<リプレイ>
● 天へとその牙を突き立てる様に魔龍が、天を仰いだ。 「蛇はもはや、龍と化したか……」 「チッ……、想像以上デカい!? こんなもんが山を下りたら洒落にならないぞ!」 その姿に鏑野・梨月(霧纏う水月・b18443)が吐き捨て、戸来・聖司(赤毛のエクスプローラー・b81253)が舌打ちする。 全長二十メートル――四階建ての建物にも匹敵するサイズだ。それが目の前で意志を持って動く――それだけでもとてつもない威圧感がある。 「龍に見えるほど図体がでかくなったとは言え、相手は一匹。皆でかかれば斃せぬ相手では無い筈です……筈です」 こんなデカブツだと麓からでも見えないはずもなし、世界結界は大丈夫なのか不安になりますね、と絹川・勇次(高校生土蜘蛛・b81885)がこぼした。ましてや、これが人里になど到達すれば――その被害は、想像もつかない。 「でっかい蛇だのう。使役になってくれたら心強いんだがのう」 九頭龍・権座衛門(髭熊・b73087)がそう溜め息をこぼすのも致し方ないことだろう――味方なら頼もしいだろうが、敵としてはこの上なく脅威だ。 『アアアアアアアアアアアアアアアッ!!』 天を呑む魔龍が、その視線を下へと向けた。そこに能力者達を見つければ、その獣の牙を剥く。 「帰りたいは帰りたいけど、ここまで来たらそうも言ってられねぇよな」 「大きくなって姿が変わっても、倒さないといけない敵なのは変わらないの」 暗都・魎夜(黄昏の破壊者・b42300)が宝剣を、神楽坂・組子(琴古・b13271)が長剣を構えた。目の前の妖獣に対して、何と頼りない武器か? ――だが、その不安は退く理由にはならない。 「あの巨大な姿を見るとフェンリルを思い出しますけど……あの時は地獄を見ましたが、今は成長していますし、ジャイアントキリングは奇跡の親戚ではないことを実証しますわ」 「ちまちま削るのは――こちらが保ちそうにないわ。なら集中攻撃で倒すのみよ」 これほどの敵を前にするのも初めてでないのだ――エリュシオネス・アンフィスバエナ(白にして暁光・b74146)が静かに言い捨て、リーリィ・デロンギ(剣の軍勢・b52531)がナイフの柄へと手を伸ばす。 ――そこへ、金の髪をなびかせ一つの人影が着地した。山を駆けるためにすでにイグニッションを終えていたのだろう、呼吸一つ乱さずアラストール・セブンセントラル(高貴なる義務・b05350)が長剣を引き抜いた。 「仔細はわからんが、大事と見た、加勢する!」 「もう少し……です。がんばりましょう……! 絶対に負けません……。覚悟して……ください」 凜と言い放つ神宮時・蒼(幻想綺想曲・b78116)の言葉に、天を呑む魔龍が渦巻くように身をくねらせる――目の前の能力者達を敵と認識したのだろう、その身は大地を揺るがせその咆哮が天へと轟いた。
● 能力者達は、素早く地面を蹴り展開していく――その陣形はこうだ。 前衛に組子と魎夜、聖司、中衛にアラストールとリーリィ、権座衛門、勇次、後衛に梨月とエリュシオネス、蒼といった布陣だ。 「みなさん、準備運動はできいますか?」 エリュシオネスの言葉に、全員が力強くうなずく――先程の戦いをこなした者はもちろん、援軍のアラストールもここまで駆けてきたのだ。戦いの準備も覚悟も終わっている――後は、死力を尽くすのみだ。 「縛鎖の一太刀、その身に刻むがいい!」 「援護はお任せ下さい」 リーリィの居合いによって引き抜かれたナイフの切っ先が「縛」の一文字を描き、エリュシオネスがその身に宿る貴種の血の魔力を全開にする。 『ガ、アアアアアアアアアアア!!』 その巨体を縛り上げようとする戦文字「縛」の力を天を呑む魔龍は力技で振り払った。それを目にしながら、アラストールの指先が長剣を撫で魎夜が宝剣に紅蓮の炎を宿し駆け込む。 「蛇か龍か判らんが、人を喰らう大蛇は最後は退治されるものだ、討たせてもらうぞ」 「たとえ雲突く巨人だろうと、立ち塞がるならぶっ飛ばす! それが俺のやり方だ!」 アラストールの長剣に白燐蟲が宿り淡く輝き、下段から切り上げた魎夜の燃えさかる宝剣が魔龍の鱗と火花を散らした。