<リプレイ>
●序章 雛河内荘という洋館がありました。 えっ、旅館ではなかったのかと……? ……まあ、色々と事情があるのです。 あっ、失礼しました。わたしは雛河内荘の主人、氷川・小雪(薄氷白符・b46013)と申します。 今日はわたしが招待したプリン愛好会の方々が来られているのですが……皆でプリン談義に花を咲かせている最中に事件が起きてしまいました――。
●第一の殺人 「誰がこんなおいし……や、もったいな……いや、ひどいことを……っ」 三笠・輪音(夕映比翼・b10867)が両手で顔を覆い、 「そんな……! ひなたさんがどうして……っ」 驚愕の表情を浮かべ、地片・李奈(血がたりない・b80215)はとうとう泣き崩れてしまった。 どう否定しようとも、現実は変わらない。 初瀬部・ひなた(陽だまり仔猫・bn0153)が特製バケツプリンに顔を突っ込み、カラメルまみれの状態で刺し殺されている。 「(どうしてまたこのような事が……)」 「(まさかこんな事になるとは……私のせいで申し訳ありません……)」 部屋の入り口では、狐面を被った小雪と、メイドの刀守・梓杜乃(メイドオブオールワーク・b42779)がこの惨状に眉をひそめている。 一体、誰が? 何の目的で?
「あれが目的なのだろう? 伝説のプリンが」
声のした方に、一同が振り向く。 そこに居たのは、客人のひとり――蒲生・灯雪(雪雅幻詠・b55309)であった。 「言われてみれば」 「とても幸せそうな死に顔ですね」 「ええ、これは美味しいものを食べきった、ひなたさんの顔です!」 ならば、このプリンは灯雪が言ったとおりの物なのか? 視線が自然とバケツに残ったプリンへと。 そして、 「伝説のプリンレシピ……それがあったら24時間365日美味しいプリンが食べ放題! 確かに魅力的で喉から手が出るほど欲しいけれど……」 「犯人を尊敬するな。直接ライバルを減らすなんて、わたしには考えられなかったからな」 その言葉に、輪音が灯雪を睨みつける。 「あなた、事件が起こるちょっと前、ひなたさんと言い争ってたわよね。蒸しプリンか焼きプリン、どちらがプリンの格が上かって。お互い一歩も譲らなくて」 輪音は舌鋒を鋭くし、 「……もしかしてあなたじゃないの?」 疑いの目を真っ直ぐに向けた。 「確かにひなたさんと口論したが、それだけで犯人扱いはしないでほしいな」 「あら、自分の主張を押し通し、かつ邪魔者を消せたら一石二鳥ですものね?」 「焦っているのではないか? 次は貴方が殺されるのかもしれないから」 「……そ、そんなことは」 輪音が青ざめて、灯雪から距離を置く。 大雨によって、峠の道は土砂崩れを起こしている。 ここは陸の孤島だ。 外部からの侵入が不可能な以上、この雛河内荘の中に殺人犯が居るのだ。 「やはりお亡くなりのようですね……」 いつの間にか、中寮・琴乃(風花の舞う静謐の乙女・b47782)が、ひなたの脈をとっていた。 「失礼、私はこう云う者です。身分を明かす気は無かったのですが……」 次いで示したのは警察手帳。 「警察?!」 「なんで警察が?」 「兎も角、皆様は別室へ……御手数ですが事情をお聞かせ願いましょう」 「いや、まずは検視をさせてもらうのじゃ」 「えっ……」 制止したのは、シルビア・ブギ(カオスの素・b45276)。 「妾は検視官じゃ。定年退職した身ゆえ、元がつくがな」 「しかし」 「まあ、待て。直ぐに終わる。それにこの額に書かれたメッセージも気になるしのぅ」
――そう、そこには『死んでます』、そして『第一の殺人』と書かれていた。
