最強の少年棋士


<オープニング>


「そ、そんなバカな?!」
 少年は信じられないと目を疑う。
 机の上に並べられたのは流行りのトレーディングカードゲームだ。
 少年のデッキは雑誌にも載っている構成で、現在のレギュレーションでは最強といってもいいもののひとつである。なのに、なのに……、
「こんな初心者に負けるなんて……ずるっこだ、ずるっこをしたんだな! そのよく分からないのに何か秘密があるんだろう!」
 指差したのは対面に座る少年――ススムの持ち込んだ将棋盤だ。
 対戦時に将棋盤の上の駒を動かすと、どこからともなくゲームのカードが出てきて、ちゃんとトレーディングカードゲームのルールに則って戦うことができた。
 だが、だからといって納得できない。
 何だかよく分からないままに対戦を進めてしまったが、きっと何かイカサマをしたのだ。
「でなければ、お前なんかが僕に勝てるわけがないだろう!」
「そうだ、そうだ!」
「この卑怯者!」
 周りにいた少年達も賛同して声を上げる。
「おい、何とか言ったらどうなんだよ」
 そして、大柄の少年がススムの襟首を掴んだ。
「やめた方がいいよ。でないと痛い目にあうよ」
「何だと! ……って、あいた、あいたたたたたたっ」
 いつの間にか、戦国武将のような男に腕を掴まれていた。
「まったく無駄の多い手だね。弱い犬ほどよく吠えるっていうけど本当のことなんだ」
 ススムは将棋盤を見ながら不敵に笑う。
「おい、離せよ……あっああああああ!」
 直後、絶叫がほとばしった。

「ねえねえ、今回はどんな依頼なの?」
「全員が集まったら説明をするからもう少し待て」
「ぶーーっ……と、あれがそうじゃない?」
 初瀬部・ひなた(陽だまり仔猫・bn0153)の指摘に、山田・大五郎(運命予報士・bn0205)がゆっくりと視線を向ける。
「どうやらそのようだな」
 最後のひとりと挨拶をして、大五郎は説明を始めた。
「まず、今回の依頼だが『プラトン立体のメガリスゴースト』がかかわっている」
 所持者は、藤堂・ススムという小学四年生の男の子。
 彼はプロ棋士を目指していることもあって、将棋の腕はかなりものだが、
「どうやら、そのこともあって問題が起こりそうなんだ」
「……?」
「ススムはプラトン立体のメガリスゴーストであるノートに最強で万能たる将棋盤を書いた。具体的に言えば、ありとあらゆる戦いを将棋に変換できるという能力だ」
 つまり、ケンカをすれば相手の動きは将棋盤の上で敵の駒として表示され、ススムが自軍の駒を使えば相応の攻撃が相手に飛ぶことになる。
「なるほどなるほど」
「付け加えると、ススムは自分が将棋に強いのに、周りが見向きもしないことに苛立ちを感じている」
 確かにそのぐらいの子供なら将棋よりも他のゲームに関心を示すだろう。
 ススムがそれを理由に鬱憤を貯めているのも彼の年齢を考えれば分かる話である。
「今からみんなに向かってもらえば、カードゲームショップでススムが同級生と対戦を始める直前にたどり着くことができる」
「そこから上手く挑発して引きずり出せってことだね」
「そういことだ。近くに人気の無い空き地もあるから、そこに誘い出すといいだろう」
 地図を取り出して、大五郎は赤ペンで印を入れる。
「了解だよ。さっき聞いた話も挑発に使えそうだし、手は色々ありそうだね」
「それでは、メガリスゴーストの能力についてもう少し補足しておこう」
 具体的な能力は先ほど説明したとおり。
 ススムの性格を鑑みれば、ノートを自分から手放すとは思えないので戦って勝ち取るしかない。
「能力的にはみんなよりも強いが、人数差を埋められる程ではない」
 普通に戦っても十分に倒すことは可能だ。
「まあ、それよりも将棋盤の力がそれほど強いものではないことを、万能でないことを、ススムに納得させることができれば、その能力を弱体化させることができる」
 しかし、失敗した場合には最悪、将棋盤に追加要素が入り、かえって強くなってしまうことがある。
「どう利用するかはみんなに任せる」
「ふむふむ……どうやら将棋以外のことは詳しくなさそうだし、適当な事を言ったり、無駄なことをするのが良さそうかもね」
 こちらの行動が将棋盤に表示されるのだから自信たっぷりに無意味な行動を取れば、さぞかし混乱することだろう。後は上手く口車に乗せてしまえばいい。
「そういうことを考えるのは得意だな」
「うん、任せてよ」
「ならば、最後にひとつだけ。ススムを倒せば、そのことで彼は落ち込むはずだ。もし、上手いフォローをかけられるようならそれも頼んだぞ」

