未来の軌跡
<オープニング>
「もう12月か……何だかんだと、今年も慌ただしく過ぎて行ったね」
「ほんとほんと最後までサプライズ一杯だったんだよ」
百地・いろは(呪言士・bn0209)のつぶやきに、初瀬部・ひなた(陽だまり仔猫・bn0153)が大きくうなずいた。
ラストバトルまでの一連の流れ。
それが終わってからは世界結界が消える日に向けての準備が始まった。
「来たるべき未来か……果たしてどんなことになっているんだろうな」
問いかけるように言葉を挟んだのは、山田・大五郎(運命予報士・bn0205)。
「大ちゃんはそのうち能力者になれるんだよね?」
「すべての人間が能力者になれるらしいからな、俺たちも例外ではあるまい」
「じゃあ、能力者になったらどうするの?」
「……そうだな。海外にでも行ってみるとするか、色々とやってみたいこともあるしな」
「前に話していたハンターの仕事のことか?」
「ああ、それもある」
水族館の職員を目指して大学やら水族館のアルバイトに勤しんでいる大五郎だが、どうにも就職は難しいようだ。就職口があまりに少ないのだとか。
「一度は目指した道だからな。どこかでは繋がっていたい」
とはいえ、水族館の職員も諦めたわけではないと、大五郎は付け加える。
「ほほう、じゃあボクと一緒だね」
「あれ? ひなたは確か大学を受験するんだったよね?」
「そうだよ、大学には行くよ。でも、入ったら直ぐに休学届を出して海外をあちこち旅してみようと思ってるけどね♪」
「……え、ええと」
「……それは大学を受験する意味があるのか?」
「もちろんだよ! いま受験しとかないと後からじゃ、合格できるラインまで持っていけないよ!」
「自信たっぷりに言うな!」
「……あぅ、痛いんだよ。いろは先輩」
「まあ、受験すること自体は悪いことじゃないからいいとして、何であちこち旅をしてみたいのか言ってみなさい」
「そりゃもちろん、世界中の面白いことを探しに行くためだよ。だって、この前の理事長とみんなが巡ってたやつでもあんなに知らないことがあったんだよ。だから、きっと世界にはまだボクたちの知らないものが一杯あるよ♪」
ひなたはそれを探しに行くのだと言って満面の笑みを浮かべた。
「なるほど、ひなたらしいね」
「だな」
「ふっふふふ、もっと褒めて褒めて」
「ひなたはそうやって直ぐ図に乗る」
「あぅ……そう言ういろは先輩はこれからどうするの? 四国に新しい能力者組織を作るんだっていうのは聞いたけど」
「まずはそれからかな。来年には活動できるようにしたいね」
「おっ、順調に進んでるんだ」
「うん、銀誓館と天輪宗、他にも色々協力してもらって何とか、ね」
「軌道に乗るといいな」
「ありがとう。私は私なりに頑張るよ」
新しい能力者組織の活動と、大学生の二足のわらじが、いろはの選んだ道だ。
「まあ、銀誓館の環境をそのまま向こうに持っていくようなものかな」
「なるほどね。ところで、新しい組織の名前は何ていうの」
「ああ、『白い翼』という名前にしようかと思っているんだけど」
「……どう思う大ちゃん?」
「まあ、いいんじゃないのか?」
「そうかな、ちょっと中二病っぽいよ〜」
「……ち、中二病」
いろはが、どよーんとした。
「あっ、うそうそ。いい名前だと思うんだよ。何ていうかいろは先輩っぽいよね」
ちなみに、いろはとしては『平和』と『新しい未来へ向かうため』という意味合いを含ませたらしい。
「とはいえ、これで共同生活も終わりだな」
少し湿っぽく、大五郎が言う。
「いろは先輩は四国へ。ボクも来年には銀誓館を卒業して海外へ。大ちゃんは……」
「まあ、運命予報の力が使えるうちは銀誓館の近くに居ないと、な。なに気にするな、能力者になったら今までの分まで世界を回ってみるつもりだ」
「頼むよ、大五郎。一年に一回は必ず帰ってくるから同窓会みたいなのでも開こう」
「それ大賛成っ!」
「ああ、そうしよう」
こうして、三人はそれぞれの道を歩き始めた。
それはきっとキミも同じだろう。
出会いと別れを繰り返しながら人は自分の未来を切り拓いていく。
さあ、キミはどんな未来を描くのだろう。
一年、二年、三年……十二年後はどんな未来を作っているだろうか。
望んだ未来へと繋がっているだろうか。
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参加者
彩峰・悠衣
(惡乃華・b00005)
穂乃村・翠
(常磐の符術士・b01094)
十六夜・瞳
(宵闇狂謳・b02156)
総六・逸
