鬼の手決戦:神の島へと


<オープニング>


●事件の経緯
「悪路王が動いた」
 山田・大五郎(運命予報士・bn0205)はまず端的に告げた。
「悪路王との交渉の結果はもうみんな知っていると思うが、どうやら悪路王は神秘撲滅を未然に防ぐべく、メガリスを使った作戦を敢行するようだ」
「メガリスだと……?」
 聞き返した百地・いろは(呪言士・bn0209)に、大五郎は首をしっかりと縦に振る。
「メガリス『鬼の手』だ。妖狐が所持していたというメガリスで、目的地に向けて腕を伸ばして道を作るらしい」
「つまり大陸妖狐と手を組んだということか……?」
「そういうことだ」
 『鬼の手』は、現在、徐々に空に向かって腕を伸ばしている。
 鬼の手が目的地にたどり着くまで、どの程度の時間が掛かるかのかは不明だが、到着次第に決戦が行われることは想像に難くない。
「この作戦は悪路王軍による作戦行動だ。つまり、主力は悪路王軍になっている。しかし、神秘撲滅は銀誓館学園にとっても阻止すべきものだ。この際、協力を惜しむべきではないだろう」
「そうだね。実際のところランドルフに迫る手が私たちには無い……」
「うむ、故に我こそはという者は遠野に向かい悪路王軍に合流してくれないだろうか?」
 集まった者たちはそれぞれに肯定を示す。
 手段はどうあれ、ランドルフに迫れる機会を逃すわけには行かない。
「頼んだぞ。そして、どうか無事に帰ってきてくれ」

●悪路王の軍勢
 いろはたちが到着した時には、鬼の手は奥羽山脈の高峰を越える程までに伸びていた。
『おそらく、敵の拠点は空の上だ』
 悪路王軍の幹部であろう鬼型のゴーストが、明確な敵意を向けて空を指し示している。
 彼らにとって、神秘撲滅を企むランドルフ達は許されざる敵なのだろう。
「いや、世界結界を創世した巡礼士の末裔というだけでも充分に憎悪の対象になるか……」
 つぶやいて辺りを見渡せば、悪路王の軍勢にはそうそうたる顔ぶれが揃っていた。
 主将である悪路王、岩のオロチと合体した鈴鹿御前、不滅の災いを伴ったバステト・ザ・キュート、それに多数のゴーストが従っている。
「鬼型や武者型のゴーストが指揮官を務めているようだね。加えて、妖怪のような姿のゴーストからも強い力を感じる」
 この一大決戦に向けて全戦力を投入してきたのだろう。
 ただ、戦力となりうるのはこの辺までで、付き従っている有象無象のゴーストたちは、あまり当てにはできそうもない。
「配置は――」
 悪路王軍の本陣には、悪路王と直営のゴースト軍が。
 前衛には、鈴鹿御前と妖獣を中心とした機動部隊が展開している。
 不滅の災いとバステトは、飛行できる利点を生かして支援戦力として動くようだ。
「加えて、妖狐か……」
 陣営にはちらほらと妖狐の姿が見かけられる。
 しかし、銀誓館学園の能力者を避けているのか、接触するのは難しそうだ。
「見たところ先遣隊のようだね。必要に応じて援軍を要請するつもりだろう」
 とりあえず、これが悪路王軍の現戦力であった。
「私たちに求められているのは前衛部隊として敵の中枢に斬り込むことだ」
 この作戦が上手くいけば、生命賛歌を使用した大作戦を行うことになる。
 つまり、決戦前の露払いも兼ねているということだ。
「これからどういう展開を見せるかは予想できないけど、私たちにランドルフの神秘撲滅を阻止する術がない以上、この作戦は是が非でも成功させなければならない」
 もし、この作戦が失敗すれば神秘撲滅を阻止する新たな方法を探すことになるだろう。しかし、現状ではまだ糸口すら見つけられていない。
「悪路王軍や援軍に現れるだろう妖狐たちに、銀誓館学園の意志と力を見せるためにも、私たちが頑張るしかない。最善を尽くそう!」

