<リプレイ>
●開戦前 『次は高校生による大合戦です――』 放送でこれから行なわれる競技の説明が始まった。 「ふっふっふ、合戦とは血が燃えるのう!」 既にグラウンドの外周には十八騎の騎馬が出揃っている。 各チームから二騎ずつ、いずれも腕に覚えのある者が集まってきたようだ。 「見知った顔の多いこの勝負、易々と負けるわけには行かないなぁ」 「いいぞ、その意気だ。運動会であろうが真剣勝負には違いねぇ。与えられたルールと装備を極限まで利用して勝つっ!」 御崎・香雅美(御凪流虹翼の剣士・b57502)のつぶやきに、同じチームの敷島九十九式・秀都(エクストラエンフォースメント・b57363)が応えた。 そして、秀都はおもむろに放送席に歩みより、 「ちょっと、マイク借りるぜ」 「ああっ、ちょっとーー?!」 放送を使って高らかに宣言する。いや、高らかに名乗りを上げる。 「己が信じる正義の道を己のやり方で貫き通す! 平和は乱すが正義は守るものっ! 敷島九十九式・秀都参上! 学園の全生徒よ、俺の魂掛けた戦いを、生涯の思い出にするといいぜっ!」 突然のマイクパフォーマンスに、僅かな沈黙のあと、観客から喝采が飛んだ。 「いいぞ!」 「もっとやれ!」 「任せろっ! 何なら俺はこのマイクで十分、歌で試合を制してみせるぜっ……おっ?!」 調子に乗った、秀都の耳に音楽が聞こえてきた。 「これは……」 かの有名なワルキューレ騎行か? だいぶ変わっているが、原型はかの名曲に違いない。 そして、その音源は風間・雷(シルバーライトニング・b61308)の持つラジカセであった。 「この闘いを、私を慕ってくれている全てのレディに捧げたい……風間・ライトニングです」 片手の薔薇に口付けをして、優雅に一礼する。 ……もっとも、その下で馬になっている人達はげんなりとした顔であった。 「あ、なんでしょう、騎馬の皆さん」 「「………」」 「そんなウンザリしたような表情で私の心を折ろうったって、そうはいきません。そんなことしなくたって、私が上に乗った時の『……重っ』という呟きだけで十分粉々なわけで。……メソメソ」 ……何だろう。 もう直視するのが辛い。これが残念系美少女というヤツか? 「ふっふふふ、そうやって油断させようとしてもそうはいかないんだよ!」 びしっと指差したのは、初瀬部・ひなた(陽だまり仔猫・bn0153)だ。 手には対抗するように大きな法螺貝が。
――パオプー! パオプー!
で、大方の予想通りに吹いた。 「なるほど、さすが初瀬部さん。その手で来ましたか」 「ふっふふふ、もっと褒めるんだよ」 周りを他所に、いや馬役のげんなりとした顔を他所に、二人で残念な方向へとひた走っていく。 『……あのう、もう始めますので』 「いや、まだ俺には言いたいことがっ……!」 収拾がつきそうにないので、三人は実行委員によって強制指導。 「困ったものですね……」 栢沼・さとる(星を継ぐもの・b53827)はそれ見て苦笑する。 更に周りをぐるっと見渡せば、他にも見知った顔が。 (「雷先輩、香雅美さん、遙さんに、ひなたちゃん……。結社で共に過ごした仲ですが、この場ではそのことは忘れましょう!」) ここは競い合う場だ。 全力を尽くすのが、最も必要なこと。 「騎馬役の皆さん、苦労をかけると思いますがよろしくです」 「うん! 任せて!」 すうっと息を吸い込む。 僅かに間を空けて、「パン」と号砲が鳴った。 「3C桜連合所属! 栢沼さとる、推して参りまっす!!」
