<リプレイ>
●待ち構える能力者達 太陽が水平線から離れて、もう三十分は経っただろうか。 日の出と共に現地入りした能力者達は朝の静けさを破って、岩肌に杭を打ち込んでいる。 「こんなものでしょうか」 十夜・空(宵闇を詠う裏商人・b44148)が杭の先端に付いたペグにロープを繋げ、試しに引っ張ってみると、十分な手応えが返ってきた。 それでひと息つき、朝日がきらめく海へと視線を投げかける。 (「龍脈に封じられていた存在なのですか。かなり強力な上に場所が場所です……」) 今度は上を向いて、頭上の大鳴門橋を視界に入れる。 ここは観光地であると共に、本州と四国を結ぶ交通の要だ。 決して、オロチのような怪物を暴れさせる訳にはいかない。 「十夜さん」 声のした方を向けば、美堂・白髏(白花大輪・b51491)がロープを差し出している。 「ありがとうございます、そしてよろしくお願いしますね」 「こちらこそ、お願いします」 ロープを受け取り、互いにそれを体に結ぶ。 見れば、他の能力者も――前衛役と後衛役でロープを結び、海に落ちた時に備えている。 ただ、例外もあって……、 「オロチね……なんだかまた厄介なのが出てきたな」 「よもや此れほどの大物相手と戦えるとは、な」 対照的な反応を見せる、月村・斎(閑人・b45672)と、スペルヴィア・スパーダ(月咎哮狼・b48362)の二人はパートナーを作らずに、岩肌に打ち付けた命綱一本でこの戦いに挑むつもりである。 「まあ、理事長ちゃんの為にも頑張らないといけない気がするな」 斎がつぶやきながら手伝いが必要かと仲間達の様子をうかがう。 だが、作業はほとんど終わっていて、予備のロープが海に投げ込まれると準備作業はほぼ完了した。 (「魔術兵器『オロチ』ですか。興味ありますね。どれだけ強いものか……戦う前からワクワクします」) 表情にはまったく出さず、ルリナ・ウェイトリィ(白金の月・b22678)は期待を込めて海を見る。 潮が満ちていくのが、境界線となってはっきりと分かる。 太平洋から瀬戸内海へ、つまり能力者達の方に徐々に近付いてきている。 同時に、境界線の辺りでは海流がぶつかり合って大きな渦が生まれては消えていく。 (「……一体どれ程のものか。だが、どんな敵でも人の脅威となるなら打ち倒すのみ!」) 戦いが近いのを感じて、イグニス・ランフォード(近接武術師・b42985)が電光剣を握り直した。 その間も近付いてくる境界線。 (「私たちにとって魔術兵器オロチが敵であるなら、それを倒して行くだけです」) やるべき事を心の中で固め直し、冬宮・空(白き光の巫女・b52967)が表情を引き締めれば、 「もしもの時はよろしくね」 柳谷・凪(お気楽極楽あーぱー猫娘・b69015)が元気に声を掛けてきた。 「はい、任せてください。必ず勝って、みんな一緒に笑って帰りましょうね」 返答は凪だけでなく、仲間のすべてに向けたもの。 「もちろんなんだよ。オロチがどれだけすごいのか知らないけど全力で倒して観光も楽しむのだ〜」 そして、凪も仲間達に呼び掛ける。 「なら、被害が出る前に終わらせましょうかね?」 代表する形で、十夜・空が応えれば、 「渦潮が近付いて来ましたよ……」 いよいよ、戦いの時。 巨大な影が海面にはっきりと浮かび上がる。
●激突! まるで水面が隆起したように膨れ上がり、限界を超えて破れると水しぶきが大量に降り注ぐ。 その先には巨大な蛇のようなものが、こちらを悠然と見下ろしている。 (「これが魔術兵器オロチですか。ごく一部といってもこれだけの規模の敵に暴れられたらとんでもない被害が出てしまいます。ここで確実に倒しましょう」) 白髏がギンギンカイザーXを飲み干して敵に備える。 見れば、他の能力者達も――少し散開しながら自己強化と敵の動きを観察。
――そして、オロチが咆哮と同時に動き出す。
「いっくのだー!」 凪が岩肌を蹴ってサイドステップ。 突進してきたオロチをやり過ごし、通り過ぎようとしている尻尾のようなものを黒影剣で斬りつける。 だが、鈍い感触……。 「おろ?!」 鱗の硬い部分にでも当たったのか? 反応があまりにも悪く、体勢を立て直すために後退を始める。 その時間は、ルリナがジグザグスラッシュで稼ぎ出そうと、 「………?!」 が、すぐさまルリナは回避行動に移った。 反転したオロチが突き進んで来たのだ。他の能力者達もこれを避けようと動くが、 「しまった……」 スペルヴィアが巻き込まれて海へと落下する。 