●神の島
 同時刻。
 衛星軌道上浮遊城塞、神の城。

「総帥、神の城に向かってくる敵影を発見しました。巨大な鬼の手のようなものに乗って、こちらに向かってきます」
 まだ若い黒髪の巡礼士の報告に、巡礼士総帥ランドルフが応えを返した。
「愚かな、どのような敵であっても、神の門を抜ける事はできないというのに。だが、出迎えもしないのは失礼に当たるだろう。城門外に、真のシルバーレインを2体配置、天啓巡礼士を中心に迎撃部隊を編成せよ。魔砲台は、鬼の手に照準を定めておけ」
「「「はっ!」」」
 そのランドルフの言葉に従い、黒髪の巡礼士達は動き出した。
 天啓を受けて巡礼士となった者達の中でも彼らはその優れた力により、この神の島へと召喚されたエリート中のエリートであり、外敵など恐るるに足りないと、意気揚々と動き出したのだった。
(「来るか、銀誓館。お前達が神の門を突破できるか否か、見極めさせて貰う」)
 巡礼士総帥ランドルフの左手で、神の左手が鈍い光りを放っていた。

マスターからのコメントを見る

参加者
ジョフロア・モンストルレ(シュネルベフェールスハーバー・b15471)
五十鈴・尚人(神誓継承者・b17668)
シルビア・ブギ(カオスの素・b45276)
天瀬・煌輝(蒼雲天煌の護者・b47328)
レイラ・ミツルギ(魔剣士・b48060)
神楽・真冬(舞い散る粉雪・b51839)
サヤコ・ジェリニスカ(暁光のマズルカ・b52521)
愛良・向日葵(元気二百パーセント・b62143)
NPC:百地・いろは(呪言士・bn0209)




<リプレイ>


「敵を読み誤るとは……」
 後方部隊が維持する突破口を、ジョフロア・モンストルレ(シュネルベフェールスハーバー・b15471)が駆け抜ける。多段式ロケットのような形で敵陣の中央突破を試み、今は二段目の部隊が前方で激しい戦いを繰り広げている。
「全く、激戦だったオキナワやカンボジアを思い出す……だが、今回も同じように成功させる」
「もちろんじゃ。これは前哨戦ゆえ、死者なぞ出さずに勝つのじゃ」
 シルビア・ブギ(カオスの素・b45276)の声に、思い浮かぶのは誓いの言葉――、

 時間は少しさかのぼる。
「決戦は空の上ですか、足が地についてないみたいで落ち着かないですね」
 神の島を見て、神楽・真冬(舞い散る粉雪・b51839)がつぶやいた。
「……まったくだな」
 五十鈴・尚人(神誓継承者・b17668)は見ないままに同意するが、
「おっと、どこを見ているのじゃ」
 シルビアによって強引に眼を開かされると、高所恐怖症の尚人は声にならぬ悲鳴を上げる。
「いい加減にしろ! そんなことをしている場合じゃないだろう」
 見かねて、百地・いろは(呪言士・bn0209)が割って入るが、
「おや、帰ってきたのじゃ」
 ちょうどその時、愛良・向日葵(元気二百パーセント・b62143)が戻ってきて話題が変わる。
「おまたせー」
「どうだった?」
「まず、悪路王ちゃんたちには伝えてきたよ。そして、やっぱり中央突破することになったねー」
「……まあ、無理もないか」
 敵の前線を見れば、今も増え続けている量産型巡礼士が否が応にも目に入る。
 ただ、突き進んでもジリ貧になるのは自明の理だ。
 能力者たちは円陣を組み、
「大変な戦いになるでしょうけど、私たちだって意地と覚悟ではランドルフさんに負けません」
 サヤコ・ジェリニスカ(暁光のマズルカ・b52521)が問うように仲間たちを見る。
「ランドルフちゃんの真意は解らないけれど、あたしは皆死なないし、未来に遺恨も残さない第三の選択肢選びにきたんだよー。その為の露払いなら万々歳なのだ!」
「みんなに命を預ける。生きて絶対に成功させるぞ!」
 向日葵、天瀬・煌輝(蒼雲天煌の護者・b47328)と次々に組まれていく手。
「この戦いが、未来の滅亡も現在の犠牲も否定する、第三の道の始まりとならんことを願って、精一杯がんばります」
 最後に、サヤコが手を合わせる。
 互いに顔を見合わせて、迷いがないことを確認すると、能力者たちは戦場へと進んだ。

 そして、時間は現在へ。
「そろそろか……」
 ジョフロアはロケットペンダントを開き、最愛の人のいつもと変わらぬ微笑みに祈りを捧げる。
「――準備、完了だ。フッ……」
 いつでも飛び出せる姿勢で、タイミングを待つ。
 他の能力者も同様に、僅かな情報も逃さぬように視線を巡らす。
 その途中で、
(「あれは……伊知郎か」)
 煌輝が見知った顔を目に留める。
 いや、向こうもだ。
(「俺と同じく、天啓巡礼士を叩くポジションに回っているとはな」)
 二人は視線を合わせてうなずき合う。
 そして、レイラ・ミツルギ(魔剣士・b48060)と、いろはも言葉を交わしていた。
「この戦いが終わったらデートもといドライブに行きましょう」
「いいね、じゃあ戦いが終わったら」
 交わされる約束。
(「何気ない日常の願い……生きる事を自分の日常を諦めたくない」)
 そのためにもこの戦いには負けられない。
 絶対に負けられない……!