硬い、と魎夜がその手応えに思う――角度も速度も力も、渾身の一撃が鱗を焦がし痕を残すに留まっていたのだ。 「やるからには全力でいってもらうぜ……」 「いくのです」 梨月が生み出した霧でレンズを作り出し、駆け込んだ組子が長剣を闇色に染めて横薙ぎの斬撃を繰り出す。だが、この組子の一撃も薄い切り傷を刻むのみ――その巨体に見合った攻撃力と防御力を持っている証明だろう。 「やはり、強化したのちでなければ通りが悪そうですね」 「霧よ、今ここに集いてボクたちの力となれ……!」 勇次が前衛の立ち位置を確認しながら黒燐蟲を宝剣に宿し、蒼の召喚した幻影兵達が仲間の背後へと出現していく。 「出し惜しみは無しだ……、ハナっから本気で行くぞッ!」 聖司が身を低くして駆け込みハンマーを肩に背負う――ハンティングモードで自己強化した瞬間、天を呑む魔龍がその身を大きくくねらせた。尾の先が剣呑な風切り音と共に振り払われる――その尾の一撃に、組子と魎夜、聖司の三人が宙を舞った。 「――っと、大丈夫ですか?」 「うん……丸太というより壁? か、なんかみたい?」 吹き飛ばされた組子が、自分を受け止めてくれた勇次へそうこぼす。体長二十メートルの魔龍の尾だ、場所によっては太さだけで人の身長など軽々と越えるのだ。 追い討ちをかけるように牙を剥こうとした天を呑む魔龍の顔の前へ、一体の幻影兵が跳び込んだ――権座衛門だ。 「流石に強いのう――!」 牽制となる権座衛門の獣撃拳に、魔龍はわずらわしげに顔を振り払う。 「やはり、小細工の通用する相手じゃなさそうだな」 「じゃあ……力で押し切る……のみ、です……」 梨月が言い捨て、蒼もコクリとうなずく――力と力、一歩も退かぬ攻防が始まった。
● ――魔龍の巨体が唸るたびに、沢の水が大きく跳ねる。 『グル――ッ!!』 「う、おおおおおお……!」 ヒュルリ、と魔龍の胴へ絡め取られ魎夜が叫びを上げた。組子と聖司も逃れ切れない、ミシリ……! と三人を圧殺するために凄まじい力が込められていく。 「させねーべ!!」 そこに権座衛門の浄化サイクロンの暴風が吹き荒れた。その風を受けて、三人が魔龍の締め付けを振り払い、跳躍――地面に降り立つ。 「回復はするでのう。思い切り攻撃するだよ」 「はは、助かったぜッ!」 権座衛門の言葉に、聖司がそのハンマーを担ぎなおして答えた。そして、中衛でリーリィが、後衛でエリュシオネスが動く。 「効いていないはずがない――なら、倒れるまで重ねるまでよ!」 「外なる害より守りたまえ、祓いたまえ」 リーリィの戦文字「葬」とエリュシオネスの破魔矢が同時に魔龍へ命中する――わずかにその巨大な頭が揺らいだところへアラストールの幻影兵と魎夜の鎖剣が放たれた。 「お、おおおおおおおおお!」 アラストールの大上段の黒影剣が深く魔龍の鱗を切り裂き、紅蓮の業火へ包まれ炎の大蛇のごとき軌道で魎夜の紅蓮撃が魔龍へと突き刺さる! 「相手が倒れりゃこっちの勝ちだ! 後一歩、頑張ろうぜ!」 「ああ、こっちも充電完了ということで、……いくぞ」 魎夜の激に、梨月はその手中に生み出した水刃を投擲した。ザンッ! と魔龍の胴で水刃が弾け飛ぶ――だが、そこに確かに刻まれた傷痕へ組子と勇次の幻影兵が駆け込む。 「……ここなら」 「土蜘蛛の炎を受けてみよ!」 闇色の長剣と紅蓮の宝剣――左右から振り払われた二つの斬撃が、そこに刻まれた傷痕へ滑り込み、深く切り裂いた。 『ガ、ア――!!』 「これは、どうです……かっ?」 「動くんじゃねぇ!!」 そこに蒼の幻影兵が飛び込むとその竪琴で神霊剣を叩き込み、聖司が牽制に巨大なギロチンの刃を射出した。 ――能力者達と魔龍の勝負は足を止めての真っ向勝負となっていた。 天を呑む魔龍はその巨体に相応しい攻撃力と体力で能力者達を追い詰め、能力者側は権座衛門とエリュシオネスが分担して回復役を務め、時折アラストールや蒼も回復に回り戦線を維持していく。その回復に支えられ、能力者達は攻撃を重ねていき着実に魔龍へとダメージを与えていた。 その膠着状態の攻防が続き――状況が大きく動いたのは魔龍の牙が勇次へと向かった時だった。 