<リプレイ>
●準備時間 光が闇を払っていく。 それ追うようにコツンコツンと響く、複数の足音。 「……二階だ」 小さな光の塊を持った、真月・沙梨花(死門封殺の呪を操る者・b56331)がそっと辺りをうかがう。 そのまま、後ろにいる仲間達に目配せを送れば、 「いよいよだね」 真和・茂理(一閃華烈な蹴撃乙女・b44612)がイグニッションカードを取り出し。 他の能力者達も同様にカードを掲げる。 「「イグニッション!」」 起動を告げて、能力者達の姿が変わっていく。 「卒業してもこれを着ることになるとは……結局制服以上の装備が無かったんだよな」 「つまり、なんちゃって高校生♪」 「なんちゃって高校生とか言うな!」 茂理がつっこみを入れてきた初瀬部・ひなた(陽だまり仔猫・bn0153)にすかさず抗議する。 「そういう、初瀬部も人のことは言えないだろう」 二人の遣り取りに、御神・深月(破天の戰・b63397)がやれやれと肩をすくめた。 方や、なんちゃって高校生(茂理)。 方や、鎧武者(ひなた)。 つまりは似たもの同士であった。 「というか、詠唱防具なんだから多少変わっているのは仕方が無いだろう」 「いやいや、今回は頭を守るための武者鎧だよ」 「ひ、ひなちゃん!」 「むぐぅ!」 慌てて、草壁・那由他(魔弾術士・b46072)が口を押さえた。 「そりゃ……この手のゴーストの特徴を100%理解してる訳ではないけれど」 あえて蒸し返さないで欲しいと、那由他は更に強く口を押さえる。 元はといえば、相談の際に那由他が勘違いしたことが発端の一部であったのだが……。 「というか……やるしかないわね」 おっと、華麗にスルー。 そしてヘッドライトを装備して、魔弾の射手を展開した。 「……確かに」 少し含みを持たせつつ、霜月・神無(氷雪のカメリア・b04161)も準備を始める。 照明に、能力を高めるエンチャント。 緩い気持ちもここまでだ。 二階に一歩踏み出せば、いつ敵と接触してもおかしくない。 「百秒って……どのくらいだ? かけっこよりは、長いよね……カップラーメンよりは、短い?」 「ええ、短いわね」 「……そうか。ラーメンができるより、早く、倒せばいいのか」 「そう、百秒じゃカップ麺もできないじゃない」 準備を終えて闇の先に目を凝らす、ペシェ・ヴァロア(白牡丹の幸・b62655)と、朝宮・りんね(白き黎明の守護者・b57732)。 「百秒。お風呂で数えるのが100と聞いた事が……」 那由他も日本刀を抜き、いつでも戦える態勢に。 軽口を交わして、能力者達の口元には軽い笑みが浮かぶ。 「百秒間の一騎打ち。はじめちゃう?」 「いつでもOKだよ」 「始めますか」 ペシェの問いにすぐさま答えが返ってくる。 「ひなたさんと一緒の依頼はじめてなのにゃ☆ちょっとワクワクするのにゃ☆」 「えへへ、ボクもだよ。ちゃちゃっとやっけちゃおう!」 最後に、白木・祢琥魅(ひなたぼっこ道免許皆伝・b73244)と、ひなたが明るい声を出した。 でも、緊迫感は薄れていない。 「行くぞ!」 そして、駆け出した。
●地縛霊との距離 踏み込んだ瞬間、全身に違和感が走った。 現実との乖離(かいり)。 見れば、すぐ隣にあったビルの壁が大きな樹木に変わっている。 「さあ百秒間のタイムアタック開始だにゃ〜☆」 祢琥魅がひと際大きく声を上げて、足を止めた。 既にその手の中には練り上げたエネルギーが、龍撃砲として撃ち出される時を待っている。 「せっかくですから派手に行きましょう」 神無の手には森王の槍。 二人の狙いは10m先に立ち塞がるリビングデッド――渾身の力を込めた双撃が唸りをあげる! そして、 「崩れた」 「狙いはあそこだ!」 すかさず、深月と、茂理が切り込んだ。 傷口を抉り取るように二人が攻撃を重ねる。 が、リビングデッドは倒れない。それどこか反撃、いや違う。身体を掴みにきた! 「……なるほど、あくまで妨害が目的ということか」 深月が咄嗟に身体をひねる。 (「100秒の縛り、時間切れに持ち込む事前提のスタイル……ボクの戦い方とはかみ合わない相手だけど、その分こちらも策を練ったし、頼りになる面子を揃えて来たつもりだ」) 茂理が伸びてきた手を払い、 「銀誓館を相手にする事、運命予報され対策されてしまう事の怖さを思い知らせてやる」 奥に居るであろう地縛霊に宣告する。 と、ほぼ同時に後ろから能力者達の次の攻撃が飛んできた。 「まずは壁を……穿つ」 「そんな邪魔なのはパッと取り払っちゃうよ〜」 沙梨花の龍撃砲と、橘・楓の幻楼七星光。 ちょうど取り囲もうとしていたリビングデッド達は、それに巻き込まれて大きくよろめき、 「感情の四門を殺し、静なる心で魔を滅す……これぞ死門封殺」 沙梨花が構えを解くと、リビングデッドの一体が崩れ落ちた。 