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参加者
御影・ありあ(白銀鏡の娘・b00509)
中川・始(オルタナティブ・b22310)
氷上・靜(浮薄・b25686)
草壁・那由他(ダークレボリューション・b46072)
水原・風戯(禍福の風・b64135)
山野・進(ぽかぽか陽だまり拳士・b76199)
斉藤・縁(多分浪花の風水少女・b81259)
新宮・燈夜(真理の追求者・b83468)
NPC:初瀬部・ひなた(陽だまり仔猫・bn0153)




<リプレイ>


「ススムくん……だよね」
「……?」
 新宮・燈夜(真理の追求者・b83468)に呼び掛けられて少年のひとりがこちらを向いた。
 手元には将棋盤がある、間違いない。
「そうだけど、なに?」
「僕と同い年くらいなのにプロの棋士を目指すなんて立派だよ。その実力を、見せてくれないかな?」
「へぇ、どこで話を聞いたのか知らないけど、ちょっとは話がわかるみたいだね」
 話し掛けた燈夜ではなく、ススムは近くにいる少年達に自分のすごさを自慢するように応える。
「悪いけど、興味があるんはアンタの将棋盤の方や。なんや無敵って聞くけど、ちょいとウチらと勝負せんかー?」
「……なっ!」
 だが、斉藤・縁(多分浪花の風水少女・b81259)の言葉に、それは絶句へと変わる。
 同時に周りの少年達からこぼれだす失笑。
(「別に将棋が古いとか流行らんとか思わへんけどなー。ま、世間一般の小学生ならしゃあないか」)
 ちらりと視線をススムへ。
(「気持ちはわからんでもないけど、メガリスゴーストは子供の玩具にはあわへんし」)
 しっかり止めてやらねば、と縁は意気込みを新たに。
 そして、
「僕達と最強を賭けてあっちで勝負だ〜っ!」
「勝負だー!」
 山野・進(ぽかぽか陽だまり拳士・b76199)と、初瀬部・ひなた(陽だまり仔猫・bn0153)が挑戦を申し込めば、先ほどの恨みを晴らしてやろうとススムは二つ返事でこれを受ける――。

 一方、近くの空き地では残った能力者達がススムの到着を待っていた。
「金の動きがこうやろ。で、銀がこんな感じで動くわけや」
「……ふむ、それよりも問題は駒が多いから見極めるのが難しそうだな」
 参考にと駒の動きを説明している中川・始(オルタナティブ・b22310)の地面に描いた図を見ながら、水原・風戯(禍福の風・b64135)が考えるような仕草をとれば、
「子供と言うのは手ごわいわよ……想像力があるから」
 草壁・那由他(ダークレボリューション・b46072)が注意を喚起し、溜め息をこぼす。
「私はすっかり頭が固くなってしまったけれど」
 そのつぶやきが終わったところに、

