<リプレイ>
● 「いろはさんお願いします」 「分かった」 応えると共に、百地・いろは(呪言士・bn0209)が光明呪言で明かりを灯した。 照らし出される円形の空洞。 足元には淀んだ水が溜まり、緩やかに奥へと流れ込んでいる。 「どうやら、この奥のようね」 地図を確認して、月島・眞子(トゥルームーン・b11471)が仲間達に先を示した。 水の流れる先――そこに抗体ゴーストがいる。
「「イグニッション!」」
これから先の危険に備えて、能力者達は武器をとった。 各自、準備してきた照明器具のスイッチを入れ、幾重にも明かりが連なっていく。 「……はぁ」 と、そこに片桐・綾乃(猫を被った直情系お嬢様・b19717)が小さく溜め息をついた。 「……タコ……触手……締め付け……それも下水道の汚水の中で……想像しただけで気色悪い事この上ないですけど、放置するわけにもいかないのですわね」 言葉にすると、更に嫌悪感が増した。 正直に言えば、関わりたくない相手だ。 「ほんと、抗体ゴーストがこんなにも残ってたなんて」 眞子もそれに同意する。 先の戦争では何とか最悪の事態を回避することが出来たものの、待っていたのはこんな後始末。二人でなくとも愚痴が零れよう。 しかし、放置すれば、 (「獣人が街中に……。体勢を立て直したらいつ人を襲うか……。そんな悲劇を防ぐ為にもここできちんと討伐しないとですね。気は重いですけど……」) 神栖・綾(蒼月に照らされし桔梗・b47597)が脳裏に浮かべたとおり。 それを阻止するためにも、巣くった抗体ゴーストを駆逐しなくてはならない。 「まあ、やるしかない」 気が乗らないのは、いろはも同じようだ。 「いろはさん……。よろしくお願いします。それと触手に囚われたときは協力を」 「……ああ、分かってる。でも、やっぱり……やらなくてはダメか」 「皆さんの安全の為です、ええ」 綾の言葉に、いろはの顔が曇る。 他の女性達も同様。 「ボスの束縛から脱出するためには、ボスが驚いて思わず締め付けを緩めるような反応をしなくちゃいけないとは。……タコ入道にサービスするみたいで気が重いですわ」 そう考えると、綾乃でなくとも気が重くなる。 「大丈夫です。何とかなりますよ!」 不安を跳ね除けるように、レイラ・ミツルギ(魔剣士・b48060)が声を上げた。 「そうだね、こんなところで不安になっていてもしょうがない」 「はい、前に進みましょう!」 うなずきと共に、足を前へ。 明かり向けて闇を払いながら、奥へと進む。
下水道の中は思っていたよりも静かだった。 (「こんな所に逃げ込むとは、やっぱタコだけに薄暗く狭い場所が好きなのかね」) ライフルに取り付けた夜戦用のフラッシュライトを死角に向けて、犬神・ソーカル(オホートニク・b73424)は動きを止めた。 見落としが無いように、じっくりと視線を巡らせて、安全を確認。 (「よし、大丈夫だ」) 仲間達に目配せを送って、先へと進む。 どうやら予定通り、抗体ゴーストは指定されたエリアに引き篭もっているようだ。 「しかし、百地さんを始め周りが華やかなせいか、あんまここの薄暗さも気にならねェな」 少し気を緩め、ソーカルが軽口を。 「えっ、何を?!」 「まあ、お上手ですわ」 女性陣にも、それは伝播した。 張り詰めていた空気がいい具合に緩む。 「とはいえ、もう少し進めばタコ入道と遭遇するだろう。警戒を忘れるな」 そして、天乃空・ティーザ(覇刃戦姫・b40642)が話をまとめて歩きだす。 下水道は、まだまだ奥へと続いている。 (「落ち武者狩りとは汚れ仕事でござるが、このままゴーストを放置するわけには行かないでござる」) 美沼・瑞穂(鮫牙忍者・b06580)も気合いを入れなおして、先へと進む。 慎重に、慎重に。 敵を早く見つけられるように。
● 能力者達の足が止まる。 明かりの照らす先に――異形達の影が浮き彫りとなった。 更に近付けば、戦争の際に見たタコ入道と同じものが。 そして、その中にひと際大きな固体が見える。 「ふん、敵にしとくには惜しい位、妙に貫禄ありやがるな……いや、ここはタコにしとくには惜しいと言うべきか?」 「さて、どうでござろう?」 ソーカルと、瑞穂が言葉を交わしつつ、自らに強化アビリティを施す。 他の能力者も素早く、自己強化と展開を。
――いや、敵が動いた!