『ガ、アアアアアアアアアアアアッ!!』 「く――おおおッ!」 ギイイイインッ! と勇次が宝剣を盾に魔龍の牙を受け止めたのだ。その剣ごと喰らいつこうとする魔龍の牙を、勇次は体を横に流し受け流した。 「ワシも攻撃参加でのう!」 それを見た権座衛門の背後から幻影兵が駆けた。その受け流された魔龍の顔へと獣爪が放たれる――! 「リーリィさん、巨大でも急所は狙えるはずですわ」 「ああ――!」 そこへエリュシオネスの破魔矢とリーリィの戦文字「葬」がその動きが止まった頭部へと叩き込まれる――それに、魔龍が苦痛に地面でのた打ち回った。 「こちらが大優勢、あと一押しよ!」 リーリィの言葉に応えるように地面を影の鉤爪が走り、紅蓮の業火をまとう鎖剣が唸りを上げる。アラストールと魎夜だ。 「――掌握、捕った」 「ぶった切れ!!」 ザザンッ! と魔龍の体を鉤爪と鎖剣の切っ先が切り刻む。そこへ、魎夜と合わせて動いた勇次の幻影兵がその長剣を突き出した。 「いい加減に斃れろ……っ」 ドウッ! と突き刺さった紅蓮撃が、魔龍の巨体を魔炎で飲み込んでいく。そして、組子の下段に構えた長剣と蒼の幻影兵が迫った。 「――ッ!!」 「ここ……!」 組子の下段からの切り上げ、黒影剣と蒼の神霊剣の一撃が燃え盛る魔龍を捉える。もはや暴れまわるだけの魔龍へと、ハンマーを振りかぶった聖司とレイピアを構えた梨月が続く! 「ニトロ・イグニッション! ……いっけぇぇぇぇ!!」 「……終わりだ」 聖司のロケットスマッシュが魔龍の頭部を強打し、霧のレンズ越しに繰り出された梨月の瞬断撃がその喉元へと突き刺さる――それが、止めとなった。天へとその身を伸ばした魔龍が、声もなく地面へと転がる。 バシャンッ! と跳ねる水滴。戦いで熱を帯びた能力者達の体が冷えていく中、魔龍の巨体が掻き消えていった……。
● 「ふう……綺麗な沢が滅茶苦茶ね。服も水飛沫で濡れちゃったし」 ここで風邪をひいたらとんだ夏の思い出になりそう、と苦笑するリーリィに、蒼がボソリと呟く。 「おわ……った……ですか? これで、もう大丈夫……ですよね?」 「ああ、お疲れ様」 思わずその場にへたり込んだ蒼に、アラストールが微笑み労いの言葉をかけた。 「今度こそ終わり……みたいだな」 「ああ。本当の本当に終わったんだな……」 周囲の気配を伺っていた聖司に梨月もようやく安堵の溜め息をこぼす。ギリギリで押し切れた――そう実感した戦いだった。 「こんだけサイズ差あったけど、やってみりゃやれるもんだな」 「えっと、ドラゴンスレイヤーっていうんだっけ、こういうの。自慢できるね」 確かな戦いの手応えを噛み締める魎夜に、組子も笑みをこぼして言う。その言葉に、エリュシオネスが悪戯っ子のような笑みでリーリィへ問い掛けた。 「蛇と犬が混ざっていたのでしょう? あだ名をつけるなら蛇犬でヘビーヌとか、犬蛇ならイヌビーとかでしょうか」 「え? わ、わんこじゃーとか? オジサン言葉みたいよね、あ、あはは……」 うぅ、寒い、とリーリィが自分で評すれば、周囲から笑い声があがる。 「おまえらみたいなゴーストとも仲良くできるといいんだがのう。倒す事しかできなくてすまんだよ」 体は残っていなくても、と石を積み上げた小さな墓を作り権座衛門が手を合わせた。その姿を見ていた勇次が、ふと顔をあげる。 「夏休みもそろそろ終わりですね」 戦いが終わったからか鳴き声が増え始めたツクツクボウシの声に響き渡っていた。 もうすぐ夏休みが終わりを告げる――新学期を無事迎えることが出来るのだ、と能力者達は自分達の確かな勝利を噛み締めた……。
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参加者:10人
作成日:2011/08/30
得票数:カッコいい21
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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