ただ、ひとりのお友達


<オープニング>


「ねえ、宇宙ってどんなところなの?」
『あたも行けば、きっと気に入るはずよ』
「ああ、早く行きたいな。地球はつまらなくて、嫌なことしないもの……」
『大丈夫、慌てないで。あなたならきっと行けるから』
 少女の手に、異質な、まるで宇宙服か何かのような手が触れた。
 手をさかのぼり全体像を見れば、それがリトルグレイ型の宇宙人を象った鎧のようなものであることが分かる。その中に居るのは少女のような『何か』で、
「私、早く宇宙に行けるように頑張るね」
『うん、応援してる』
 何かは、少女を励まして優しい眼差しを向けた。
「ミドリ、いい加減ご飯を食べてちょうだい」
 その時、扉の向こうから声がした。
 きっとミドリの母親だ。
「何をしているのか知らないけど、ここのところ食事の時間も守れないし。あんまり酷いようなら今月のお小遣いは減らしちゃうわよ」
「……そんな、それで宇宙飛行士になる本を買おうと思ってたのに」
 ミドリがつぶやいた瞬間にそれは起こった。
 光が瞬いたかと思えば、ドアに穴が空いている。
 ドアの向こうで倒れる音。
 宇宙人のような鎧を纏う何かの手には、おもちゃのような銃が。
 そして、何よりもドアの向こうから流れてくる赤い液体がすべてを物語っていた。

「宇宙への夢か、俺にもあったな」
  山田・大五郎(運命予報士・bn0205)のつぶやきは最後のひとりが来たことで中断された。そして、そのまま事件の説明を始める。
「とある田舎村に『嫦娥の瓶のメガリスゴースト』が現れた」
 最近になって出没するようになったメガリスゴーストのひとつで、『宇宙に行くという夢』を持っている人物に接近して、それを応援するというものだ。
「基本的に悪意のあるものではないんだが、宇宙に行くという夢を持っている人が、それを諦めてしまうと問答無用で殺してしまう。加えて、その夢を諦めさせようとする者も殺してしまうのだが……今回はこのケースになりそうだ」
 今、メガリスゴーストが夢を応援しているのは花村・ミドリという小学五年生の少女。
 その少女の母親が一週間後に犠牲に遭ってしまう。
「花村・ミドリという少女は内気な性格で、人と話をするのが苦手でな」
 おまけに最近になって、その村には越してきたらく、既に形成されたグループに入ることが出来なくて孤立しているという。
「まあ、そんなところにメガリスゴーストが現れたわけだ」
 ミドリはメガリスゴーストを唯一の友達として、その日あったことや、宇宙のことを話しているらしい。そういったこともあって、ミドリの宇宙への憧れと、メガリスゴーストへの依存は強くなる一方だ。
「メガリスゴーストはミドリの部屋に住み着いている。ゆえに上手くミドリとコンタクトをとることが出来れば、優位に事を運べるだろう」
 しかし、一週間後にはミドリの母親が犠牲に遭ってしまうため、それまでに事を成さなくてはならない。
「あと、ミドリの両親は共働きなのでメガリスゴーストと戦うなら昼間の方が都合が良さそうだな」
 家の中は田舎らしく、広めに建てられている。
 戦闘になっても狭くて障害になるようなことはなさそうだ。
「さて、問題のメガリスゴーストだが、戦闘になればリトルグレイ型のゴーストを四体呼び出して応戦してくる」
 メガリスゴーストも含めて、いずれも武器は光線銃だ。
 攻撃方法はそれしかなく、戦闘能力的にそこまで高くない。
「油断さえしなけば、この辺は大丈夫だろう」
 加えて、メガリスゴーストは能力者が宇宙への夢を諦めさせるような行動を取れば、優先的に狙ってくるので一般人に被害が出る心配もなさそうだ。
「説明はこんなところだが……もし、メガリスゴーストを倒した後でミドリのフォローをするつもりがあるのなら、メガリスゴーストが居なくなったことを忘れずに伝えて欲しい」
 ミドリはメガリスゴーストに依存しているところがあるため、そのことを伝えないと探し続けてしまうかもしれない。
「では、頼んだぞ。この出会いをどうか終わらせてくれ」