「は、早い?!」 眞子は上手く先手を取ったものの、他の前衛二人と足並みが揃わず、前に出られない。 その間にもタコ入道は、間合いを詰めてくる。 まるで水面を滑るように高速で! 「展開が間に合いませんわ」 中衛にいる、綾乃はリフレクトコアを張る以外に出来ることがない。 結果、敵にほとんど押し込まれた形へ……。 「……くっ」 更にタコ入道の薙ぎ払いが容赦なく、前衛を削っていく。 「窮鼠猫を噛むか……」 甘く見ていたつもりは無いが、敵も必死だ。 「でも、負けません!」 レイラが旋剣の構えで態勢を立て直せば、 「がんばるのだー♪」 更に、リリィ・ナイアーラトテップ(必殺魔法の料理にゃんこ・b68781)の支援が飛んだ。 先手は取られたものの、能力者の対応も早い。 もう、動きは頭よりも体に染み付いている。 「なるほど思ったより手応えがありそうだ」 ティーザもクルセイドモードで傷を癒すと、すぐさま反撃に移った。 二刀を駆使して切り結ぶが、敵もさるもの。 技量は互角、もしくはそれ以上だ。 「敗残兵といえど……害を成すなら斬る。それが私の道故に」 温存しようと考えていた黒影剣をノータイムで打ち込む。 敵は思っていた以上に強い。 三体しか襲って来れないという地形的な利点が無ければ、もう戦闘不能者が出ていたかもしれない。 「攻撃力が高い上に、厄介な攻撃ばかり……」 追撃を、眞子が長剣で受け止める。
そこに怪しい影?!
「はっ!」 いつの間にかボスの長い触腕が足元に。 水面下から飛び出して能力者達を襲う。 「きゃっ!」 「な、何?!」 戸惑いと嫌悪。 吸盤のついた触腕がおぞましい感触を残して、全身を締め付けてくる……。 「おぉー、これが巷で噂のしょくしゅぷれーなのだ?」 運よく締め付けから逃れた、リリィはこれをのんびりと眺める。 ぎしっと締め付ける触腕。傍目にもかなり痛そうだ……。 「男気あふれるタコさんだから」 きっと、攻撃以外の目的はない。 とある方面から不満が出そうだが、リリィの気にすることではない。 それよりも、むしろ、 (「タコってなんか親近感湧くのはなんでかなー」) 顔には邪悪な笑み。 とりあえず、今のところ被害を受けていないので、リリィには他人事だ。
「ああぁぅうぅぅ!」 「ちょっ……どこを触っていますの!?」
と、ここで、眞子と、綾乃から悩ましい声が漏れ出した。 同時に触腕がびくんと震える。 「あっ! ボスのタコさんが!!」 リリィの指差した先――そこには真っ赤に茹で上がったように見えるタコ入道が。 「触手が取れた」 予想どおりの展開だ。 何故、こんな反応をするのかは謎だが、 「十分に有効だな」 「……でも、恥ずかしいです」 「拙者は一応忍者ですからその手を使う事にためらいは無いでござるよ」 無論その趣味は無いと付け加えて、瑞穂が炎に包まれた隕石を呼び出した。 