「それで何か分かりましたか」 「ふむ、雛河内荘(ひなごうちそう)?」 「……?」 「ひなごちそうか、プリンと掛かっておるのじゃな」 「まさか、この館と何か関係が?!」 「いや、まったく無い!」 「……そ、そうですか」 そして、シルビアは一度考え込んでから分かったことを話しだす。 「おそらく犯人は大体10〜20代、あるいは30〜60代の男。もしくは女じゃ。死亡推定時間は発見から、最後に確認されたときまでの間じゃな」 「おおっ!」 「検視だけでなく、犯人のプロファイリングまで」 「いやいやいや! まったく絞れてないから! 死亡推定時間も当たり前のことしか言ってないから!」 「あっ、ほんとですね」 「……ということで、犯人は貴方です」 びしっと、琴乃の指差した先には、レンヤ・クガツキ(隊リターンズカイザー猫弱鋼金・b17304)が。 「待て! 何で俺が犯人だ?! それに俺も警察だ、ほら」 なんと、レンヤも警察手帳を持っていた。 「階級は巡査なんで、中寮警部の下になるか……いや、なります」 「まさか、そんな設定が」 「どうしました?」 「いえ、何でもありません。分かりました、ヤスはわたしの下についてもらいます」 「……いや、ヤスじゃなくて、レンヤ・クガツキ」 「何か言いましたか? ヤス」 「……もう、ヤスでいいよ」 「では、改めて。ヤス、貴方が犯人です」 びしっ! 「待て! 何を根拠に」 「シルビア様のプロファイリングに該当するのはヤス、貴方です」 「それ、さっき滅茶苦茶だって分かっただろう! とりあえず、事情聴取を。事情聴取をしましょう!」
●事情聴取〜第二の殺人 「絶対伝説のレシピが目的だな。レシピが手に入れば最高のプリンが食べれるんだ」 「ふむ、伝説のプリン。其のレシピですか……詳しい由来を御承知ですか?」 「いや、少しでも情報があるのなら、わたしが教えてほしいぐらいだ」 一番手は灯雪。 話は事件そっちのけでレシピについて終始している。 「……ボス、少しは事件のことも」 「まずはレシピです。レシピの情報を集めなさい!」
「わたし、見たわ……あの人(灯雪さん)が、ひなたさんの部屋の方向へ歩いて行くのを。きっと凶器だって隠し持ってたに違いないんだわ」 「そんなことはどうでもいのです。レシピの情報を!」 「……ボス」 果たして、輪音の情報は活かされるのであろうか?
「アリバイとな?」 「それよりも、レシピの情報を」 「……いえ、アリバイも是非に」 「ふむ、アレは苦いゆえ持ってない。チョコ食うか? 無論、警察用語のチョコでないぞ?」 「ヤス、お引取り頂いて」 「分かりました……」 こうして、シルビアは早々に事情聴取を終えた。
「実は犯人と思われる人物に襲われました……」 なんと、梓杜乃も被害に遭ったという。 「犯人は全身を黒タイツで包んでいて顔はよく分かりませんでした。……でも、身長は2mぐらいあったと思いますわ」 「………」 「……ボス、何か?」 「犯人はヤス、貴方です」 「待ってください。見間違いということも……それにレシピのことは聞かなくてもいいんですか?」 「そうです、レシピ!」 「所在に関しては心当たりがあります。ですが、お嬢様の命とレシピだけはこの命に代えても守りとおすつもりです。そうでなければ、前のご主人様に顔向けできません」 「「………」」
――で、ひと通り話を聞いた結果。
「犯人はヤス、貴方です」 「……また、それですか」 そこにドアがノックされた。 「すまない」 訪ねてきたのは、灯雪。 「わたしの巨大プリンを知らないか?」 「巨大プリン?」 「ああ、冷蔵庫に入れておいたはずなんだが……」
「きゃあああああ」