「勝負のフィールドはあっちや。怖気づいたんか?」
「そんなことあるもんか! 早く案内しろよ」

 聞こえてきたのは、縁と、少年の声だ。
 空き地で待機していた能力者達は、早く姿を確認しようと道路に目を配り、
「あの子がススムくんか……」
 姿を確認した、那由他は素早く戦闘準備を始める。
 そうしているうちに、ススムと、誘い出しに行っていた能力者達が空き地に到着した。
「お、来たな、少年」
 まずは、始が出迎える。
「わいらはゲーム同好会、なんぞ面白い事が出来るって聞いたんで来てもうた訳やが……」
「ふーん、見たところ武器を持った人もいるみたいだし、要は僕を袋叩きにしようって魂胆だね」
「そういうつもりはないんやが……」
「おいおい、多数対1でも勝つのが天才じゃん? それとも自信がないの?」
 言いよどんだ始のあとを、御影・ありあ(白銀鏡の娘・b00509)が挑発して切り替える。
「ふん、こんなことで僕が怖がるとでも? それに将棋の駒は君達よりもたくさんなんだよね」
 対して、ススムは余裕の表情。
 それだけ将棋盤と自分の腕に自身があるということか。
(「直向きってのはイイですよね、好きですよ。ボクは。だからこそ今回は覚悟して酷い人間に――」)
 と、氷上・靜(浮薄・b25686)が詠唱兵器を取り出す。
 他の能力者達も武装を終え、ススムを半ば取り囲んだ形で準備が整う。
(「気持ちは分かる……。俺はTRPGが好きだけど、遊んでる奴は少ないからな……」)
 風戯も二振りの剣を構えて始まりの時を待っている。
(「だけど……だからこそ好きなもので誰かを傷付けるような事はして欲しくない。少なくとも俺は『好きな事』は楽しむ為のものだと思っているから今回は止めさせて貰うよ……」)
 さあ、覚悟も完了した。
「ほな、始めようか!」
 その声に動き出す。
 今、戦いの火蓋は切って落とされた。