そして、敵の中心へと落下! 轟音と共に一体のタコ入道が霧散する。 「どうやら、戦争に現れたのと同じだな」 敵の生命力を読み取って、ソーカルが炎をまとった大量の銃弾を撃ちだす。 強敵ではあるが、生命力は高くない。 範囲攻撃で押し切れる! 「……うっ、また?!」 「何でこちらばかり」 だが、またも触腕が能力者達を絡めとる。 すると、 「いっにゃーん♪」 締め付けられながらも、うっふんとポーズを決めるリリィ。 「……いったたたた!」 「……くぅ」
が、締め付けは緩まなかった。
(「……仕方ありません」) 止む得ず、綾が声を漏らす。 「ちょっ、ああっ! やぁっ、そこはぁっ、よ、弱いんですっ……!」 また、緩んだ。 一見するとふざけているようにも見えるが、これは割りと死活問題。 それほどに戦闘は厳しく、 「前衛代わってください」 「分かりましたわ」 敵の攻撃力を考えると、締め付けを喰らっている余裕なんてない。 「……つまり、やるしかないな」 「……そのようだ」 いろはと、ティーザが深く溜め息をついた。 次は彼女達の番だ。
● 魔炎に焼かれて、また一体タコ入道が消え去った。 しかし、敵にはもう逃げ場が無い。 ここで戦う以外に道はないと、死に物狂いで襲い掛かってくる。 「身を侵し命を脅かす傷よ、害悪よ! 我が符の力を以って祓い清め給わんことを!」 綾の投げた病魔根絶符が、瑞穂の傷を癒した。 しかし、それで綾の回復アビリティは打ち止め。 「いろはさん、リリィさん、後は任せます」 「分かった」 「任せるのだ!」 敵の数は減っているが、同様に能力者達のリソースも減っている。 加えて、 「いや……そこは駄目なのだ……っ」 リリィが震え、目に涙を溜める。 触腕が緩んだ。 「にゃっはっは、引っかかったのだ! ……ぐわっ!」 だが、フェイント! ボスの締め付けもなかなか緩まなくなってきた。 相変わらず、茹でダコのようのなって――必死に堪えている。 「そんなのあり?!」 「というか、向こうも必死なんだ」 そのため、より演技が必要で――、
「イヤッ! やめてっ! そんなとこっ!」 「はわぁっ!? ……絡みつかないで……ひぃうっ!? 動かないでくださいっ」 「……はふぅ……そんな」
綾乃が頬を朱に染め、レイラが目に涙を溜め、瑞穂が身をよじって吐息をつく。 これには、さすがに触腕が緩んだ。 「あんまり調子ブッこいてんじゃねェぞ、このアシミノーク野郎!」 すかさず、ソーカルの銃口が敵を捉える。 十字架型の紋様が放たれ、そして次々と撃ち込まれる弾丸。 「そこ、いただきですわ」 更に、綾乃の放った聖なる光が包み込む。 光が消え去ると、タコ入道も一体姿を消していた。 これで、ボスも含めてあと三体。
だが、ここでボスが突っ込んできた!