「悲鳴?!」 「あっちのようだ」 「早く来てください。三笠さんが! 三笠さんが!」 駆けつけると第二の犠牲者――輪音もまた巨大プリンに顔を突っ込んで死亡していた。 おまけに額には『第二の殺人です』と記されている。 「このプリンは確か……」 「待ってくれ。確かにわたしのプリンだが、冷蔵庫からなくなったんだ。信じてくれ」 一同が、灯雪に冷ややかな視線を送る。 「とりあえずはシルビア様に検視をしてもらってからにしましょうか」 「……あれ?」 「そういえば、シルビアの姿が見えない……」 いやな予感が全身を駆け抜ける。 まさか? 「行きましょう。梓杜乃さん、念のために部屋の鍵を」 「はい、お嬢様、いえ、ご主人様」 小雪がすばやく指示を出し、梓杜乃が駆け出した。 何でも、輪音の部屋にも鍵がかかっていて、第一の殺人と同様に密室であったらしい。 先程の遣り取りはそれを懸念したものだろう。
そして、それは正解であった……。
「シルビア様、返事をしてください!」 小雪の声に何の反応も返ってこない。 「……やっぱり」 李奈が言いそうになって口ごもる。 言わずともその先は容易に想像がつく。 「お待たせしました」 そこに梓杜乃が駆けてきた。 扉の前まで来るとすばやく鍵を挿して、ロックを開ける。 ガチリと音がして、ドアノブが回り、 「「………」」 誰もが無言になって、先を見る。 「……っ!」 「……やっぱり」
●混迷の舞台 時間は少しさかのぼる。 シルビアはひとり部屋にこもって、風鈴を片手にプリン愛好会連続殺人事件の台本に目を通していた。 「なるほど犯人は……おや?」 チリン。 風鈴が鳴った。 ドアも窓も閉めているはず。 「どこから……うっ」 気配を感じて振り返ろうとするが、後ろから受けた強い衝撃に崩れ落ちた。 「……ううぅ」 朦朧とする意識のなか、シルビアは必死にメッセージを残そうとする。 それを犯人が見ていることに気付くこともなく。
「見てください、ボス。何か書かかれています。ダイイングメッセージでしょうか?」 「そのようですね」 時間は現在に戻り、琴乃とヤスがまずは現場を調べている。 そして、当然のように残されていたメッセージに気付いたわけだが……。 「ええと、『続きはWebで』……とあるようですが、犯人が書き換えたのでしょうか?」 「いや、たぶんそれはないかと……忘れましょう」 ともかく、額に書かれた犯人のメッセージから、これが『第三の殺人』であることは分かった。 「もうたくさんよ!」 そこに、李奈が叫んだ。 「この中に犯人がいるんでしょ! もう耐えられない、ボクは出ていく!」 次々と起こる事件に精神が耐えられなくなったようだ。 「お待ちください。ひとりになるのは危険です」 「ここにいても殺されるだけだよ!」 小雪が制止するのも聞かずに、李奈が飛び出した。 慌てて追いかけようとするが、外は未だに激しい雨が降り続いている。 「まあ、これでライバルがひとり減ったな」 対して、灯雪は涼しい顔。 このような事態になっても、まだプリンのレシピを追っているのか? 「挑発的ですが、もしや貴方が」 「いいや、違う」 むしろ、 「この中で1番動機があるのは館の住人じゃないか? 伝説のプリンは奪われたくないのだろう?」 灯雪が一同に問いかける。 小雪と、梓杜乃は押し黙ったまま動向を見守った。 「それとも、館の呪いとか今さら言うのではないよな……うっ……あぁ」 「蒲生様どういたしました?」 「……ううっ、毒を」 近寄る時間すらなく、灯雪は倒れてそのまま……。 「どうやら、毒はこのプリンに仕掛けられていたようですね」 「わ、私は知りません! いつの間に……」 指摘されて、梓杜乃がうろたえる。 「ともかく……またひとり」 「クローズドサークルは全滅ありですよね?」 琴乃の言葉に誰も答えない。 重い沈黙が場を支配した。それを破ったのは、 「そうですね。警部、いえ偽警部」 「ヤス……いったい何を?」 「危うくだまされるところだったぜ」 言って、ヤスは二つの警察手帳を出して、みんなに見せる。 そこに写っていたのはヤスと見知らぬ男。 「片方は俺の、もう片方は」 「……見破られたのなら仕方在りません。確かに私は怪盗稼業を営んで居ります。しかし、殺しは私の主義に反する事」 真剣に一同を見渡して、琴乃が言う。 「犯人は別に居ます。此の屋敷の何処かに……」 残ったのは四人。 女主人か? 代々使えるメイドか? 偽警官もとい、怪盗・朽音か? はたまた犯人はヤスか? 「こうなっては仕方がありません。梓杜乃さん、準備をしてください」 「分かりました、ご主人様」
