――。
●ノイン・リッター 攻守が瞬く間に入れ替わる。 いや、そろそろ防御は厳しくなってきた。疲労が明らかに動きを鈍くしている……。 (「ちっ……そろそろやばいかな」) 後衛の盾となって立ち塞がる、神奈へと降り注ぐ攻撃。 追随するように身をさいなむ魔氷。 「……おっとと」 限界を超えた肉体を、神奈が無理矢理に魂で押し留める。 軽く首を振って、 「ここらでいっちょやる事やっとかないとな……頑張ってる後輩達に悪いだろ!」 さっきのお返しだと、渾身の龍顎拳。 が、目の前の人狼騎士も凌駕して――再び襲い掛かってくる。 「これが騎士の意地ってやつかな。敵であっても惚れ惚れするよね」 「違うな……我らはノイン・リッター。この名は誰ひとり欠けぬという、誓いだ!」 なるほど、互いをかばい合い。 技量以上のしぶとさを見せている根源は、それか。 「ほんとネジさえなけりゃ、友好結びたいとこだよね」 つぶやきながら、八重が白燐蟲を操る。 確かに敵ながら大したものだ。だが、負けられないのはこちらも同じ。 「あなた達の信念は本当に心からのものなんですか?」 そこに、奈々が問い掛ける。 「何が言いたい?」 「言葉通りの意味です」 「無論だ! ここまできて我らを愚弄する気か?」 憤慨する人狼騎士。 「このまま惑わされ続けてたら、皆幸せになんかなれないと思うから。だから、今はあなた達を倒します。倒してみせます……!」 「その言葉はそっくり、キミに返そう!」 奈々のクロストリガーに遅れて、向こうからもクロストリガーが返ってくる。 「今は確かに分かり合えないのでしょう。でも……私は誇り高き騎士道精神を持つ勇者達と戦える幸運を素直に喜んでいます」 「……どうやら、キミとは話が合いそうだ」 最後に快活に笑って、その人狼騎士は倒れる。 正面から見ていた、盟華にはその姿が少しまぶしく見えた。
こうして、戦いも終わりを迎えようとしている。 だが、限界に達しつつあっても人狼騎士から戦意は消えない。
「一つだけ、頼みがある。この辺りで――お薦めのビアホールを、教えて欲しい。戦いの結果はどうであれ、当方は良い思い出と共に、この地を去りたいと思っているので、な……フッ」 「いいぜ、俺のお気に入りを教えてやるよ」 簡単に説明を受けると、ジョフロアは途端に黙り込む。 攻撃の機を計って、頭の中では無数の一手が生まれて消える。 背後で起こった黒燐蟲の爆発を受けて、ジョフロアが動いた。 それは向こうも同様。 長槍と長槍がすれ違い――片方が倒れる。 「……さて、どうするか」 ジョフロアの視線の先には、互角の戦いを見せる能力者と人狼騎士の姿があった。
「消し飛べ。邪魔だ……!」 有希の暴走黒燐弾が爆ぜた。 次いで十字架型の紋様が、弱った人狼騎士に狙いを絞る。 「私たち、負けられませんから」 「なめるな!」 クロストリガーが火を噴く。 奈々の放ったそれに、人狼騎士が仰向けに倒れた。 「……すまん」 「任せろ、ここから逆転してやるよ」 残したつぶやきに、傍らの人狼騎士が安心させるように応える。 「ああいうのを見ていると俺たちと何ら代わりが無いな」 「でも、私たちにも待っててくれてる人たちがいるんです。そう簡単には倒れられません!」 有希と、奈々が視線を向けると、人狼騎士もこちらを見ている。 「さあ、続けようか」 「ああ!」 そして再び激突する、力、技、思い!
「終わりが近いな」 「……ああ、こっちの負けでな」 真希もぼろぼろだが、ベルナルドもぼろぼろだ。 それでも軽口は相変わらず。 「しかし、全敗って訳にはいかねぇからよ。お前は倒すぜ」 「悪いな、俺にも今回は倒れられない訳があってな!」 二本の長槍を繰り出すベルナルド、叫ぶと共に真希がロケットスマッシュ。 一撃、二撃――その度に血が舞い散る。 「まだ、やれるのか……」 「……しぶといんでな」 「ちなみにひとつ聞きたい……何で八重さんだったんだ?」 「もてる男の勘」 直後に激突。 そして、ベルナルドが地に伏す。 「……やれやれ」 対する真希はパイルバンカーを杖代わりに、何とか立っているという状態であった。
「とうとうベルナルドまで倒れたか……」 エドガーのつぶやきには少し諦めが混じっている。 「降伏するなら悪いようにはしないが?」 当然断ってくるだろうと、武道は思う。 そして、ほとんど儀礼的に告げられた提案にエドガーは首を横に振った。 「ならば全力で叩き伏せるまでだ。……恨みはないが、暫く探偵業は活動停止してもらおう」 返答は無い。 代わりに凄まじい闘気。 おそらくこの一撃に賭けてくる。 (「ファングかトリガーの二択になるだろう。五感を研ぎ澄まし……後は勘頼みのか」) 攻撃はこの時のために温存した右直突きの龍顎拳。 後は――体よ、動け! 踏み込むと同時にエドガーの長剣が冷気を帯びて突き出される。 姿勢を崩さず、急所だけを避ける最小の動き。 身に走った痛みは、右拳の感触に上書きされる。 「見事だ……」 エドガーが膝をつく。 「そして……我らの負けだ」
●いつか、また 負けを認めたエドガーは未だ戦いを続けている二人の人狼騎士に武器を収めさせた。 次いで仲間の安否を確認していくと、 「……やれやれ、まだやれたんだろう。ひとりぐらい倒せよ」 最後にベルナルドが悪態をついた。 「仲間の命には代えられん」 憮然と答えるエドガー。 そこに、武道が歩み寄る。 何が行われるのかと、周りも注目したところに、 「手合せ、有難うございました」 一礼。 「……おかしなものだな。私もそう言いたい気分だ」 右手を差し出してくる。 武道と、エドガーが握手を交わした。 見れば、それは他でも。 「次に遭った時は一杯おごるぜ?」 「楽しみにしてるよ」 和やかな空気。 あの激しい戦いの後で、こんなにも親密な遣り取りが出来るとは……。 「でも、信じてはくれないんだよな」 「当たり前だ。そんな荒唐無稽な話が信じられるか、どう聞いても笑い話にしか聞こえん」 加えて、ネジやカリストの話をしてみたが……まあ、こんな感じに。 「……少なくとも仲間を裏切るようなことはできん。それはお前達とて同じだろう?」 否定はすれども、同意を求めてくるのは、能力者達に親近感を覚えたからか。 「でも、将来はわからないもんね」 横から、八重に声を掛けられ、人狼騎士達が苦笑する。 「そうだな、将来は分からんな……」 「待ってるね!」 「……期待はするなよ」 エドガーが目を細める。 どんな光景を夢想しているのだろうか。 「で、我らの処遇を聞こうか?」 「いやいや、これだけ可愛い子がいるんだから、もっと親睦を深めるべきだろう?」 「待て!」 「いつもこんな感じなの?」 「ああ、見てな。これから面白くなるぜ」 いつしか、能力者も、人狼騎士も関係なく。 エドガー&ベルナルド探偵事務所からは楽しげな声が響いていた。
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参加者:8人
作成日:2011/03/17
得票数:カッコいい15
怖すぎ1
ハートフル2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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