「さあ、どこからかかってきていいよ」
 将棋盤がふわりと浮き上がり、ススムは能力者達の様子をうかがう。
 いや、正確に言うならば将棋盤の駒の様子を、だ。
「ではボクとの勝負はコイツです」
 サックスをコンコンと指で叩いて、靜は一気にハイ・ノートまで吹き鳴らす。
 それで生まれた響音弾がススムに炸裂……いや、その前に宙空から現れた武者がこれをガード。
「なるほど、予報士さんの言ったとおりですね」
 が、これも予想のうち。
 そのまま陽気な曲を続けて、仲間にスイッチすれば、
「ほな行くでー!」
「援護するよ!」
 縁が切り込み、ひなたが光の槍で援護射撃を飛ばす。
「八卦! 浄銭剣!」
 そして必殺の一撃が将棋盤を見つめるススムに襲い掛かる。
「甘いよ――そんな攻撃じゃあ、組みあがった僕の矢倉は崩せない」
 言葉と共に三人の武者が現れて、この連携攻撃も防いだ。
「なら、これはどうかな〜っ!」
 今度は、進がフロストファングで側面を突けども、またも現れる武者達。
「あれが大五郎くんの言っていたメガリスゴーストの能力ね」
 確かに生半可な攻撃では抜けそうもないと、那由他は魔弾の射手を展開しながら様子を見る。
「厄介やな、どうやらガチガチに守りを固めているみたいやで」
 始は矢倉囲いの形を頭の中で思い浮かべてみる。
 将棋盤の上がどんなことになっているかは知る由も無いが、守りを崩すのは難しそうだ。
「……おまけにウチらの行動も将棋盤に現れるんやったか」
 と、縁がここで考え込んだ……。
「金将、金……おぉ、金(カネ)や。ほなウチは『貧乏』とか『金無』ってコマになるんやろか?」
「大丈夫だよ。縁ちゃんもいつか成れるって」
「って、ひなた先輩そこは否定するとこやろ!」
「……何をやっているんだ、あの人たちは?」
 脇道にそれていく二人に、ススムは首を傾げる。
「余所見はよくないねー」
 それに気付いたときには、
「見せてやろう、歩兵をなぎ倒す竜の一撃ー!! そして戦車の一撃をー!!」
 雷光がきらめき、ありあのライトニングヴァイパーが駆け抜ける。
「……くぅ」
 だが、これも止められた……。
「それなら直に殴っちゃる」
「……えっ?!」
 ここで初めてススムが戸惑いを見せた。
 直後に、ありあの拳がクリーンヒット……まあ、素手なんで大したダメージではないのだが。
「そんな馬鹿な、なんて悪手を打ってくるんだ」
「直に殴ってどこが悪い!? 例え最強と言えど、本物の神やキチガ……もとい天才には勝てない! これは漫画から教わる常識!」
「うわぁ無茶苦茶だ!」
「まあ、何でも将棋に変換すればいいってものでもないってことです」
 ここで口を挟んだのは、靜。
「現にボクの演奏はその将棋盤に表れていますか?」
「……何を言うかと思えば、もちろんさ。よく分からない攻撃だけど、こいつにかかれば何でもお見通しなんだよ」
「違いますよ、『攻撃』ではありません。初めに言ったはずです」
 ゆるりと首を横に振る。
「ボクとの勝負はコイツだと――ススム君も心を響かせられなきゃボクには勝てませんよ」
「……何を」
 理解できないと言おうとしたススムの目に能力者達の姿が留まった。
 奏でられる音楽に乗って、何か……楽しそうだ。
「その将棋盤では音楽を表すことなんてできません。俺はこんなにも凄い! 負かしてやる! なんてゴリ押してくる音楽で感動なんてできないようにね?」
「……そんなの分かんない、分かんないよ!」
 駄々をこねるような物言い……少しは感じるところがあったのかもしれないが、否定するために生み出された武者達が、能力者達に苛烈な攻撃を繰り出す。
「なっ! とっ……!」
 さしもの能力者達もこれには防戦一方に。
(「将棋が強い事は尊敬に値すると思うけど、メガリスゴーストに囚われちゃダメだよ」)
 攻撃を凌ぎながら、燈夜はススムを見つめる。
 メガリスゴーストの力によって変換されているとはいえ、予報士の話ではあの将棋盤に力を増強するような効果は無かった。すなわち純粋にススムの将棋の力が優れているということだ。
 ならば、それをこんなことで歪めてしまってはいけないと、
「豊穣の力よ、皆を癒してあげて!」
 燈夜がまずは戦文字で仲間の傷を癒す。
「これでかんばってや」
 縁もヤドリギの祝福で戦線をサポート。
「もう少し耐え切れば……攻めが切れるはずだ」
 風戯も旋剣の構えと、真サキュバス・ドールからの支援で耐えながら仲間に呼び掛ける。
 これを受けきれば――反撃のチャンスが来るはずだ。
「なら、チャンスはわいが作ったろ」
 攻撃を掻い潜って、始が一歩前に。
「勝負や、少年! いくで、3六歩」
「……うん? 8四歩」
 そうして始めたのは目隠し将棋。
 だが、ススムの攻撃はまったく緩んではいない。
(「多面指しましてくるんか。わいも同じ歳ぐらいに将棋を始めたが、だいぶ違うもんやな……」)
 舌を巻きそうになりながらも、そのまま目隠し将棋を続ける。
「なら5六歩」
「8五歩」
「7七角」
「……えっ7七角?」
「そうや、言い忘れてたが、わいの盤では飛車と角が反対になっとるんや」
 確信犯の笑み。
「すまんな。でも、自分のルールでやっとる内は身に付かん事もあるんやで」
 言った時には既に走り出している。
 慌ててススムが武者を展開していくが、
「ほら、こっちだよー。銀の動きじゃ横への攻撃はできないでしょ?」
 燈夜はさっとその脇を通り抜け、
「今だ………必殺剣……風牙!」
 死角を突いて肉薄した、風戯が闇に染まった二振りの剣で強襲する。
「何だかんだ言っちゃって、君は弱い犬なの?」
 那由他も動揺している間に一気に前へと。
「ほらよそ見をしていると危ないわよ……!」
「あっ、あ……」
 将棋盤を見つめるススムの手は高速で動いているが、一度決壊した守りを立て直しきれない。
「将棋のコマは泣き所多いで金は斜め後ろ、銀は側面……ちくちく攻撃や、大駒取られたら、後は射撃で火ダルマとちゃうか」
 今度は側面から、縁。
「ダメだ。受けきれない……」
「わお〜んっ♪」
 更にどこからともなく現れた狼が、ススムに飛びついてきた。
「う、うわぁ!」
「ふっふふふ、これぞ進くんの最終奥義! フルビーストモードッ!!」
 煽る、ひなたの声。
「わふ〜っ♪ ぐわぉおおん♪」
「な、なんなんだよ、なんで将棋盤には現れないんだよ?!」
 さもありなん。
 戦闘には意味がない動きだけに、将棋盤はこれを表記しないのだ。
 が、それはススムに分かるはずもなく、
「だってあたしたち将棋の駒じゃないし」
「………!」
 ありあの言葉に、ススムは再び絶句する。
 そこに、
「所で……俺はTRPGが好きなんだけどTRPGって勝ち負けは存在しないんだよね……強いて言えば参加した全員が楽しめれば勝ち、というか成功なんだ」
 風戯がゆっくりと近付いてきた。
「けどその将棋盤だとやりようがないと思うんだ。だって、もしその将棋盤でTRPGを再現できたとしてもススムはTRPGを知りもしないだろう? それじゃあ形だけだ。少なくともTRPGで作り出す楽しみを感じることなんてできやしない」
「あっ、ああ……」
 その言葉を理解できているのか、いないのか。
 ススムはただ後退っていく。
「音楽も同じです。音楽は相手の心に寄り添えないと感動してもらえないんですよ」
 靜が前進。
「そう考えるとススム君は対局者の視点で物を考えられないって事で……今のままじゃ将棋も限界が来るんじゃぁないですか?」
「そんなこと……そんなわけ……」
「将棋は程々にしか出来ないけど、そんな僕でも分かる事があるよっ。それはね、こんな戦いは将棋とは何も関係ないって事なのっ!」
「………っ!」
 最後は同じ名を持つ、進が止めを刺した。
 ススムの手はだらりと下がり、完全に意気消沈している。
「弱体化どころか、ススムくんの戦意まで折っちゃったね」
「では、心苦しいですが終わりにしましょう」
「よし、みんないくで!」
 そして、集まった攻撃の前に将棋盤はあっさりと砕け散る。
 同時にススムは倒れて、その懐からはノートがこぼれ落ち――、
「これが、そうなのね」
 近くにいた、ありあが手に取った。
(「ちっと見てみたい気もするけど、まあ本人の聖域なのよね」)
 開きかけていたページをぱたりと閉じ、ノートを掲げて仲間達に示す。
「おおっ、それがー!」
「こんなもんがメガリスゴーストとはなあ」
 近付いて興味津々にのぞきこむ。
「でも、こんなものが一般人の手に渡るなんて、これ以上の被害は出させないよ」
「そうだよっ! 早く破いちゃおうっ!」
 燈夜と、進がノートに手をかける。
 両側から力を入れれば、あっさりと破け、それは飛び散っていった。