「出てきたか」
 煌輝が、いや、三列の密集隊形を取りながら、部隊が一丸となって前に出る。
 他の部隊にも動きが。
 目標である天啓巡礼士の登場に、最後の三段目が動き出す。
 肉薄しながら、自己強化を。
「くっ、この程度……!」
 光り輝くオーラを纏って突撃してくる量産型巡礼士を受け止める、尚人、レイラ、煌輝、の前衛三人。
 量産型が力で押し込もうとしてくるのを、こちらも力で対抗する。
 そこに霧のような幻影が現れ、人の姿を取って傍に寄り添った。

「我等名前を銀誓舘! 結界をも上回る、世界の真の守護者なり!」

 幻影兵団を施し、ジョフロアが大声で名乗りを上げる。
「ほざくな!」
 長剣を持った天啓が、セイクリッドバッシュを打ち込んだ。
 咄嗟に、レイラはこれを受け流したものの……勢いに押されている。更には突撃槍を持った天啓が、そして能力者を打ち倒した黒髪の天啓がこちらに狙いを定める。
 手に持っているのは竪琴か。
 だが、そんなことよりも仲間の打ち倒された光景が、目から離れない。
「やってくれたな――!」
 煌輝は刀をより攻撃的に変化させ、黒髪の天啓の懐に飛び込んだ。気勢と走り込んだ勢いを乗せて一閃。残るの二人の天啓にも、尚人と、レイラが押さえ込みに。
「近づかれる前にやってしまうのじゃ」
「わかっています。舞い散れ雪花……吹雪け……粉雪!」
 シルビアと真冬、二人の雪女が生み出す、氷の地獄。
 されど、まるで痛みなど感じていないかのように量産型の歩みは止まらない。
「……嫌な相手ですね」
 傷ついた量産型を狙って、サヤコが森王の槍を投げつける。
 ようやく一角が崩れ、
「助かった、これで使える――!」
 ここで、いろはの地獄の叫びが木霊した。
 敵の幻影兵を媒介にして猛毒が体内に回っていく。
「……やってくれたな」
 天啓のひとりも猛毒を受けたようで歯切れが悪い。
「悪いがもっとそれを受けてもらうんで、な」
 と、尚人は敵の懐に飛び込んで動きを阻害。
「百地さんたちの邪魔はさせません!」
 レイラも同じように。
 後ろでは能力者たちの中衛に量産型が張り付きつつあるが、それでも天啓を後ろにはやれない。
(「あたしたちの班は範囲攻撃を主体にしているから、これしか取れる手が無かったんだけどねー」)
 蟲籠と榊で攻撃を払いのけ、向日葵が慈愛の舞を踊り始める。
 その合間にも幻影兵が攻撃を加えてくるが、
(「こんなに敵が多いと限界も発生するだろうし……」)
 受け流しつつも踊りは止めない。
 いま回復を担っているのは、向日葵ひとりなのだから。

 範囲攻撃を最大に活かすために回復は最低限に。
 それよりも取り囲まれる前に敵を倒す。
 これが能力者たちの取っている戦術のすべてであった――。

「だが、敵に打撃を与えるという意味では理に叶っているのかもしれんな……フッ」
 ライフル越しに、ジョフロアは敵を見て一射。
 三段目の部隊の中央――ロケットの先端――に位置している上に、範囲攻撃を主体にして目立っているせいもあり、群がってくる敵の数が半端ではない。
「何をしている! あの白い女を狙え!」
 怒号を飛ばす黒髪の天啓。 
 さすがに猛毒を重ねられてきたのが厳しいのか、敵の狙いは呪言士のいろはへ。
「いろはちゃん、頑張ってください」
 真冬が祖霊を降ろして傷を癒す。
 だが、癒しているそばから襲いかかってくる量産型の幻影兵たち。
 ジリジリと削られていく……。