気付いたときには既に遅く、斎が咄嗟に伸ばした手は惜しくも空を切って……、 「待ってろ」 命綱を固定している岩場に駆け寄って、イグニスが直ぐさま命綱のロープを手繰り寄せていく。 渾身の力で次々とロープが進み、 「……かはっ」 荒く息を吐きながら、スペルヴィアが海面に姿を現した。 しかし、一難さってまた一難。オロチの首がその姿を捉えて動き出そうとしている。 「さあ、俺と冬の海で水遊びと洒落込もうぜ、ヘビ野郎」 「こっちなのだー」 魔眼で睨み付ける斎、黒影剣で斬りつける凪。 直後にイグニスが突き進み、 「やらせるものか」 指先から生み出された膨大な気が超絶な破壊力となってオロチへと突き刺さる。 苦しげな、オロチの咆哮。そして、反撃に水のブレスを連続で吐き出してくる。 「身体の厄をはらい落とします」 狭い岩場で赦しの舞を踊り、冬宮・空が仲間の傷を癒し、 「マトラ、皆の回復は任せたんだよ」 凪の声に応えるように真ケルベロスベビーも戦場を走り回っている。 「……なるほど確かに大物だ。その頸……貰い受けるぞ、禍龍!」 ここで、スペルヴィアが戦線に復帰。 長剣を両腕に持って、オロチに向かって一直線。 「援護します……」 ジグザグスラッシュでルリナが攻撃を合わせる。 一撃、二撃――だが、慌てて後退。 オロチが先ほどまで二人の居た岩肌を削り取りながら突き進んでくる。 加えるなら、予備として海に浮かべていたロープもかなり持っていかれた……。 「何てヤツ……?!」 目を疑いたくなるが、能力者達の足場だけでなく、近くの岩礁まで削り取っている。 「これは足場が残っているうちに仕留めないとまずいですね……」 祖霊を降そうとしていた、冬宮・空の手も思わず止まった。 「どれだけ化物だろうと、倒さねばならないことに変わりはない」 大きく跳躍して、スペルヴィアがオロチへと襲い掛かる。 フロストファングで一閃。 「元より攻撃一辺倒でな……威力は喰らって確かめろッ!」 そして、連携で繋げて必殺の白虎絶命拳へ。 オロチは振り払うように体を揺すって、これを迎え撃つ。 「お前の遊び相手は俺だぜ。余所見するなよ」 「わたしも忘れてもらっては困ります……」 斎の呪いの魔眼と、白髏の描き出したディフォルメのオロチが見事に側面を突く。 痛みに身をよじったところで、スペルヴィアの一撃も炸裂。 巨大な首が反り返り、大きな水しぶきを上げると海の中に消えていく――。 「もしかして、やったのか?」 「……いえ、そんな生易しい相手ではないはずですが」 姿が見えないかと、十夜・空が海の中に目を凝らす。 もしかして移動したのかと、能力者達は海中も含めて四方のすべてに気を配り、 「来ます……」 ルリナの警告と、大きく水面が膨れ上がったのはほぼ同時。 咆哮して、オロチはその巨大な口を開くと能力者に向かって一気に襲い掛かる。
●オロチを倒す術 「くわえ込みです」 続けた、ルリナの警告に能力者達はまず下がって距離を稼ぐ。 だが、その間もオロチの巨大な顎(あぎと)が迫り、 「危険が……危ないっ!! 狙われているのは柳谷さんですっ!!」 冬宮・空から鋭い声が飛んだ。 「空ちん、よろしくね」 すると、凪は迷うことなく海に飛び込む。 空振りとなったオロチはそのまま突き進んで――凪のロープを繋ぎ止めた岩場を噛み砕いて、通り過ぎていく……。 「厄介だな……」 「時間は稼ぐ、今のうちに海から引き上げるんだ」 イグニスと、斎が、オロチの動きを追って牽制攻撃。 火力が足りないと、ルリナと、スペルヴィア、そして白髏も急ぎ火線を張る。 攻撃の雨が次々と水しぶきを作り出してオロチの侵入を阻むも、 「抜けてきます。また……くわえ込み?!」 大きく顎を開いて、巨体が躍り掛かる。 警告を発した、十夜・空はオロチの動きを見てその狙いを絞り込み、 「まずいです。狙いは冬宮さんですよ」 二度目の警告。 前衛の能力者の目に、冬宮・空がロープを手繰り寄せている姿が映り込む。 当然、ロープの先には海に入っている凪が。 「やらせるか!」 イグニスと、スペルヴィアが同時に岩肌を蹴る。 「……餓狼が氷牙、大蛇一匹噛み散らせぬと思うなよ!」 躍り掛かるオロチの狙いを逸らさんと、ありったけの力を叩き込む。 態勢が崩れ、オロチは身をくねらせるが、 「ダメだ、狙いは大きく変わっていない」 「冬宮さん!」 その声に冬宮・空は身を低くすることで応え、 「空ちん!」 「私にも意地と根性はあるんですよ!!」 凪と、冬宮・空の視線が触れ合ったところで、大きく水しぶきが上がる。 打ち上げられた海水が土砂降りの雨のように降り注ぎ、あっという間に視界を塞いだ。 「……二人は?」 