<リプレイ>
●しがらみをすてるための15分 地球上某所。雑草を踏み、九つの陰が山道を走っていた。 「友情、気合い、根性、勝利! がんばるの……だ、だぜ!」 細腕でガッツポーズをとると、慣れない様子で聖馬・アキラ(緋狐・b00129)は拳を握った。 「なんかの雑誌で似たようなフレーズを見たけど……今回にはピッタリね」 黙って片手を上げる歌彩・亜矢(レイジングファルコン・b36337)。 そんな二人の肩を軽く叩く揚羽・夏希(代表的真ファイアフォックス・bn0001)。 アキラは横目で彼女を見た。 「熱い戦い、お願いしますっ!」 「オーケー。暴れてやろうぜ!」 「気合いでか?」 後ろを走る暗都・魎夜(黄昏の破壊者・b42300)が、覗き込むようにして夏希に問いかけてきた。 一瞬だけ目をやる夏希。 「相手は抗体ゴーストだぜ。BSが気合いでどうにかなるかよ」 「……」 特に言い返さない夏希の代わりに、芝本・五六八(ワーロック・b01225)が彼の横に並んだ。 リラックスしたような表情で微笑する。 「気合いってのは、何だろうね」 「……何って」 声がでかいことか。 強気なことか。 それとも饒舌なことか。 「俺は思うんだ。ただの一足を誰より早く踏み込む力のことを、気合いっていうんじゃないかな」 愚か者の蛮勇なり、思考する者の知恵なり。 「後は結果で語るとしよう」 そう言って前に向き直る五六八。魎夜は眉を寄せて沈黙した。
姿勢を低くして土を蹴り、倒れた丸太を音もなく飛び越える。 美沼・瑞穂(鮫牙忍者・b06580)は眼鏡の奥で目をそっと細めた。 「夏希殿。危なそうになったら、闘魂注入をお願いしたいでござる」 「要は殴れって事か?」 「……多分」 互いを探り合うような視線が数秒交わされる。 横から割り込む北條・風葉(真クルースニク・b51053)。 「ここにくるまで色々考えたけど、大事なのはやっぱ勢いですよね、先輩!」 「向こうは突入のタイミングを計れるからね」 如月・愛理(発響ベーシスト・b36373)が小型の手鏡をパタンと閉じて、軋むように笑う。 思い切りの良いパンクロックメイクが綺麗に歪んだ。 「どうせなら、勢いで押し切った方が良さそうだよ」 「ま、そーゆーワケで」 蒔田・敬介(花に嵐の喩えもあるさ・b36724)は、徐々に開く獣道を前に奥歯をぐっと噛みしめた。 「引かない引けない挫けない! 目の前の敵を倒して原初への突破口を開く!」 前方に感じるゴースト4体の気配。 踏み込んだなら戻れない。 這い入ったなら止まれない。 しがらみを捨てる覚悟をもって、彼らは戦場へと突入した。
●前振りのない電撃戦 獣道で悠々と相手の到着を待っていたリリス達は、けたたましい足音に思わず振り向いた。 「敵影が近づ――」 「うおらああああああああああああ!」 長剣使いのリリスに向かって夏希が全力のドロップキック。 相手を巻き込んでごろごろ転がっていくのを横目に、寡黙なリリスが日本刀に手をかけた。 同時に大剣を縦のように構えるリリス。 「テメェら何のつも――」 「うりゃああああああああああ!」 相手が何かを言い終わる前にアキラが全力のフェニックスブロウを叩き込む。 独特な五連装ガトリングの盾部分をあえて前に突き出してのタックルである。 「邪魔すると焼く! 邪魔しないなら燃やします!」 リリスもろとも茂みの向こうに押し倒すアキラ。 一応四人横並びになっていたリリスだが、たった二秒足らずで陣形がかき乱された。 慌てて青龍刀を構えるリリス。 「あ、貴方たち何なんデスか! 私たちがかの――いいっ!?」 「先手必勝、一番槍!」 タンカを切ろうとしたリリスの眼前5センチの所に、瑞穂の掌が一瞬で向けられる。 咄嗟に仰け反ろうとしたが、背後に瑞穂の分身が現れて後頭部に掌を添えた。 目を見開くリリス。 「夏希殿、アキラ殿。抑えは任せたでござる」 霧影爆水掌を叩き込み、瑞穂は冷静に呟いた。 白目を剥いてよろめく青龍刀リリス。 瞬間、日本刀のリリスが低姿勢で瑞穂の懐に潜り込んだ。 「――鋭」 しゃりん、と鳴った。 斜め上に光りが走った。 ただそれだけで、瑞穂の脇腹から鮮血が溢れ出す。 二発目を撃ち込むべく更に深く踏み込んでくリリス。それに対し、側面からの紅蓮撃が炸裂した。 「何だって? 