≪中華飯店【炎虎楼】≫悪の華


<オープニング>


 ――イタリア半島の古都ボローニャ。
 その起源を紀元前にまで遡るその都市で、悪の華は人知れず咲いていた。
 その華の名はヴィクセン――雌狐の名を持つ傭兵崩れの犯罪集団だ。
「……ここか」
 ふむ、と一つの廃墟を見つめ、スペック・ランドルイーヴン(青龍拳士・b64890)が呟いた。
 石造りの旧市街にある――そこにこの廃墟がある。ヴィクセンの根城である、その情報を掴んでここに訪れた訳だが、ふと後ろから声がかけられた。
「あ、一足違いだった?」
 天江・悠(疾走天駆・b72969)の言葉に、スペックは無言で廃墟を指し示す。それに悠と一緒に情報収集していた水岸・烈(烈火の二刀竜・b62418)が小さく肩をすくめた。
「徒花が咲く場所にはお似合いなのだろうがな」
「ようするに、あそこに敵が居るってんだろ? ガツンとやっつけちゃおうぜ!」
 葛木・一(ワイルドキッド・b59305)がそうはっきりと言えば悠がコクリとうなずく。
「正面から叩きのめそう」
 ――それに異を唱える者はいなかった。

 ――廃墟の中を八人が進んでいくとヴィクセンはすぐに見つかった。
「はん、男連れでゾロゾロときたねぇ」
 詠唱ガトリングガンを担いだ大柄な白人女性の言葉に美咲・牡丹(緋牡丹・b05183)が小さく肩をすくめた。
「いえ、仲間ですから」
「キャシーは男嫌いだからね。アタシは誰でも大嫌いだけど」
 そう答えるのは詠唱銃を持つ少女だ。相手は四人――既に勢揃いしている。
「へ、わかりやすいぜ! まとめてぶっ飛ばしてやる!」
「ああ、そうだな」
 熱く言い放つ暗都・魎夜(黄昏の破壊者・b42300)に妹出・織泉羅(将来の夢はお母さん・b70426)が静かに言い放つ。
 それに爆破スイッチを取り出した少女が背後の長剣を持つ女に言った。
「――リーダー」
「ええ、構わないわ。敵よ、こいつ等は」
「そいつは少し違うな」
 彼女達のやり取りにマオ・イェンフー(その漢トゥーハンド・b73520)が二丁の詠唱銃を手に、静かに言い放った。
「――お前達が、俺達の敵だ」
 その言葉が決定打となる――悪の華を摘む戦いが、ここに幕をあげた。
 

マスターからのコメントを見る

参加者
美咲・牡丹(緋牡丹・b05183)
暗都・魎夜(黄昏の破壊者・b42300)
葛木・一(ワイルドキッド・b59305)
水岸・烈(烈火の二刀竜・b62418)
スペック・ランドルイーヴン(青龍拳士・b64890)
妹出・織泉羅(将来の夢はお母さん・b70426)
天江・悠(疾走天駆・b72969)
マオ・イェンフー(その漢トゥーハンド・b73520)



<リプレイ>


(「なんと言うか、銀誓館に来なかったら、この人達みたいになってた可能性があるかもしれないわね。これって……あれね、同族嫌悪?」)
 やれやれ、と自分の中だけで肩を落とし美咲・牡丹(緋牡丹・b05183)は表情を改めた。
 目の前にいるのは四人の少女は能力者――倒すべき敵なのだ。
「力の使い方をわきまえない外道は放っておけんな。俺達が本当の力の使い方という物をその身に叩き込んでやる」
「おぉ、外道と聞いちゃ見過ごせないなぁ。大人しく正義の味方にぶっ倒されとけよ!」
 フレイムソードを抜いた水岸・烈(烈火の二刀竜・b62418)の横で葛木・一(ワイルドキッド・b59305)もバールのようなものを肩に担いで言ってのける。
 それに不愉快そうに鼻を鳴らしたのはキャシーだった。
「はん、男ごときが聞いた風な口叩くじゃないか。ええ?」
「へぇ、気合入ってるじゃん。嫌いじゃないぜ、だったら、こっちも全力で相手してやるのが礼儀ってもんだよな」
 凄まれながら笑って見せる暗都・魎夜(黄昏の破壊者・b42300)に、逆にキャシーの方が鼻白む。それにマルチェッラが長剣を構え言い捨てた。
「外道? 力の使い方をわきまえない? 笑わせる、手に入れた力を自分のために使って何が悪いのさ?」
「悪いに決まってるだろ? 力で誰かを泣かすような悪党には制裁が必要だ。同じ能力者として野放しになど出来ん!」
 マルチェッラに真っ向からマオ・イェンフー(その漢トゥーハンド・b73520)が言い返す。それに、小さく肩をすくめてスペック・ランドルイーヴン(青龍拳士・b64890)が吐き捨てた。
「織泉羅に誘われて来てみれば俺の能力覚醒のきっかけも能力者犯罪組織だったな……」
 過去を思い出しているのだろう――その表情に浮かんだ苦いものを噛み殺し、スペックは続ける。
「意様等に恨みは無いが、奴等を思い出して苛々するのでな軽い八つ当たりだ、熊に出くわしたと思って諦めろ」
「狩る側もまた、狩られる側に回る。蜘蛛は己より大きな獲物を狩る――狐よ、わたくしの糧となれ」
 涼しげに言ってのける妹出・織泉羅(将来の夢はお母さん・b70426)に、パメラもまた無表情に言い捨てた。
「なるほど……平行線ね」
「言葉なんざ無駄だよ……撃ち殺した方が、なんぼか速いよ」
 サラのその言葉に天江・悠(疾走天駆・b72969)も鈴の音のような笑いをこぼし言った。
「悪の華を散すだけさ。さぁて、正面から叩きのめしてやろうか」
 その一言が決定打となる――互いに相容れない能力者達の戦いの火蓋がここに切られた。