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参加者
香月・かぐや(盟約の体現者・b30832)
儀水・芽亜(夢何有郷・b36191)
桐原・真夏(太陽のリズムで踊ろう・b50014)
ウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・b57572)
ゼノ・トリクス(小学生サンダーバード・b78600)
紫上・結衣(高校生真書道使い・b81724)
龍神・結奈(幼き月の遠征女帝・b82423)
藤咲・花梨(花と月の紡ぎ手・b82932)



<リプレイ>

●能力者達の思い
 能力者達は高台にある神社から、ミドリの家を見張っていた。
「たぶん、あれではないかしら? いま家に入って行くところよ」
 望遠鏡から目を離し、龍神・結奈(幼き月の遠征女帝・b82423)が仲間達を見ると、
「きっとそうでしょうね。真っ直ぐに帰宅すれば、このぐらいの時間です」
 同じように望遠鏡をのぞいていた、香月・かぐや(盟約の体現者・b30832)がうなずく。
 他の仲間も同意見だ。
「それにしても嫦娥の瓶のメガリスゴースト……随分と早いお出ましですね。宇宙を夢見るものを誘惑するのは、使い手を求めているということなんでしょうか?」
 かぐやが望遠鏡を片付けながら何気なくつぶやくと、
「その辺りはよく分からないけど、あまり害はないメガリスゴーストってのはなあ」
 話を聞いていると首を傾げてしまうと、ゼノ・トリクス(小学生サンダーバード・b78600)が続ける。
「確かに最後の方にダメダメなオチなんよね。それが無ければ、宇宙に行きたい! って、ロマンがあって応援したくなる話なんやけど」
 ウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・b57572)が強く肯定し、
「ミドリさんの夢はとっても素敵だと思います。でもその夢をメガリスゴーストが駄目にしてしまう。歪んだ力は彼女に不幸をもたらすだけ……」
「うんうん、夢って大事だと思うよー。私にだってあるもんねっ。それを邪魔しちゃうのは心苦しいけど……でも人が死んじゃうのは阻止しないとだしね……!」
 紫上・結衣(高校生真書道使い・b81724)と、桐原・真夏(太陽のリズムで踊ろう・b50014)も強く同意してメガリスゴーストの打倒を誓った。
「そうですわね。悲劇は未然に防ぎましょう。では、これからのことですが――」
 先日も嫦娥の瓶のメガリスゴースト討伐に行っていた、儀水・芽亜(夢何有郷・b36191)は簡略にこれから戦う敵のことを説明していく。
 それを聞きながら、結奈も静かに決意を固めていた。
(「……運命の糸、繋がり易いわね、このメガリスゴーストに。まあ、繋がった以上は、やるだけの事をやるのみね。不幸をもたらすより所有者が宇宙へ向かう切欠になるほうが、このメガリスゴーストにとっても良いでしょうから」)
 すべてはより良き未来のために。
「結奈さん。同じ月帝姫同士、頑張りましょう」
 気が付けば、藤咲・花梨(花と月の紡ぎ手・b82932)が手を差し出していた。
「同胞が居ると心強いわ」
 結奈が手を握り返すと、花梨は笑いながら、
「宇宙に憧れる気持ちに、罪は無いのです。純粋に宇宙の神秘に興味があったり、宇宙旅行に行ってみたいと思ったり。宇宙はロマンなのですよ」