「お主らのボスはお主らも含めて、神秘撲滅を狙っておるのは知っておるのか!?」

 ここで声を発したのは、シルビア。
 少しでも時間を稼ごうとしたのもであったが、
「「我らは力なき人々を守る為の盾であり剣!」」
 迷いもなく彼らは答える。
「「人々に害をなすゴースト、ゴーストに与するものを滅ぼすのが我らの努め! 故にそのような言葉に惑わされはしない!!」」
「……なんと」
 思考に時間を使ったのすら怪しい。
 狂信的だとは思っていたが、話し合いの余地すら無かった。
「そうか……神秘がある故に起こらなかった悲劇、不幸が無数に生まれたのは紛れもない事実だ」
 天啓を前にして、煌輝がつぶやく。
「ええ……。もし私達来訪者が人の未来に仇名すものならまた数百年の眠りについてもかまいません。元々私達雪女はそうやって自身を封印していたのですから」
 あとを継いで、真冬も。
「ですがそれを決めるのはランドルフさんではなく私達、自分自身です。大きな力を手に入れた途端世界結界を護ると言う自身の使命すら忘れた貴方達に、私や私の友人達を否定などさせませんよっ!」
「そうだ! 神秘があったからこそ、生まれた絆、喜びも沢山ある。悲しみも喜び全てを無に帰さない為に俺は戦う!」
 それは、はっきりとした決別の言葉。
 曲げられぬ信念が篭ったもの。
「あくまでゴーストに与するか!?」
「人間、来訪者、ゴースト……まだこの関係が如何なるかは未知数だが、僅かでも共に手を取り合える可能性(未来)があるのなら俺達はそいつを目指す」
「誰も泣かずに済むのなら妖狐ともゴーストとも、ランドルフさんとだって手を繋ぎたい、美しい輪に至るまで――きっとそこに今も未来も守る路があると信じて、往きます!」
 尚人と、レイラがそれぞれの相手する天啓に向かっていく。
「よかろう、どうしてもわからぬというのなら打ち倒すまでだ!」
 意思の確認はそれで終わる。
 あとは単純に、力によって己が正義を示すのみ――!