「なんとか形になったわね……」
 空に消えていく紙片を見ながら、那由他が安堵の息を吐いた。
「おぅお疲れさん、あとは……」
 始が倒れているススムの姿を目に留める。
 あとは彼へのフォローだ。
 ちょうど戦いの痕跡を消し終わったところで「……うっう」とススムが目を覚ます仕草を見せ、
「大丈夫?」
「……うん、って、わーーー!」
 ひなたにのぞきこまれて、ススムが大声を上げた。
「まあ、落ち着いてよ。これからが今日見た幻の最後の仕上げだからね」
「えっ?」
 気が付けば、ススムの周りには能力者が集まっていて、
「将棋は決してつまらんゲームやない。むしろ一生遊べる遊びや、もっと胸張ってええで」
「誰が認めなかろうと別に好きなものは好き、で良いと思うんですけど……ただ出来れば相手の好きな事も否定せずに認めた方がお互い楽しいと思いますよ?」
「せやな、相手のルールだと勝てんかも知れんが、それはそれで目標が出来てなかなか楽しいでよ」
「自分を認めて欲しかったら相手の大事なもの、好きなものも認めてあげる事ですよ」
  縁が、風戯が、始が、そして靜が順に声を掛けていく。
「勝つ為には、何が必要か、もう一度考えなさい」
「ごめんね。でもあんなの使ってたってプロ棋士になんてなれないよ? 本気で目指すんなら、自分の力で頑張んなきゃっ!」 
「君の将棋の実力は本物だよ、これからもずっと将棋を続けて、いつかプロになれるように頑張ってね」
「そう、同じ名前のススムクンがプロになれたら僕もすっごく嬉しいの〜っ♪」
 次いで、那由他、進、燈夜も。
「それじゃあね」
 そして、まだ唖然としているススムに背を向けて能力者達は歩き出す。
「これから将棋一本のまま、ネットとかで同じ将棋スキーを見つけるか、戦略を豊富にするためにほかの趣味も入れるか……これは本人次第ねー」
 ちらりと後ろを見て、ありあが独白した。

 世界結界によって、ススムはいずれこの出来事を夢か幻とでも思い込むだろう。
 でも、願わくば、これが明るい未来に繋がることを。
 それが能力者達の共通の願いであった――。


マスター:てぃーつー 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/02/25
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