●序盤 多くの騎馬が一気にグラウンド中央へと駆け出していく。 「さあ、祭りじゃ! 暴れまくってやろうかの」 盾を前面に押し立てながら、空知・凪(華蝶拳士・b43818)の騎馬が一直線に突き進んだ。 進行方向には距離を取ろうとしている弓使いの騎馬が。 「まずは厄介な弓持ちからじゃ!」 「……うおっ!」 気付いたらしく、牽制の一射。 「我は華蝶拳士、空知凪。蝶の如く舞い、戦場の華とならん! 我が武を恐れぬものはかかって来い!」 怯まず、更にスピードを増す。 「なめるなー!」 二射目は凪が飛び込んだのと、ほぼ同時。 そのままのスピードで駆け抜ける。 すれ違う瞬間、盾を横にずらして矢を防ぐと、もう片方の手に持った剣が閃いた。 一瞬の隙を突いての横胴。 パシーンといい音が響き、審判が一本を示す旗を振る。 「まずはひとつじゃ! しかし、本当は薙刀や、突きを使いたかったのう」 リーチの差が出やすい武器は公平性のために、突きは安全のために禁止となっている。 「とはいえ、これはこれで十分じゃ!」 そのまま、速力を落とすことなく次の目標へ。 だが、横槍が入った。 「さあ、全人類よ、私の前にひれ伏すのだっ!!♪」 飯綱・御言(真お稲荷さんの探究者・b73804)の放った矢が、次に狙っていた獲物を射抜いた。続けて、こちらにも飛んでくる。 「……その程度で!」 盾で受け止め、御言の騎馬へと向き直る。 すると他の騎馬も派手な立ち回りを見せる御言に狙いをつけたのか、群がるように集まりだした。 「天知る、地知る、人が知る、お前ら倒せと私が呼ぶっ」 迎え撃つべく、御言は文字通り矢継ぎ早に矢を放つ。 もっとも、騎馬の足はまったく止めていないので狙いは適当だ。 「受けよ必殺のこのパワー。一刀! 両断! 『飯綱・御言!!』」 「……って、武器は弓矢だろう!」 「細かいことは気にするな! とや!」 ついでにとツッコミを入れてきた騎馬の面も射抜いた。 「これで三騎か……放置するわけにはいかんのう」 あれ以上のポイントは渡せないと凪が狙いをつけたところに、同じような考えの他の騎馬も群がる。 「小ざかしい、我が覇道は誰にも止められぬぞ!」 番えようとして矢筒に手を伸ばす。 「……おや?」 いつの間にか矢は一本になっていた。 「だが、この程度のこと……私が怖くなかったら、あっ、かかってきやがれぇぇぇいっ!!」 言って――逃走。 「……あっ、待て!」 慌てて追いかける。 「あっ、かかってきやがれぇぇぇいっ!!」 「だから待てよっ!」
「騎馬の皆さん頼りにしています! ……突撃ーー!!」 「「おおっ!」」
と、そこに切り込んでくる騎馬がひとつ。 「目に見よ! 音に聞け! 銀誓館の超速娘、鬼灯遙が相手になります!」 このタイミングを狙っていたのだろう。 鬼灯・遙(彩雲のサーブルダンサー・b46409)が御言を追いかけていた騎馬の横合いを突いた。 一騎は討ち取られ、一騎は勢いに押されて落馬する。 (「これまで戦闘の経験は私の中に残ってる。せめて一般生徒には負けない様に頑張らなくっちゃ」) 反転して更に追撃。 態勢の整わないうちにポイントの獲得を狙う。 「おっと、私も混ぜてください」 二刀を手に、雷が割り込んだ。 「そうはいかないんだよ! 団長の相手はボクがするよー」 更に、ひなたが。 「よかった〜、まだ無事だったのね」 「もちろんだよ。さあ、ここはボクに任せて」 「分かったわ、ここはお願いね。次に会う時は7G蘭連合で決勝戦よ!」 「OK〜」 互いの剣を合わせてすれ違う。 「お待たせなんだよ」 「初瀬部さんだからといって手加減はしませんよ。いえす、あいむ ちゃんぴょーん!」 「こっちもなんだよ!」 