(葉片風・b02316)
秋風・なつき
(雲の絶え間より漏れ出づる月・b03469)
平良・虎信
(荒野走駆・b15409)
小早川・奈々
(シトラスアナイアレイト・b16673)
大木・夏美
(ロードオブレディ・b20748)
霜月・秋野
(時の迷子・b21044)
中川・始
(オルタナティブ・b22310)
ティセ・パルミエ
(猫ふんじゃった・b34291)
儀水・芽亜
(夢何有郷・b36191)
小鳥遊・祐理
(結雪花・b36865)
籐村・御美子
(おばあちゃんのぽたぽた焼き・b41315)
石動・佳太
(グリムリーパー・b43090)
真和・茂理
(一閃華烈な蹴撃乙女・b44612)
竜宮寺・武
(闇を纏いし守護の剣・b44628)
シルビア・ブギ
(カオスの素・b45276)
草壁・那由他
(闇と光の魔弾術士・b46072)
真月・マサト
(中学生月のエアライダー・b47415)
南雲・レイジ
(烈火の剣侠児・b47935)
レイラ・ミツルギ
(魔剣士・b48060)
桐原・真夏
(太陽のリズムで踊ろう・b50014)
安心院・ヒナタ
(金曜日に降る雨・b51011)
柊・草楼
(ロックンロールハイブレード・b51831)
神楽・真冬
(舞い散る粉雪・b51839)
時守・癒太
(夢幻世界投影者・b52874)
緋薙・悠
(緋月・b52942)
無髪・萌芽
(路傍の草・b53356)
栢沼・さとる
(流星の馭者・b53827)
穂村・煉司
(紅蓮旋刃・b57176)
ストレリチア・スティレット
(銀花玉狼・b59811)
香坂・弓弦
(流れ星の矢・b61057)
愛良・向日葵
(元気二百パーセント・b62143)
鈴鹿・小春
(万彩の剣・b62229)
沢北・夜水
(沢北家の魔女・b62531)
鈴木・風子
(高校生真月のエアライダー・b64185)
一之宮・凪流
(啼カナイ鳥・b65966)
鳴子・九郎
(未来を紡ぐ・b70826)
レオナ・ダオレン
(ひかり守り・b71278)
大道寺・雅
(チロンノプカムイ・b73795)
織兎・ラジェリ
(深遠より来たる・b74133)
若生・新
(アウェイクニング・b76132)
佐藤・陽子
(高校生太陽のエアライダー・b77231)
灯崎・衛姫
(準軍事蜘蛛・b79915)
アリティア・セレスティーニ
(欠けたる氷鏡・b82562)
玖成・ヒスイ
(アーケイディアの笛吹き・b83912)
セジリオラ・アースティリ
(満ちたる炎鏡・b84288)
鳴子・十三
(生粋の戦士・b84724)
NPC:
百地・いろは
(呪言士・bn0209)
<リプレイ>
●2013・卒業式
今年もまた銀誓館学園を多くの学生たちが卒業していく。
灯崎・衛姫(準軍事蜘蛛・b79915)もそのひとりだ。
学生でいられるのもこれで最後と一念発起し、学生服を着て式に臨んでみようとしたものの……。
「わ〜、この制服まるで新品みたい……着た記憶が無いような」
うん、やっぱり記憶に無い。
それでも感じるものがあるのはこれで卒業してしまうからだろうか。
(「この学校とも離れることになるのか……」)
思えば、長いようで短いものであった。
これからは父の後を追って、海外で軍事関係の仕事につく。出来れば、学園組織と軍事機関のパイプ役を果たせればとも思っている。いや、必ず成し遂げてみせよう。
そう感慨にふけっていると名が呼ばれた。
「――灯崎衛姫!」
「はい!」
壇上に上がれば、にこやかな笑顔を浮かべる校長先生がいて、
「卒業おめでとう」
「有難うございます!」
卒業証書を受け取り、しっかりと敬礼する。
胸に過ぎった思いはそのひと言にすべてが詰まっていた。
式も終わり、在校生に見送られて卒業生たちは校舎の外へと歩いていく。
まだ卒業生同士や下級生たちと語り合う者、これからどこかに出かけようとする者、はたまた恩師の元へ向かう者など、いかにも卒業式らしい光景が広がっていた。
「幼女口調も終わり、大学も無事合格、もうなにも恐くな……ってあ、家族だ。ちょっと行ってくるね!」
「じゃあまたあとでにゃー?」
無髪・萌芽(路傍の草・b53356)が仲間の輪から外れて見つけた家族の下へ向かった。
それに気付いた両親も笑顔で迎えてくれたのだが、
「今日は萌芽に知らせなければならないことがある」
途端に、両親は何やら深刻な顔つきへと変わる。
予想していたのとはまったく違う反応に、萌芽は戸惑いを覚えた。そして、それは続けられた話によって更に大きくなっていく……。