通りすがりの高校生だよ! 美人相手でも手加減しないぜ!」 宝剣をぎゅっと握り直し、魎夜は更に攻撃を畳み掛ける。 瞬時に刀を閃かせ、剣を受け止める日本刀リリス。 その瞬間、リリスは小さく息を吐いた。 それ故、ではないのだろう。恐らく最初からその場にあったのだ。 パフューム香が魎夜の鼻につく。一瞬意識がもっていかれそうになった、その時。 「あんたの本懐は、なんだ」 後ろから無理矢理拳をねじ込んできた五六八。 リリスは素早く飛び退いて距離をとる。 「その拳と、その血で贖ってでも手に入れたいものは、なんだ」 「……ぐ!」 歯を食いしばって首を振る魎夜。 「俺に、んな魅了は効かねぇ。俺はあいつのことが大好きだからな!」 鬼面に手を押し当てて叫ぶ魎夜……だったが、何故か瑞穂の視線に恐怖を感じて目をそらした。 「なんてデタラメな。これダカラ馬鹿は嫌なんデス」 指先で青龍刀を回して、まるで小型ナイフのように弄ぶと、リリスはパフューム香を発生。夏希とアキラの抑えていたリリス達も一斉にパフュームを放つ。 香りに瑞穂達が正気を失いかけるが、しかし。 「目を覚ませバカヤロウ! 銀誓館の誓いを忘れたか!」 敬介が病魔根絶符で瑞穂の後頭部をぶっ叩いた。 「学園で可愛い彼氏が待ってるんだろ! え、違う? 俺は彼女が待ってるんだよバカヤ――うおっ」 自分の鼻を押さえて仰け反る敬介。どうやらパフューム香が効いてしまったようである。 「大丈夫だ。彼女のことを思い出して……うおっ、鼻血が」 「リア充爆発しろ!」 瑞穂のアッパーカットが炸裂した。 二重の意味で鼻血を吹く敬介。 「歯を食いしばれ、修正してやる!」 「がふあ!」 白目を剥いてぶっ倒れる敬介。 瑞穂は手をぷらぷらやってからわざとらしく目をそらした。 「おっと失敬。つい本音が漏れたでゴザルヨー」 そんな彼女を今度こそ斬るべく、日本刀のリリスが急接近。 だがしかし! 「うらぁ!」 愛理のアウトサイドクラッシュがいきなり炸裂。 防御の為に刀を翳すが、愛理はリリスの刀ごと押し切った。 衝撃を殺しきれず背中から倒れるリリス。 そこへ、風葉が身体全体で突っ込む断罪ナックルを叩き込んだ。 「倒れる瞬間まで前のめりー!」 地面とサンドするようなパンチが炸裂。 日本刀のリリスはたちまち消滅した。 「役立たず」 青龍刀のリリスは舌打ちし、踊るような動きで襲いかかる。 防御しようとする風葉だが……気づけばパフュームによって身体の自由を奪われていた。 「……!」 風葉危うし。容赦なく繰り出された青龍刀は彼の首を落と……さなかった。 高い金属音。 独特のナイフで青龍刀を受け止め、亜矢が吠えた。 「原初のクソッタレを叩きつぶすならここで立ち止まってちゃダメよ」 捻り込むようなデモンストランダム。 くの字に折れ曲がるリリス。 「こんな香りでどうにかなる私たちじゃないでしょ。さあ、目の前の敵をぶっ潰すわよ!」 空中で消滅するリリスを両目に捕らえながら、亜矢は言った。 短く息を吐き出す風葉。 「すまない。礼はこの拳で……つけさせて貰う!」 身体ごと向き直る風葉達。 山の斜面をやや下った先では、夏希とアキラがリリスとの殴り合いを演じていた。
●死なない心 「舐めんな、リリス野郎ォ!」 「もっと熱くなれえぇ!」 アキラと夏希のガトリングパンチが炸裂。 しかし、二人の攻撃はリリスの片手で受け止められていた。 「タイマン張れると思ったのかよ?」 「青い青い、青いですわ!」 片手大上段からの斬撃が同時に発動。夏希とアキラはガードすら間に合わず胸元を血に染めた。衝撃で斜面を転がる二人。 「ま、そうだよな。俺一人で倒すワケにはいかねえか」 口元を拭う夏希。よく見れば、全身刀疵だらけだった。 「あたりまえだ!」 二人のリリスが突っ込んでくる。 歯を食いしばってガトリングを盾にするアキラ……だったが。 想定した衝撃は訪れない。 代わりに、自分を覆う陰を見た。 「やっぱこういうのは皆でやんねえと……楽しくないよな」 「――」 夏希の背中から、長剣と大剣が同時に突き出ていた。 膝から崩れ落ちる夏希。 「夏希殿!」 斜面を風のように駆け下りてきた瑞穂が長剣使いに霧影爆水掌を叩き込んだ。 うまく両腕でガードする長剣使い。 「遅かったですわね。既に一人片付けましてよ。