「では、いざ尋常に――」 「「勝負!」」 あっという間に距離を詰めて、互いに正面からの激しい打ち合い。 剣と剣が交錯し、更に間合いが詰まっていく。 「どうしました。まだ、こちらは全力ではありませんよ」 若干、雷が押している。 「まだまだ――ぐわん!」 ひなたが押し返そうとしたところで、横から面を打たれた。 「すいません、ひなたちゃん。何しろ3C桜は私だけなので……」 犯人は言い訳をしている、さとる。 「えげつないと思われるかもしれませんが、問答無用です」 次いでキラーンと視線は、雷に向いた。 「……えっ、ちょっと待ってください」 「問答無用です……!」 「あー!」
●中盤 「みんな楽しそうだねぇ」 香月・風音(月光に踊る蒼・b52865)はずっと遠距離を保っていたからよく分かる。 戦いに一喜一憂するその様が。 今は騎馬もだいぶ減り、初めの頃のような乱戦はなくなっている。 代わりに一騎討ちの形があちらこちらで。 「色々と考えても、結局はシンプルイズベスト。こういう勝負事はシンプルな方が面白い」 そして全力で楽しみ倒して勝つと誓い、矢を番える。 視線の先には、こちらに狙いをつけた秀都の騎馬が。 「だいぶ稼いでるみたいじゃないか」 「そちらこそ、もっと突っ込んでいくタイプかと思ったけど」 「闇雲に突っ込んでも勝機は得られねぇからな」 語り合いながら互いに間合いを計っている。 方や弓、方や剣。 「我が名は2B桃所属の香月風音。いざ尋常に勝負だ!」 「――勝負っ!」 名乗りと同時に放たれた一射目を、秀都が盾で防いで間合いを詰める。 いや、目の前にもう一本矢が。 「……っ!」 体を無理矢理ひねって避けることができたのは奇跡に近い。 「危ねえっ!」 矢を二本同時に撃ったのか。 「今度は上手く行ったようだ。しかし、あれをかわすとはな」 風音は馬に指示を送って、動きだす。 流鏑馬の要領で狙いを絞りながら――戦いは華やかに激しさを増していく。
「向こうも大変みたいね」 一方、香雅美は、遙と対峙していた。 「我が双剣は獣の双爪! 御崎香雅美、ここに見参!」 「銀誓館の超速娘、鬼灯遙! 相手になります!」 「……ぅぁぁぁ、やっぱり恥ずかしい」 「……そうかな?」 奇しくも同じ二刀流。 ゆえに戦い方も近い。 逆腕に持った剣で防御して、互いに相手の体勢を崩そうする。 「楽しいわね。こんな楽しい競技、銀誓館でしかありえないでしょ!」 不適にも笑顔を見せる遙。 「――そう、ね」 香雅美が隙を突いて切り崩そうとする。 しかし、崩れない。 既に打ち合うこと十数合。 「でも、負けられない。私と秀都さんで6F菊連合のワンツーフィニッシュの栄光を成すために!」 「こっちだって学園一の兵になってやるぅ!」 激しい打ち合いに馬の方がよろめいた。 二人の距離が離れる。 「そこっ!」 されど、遙が捨て身の打ち込みを。 「悪いけど、この勝負は私がもらうよ!」 香雅美が切りつけてきた剣を、騎馬の左旋回で避け――痛撃を叩き込む。 「ふっ、その攻撃見切りました!」 遙も返す剣で迎え撃つ。 互いの剣の軌跡が重なり合って、片方の剣が落ちた。