「え、ええと、本来は陸神っていう姓で……」
「そうだ」
「能力者組織の当主としての役目に就く必要があって……」
「そうだ」
「進学はキャンセルされていて……」
「ああ、というわけで今すぐ帰るぞ」
「……ってちょっと待ってよ! 伝説の木の下でとか第二ボタン的なイベントがまだ……」
「「………」」
「……泣きたくなるから『お前になんの関係が?』みたいな目で見るのはやめて!」
遠のいていく声。
つまるところ連行されている。
それを見ていた友人たちは、
「無髪はご家族に呼ばれてしまったか、仕方ないな」
「なら、三人で行くか」
一之宮・凪流(啼カナイ鳥・b65966)と、若生・新(アウェイクニング・b76132)はそう結論づけた。
「式も終わって一段落したしご飯やね!」
玖成・ヒスイ(アーケイディアの笛吹き・b83912)もそれに同意。
かくして、悲劇に遭った萌芽を放置して三人は近くの飲食店へと向かう。
通い慣れた道。
自然と話に出るのは思い出話になっていく。話題は次から次へと移り変わり、楽しかったことや、面白かったこと、はたまた笑い話など、話題は尽きることがない。
「……結局リア充になれず終わったなァ」
そして、その最中に新がふとつぶやきを漏らせば、
「はは、就職戦争であぶれたら俺がお前達を嫁にもらってやろうか?」
「しゃーないなぁ、あらたんが結婚できへんかったらウチがお嫁さんになったげるわ」
凪流と、ヒスイがほぼ同時に反応した。
「ハハ、センパイもヒスイも頼もしー。幸せにしてな」
苦笑をする、新。
果たしてあとどれくらい、こんな軽口を叩けるだろうか。
気の置けない仲間たち。
ずっとこうしていたいと思いながらも彼らもそれぞれの道を歩き出そうとしていた……たぶん。
銀誓館学園の校内では今なお別れを惜しむ人たちや、祝いに駆けつけた人たちの姿があった。
栢沼・さとる(流星の馭者・b53827)の隣に居るのは後者であり、また最愛の人である。
「お忙しい中、柊先輩がお祝いに来て下さって本当に嬉しいです」
「なに、ハニーが居るならどこへだって駆けつけるさ」
手にした花束を前に出して、柊・草楼(ロックンロールハイブレード・b51831)が言葉を続ける。
「おつかれ、これからもよろしく」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
「往く道に幸多いことを心から祈っているぞ。神様は信用していないから、えーっと……狐とか悪路王辺りに祈るべきかな……」
「えっ……どうでしょう?」
いや、そんなことを言われても返答に困る。
「それよりも両親がちょうど来ているので、どうでしょう? 先輩のこと、私の両親に紹介しちゃっても良いですか?」
「そうか、では挨拶しとかないとな」
こうして、草楼はさとるの両親と顔を合わせることになるのだが……色々と問題があった。
「今日から僕のことはマイ サン とお呼びください」
草楼の言葉に、さとるの両親が固まってしまった。
まあ自然な反応である。激怒したりしなかったのが、せめてもの救いであろう。
さとるのが必死にその場を執り成して……何とかリカバリーできたと、思いたい、本当に。
「じゃあ、あまり遅くならないように」
「はい、わかってます」
両親を見送って、さとるは草楼を真っ直ぐに見る。
「ところで私、大学進学はしないことにしました」
草楼に驚きはない。
「文字通り事情が変わったというか、世界情勢そのものが変わったから。可能なら今から、これまでに培ってきた能力者としての力をこれからの世界のために使っていきたいと思って」
「ハニーがやりたいようにやればいい。いつだって応援してるぞ」
「はい、そう言ってくれると思ってました」
二人は笑顔を交わす。
今は違う道でも、それぞれの進んだ道がいつかひとつに繋がっていると信じているから。
歩いていると花束を持った学生たちの姿が見えた。
「もう、こんな時期なんですね……」
穂乃村・翠(常磐の符術士・b01094)の目に卒業生たちのまばゆい笑顔が映る。
かつての自分もあんな感じだったのだろうか。
「ほんとですねっ」
同じように、小早川・奈々(シトラスアナイアレイト・b16673)も目で追いかけるが、その後ろに見えた銀誓館学園の校舎を見て、別のことを思い浮かべる。
銀の風を纏った少女のこと、を。
「あっ、いろはさん。おひさしぶり、ですっ」
物思いから呼び戻したのは、翠の親しみのこもった声だ。
「久しぶりだね。元気にしてた?」
「はい、いろはさんもお変りがなさそうで」