 迷わずマルチェッラが前へ出る相手に倒して、炎虎楼側の陣形はこうだ。
 前衛に魎夜と織泉羅、烈、一、スペック、悠、後衛に牡丹とマオといった布陣だ。
「行くぞ、ついて来い」
「ああ、すぐに追う」
 想愛満月――黄金の月光が降り注ぎ織泉羅とスペックの絆が力となる。その輝きに後押しされるようにスペックは駆ける。
「行かせないよぉ!!」
「――ッ!!」
 目指すべきはパメラだ――しかし、そこまでは届かずマルチェッラが立ちはだかった。すべてが黒く染まったスペックの長剣が闇を帯びる――二本の長剣が鈍い金属音を響かせ火花を散らす。
 そこへ一つの影が跳び込む――悠だ。
「これは挨拶代わりさ、貰っときな!」
 クレセントファングの鋭い蹴りがマルチェッラの胴を軽く切り裂く。そして、そこに火の玉のような一撃が放たれた。
「お前の相手は俺達がしてやるからさ、よそ見してんなよな!」
「……この、チビ……ッ」
 ライジングヘッドバットを決めた一がニヤリと笑う。悠と一、二人が挟むようにマルチェッラを取り囲む形となった。
「させないよ――!!」
 そこにパメラが一条の電光を放つ――そのライトニングヴァイパーが、一を貫いた。
「ぐ……ッ!?」
「邪魔だよ、小僧!」
 そして、マルチェッラの黒影剣が振り下ろされる。ザンッ! と袈裟懸けに深く切り裂かれ、一が膝を揺らした。
「耐えるのも男の子の勤めってか」
 一はそう言うと、敢えて不敵に笑ってみせた。
「させない……!」
「よっしゃぁ! 派手に行くぜ!」」
 牡丹のヘブンズパッションがすかさず一を回復させ、叫ぶ魎夜の背後に姿を現した偉大なる獣の守護精霊が仲間達へと力を与えていく。それで一が回復して一息つくのを確認すると、マオは自身を虎紋覚醒で自己強化した。
「チッ、集中的に狙ってくるつもりか」
「推して参る!」
 駆けた烈がカースインベイジョンで自己強化し――そこへキャシーとサラが銃口を向けた。
 ドンッ! と炎の弾丸と足元から吹き上がる上昇気流が烈を襲う。宙に浮かび上がらされるのを無理矢理押さえ込み烈は身構えた。
 互いに互いが、自分達の戦いを貫こうとしている――だからこそ、その場にいる誰もが悟った。
(「――自分達の戦いを貫き、相手の戦術を切り崩す」)
 それが勝利の鍵だ――二組の能力者達は全力で相手を切り崩そうと動いた。