その穴を広げるように走りこむ影が二つ。 「邪魔はさせないわ!」 「ケロちゃん、オメガの力をみせてあげなさい」 那由他が魔弾の射手でより力を高めながらルートを確保。傍らではりんねのジェットウインドで巻き上げられたリビングデッドに、ケルベロスオメガが飛び掛っていく。 後ろには、ペシェと、ひなたが控え。 能力者達の初手は着実に敵へと迫っているように見えた。 『勇猛なことです』 「……!」 「フードのが、見えた」 ペシェが指差した先。 光の端に浮かび上がった黒い影――目的の地縛霊に違いない! だが、そこまでが遠い。 「……邪魔だにゃ!」 祢琥魅が走りこんで前衛のリビングデッドに白虎絶命拳を打ち込む。 まともに入って、二体目を撃破。 「今だ!」 遂に、茂理が敵の前衛を突破した。 地縛霊との距離を瞬く間に埋めていくが、そこにまた立ち塞がるリビングデッド。 「くっ……」 「行かせはしないわ、磔の刑よ!」 強風が横を通り過ぎて、リビングデッドを縫いつける。 りんねはそれを見届けると、すぐさまケルベロスオメガに指示を飛ばした。 「ケロちゃん、地縛霊に集中して!」 主の命を成そうと、背に生えたブラックセイバーでリビングデッドを巻き込みながら駆け抜ける。 それは、地縛霊も巻き込もうとするが、 『想定以上に早い侵攻ですが、それでも私の要塞を陥落させることは不可能です』 双頭の杖がそれを受け止めた。 地縛霊の口元に卑しい笑みが浮かぶ。 (「カリスト達も抗体兵器とやらを持っていましたが……。いえ、今は目の前の相手に集中しましょう」) 対峙しているのはカリスト達とは違う。 湧き上がる疑問を押さえながら、神無がまずは地縛霊を射程に収める。 『さあ、更に硬くなりましたよ』 その間に地縛霊は双頭の杖を振るって、周囲に堅固な魔方陣を作り上げていた。 「かなり硬そうだ……だが」 打ち破ってみせると――深月が始まりの刻印を宙に描きだす。 そこから生まれるまばゆい光が敵を覆って爆散。 一瞬の閃光が走った後、さしたる傷も負っていない地縛霊が姿を見せた。 『その程度ですか?』 周りに居るリビングデッドには有効であったものの、やはり硬い。 あれを打ち破るには、もっと攻撃を集めなければ。 「……むっ」 思考している間に、深月にリビングデッドが迫ってきた。 「邪魔をするな……退けッ」 そこに蹴りのラッシュが割り込む。 相手をしている時間は無いと、沙梨花が最後に強烈な蹴りをお見舞いした。 しかし、また別のリビングデッドが。 「ひとまず……あんたらが、邪魔」 ペシェが言葉を紡ぐと戦場が瞬く間に氷雪で覆われる。 「凍えてしまいなさい……」 今度は、神無が吹雪の竜巻を巻き起こす。 二人の雪女が生み出す極寒の世界。 「凍ればいいよ。こんなばかげた空間ごとね」 ペシェに掴みかかろうとしていたリビングデッドが、その途中で凍りついた。 目の前は白く白く染まり……いや、白地を染める無数の蒼?! それが能力者達に次々と取り付いてくる。 「……うっ」 ようやくリビングデッドを倒す目処がついたところに、地縛霊が生命力を掠め取っていく。 「あの出で立ち、黒ローブ姿は、魔弾術士としてどうも許せないものがあるわね」 那由他の声が聞こえたのか、それとも先ほど奪い取った生命力の礼か、地縛霊は慇懃に頭を下げる。 「……喝ッ!」 それを一喝するかのように、沙梨花の声が響いた。 いや、これは叫び、地獄の叫びだ。 『おや、これはこれはやってくれますね』 それでも地縛霊は涼しい声。 着実にリビングデッドの数は減り、追い詰めているというのに。 「遠慮する必要も無いわね……シュート!」 ならばと、那由他が雷の魔弾を。 『無駄ですよ。貴方達の命はここで潰える』 しかし、これも防ぐ。 「確かに厄介だが……好きに出来ると思うな」 深月の放ったアークヘリオンが地縛霊の周りに居たリビングデッドを薙ぎ払った。 そして、それはすなわち、 「さあ、追い詰めた」 「観念するのにゃ!」 白兵要員の、茂理と、祢琥魅が肉薄できることを意味している。 「後ろはお任せを」 加えて、天雅・雛愛と、ひなたの白燐奏甲で強化も十分。 「あとは叩くのみ!」 「どこまでこの連撃に耐えられるかにゃ!」