話しかけた相手は、百地・いろは(呪言士・bn0209)であった。
彼女は初瀬部・ひなた(陽だまり仔猫・bn0153)の卒業式への出席と、四国に新設した新しい能力者組織のことで、学園と話を進めるために銀誓館学園を訪れていたのだという。
詳しく聞けば、まだまだ組織としても、能力者としても未熟で多忙な日々を送っているのだとか。
「よろしければ、参加させていただけますか……?」
「翠が手を貸してくれるなら心強いけど……そんなに簡単に決めていいのかい?」
「はいっ、ちょうど大学を卒業してからの進路を考えていたところでした」
翠と、いろはの遣り取りを見て、奈々もまた決意を固める。
(「うん、いい機会かもしれない」)
決心すれば、後は自然と言葉が口からこぼれ出していく。
「わたしも翠ちゃんといっしょに行きます。その新しい組織に興味が出てきました」
卒業が新たな門出であるように、翠と、奈々の二人もここから新しい道を歩き始めようとしていた。
「二人ともよろしくね」
「「よろしくお願いします」」
中学生の卒業式は銀誓館学園が小中高一貫ということもあって、儀礼的な面持ちが強い。
それでもひとつの節目と出席する保護者の数はかなりのものだ。
式典を終えた、大木・夏美(ロードオブレディ・b20748)も両親とこれからどこに行こうかと話をしていたのだが……どうにも雲行きが怪しい。
「お父さん! なんでいきなり買っちゃったの」
「……いや、いい卒業祝いになると思って」
発端は父親が夏美の卒業祝いにと買ったお店だ。
おもちゃの類ではなく、本当に商売ができるもの。
なんとも豪気は話ではあるが、母親の方は夏美にはきちんと大学まで行かせるつもりであった。
「あまりにも早すぎるでしょう!?」
言葉にはしていないが、何より相談も無しに決めたことが許せないようだ。
もうヒートアップして当分終わりそうにもない……。
「――夏美ちゃん」
後ろから声がしたと思えば、そのまま抱きつかれた。
振り返るまでもなく、秋風・なつき(雲の絶え間より漏れ出づる月・b03469)であることが声や雰囲気、仕草で分かる。
「なつき先輩」
「中学校ご卒業、そして高校ご入学おめでとう夏美ちゃんっ!」
「ありがとうございます」
「1年だけれど、一緒に高校通えるわね」
「はい、なつき先輩♪」
掛けられた言葉が嬉しくて抱擁が解かれると、夏美からも抱き返した。
「ところで、ご両親は何だか大変そうね」
「……はい、みっともないところをお見せしています」
そっと様子をうかがってみるが、こちらに気付いてもいない。
「当分終わりそうにもないみたいだし、二人で遊びに行きましょう!」
「はい♪」
もう二度とやってこないかけがえのない時間。
この時間を大切にしていこう。
なつきは夏美の手を握って、そう思うのであった。
そんな喧騒の中に、儀水・芽亜(夢何有郷・b36191)の姿もあった。
「銀誓館はエスカレーター式ですから、中学卒業には余り感慨が湧きませんわね。これが高校なら違うのでしょうか?」
今度兄姉に聞いてみようと、芽亜は辺りを見渡す。
「周りもやっぱり落ち着きがないですわね。どうせまた高等部で一緒になるのですから、真剣になれないのも無理ないこと」
それでも、けじめとしてこういうものが必要なのだろう。
新たに始まる高校生活。
かくいう、芽亜もまた新たなスタートに心が弾んでいる。
それに、
「さて、明日からは春休み。宿題もありませんし、ぱーっと遊びますわよ!」
少しだけ春休みが長いのもありがたいことだ。
遠慮は無用。
しっかりと遊び倒すことにしよとう、芽亜はこれからのスケジュールに思いを馳せた。
●2013・日常
元旦を迎えた。
石動・佳太(グリムリーパー・b43090)が囲む食卓には、外泊許可が出た母(病気療養中)と、学生時代からの付き合いである恋人の二人が揃っている。
(「またこんな風に一緒に食卓を囲めるとはな」)
植物状態であった母であるが、もう完全に持ち直していた。
こんなにもよくなるなんて、まるで嘘のようだ。
でも、佳太の目の前で恋人と話し、コロコロと笑っている。
(「もう、苦労はさせないようにしないと」)
これからは看護の勉強を頑張って2年後には看護師になろうと、佳太は考えている。
まあ、世界結界がなくなって人類がみんな能力者になってしまったら医療の仕事はどうなってしまうのかは分からない。だが、必要でなくなることはないだろう。
「えっ、そうなんですか?」
「そうなのよ、今治城でねぇ」
佳太が考えごとをしている間も二人の会話は進んでいたらしい。
一体何の話だろう?