 ――最初に崩されたのはヴィクセン側だった。
「派手に行くぜ! トゥーハンドの異名は伊達じゃねぇ!」
 撃ち込まれた電撃をマオは跳躍と共に掻い潜る。その二丁の銃口は真っ直ぐに――その電光を放ったパメラへと向けられていた。
 撃ち放たれる銃声。その銃弾に右肩を撃ち抜かれ、パメラの体がグラつく。それに一気に間合いを詰めた烈が二刀を十字に振るった。
「我が二刀、阻めるものならば阻んでみせよ!」
「が、は……!?」
「パメラ――!」
 ザザンッ! と胸元を切り裂かれパメラが膝を揺らす。それでも耐えて踏み止まったパメラへとサラが浄化の風を吹かす――その直前に、魎夜が飛び込んだ。
「さぁって、こっからが本番だぜ? 俺は手加減苦手だし、無理はするなよ?」
「なめ、る……ッ」
 パメラが地面を蹴る。だが、魎夜の迷いのない加速の方が速い――ジャランと鎖剣がパメラを絡め取り、その紅蓮の炎に包まれた宝剣が横一文字に振り払われた。
 それが止めとなる。糸が切れた人形のようにパメラが膝から崩れ落ちた。
「――ッ!」
「余所見をするな、狐」
 背後の気配にマルチェッラが振り返りそうになったその時だ。青白い月光――織泉羅の月煌絶零がマルチェッラへと降り注いだ。
「ぐ……ッ」
 ビキリ、と魔氷が手足を凍りつかせ、体の自由が奪われる。そのマルチェッラへとスペックの足元から影の鉤爪が走った。
「貴様が頭なのだろう? 悪いがさっさと退場してもらう」
 ギィンッ! と長剣とダークハンドが火花を散らす――その間隙に一が低い体勢からライジングヘッドバットをぶちかました。
「やっちゃえ!!」
 一がその拳を振り上げ言った――それに悠が力強くうなずく。
「アンタは此処でチェックメイトさ、おとなしく寝てなってねぇ!」
 インフィニティエアの暴風をまとった悠が霧から生み出した分身と共にマルチェッラへと右手を突き出した。霧影爆水掌――悠の渾身の一撃に二度三度と体を揺らし、ついにマルチェッラが崩れ落ちた。
 ――この時点で炎虎楼の優勢が決まったといっていい。
 マルチェッラの猛攻を耐え抜いた悠と一が戦線に加わる事により、ヴィクセンが追い込まれていく。キャシーが攻撃しサラが回復に回る事で凌ごうとするが、戦力差は大きい。ヴィクセン側は見る間に追い詰められていった。
「こういうのはいかがです!?」
 牡丹の手足がアップテンポのリズムを刻む――ヒロイックフィーバーの爆発にキャシーが飲み込まれ、凌駕して持ち堪えた。
「負け、られるかぁ!!」
 キャシーの詠唱ガトリングガンが火を吹いた。その銃弾の雨を二刀で弾き、掻い潜りながら烈が跳んだ。
「斬り捨て、ご免っ!」
 空中で縦回転した烈のローリングバッシュがキャシーを切り裂いた。凌駕した直後で耐えられるはずがない――ガラン、とガトリングガンを取りこぼしキャシーが倒れた。
「くそ……!」
 サラが悔しげに吐き捨て詠唱銃を構える。最後まで抵抗する――その気迫を見て取って、烈と一が言った。
「ゆけ! 本当の力の使い方を教えてやれ!」
「マオ兄ちゃん!後はガツンといっちゃれ!」
「――あぁ」
「……ッ!?」
 炎虎楼の面々が構えを解く中、ただ一人マオだけが前へと踏み出した。それを見て息を飲んだサラへ織泉羅が無表情で言い捨てる。
「我らが大将が貴殿をお望みだ。栄誉な事ではないか」
「一対一……そういう事」
 サラが低く呟いた。その表情には怒りがある――舐められた、そう思ったのだ。
「俺もシルフィードだが貴様の風は淀み過ぎだ。躾のなってない奴にお仕置きが必要だな?」
 マオの挑発にサラは答えない。一歩、二歩、三歩――その瞬間、サラが詠唱銃を構えた。
(「――銃を使わない!?」)
 サラが内心で驚愕する。二丁拳銃の使い手であるマオが右手の銃を宙へと放り、更に踏み込んで来たからだ。
 サラは躊躇しない。詠唱銃の引き金を引いた。尾を引く銃声と共に放たれた銃弾は真っ直ぐにマオの額を――貫かない!
「――ッ!?」
 体が急激に沈み、加速したのだ。マオは銃弾を掻い潜り、その右手の掌打でサラの胸元へ軽く触れた。
「トドメだ……沈め!」
 極限まで練り上げられた気が炸裂する――白虎絶命拳がサラの体を吹き飛ばす。二度、三度、と地面を転がり、サラは動かなかった。
 そして、マオはガシャリと先程宙へと放った拳銃を右手で掴み、踵を返す。
「貴様達がやってきた事を思い出せ。因果応報だよ」
 ここに炎虎楼とヴィクセンの戦いは幕を閉じた……。


「ま、世の中悪い事ばっか出来ないって事だよな。これにて一件落着、なんちゃって♪」
 一の言葉に、仲間達が小さな笑い声がこぼした。ヴィクセンの面々も傷こそ深いものの命には別状はない――それを確認してスペックが口を開く。
「俺は帰る。これ以上こんな場所にいても何も無いだろう」
「何を勝手なことを言っている。先輩らしく最後まで後輩の面倒を見ろ」
 そのまま帰ろうとしたスペックの袖を織泉羅が掴み引き止める。その困ったようなスペックの顔に悠が笑みをこぼした。
「授業料は高くついたねぇ? まぁ、自業自得ってねぇ」
「陰謀ってのは、企むよりもぶっ壊すほうが楽しいって教えてやりたいな」
 同じ能力者なのだ、どうせ教えるならそういうのを教えてやりたい――そう、魎夜は呟く。
「ま、生きてるんですから。これに懲りて足洗えばいいのです。さて、よく動いたし、ボローニャ名物を食べ歩くとしましょうか? まずは、本場のボロネーゼかしら?」
 ガイドブック片手にそう言い出した牡丹に、マオも同意した。
「そうだな、観光でもしながら帰ろう。何か食ってくか」
 それに仲間達も賛同し、能力者達は夜の古都へと繰り出していく。
 過ちを犯す事が間違いではなく、犯した過ちを正さない事が間違いなのだ――それに彼女達が気付くきっかけになれば、そう願いながら……。


マスター:波多野志郎 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/01/31
得票数:カッコいい11 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。