白髏が目を凝らして、雨の向こうに二人の姿を探す。 まず、見えたのは離れていくオロチ。 次いで岩に錫杖を突き立て必死に堪えている冬宮・空と、その上から抱きついている凪の姿だ。 「よかった」 十夜・空が安堵の息を吐き、 「これを」 白髏がギンギンカイザーXを投げ、傷を癒すべくマトラが走り寄る。 「やってくれたな」 もう、イグニスの目は敵を追っている。 「だが、これで攻撃は一通り見せてもらった」 強力な攻撃は多いが、命中精度は低めで、なおかつ予備動作も分かりやすい。 「ここから反撃だな」 「ええ、行きましょう!」 前衛担当の五人は間隔を広めに取りながら、オロチとの距離を詰める。 「月村さんはもう少し左へ、イグニスさんはもう少し右にお願いします」 位置の調整は、十夜・空が担当。 「行くぞ!」 斎の聖葬メイデンが口火を切り、体当たりを仕掛けようとしていたオロチの出鼻をくじく。 「ここで勝負をかける」 「なら、付き合おう」 前にイグニス、その少し後ろからスペルヴィアがオロチに急接近。 まずはジャンプから蹴りのラッシュ。 その怒涛の攻めが終わると、次は極限まで練り上げた気が同じポイントに打ち込まれ、衝撃が体内で収まり切らずに鱗を破って血のようなものが一気に吹き出した。 「よし、もらったのだー」 「煌めく閃光の槍よ、敵を浄化せよ!」 ここぞとばかりに、凪と、冬宮・空が畳み掛ける。 弱っているのは間違いない。あと、ひと押しだ。 「でも、往生際が悪いです」 白髏が最後のスピードスケッチを当てたところで、オロチが再び顎を開いて突き進んでくる。 狙いは……ルリナか。 (「やはり単調ですね。そして、気付いていないでしょう?」) ルリナは悠然とバックステップ。 短い跳躍を二回。 これで十分に敵は引きつけた、ロープの長さも限界に近い、 「お願いします」 「任せろ」 声を掛ければ、イグニスがロープを強く引っ張る。 合わせて自らも跳ぶ。 急速な移動に、オロチは軌道修正が間に合わずにそのまま岩を粉砕して海中へ、いや……浅い。そこは岩礁になっていて、海と呼ぶにはほど遠く、 「――今です」 そして、十夜・空の合図に合わせて攻撃が降り注ぐ。 咆哮。 オロチは身をよじって海中に逃れようとするが……その前に力尽き、消え去った。
●終わったあとには、楽しみも 「……さてと、理事長ちゃんの思いを遂げる一助くらいにはなったかな」 オロチが完全に姿を消したのを確認して、斎が肩の力を抜く。 「皆お疲れ様〜。かなり厄介だったけどなんとかなったね〜」 凪も手近な仲間にハイタッチ。 こうして徐々に広がっていく安堵感。 「……傷を負っている方はいませんか、まだ回復アビリティは残っていますよ」 冬宮・空も優しく微笑みながら呼び掛ける。 能力者達の対処が功を奏して深手を負った者は無く、返るのは「大丈夫」という答えと、 「寒中水泳よりはいいですが、早く暖を取りたいところです」 白髏のように海水に濡れた身体を震わしている者の二種類だ。 もっとも、イグニッションを解けば濡れた衣服はどうにかなるので、早く引き上げようという意見が大勢を占めている。 「しかし、オロチを覚醒させた異形の欠片は良くて海の中ですね……」 出来れば回収したいと思っていた、十夜・空は小さく溜め息をついた。 探そうにも海流が激しくぶつかり合っている海の中では探しようもなく……。 「気持ちはわかる。オレもあれがカリストの緑片と同種のモノか見極めたいと思っていたからな」 名残惜しく海を見る、スペルヴィア。 そこに、 「早く離れよう……寒い」 イグニスを始め、仲間達が急かし出す。 見れば、後始末のロープ回収はほとんど終わっている。 「そういえば、折角の鳴門大橋だし、ちょっと観光していこうよー」 更に、凪が呼び掛ければ、 「確かに少しぐらいは楽しみもないとな」 「ああ、考えるのはまた今度だ」 苦笑やら、笑顔やら、無表情やら。 「それに上からの展望も良さそうだ」 見上げる先は大鳴門橋。 そこからなら、能力者達の守った景観が一望できることだろう――。
|
|
|
参加者:8人
作成日:2012/03/07
得票数:カッコいい13
|
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
|
|
あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
|
|
|
シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|
|
 |
| |