●降霊術 ほどなくして、部屋には魔方陣が描かれた。 「こ、これは一体?!」 「これより降霊術を行います」 「降霊術?!」 「本当に霊なんて呼べると思っているのか?」 「……ここはご主人様の手腕を見て頂きましょう」 梓杜乃が二人を留め、小雪が不思議な呪文を紡ぎだす。 「いあ、いあ、くとぅるふ、ふんぐるい、むぐるうなふ以下略っ、お出でませ被害者の皆様方!」 部屋全体にドライアイスの白い靄が流れ出した。 そして、現れる五人。 「やはり、居なくなった地片様も犠牲になっていたのですね」 「うううっ……わたしの出番少なすぎよね?」 「李奈ちゃんなんていいほうだよ。ボクなんてこれが初めてしゃべるセリフだよ」 「でも、美味しいプリン一杯食べてたよね?」 ……何やら犠牲者にも色々あるらしい。 「あの……犯人を教えて頂けませんか?」 「うむ、風鈴とぷりんは響きが似ておるのじゃ」 どうじゃ! とシルビアが胸を張った。 ……そういえば風鈴を持っていた気もするが、きっと誰も覚えてはいまい。 「……犯人? えーと、殺されたけどプリン美味しかったからいいんじゃない? ……だめ?」 「だめです」 絶賛プリンを美味しそうに食べている輪音、早く教えてくださいと迫る小雪。 「あ、一応この人だったわ」 「そう、犯人は、あなただ!」
「「犯人はヤス!!」」 8 Combination! びしっと、指が一点をさす。
「……くっ、ばれてしまっては仕方がない」 「いや、初めから指摘されてたし」 「犯人情報に該当するのはヤスだけだったしね」 「というか、ヤスですからね」
『ふ、ふざけるな!』
「おっ!」 「出たな」 「本当の霊のお出ましか」 『何だ今のは?! 密室トリックは解決してないし、犯人を推理するどころか降霊術だと?!』 予定通り、地縛霊は怒り心頭。 「最後の被害者様、いらっしゃいませ」 「ようこそこの超推理空間へ、お楽しみ頂けましたか?」 梓杜乃と、灯雪が、更に火へ油をそそぐ。 『ミステリをなめるな!!』 「さあ、締めだ」 「ボツと書きまくってくれるのじゃ!」 「ふるぼっこです」 「ぁ、宿儺。貴方もどうぞ」
――ボコスカ、ボコスカ!
「よし、消えた」 「終わり!」
●終章〜打ち上げへ こうして物語は終焉を迎えました。 しかし、伝説のプリン・レシピをめぐる戦いはこれから始まるのです。 「よろしくね、梓杜乃さん」 「はい、一緒にこのレシピをずっと守っていきます」
「……まだやってるの?」 「あっ、そうですね。お疲れ様でした」 「いえぃ! 初依頼終了! しかし、何てマニアック」 「面白かったね」 「楽しかったが、伝説のプリンは食べてみたかったな」 「そう言われると思って用意しておきましたわ」 と、梓杜乃が冷やしたプリンを取りだす。 「やったー」 「さて、良い子のみんな、食べ物で遊んじゃダメだよ! 食べ物は大切に」 「李奈ちゃん無くなっちゃうよ〜」 「わっ、待って」
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参加者:8人
作成日:2011/06/01
得票数:楽しい12
笑える7
知的1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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