「もう、逃げんのか?」 「……くっ」 凪に追い詰められて、さとるは窮地に陥っていた。 「後ろから仕掛けてくるような相手には容赦せんよ」 戦い方が気に入らないのだろう。凪の口調にはいささかトゲがある。 いくつか獲物を奪われたのも拍車をかけているのだろう。 「こうなっては仕方がありません。得物の形は違いますが、私のダーリンは剣術士……! 情けない姿だけは晒せません、斬りころがしますッ!」 「……ダーリンは関係ないと思うが、その意気や良しじゃ!」 まずは盾を前面に押し出して突進。 「何の……!」 さとるもそれを盾で受け止める。 「こちらも……シールド、バーッシュ!!」 押し返さずに、盾で盾を横に払う。 さすがに、凪もこれには大きく体勢を崩された。 「もらいました!」 「……まだじゃ!」 さとるの真っ直ぐな打ち下ろしに、凪が体をひねっての強引な切り返しを。 勝利の女神は、 「……ううっ」 「……よもや引き分けとは」 どちらにも微笑まなかった。 二人とも落馬である。
●終盤 「そろそろ終わりみたいだね」 風音の瞳に時計に目をやった審判の姿が入った。 「みたいだな、決着をつけようか」 秀都が応えて、騎馬を正面に向ける。 大きく息を吐き出す。 「さあ、これでクライマックスだ。俺のとっときの必殺技、みせてやるっ!」 言って剣を投げ捨てた。 「なっ、なに?!」 「騎馬のみんな、頼んだぜ――いくぞっ!」 急接近。 更に騎馬を踏み台にして大きく跳んだ。 「俺の正義が真っ白に吠えるっ! 正義を示せと無意味に叫ぶっ! くらえ、必殺! 敷島九十九式ミサイルっ」 「……なんのっ!」 迫ってくる秀都へカウンター気味に、最後の矢を放つ。 しかし、これは前に突き出された盾に当たった。 「かくなる上は……!」 風音は弓を両手で持って胴を薙ぐ。 直後に二人とも体勢を崩して、落馬した。 「あいたたたっ、やった後のことは考えてなかったぜ。……大丈夫か?」 「ああ、大丈夫だ。それに――」 審判の旗が振られている。 寸でのところで風音の放った一撃が入ったらしい。 「くうぅ、負けたか」 「ぎりぎりだが、僕の勝ちだね」 と、二人が握手を交わしていると、
「初めに言ったとおり、全人類は私の前にひれ伏したのだっ! ふははははっ!!」
グラウンドの中央で御言の騎馬が立っていた。 どうやら、あれから逃げまくって逃げまくって生き延びていたらしい。 でも、馬の人達は青色吐息だ。 「じゃあこれで止めー!」 パーンと横から綺麗に面が入った。 打ち込んだのは遙。 ちょうど、香雅美との戦いに勝利して駆けつけてきたのである。 「な、なに! まだ残っていたのか?!」 「よく確認しないからだよ」 そして、終了を告げる笛が鳴る。 同時に観客から拍手があふれ出した。
●結果発表 「みんな、ありがとーー!」 最初と同じように、秀都が大きな声で声援に応える。 「騎馬のみんなも、他の騎馬のみんなもお疲れ様!」 グラウンドから撤収を始めながら、香雅美が労いの言葉をかけていく。 「お疲れ様です」 「お疲れ様」 「結局、どこが勝ったのかな?」 「初めは混戦になったから、あの辺りのポイントがよく分からないんだよね」 「さて――」 審判が放送席に集まって、集計中。 それもようやく終わったようだ。 『お待たせしました。1位は――』 参加者の注目が集まる。 『6F菊連合。2位は――』 「おめでとう!」 「ちょっと悔しいが、おめでとう!」 「よっしゃーーー!」 「やったわね、秀都さん」
こうして、大合戦の幕は下りる。 参加者達のまぶしい笑顔が照りつける太陽にも勝っていた。
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参加者:8人
作成日:2011/10/10
得票数:楽しい12
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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