具体的には、『死亡』させました」 薄笑いを浮かべる長剣使い。 その瞬間、周囲に大量のパフュームが散蒔かれた。 「くっ!」 追って駆け下りてきた五六八と亜矢が口元を覆うが、身体の自由は既に効かない。 「お前らは回復役にもなりゃしねえ。死んどけ!」 大剣使いが襲いかかる。 対抗して飛びかかる愛理。 両者の武器が激突し、顔を近づけたまま愛理は叫んだ。 「こんな見せかけの、薄っぺらな誘惑に負けてたら人生やってかないよ!」 「な……!」 「あれ、図星だった?」 腹を蹴っ飛ばして転がす愛理。 「夏希……チッ!」 魎夜は歯を食いしばって斜面から跳躍。大剣使いに渾身の紅蓮撃を叩き込む。 大剣を盾にして防ぎきるリリス。 その隙を狙って長剣使いの一撃が魎夜を切り裂いた。 「調子に乗らないでくださいます? 先刻申しました通りレッドジャケットの女は心の臓を貫いて即死――」 「立てよ!」 リリスがそこまで言いかけた所で、アキラの声が山中に木霊した。 俯せに転がった夏希の頭を掴んで、無理矢理引っ張り起こす。 「んで、ぶっ飛ばすんでしょ! だから無茶してください。今は全力で、無茶してください!」 「五月蠅いですわね」 リリスの剣が走る。 刃は正確に肉を切り、アキラの腕を切断する……筈だった。 「――おい」 素手の左手が、刀身を掴んでいた。 滴る血。開かれる両目。 揚羽夏希が復活した。 「俺の恋人(銀誓館)に何してんだよ」 「貴女――ぐあっ!?」 目を見開くリリス。その直後、顔面に敬介の御霊滅殺符が直撃した。 「フラグなんか追ってやんよコラ! 符術士なんてサポートジョブだとか言った奴前に出ろ! ああ!? お前か!?」 「な、え、何を言って……!」 剣を構え直そうとした途端、風葉の斬罪ナックルが繰り出された。 「気合、根性、友情、そして――」 起き上がったリリスの頬に、それはそれは良くめり込んだ。 「勝利ぃー!」 思い切り吹っ飛び、樹幹に叩き付けられて消滅するリリス。 残る一体。大剣使いが起き上がって剣を構える。 が、その時には既に五六八と亜矢が攻撃を仕掛けていた。 「0対100でも、まだ負けていない――」 素早く懐に潜り込んだ五六八の拳を氷の吐息が覆う。 「この拳を、ただの一撃でも多く――叩き込む!」 腹部に炸裂したパンチが、大剣使いの身体を浮かす。 彼女の両目に、高く跳躍した亜矢が映る。 インフィニティエアを発動させた彼女は、フライングキックの構えでリリスへと照準を合わせた。 「私には恋人や何かはいないけど、銀誓館学園は好き」 だから。 「私はミンナを想って戦うわ」 亜矢のクレセントファングが炸裂。 リリスを欠片も残さず消滅させた。
●Dilemma 獣道を少年少女が進む。 アキラや瑞穂に肩を借りて歩く夏希に、魎夜が声をかけた。 「なあ、さっきは……」 「いいんだよ」 血を吐きながら笑う夏希に、魎夜はばつの悪い顔をした。 「それはそうと、悪かったな。闘魂注入できなかった」 「いや、それはいいでござる」 瞑目する瑞穂。 そんな彼女たちの肩に、理恵はそっと手を置いた。 「それより、この先にダッシュだよ。一番槍は譲れない!」 「おうともよ。まだまだ戦い足りねぇぜ!」 風葉が踵で地面を叩く。 「ま、そりゃそうだ。まだ今日はリリス四人しか相手してねえもんな」 夏希がアキラ達から腕をどけて、自分の首を鳴らす。 「それじゃ、先へ急ごうか」 「どうなってるかは皆任せで」 微笑む五六八と亜矢。 敬介とアキラは顔を見合わせて。 「なら競争でもしますか」 「その案乗った!」
九人の少年少女が山道を走る。 その先に何があるのか、何一つ分からなかったとしても、彼らは走る。 自分の足が、動く限りは。
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参加者:8人
作成日:2011/05/25
得票数:カッコいい20
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冒険結果:成功!
重傷者:揚羽・夏希(代表的真ファイアフォックス・bn0001)(NPC)
死亡者:なし
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