「くぅ……」
 いろはが膝を折る。
 申し訳なさそうに顔を歪めると、直後に起きた集中攻撃の前に倒れ伏した。
「またも仲間を……!」
 黒影剣で斬り付け、煌輝はそのままラッシュに持ち込む。
 攻撃の合間を縫って打ち込まれる反撃が、防具を削り取っていくが構いはしない。
「尚人先輩! レイラ!」
 声を張り上げ、飛び退く。
 直後に、隕石の魔弾と闇の手が黒髪の天啓を撃つ。
「ちっ……」
 だが、落とせなかった。
 しかも、その後ろからはまた量産型が近づいてきている。
「……女神像はまだ倒せていないんでしょうか」
 天啓の一撃を辛くも受けながら、レイラもそれを確認。
 じわじわと劣勢になってきている。
「百地が倒れた以上、早く天啓を倒すしかない」
 素早く術式を組み立て、尚人は再び隕石の魔弾を落とす。
 そして、シルビアと、真冬の生んだ吹雪が吹き荒れ、
「そこです!」
 仲間の攻撃に隠した、サヤコの森王の槍が直撃する!
 が、なお、黒髪の天啓は健在で、
「ふん、甘く見てもらっては……なっ?!」
「でしょうね、だから詰めていました!」
 天啓の見開いた目に、レイラの姿が映る。闇を纏わせ、体当たりするように剣を突き刺す。
 さしもの天啓もようやく倒れて、一般人に戻った。
「油断するな!」
 声に振り返ると、襲い掛かってきた量産型との間に、煌輝が割り込んでいる。
 もっとも別方向からも、レイラへと迫る量産型が。
「むぅ、切りがいないのじゃ」
 氷雪地獄で、シルビアが援護。
 もっとも状況的には他の班もさして変わりがない。押し寄せる敵に善戦を続けているが、捌くのにも限界がある。いずれは数の力に押し潰されるだろう。
「みんな諦めちゃダメだよー!」
 慈愛の舞で傷を癒しつつ仲間を鼓舞する、向日葵。
 しかし、彼女の周りにも量産型が群がり始めている。
「行かせませんよ」
 阻止しようと、サヤコが僅かに前へ。
 突き出される得物を払いながら、何とか攻撃を自分へと向けさせようとする。
「止む無い……」
 それを見て、ジョフロアは胸のクロスペンダントを握り締めると走り込んだ勢いのまま、
「この一撃、貴女のために!」
 想い人に捧げたセイクリッドバッシュで敵を吹き飛ばす。
 一進一退の厳しい状況は続いているが、ギリギリのところで能力者たちも持ち堪えている。
「もう一頑張りだ! ここを支えれば必ずや銀誓館や悪路王達が応えてくれる」
「ほう、だがお前はここまでだ!」
 声を張り上げた煌輝に、突撃槍のセイクリッドバッシュが直撃。
 吹き飛ばされたところを仲間が支え、
「かはっ……倒れてやる訳にはいかない! 明日という――希望と可能性という煌めき、輝きを掴み取る為に! 俺は戦う。戦い抜いて見せる!!」
 血を吐きながらも煌輝は立ち上がる。慌てて、向日葵が白燐奏甲をかけるが、前線へと戻ったところで敵の集中砲火を受け、遂に崩れ落ちた。
「まずいな……下がるぞ、ミツルギ」
「は、はい」
 尚人の声に、レイラは打ち合わせた長剣に力を込め、反動をつけて飛び退くと、追撃してくる天啓と剣戟を重ねながら後退を始める。
「……かなり押し込まれています」
 戦況を見定めながら、真冬が祖霊の力で下がる二人を支援。
 だが、これで能力者たちの構築していたラインは崩れてしまった。
 フリーとなった天啓の二人が獰猛に襲い掛かってくる。
 ひとりは、尚人とレイラに。
 もうひとりは回復を続ける向日葵へと。
「行かせん」
 ジョフロアの射撃。
 だが、それをかわし、前に立ち塞がったサヤコはセイクリッドバッシュで吹き飛ばす。
「……ううっ、早く戻らないと」
 痛みを堪えながら起き上がれば、慈愛の舞を踊る向日葵に、天啓が剣を構えているところ。
 体に癒しの力が流れ込む。
 その直後に、吹き飛ばされる向日葵が目に映り――そのまま彼女は起きてこない……。
「まずい展開だな」
「だが、不滅の災い達も健在のようじゃ。戦闘不能になっても生き残れよう」
 話している合間にも量産型が詰め寄ってくる。
「このままやるしかありませんね」
「道を切り開いてくれた仲間たちに応えるためにも、まだ終われません」
 真冬は向日葵の代わりに回復へと回り、サヤコは天啓を狙って森王の槍を撃ち込む。
「なめるな!」
 だが、攻め崩せない。
 天啓は猛攻を耐え凌ぐと光り輝くオーラを纏い、突撃槍で体当たりを仕掛ける。
 その一方で、もうひとりの天啓を押しとどめている尚人も、
「……これはまずいか」
「お前もそろそろ終わりだ」
 注意を逸した一瞬に、強力な一撃が叩き込まれる。 
「さあ、大人しく……なに?!」
 天啓の攻撃の合間に、尚人の編み込んだ術式が発動。
 魔弾の射手に強化された隕石の魔弾が、仲間に群がっていた量産型を撃つ。
「悪いが相手をしている暇がなくて、な」
「貴様っ!」
 こうして仲間が攻撃に専念できる時間を作って、尚人が倒れる。
「無駄にはしません」
 再び、サヤコが森王の槍を。
 炸裂したところに、レイラが黒影剣で斬りつける。
 十分な手応え。
「……えっ」
 気付いたときには天啓の突撃槍に光が集まっていた。
 次いで凌駕したのだと理解が及ぶ。
 けれど、もう回避をする時間が無い。天啓の体がブレたように見え、目の前で大きな音が響いた。
「……早く止めを」
 いつの間にか前には突撃槍を受けたジョフロアが。
 間髪を入れず、サヤコの槍が走った。
 どさっ、と何が倒れた音を聞いて、ジョフロアはゆっくりと目を閉じる。
「これでようやく天啓は二人目……」
 加えるならば、倒した量産型の数は範囲攻撃が主体なこともあって群を抜いている。
「さすがにもうひとりは無理じゃろうな」
 敵陣に目を遣れば、更に女性の天啓が駆けつけようとしている。
「行きましょう。まだ、私達にはできることがあります」

 ほどなくして、残った四人も倒れる。
 だが、彼らの奮闘は決して無駄ではない。
 他の部隊とも結実して、それは確かに勝利へと繋がったのだから――。


マスター:てぃーつー 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/05/25
得票数:カッコいい17 
冒険結果:成功!
重傷者:ジョフロア・モンストルレ(シュネルベフェールスハーバー・b15471)  五十鈴・尚人(神誓継承者・b17668)  シルビア・ブギ(カオスの素・b45276)  天瀬・煌輝(蒼雲天煌の護者・b47328)  レイラ・ミツルギ(魔剣士・b48060)  神楽・真冬(舞い散る粉雪・b51839)  サヤコ・ジェリニスカ(暁光のマズルカ・b52521)  愛良・向日葵(元気二百パーセント・b62143)  百地・いろは(呪言士・bn0209)(NPC) 
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。