 ――だからこそ、この物語に一旦の終止符を打とう。素敵な夢を守るためにも。

●接触
 ミドリの家の前に辿り着いたところで、結衣はさっと筆を取り出した。
 用意した紙に素早く、人払いの文字を書き上げる。
「これでいいでしょう」
 結衣は紙を玄関の脇に貼り付け、一般人の介入を取り除いた。
 さて、いよいよだ。
 玄関のチャイムを鳴らすと、足音が聞こえてくる。
 次いでドアが開き、おそらく母親と思われる人物が姿を見せた。
「ども、こんちはー!」
「……あ、あら、どちら様かしら?」
 ウルスラの元気な挨拶よりも、母親は突然現れた能力者達に面食らってしまったようだ。
「突然の訪問で申し訳ありませんわ。わたくしたちは天体観測サークルでこの辺りに良い観測スポットがないか探していまして――」
 立て板に水を流すように、芽亜が用意した言い訳を話していく。
 他の能力者達も観測機器を目立つように持って無言のアピールを。
「私が顧問をしています。生徒の自主性を出すために生徒自身に動いてもらっているんです」
 かぐやが後を引き取って挨拶をすると、母親はなるほどと話を信じ込んだようだ。
 だが、肝心のミドリは一向に姿を見せない。
 玄関の騒ぎは聞こえているはずだが……。
「そんなことより、俺お腹が爆発しそうなんで、トイレ貸してくれねえつーかギブギブ」
 と、ここでゼノが騒ぎ出した。
 母親は慌ててトイレの場所を伝え、ゼノは大急ぎで廊下を駆けていく。
「……すいません」
「いえ、いいんですよ。先生も大変ですね」
「そんなことはありません。みんな素直でいい子ばかりです」
 その隙に、かぐやは世間話へと持ち込んだ。
 当初の予定通りに事を運ぶためにも、ミドリには玄関まで出てきてもらわなければならない。
「そして、みんな仲良しです」
「うん、みんな仲良しなの」
 かぐやの言葉に、花梨が笑顔で応える。
「そうですね。皆さん星が好きなことも共通していますし」
 更に、結衣が話を継ぐと、母親は「あら、そうなの」と興味を示した。
「うちの子も星が好きなんだけど、人見知りするところがあって、まだ友達が出来てないみたいなの」
「そうなんですか」
「もし良かったら、うちの子もそのサークルに入れて頂けませんか?」
「もちろん大歓迎ですよ」
 礼を述べて、母親は二階へと上がっていく。
 ちょうどタイミングを計ったように、ゼノもトイレから帰ってきた。
(「上手く出てきてくれるといいけどね」)
 能力者達は不測の事態が起きても大丈夫なように、いつでも飛び出せる態勢だ。
 もっともそれは杞憂に終わり、遂に目的の少女――ミドリが姿を見せた。
 母親の後ろに隠れてはいるが、能力者達にはそれで十分。
 芽亜のサイレントヴォイスによって、二人はあっという間に夢の中へ落ちていく。
「これで障害は無くなりましたわ」
「じゃあ、ミドリちゃんとお母さんは居間のソファーに寝かせておくね」
 イグニッションした、真夏と、結衣は軽がると二人を運んでいく。
「うん、ここなら戦闘に巻き込まれる心配もないよね」
 最後に、花梨がこの部屋の安全を確かめる。
 それが終わると、いよいよ能力者達はメガリスゴーストと対峙すべくミドリの部屋に向かった。