●穿て、貫け! 攻撃が集う。 それぞれが持つ最大火力を持って、地縛霊に叩きつける。 『……大したものですが、私の守りを崩すことはできない』 だが、地縛霊には余裕が見える。 それというのも、 「くっ……また」 能力者達から生命力を掠め取り、与えたダメージのほとんどが消え失せる。 「こうも勝手が違うのね……」 りんねの顔に焦りが生まれ始めた。 最大火力を叩き込み続けても、強固な防壁と、脅威の回復力の前に、有効打とはならない。 果たしてダメージは蓄積しているのか? それすらも能力者達には分からない。 「このッーーーー!」 光の槍が走る。 『無駄なことです』 そして、それも双頭の杖に当たって霧散した。 じりじりと忍び寄る、焦り。 しかし、 「焦りはしない。己と、共に戦う者を信じ……積み重ねるだけだ」 沙梨花が攻撃を続ける。 『策』はある。 この仲間達ならば、その『策』を理解してくれるはずだ。
ピッピッピッ。
「もう八十秒……思いのほか、時間が経つのが早いわね」 那由他の設定していたアラームが鳴り始めた。 タイムリミットが近づいている。 「硬くても、つついて、つつけば、穴があく」 ペシェの投げた二つの結晶輪が防壁に当たって、跳ね返った。 「ケロちゃん、合わせるよ」 「ガゥウウウウウウ!」 「ボクも続くよ!」 猛攻に次ぐ、猛攻。 だが、ほぼ直線的に打ち込まれる攻撃に決定打は生まれず……無常にも時間だけが過ぎていく。 『さあ、そろそろ時間ですよ』 能力者達の猛攻を凌ぎながら、地縛霊はほくそ笑む。 届かないのか……。 「いや、まだだ」 深月の放ったアークヘリオンが地縛霊の間近で爆発した。 『どこを……うっ』 隠れて忍び寄った一撃。 「守りには自信があるようだが……それが命取りだ」 声の主は沙梨花。 彼女の放った呪言士の技が、遂に地縛霊の防壁の隙を突いて直撃した! 「動きが」 「止まった!!」 「もう時間がないわ。急いで!」 迫るタイムリミット。 しかし、この時を待っていたのだ。直線的な攻撃もこの時のために! 「決着を着けましょう……!」 「押し切るわよ、みんな!」 神無と、りんねが呼び掛けながら詠唱兵器を振るう。 「はぁあああああ!」 那由他が雄叫びを上げて斬りつけ、 「押しきるのにゃ!」 『ぬぅぅ……』 祢琥魅も白虎絶命拳で強引に地縛霊の守りごと押し込んだ。 きっと、このタイミングを逃せば次は無い。 「「うぉおおおおおお!!」」 光が、闇が。 風が、氷雪が、能力者達の気迫と共に突き刺さる。 そして、カウントが百を超えた……。
●百秒を超えて 猛攻の前に地縛霊が、消え去った。 すべてを出し切り呆然とそれを見る者、まだ攻撃をしようとして止める者。 いずれにもゆっくりと、ある事実が染み込んでくる。 「……勝った」 「勝ったわ!」 勝利。 その二文字がはっきりと脳裏に浮かび上がった。 「ひなたさんやったのにゃ! タイムアタック成功なのにゃ〜♪」 「やったね、祢琥魅ちゃん♪」 二人ともぴょんぴょん跳ねながらハイタッチ。 「私達に出来ない事は……ないわ!」 那由他もそれに手を合わす。 パン! っと気持ちの良い音が廃ビルに響いた。 「これで学園の事は任せておけって、いろはや大五郎に報告できるね」 「だね♪ だね♪」 茂理の言葉に、ひなたは嬉しそうに声を弾ませる。 「ふぅ……百秒に間に合わすのも、大変ねぇ」 それを見ながら、ペシェがようやく終わったと安堵の息を吐いた。 同時にどっと押し寄せる疲労感。 「やれやれ、本当に厄介ですね……」 神無も同様のようで、厳しい戦いの疲れを感じていた。 「長時間の戦闘以上に濃密な戦いだったわ」 りんねも同感だとうなずき、 「これから、こんなヤツらを相手にしていかないといけないのね」 次の戦いを考えると少し気が重くなる。 「今後、戦いは一層激化するのだろう。……更に高みへ至らなくては 」 深く息を吐き出す、深月。 極度に張り詰めた戦場は、能力者達の体力と精神力を根こそぎ奪っていったようだ。 「でも、勝ったんだから今日ぐらいは喜ぼうよ!」 「そうなのにゃ!」 もっとも浮かれている面々を見れば、笑みが自然と浮かんできた。 確かに今日ぐらいは勝利の余韻に浸ってもいいだろう。 「(共に戦う者を信じる……そう言ったか、私は。変わっていくのだな……敵も、私も)」 そんなことをつぶやいて、沙梨花は仲間達のところに歩いていく。 仲間達の持つ明かりが今日はひと際、明るく見えた。
能力者達が突入前に設定したタイマーは百を優に超えている。 力を合わせたからこそ、乗り越えられた壁。 それをはっきりと示すように、時間は先へと進み続けていた――。
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参加者:8人
作成日:2011/04/26
得票数:カッコいい13
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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