「むっ、突っ込んでくるとは?!」 遂にボスが最前線に。 勢いのついた触腕を、ティーザが刀で受け止める。 「魂をも滅する我が符の力を受けて冥府へと還りなさい!」 そこに、綾の御霊滅殺符が割り込んだ。 ボスが大きくよろめく。 隙を突いて、眞子と、レイラが攻撃を仕掛けようとするが、今度はタコ入道が邪魔をした。 「敵にも敵の連携があるのか……」 「まともにやりあえば、好敵手と呼べるのだがな……」 と口にしている間に、再び触腕が。 「またか……?!」 「……もう、いやぁ!」 もう形振り構っていられないのか、かなり乱雑に触腕が伸びてきた。
「……はぁっ、そこは……ダメなんです……! ああっ……いろはさんも……あぁっ」 「くぅ……こんな……。綾、しっかり……はぁぁ、あ……!」
身悶える、綾と、いろは。 しかし、ボスはまだ耐えている。 演技ではなく、苦痛の声が漏れ始め、 「……かくなる上は」 ティーザがミニスカートを少しめくりあげて艶混じりに息を吐いた。
「はぁぁぁ……もう、耐えられない……」 「ちょ、もう無理、そ、そんなに締め付けないで……」
それに眞子も同調。 這い寄る触腕がぴくりと動いた。 と、同時に締め付けていた力が抜け、 「お、乙女の柔肌になんてことを……、このケダモノっ!」 綾乃が怒りのままに聖なる分断で反撃。 瑞穂の隕石の魔弾と、眞子のバレットインフェルノも加わって、敵の数はあと二体。 「おーかえしなのだっ!」 更に、リリィが奥義まで高めた茨の領域を撃ち込んだ。 急速に伸びる魔法の茨に、
――ボスの体が捕まった!
「チャンスだ!」 すぐさま、ソーカルがクロストリガーで狙い撃つ。 「よくもやってくれたわね」 「先程の礼だ」 ダークハンド、そして黒影剣。 怨みつらみも合わせて、能力者達の攻撃がボスへと集まる。 攻撃を受けて、巨体がよろめき、 (「本当に男気溢れるゴーストでありました……もし抗体化する前にマヨイガに導かれていたら、仲良く出来ていたかもしれないですね……」) 締め付けという嫌な思い出はあるが、すべては仲間を守るため。 それが想像できるだけに、レイラは残念でならない。 (「でもごめんなさい。世界結界に守られたこの世界でも大好きだと言ってくれる来訪者が居る。マヨイガで人を襲うことなく平和に暮らすゴーストが居る」) だから。 だから……。 「私は人、人と共に在れる来訪者やゴーストの笑顔を守るために……貴方を倒します!」 レイラが黒影剣で一閃。 それで、ボスは動きを止めた。 最後に残ったタコ入道もそれを追うようにして消えていく。
● 「やれやれ、ようやくケリがついたな。とっととここから引き上げようぜ、いい加減臭いで鼻が曲がりそうだ」 ソーカルが声を上げると、 「同感なのだ。なんかにゅるにゅるする。早く帰ってお風呂入りたいのだ……」 「うむ、下水やら粘液やらで気持ち悪いござるな……。湯で洗い流したいでござるよ」 同調して、リリィと、瑞穂が不満を漏らす。 「うぅ、確かに……起動解除すれば汚れは無くなるって言ってもなんか感触が残ってるような……。もうこうなったら皆でお風呂にでもいきませんか?」 レイラの提案……いや、懇願であろうか? 「賛成!」 「そうですわね。お風呂にでも入って気持ちをリフレッシュしたいですわ」 それに一も二もなく、女性陣が食いつく。 思いは同じだ! 「それにしても今時珍しいぐらいの純情派でしたね。タコの世界も奥が深い……」 腕を組んで、眞子がつぶやく。 きっとあのタコ入道のことを思い出しているのだろう。 「純情タコに免じて暫くタコは食べないであげるか」 そんなことを言っている眞子とは対象的に、 (「あの様な醜態、記憶から消せるなら消したい……。ですけどあのタコ入道さんの動揺ぶりを思い出すと……」) 羞恥心と怒りと同情を混ぜた複雑な心境の、綾であった。
「ところで、さっきの戦闘はデジカメで記録しておいた……」
ギランと、殺気の篭った視線がソーカルに向く。 いや――集まる。 「ってのは冗談だ、ちょっとしたロシアンジョークだ……って聞いてるか?」
彼がその後どうなったかは、あえて触れまい。 役得に代償はつきもので。 加えるならば、あえて地雷を踏むような勇者には相応しい結果が待っている。 そう、あのタコ入道と同じように――。
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参加者:8人
作成日:2011/07/22
得票数:楽しい7
笑える1
えっち6
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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