●嫦娥の瓶のメガリスゴースト
 ドアを開け放ち、襖を開く。
「これで広さは十分でしょうね」
 かぐやがこれから戦場になる場所を見渡して、確信と共にうなずいた。
 既にメガリスゴーストがどこから現れてもいいように陣形は整い、
「残念ですが彼女では宇宙飛行士の素質はありませんわね。身の程を知っていただかないと」
 まずは芽亜が口火を切った。
「それにあなたは嫌な物事から逃げている。そんな態度でいる限りはどこへ行ったところで楽しい事なんて見つかるハズもないわ!」
 それに結衣が続き、
「そうそう、ミドリには宇宙に行くのを諦めて貰わないとだね。今のままじゃ、夢のまた夢だし」
 真夏も胸をちくりと痛めながら、否定の言葉を紡いだ。
 すると、ミドリの部屋の天井がガタガタと動き出して、
(「さあ、おいでませ、メガリスゴースト!」)
 芽亜の心の声と、メガリスゴーストが姿を見せたのは奇しくも同時。
「おおお、ホンマに宇宙人や!」
 ウルスラの感嘆をよそに、少女らしきものは素早く目を走らせて何かを探している。
『ミドリの姿が見えない。彼女を何処にやったの?』
「宇宙に行ったところで、なにも面白い事なんてないのですよ。他の惑星に人が住めるのはそう簡単に実現出来ないでしょうし、ミドリさんにはそのことをちゃんと説明しておくのです」
 ここで、花梨が更に否定の言葉を口にした。
『……ミドリの邪魔はさせない』
 少女の目に敵意が灯る。
 光線銃が能力者達へと向き、リトルグレイ達もその姿を現した。
「……残念ね、応援するだけなら看過したのだけれど」
 結奈の声が会戦の合図。
 ジグザグに折れた光の束が能力者達を襲う。
「思ったよりも速いようですが、こちらも負けていませんわ」
 その攻撃を阻んだのは、芽亜が展開した幻夢のバリアだ。
 コンビネーションでそれをサポートした真夏は既に魔弾の射手を構築して、狙いを絞っている。
 そして敵の二射目が来る前に、
「今度はこちらの番よ。凍て付け、月光」
「さあ、幻影兵よ!」
 結奈の月煌絶零が少女を捉え、花梨の幻影兵団が能力者達の力を引き上げていく。
 この流れのまま押し切ろうと、ウルスラが幻影兵を敵の中に突っ込ませ、
「地球で悪いことするなら宇宙人でも手加減せーへん、ってな! 全力で蹴り抜いたる!」
 直後に生まれた三日月の軌跡。
 リトルグレイを蹴り上げ、そのまま追撃をかけようと溜めを作ったところに、
「って、狙ってきおった!」
 撃ち込まれた光線を、ウルスラは寸でのところでかわす。
「しかし、光線銃もビビーッて感じ! なんかええなー♪」
「そんなこと言ってる場合ですか」
「あなたなど、宇宙人にあらず。偽物は消えなさい!」
 代わりに、結衣の放ったクロストリガーが続けざまに銃声を残す。
 倒しきれなかったのを見て、再び銃撃。
 さすがに目を引いたのか、リトルグレイ二体からの反撃が続けざまに起き、
「……くぅ」
 聖槍と天御剣でダメージは削ったが、それでもかなりの痛みだ。
「安心しな、すぐに治すぜー」
 ゼノが祖霊降臨で傷を癒していく。
「それにしても見事なぐらい撃ち合いになってきたぜ」
 敵も味方も長射程攻撃が行える以上、双方ともに初めから陣形を崩さず攻撃の応酬。
「しばらくは回復に回るしかありませんわね」
「でも、いい感じなのです」
 芽亜と、花梨も回復を優先している。
 激しい攻防ではあるが、範囲攻撃が使える能力者がやや優勢か。
 そして、それを確実なものにするため、ゼノが次の手を打つ。
「聞いてくれ! ……アンタが居たら、あの子はきっと何処にもいけない。自立を促すのも宇宙への第一歩だから、帰ってくれよ」
 狙いは違わず、敵の攻撃はゼノに集まる。
 だが、逆に言えば回復役に攻撃が集まり、攻撃役が完全にフリーになった。
「夢を応援するのはいいことだけど……でも、人を殺していい理由にはならないよっ!」
 真夏の呼び寄せた隕石が敵の中心で炸裂し、
「月光よ、敵を飲み込むと良いのです!」
 花梨から伸びた眩い月光の帯が敵陣を凍てつかせる。
 されど、
『……ミドリを助けなくては』
 敵は愚鈍なほどに真っ直ぐで、ただ己が目的を遂行する。
 撃ち出された光線が、かぐやの肩を射抜き、
「それは無理です。あなたはここで倒されるのだから」
 怯むことなく青白い月光が少女の両足を魔氷で包み込んだ。
 直後に聞こえた馬のいななきが、戦いの終焉。
 少女がそれを確認するよりも早く、芽亜のナイトメアランページがその体を四散させた。
「終わりましたね」
「応援ご苦労様。……後はミドリって娘を信じて、見守りなさい」
 芽亜のつぶやきに、結奈は消えていく少女に向けて労いの言葉をかけた。

●夢の続き
 手早く戦いの痕跡を消し、能力者達は最後の仕事に入った。
 すなわち、ミドリへのフォローである。
「いいかな? じゃあ起こすよ」
 眠らせたときと同じように、真夏が玄関まで運んできてミドリの覚醒をうながす。
「………うっ、う?」
 うっすらと開いた目蓋の奥はまだぼんやりとしている。
 それも徐々にはっきりとして、
「あっ……私、なんで、こんなところに」
「ごめんなさい。あなたが眠っている間に宇宙人さんから話は聞かせてもらいました」
「……えっ?!」
 かぐやが非礼を詫びたところで、ミドリはようやく正気に返った。
「宇宙人さんな、故郷の星に帰ってったわ。なんか急ぎの用事らしかったで、ミドリにお別れの挨拶できんでゴメンって言っとったよ?」
「……えっ、えっ?!」
 言ったウルスラの顔を見て、ミドリはただ唖然とするばかり。
 何かを言おうと唇は震えているが、声にはならず……ただ消えていく。
「宇宙人? 本当にいたんだなー……でも帰っちゃったよ」
 ゼノが慰めようと、ミドリの肩に手を置いたところで、とうとう泣き出してしまった。
 能力者達は落ち着くのを待ちながら、彼女が心情を吐き出していくのを静かに見守る。

 ――そんなのってないよ。
 ――だって、ずっと一緒って言ったのに。私を放って行っちゃうなんて酷いよ、酷すぎるよ。

「友達と会えなくなるのは寂しいけどさ……。その夢が本物なら、一人でも夢を目指して頑張れるよね? 宇宙人も、それをきっと望んでいると思うんだよ」
 少し落ち着いてきたのを見て真夏が話しかけるも、ミドリは拒絶するように首を振る。
「私ひとりじゃ無理……無理よ」
「……あの宇宙少女の応援は、本心からのもの。……それを無駄にするか、糧にするか。それは貴女次第よ。それに彼女だって貴女と離れるのを嫌がっていたわ」
 結奈の言葉に、うつむいていたミドリの顔がようやく上を向いた。
「あなたはそれでいいのですか? 夢をかなえればまた会えるはずです」
 問い掛けて、かぐやはまっすぐに見つめる。
「……本当に?」
 その問い返しに、かぐやは嘘と知りつつも首を縦に振った。
「そうやその通りや、今度はミドリが宇宙飛行士になって会いに行けばええて。それに宇宙人とお友達になれるんなら、きっと地球のみんなとも仲良くなれるて! 間違いあらへん!」
 太鼓判を押すようにウルスラも続ける。
 いつしか、ミドリの涙も止まって、
「あなたが本当に宇宙飛行士になりたいなら、約束はきちんと守りなさい」
 結衣がもう大丈夫だろうと少しきつめの話を始める。
「宇宙飛行士に必要なのは頭だけじゃない。仲間との信頼と連携、嘘をついているようでは誰からも信頼されなくなってしまうわよ」
「………はい」
 そのことはミドリも知っていた。
 けれど、それだけで大丈夫なのだろうか?
 嘘はともかく……。
 人付き合いが苦手なミドリには誰かから信頼を勝ち取ることは、とても難しく思える。
「ありがとう」
「………えっ?」
「いや、トイレを借りたことなんだけどな。世話になったら言うものだし、挨拶とか感謝の言葉とか、言ったらみんないい感じになるじゃんか」
 案外そんなものでどうにかなるんじゃないかと、ゼノは笑顔を見せる。
「何よりも、ミドリさんが宇宙への想いを忘れなければ。きっとまた会えると思うのです」
 一番大事なのはそれですよ、と花梨が念を押す。
「まあ、他にもネットでいろいろ探してみたりすればいいのではないでしょうか」
 そして、母親が起きないように居間で様子を見ていた、芽亜がやってきて再びミドリを眠らせる。
 後は能力者達が居なくなれば、今回の事件は世界結界によって記憶から薄れていくことだろう。
「……これで、いいんだよね?」
「優しい嘘……というものです」
 真夏のつぶやきに、かぐやが誰に応えるでもなくつぶやき返す。
「果たして彼女の思いは、夢か憧れか。一つだけ言えるのは、資質も含めてこれからといことですわ」
「……待って、て」
 芽亜の声に反応したわけではないだろう。
 偶然にもミドリから漏れ出した寝言がそれというだけ。
 されど、今回のことかが少しでも彼女の歩みを助けたのなら――、

 それは確かに意味があったことなのだろう。


マスター:てぃーつー 紹介ページ
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いまいち
参加者:8人
作成日:2012/02/17
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