「なら、初詣は今治城にしましょうか」
「いいわねえ」
どうにも話の流れから察するに、初詣を兼ねて今治城に行くことになったらしいが……、
(「子供の頃に1回行ったことがあるって言っているが……やばい覚えてない」)
あるといえば、例のアレで土蜘蛛と戦った記憶しかない。
懐かしそうに昔の話をする母親、その横で内心焦ってる佳太を見て、恋人は小さく笑っている。
「佳太のこともっと聞きたいです」
「そうね、どうしようかしら」
二人に見つめられて、佳太の焦りは大きくなる。
(「さすがに今治戦の話するわけにも行かないしな。……でも、恋人と母さんが仲良く話してるし、ガキ時代の失敗談くらいなら」)
いや、むしろ慌てている佳太を肴に二人が意気投合しているのだが……今の彼にはそれを知る由もなかった。
卒業式から数日後。
ひなたは慌ただしく海外へと旅立っていった。
それを見送った、南雲・レイジ(烈火の剣侠児・b47935)と、山田・大五郎(運命予報士・bn0205)の二人は大五郎の飼い猫であるアンについて盛り上がりながら帰路につく。
帰る先は、ひなた、大五郎、いろはの三人が共同生活を送っていた家だ。
「いろはももう居ないし、来ても大したものはないぞ」
「いや、ひなたのおっちゃんに一度は会ってみたくてな」
そう住人はもうひとり――ひなたのおっちゃんがいた。
で、帰った二人をその人物が温かく出迎える。
「ひなたは元気に行ったかい?」
「ええ、いつも通りでしたよ」
「そうか……」
それから、三人でひなたの思い出話に花が咲いた。
話題というか……問題ごとをよく起こす奴だっただけに、この手の話には事を欠かない。
「いろいろあったね……」
おっちゃんのそのひと言に、
「ありがとう」
レイジの口からこぼれたのは何故か感謝の言葉であった。
「確か初対面だったと思うが?」
「あなたとは初めて会ったけど何年もお世話になった気がするから、だからですよ」
「おかしなことを言うね」
「そうですね」
思わず、互いに苦笑が浮かぶ。
と、そこにドタドタと廊下を走る音が聞こえてきた。
話をしていた三人は誰だろうと疑問を浮かべ、
「忘れ物しちゃったんだよ!」
駆け込んできた、ひなたについつい吹き出した。
「笑いごとじゃないんだよ!」
「いや、すまん。あまりにもアレだったでな」
「というか、忘れ物をしたお前が悪い!」
「……あぅ」
ところ変わって四国。
高松空港へと降り立った、いろはを、神楽・真冬(舞い散る粉雪・b51839)が出迎えた。
「いろはちゃん水臭いですねぇ」
「えっ、何で真冬が?」
「能力者組織を作るのに声をかけてくれないなんて……私では力が足りませんか?」
「いや、そんなことは無いだけど……いいのかい?」
「でなければ、ここまで来ませんよ」
笑顔で答える、真冬。
「それに、いろはちゃんは真面目ですからサポートする人が居ないと頑張りすぎてしまいますからね。お節介かもしれませんが協力させてもらいますよ♪」
「ありがとう、とても助かるよ」
二人の手がしっかりと合わさる。
(「いろはちゃんがいろはちゃんらしく居られる様に、貴女が選んだ道を迷い無く進める様に」)
微力ながらお手伝いしますね、と真冬は握り合った手から伝わる温かさに誓う。
こうして、いろはが設立した新たなる能力者組織『白い翼』はその理念に賛同した能力者に支えられて徐々に活動を広げていく。
その傍らには、真冬の姿があり、
「貴女は人を笑顔に出来る人、だから自分の信じた道を進んで下さい」
いろはが迷うと必ず励ましていたといわれている。
同様にいろはの精神的な支えとなった者に、レイラ・ミツルギ(魔剣士・b48060)も欠かせない。
最も親しい友人として多忙な彼女の支えとなっていた。
「ふぅ……疲れたね」
「組織をひとつ作るのってこんなにも大変なんですね」
二人とも大学での学業もあり、その多忙さは過労で倒れそうなレベルである。
そんな中でも僅か空き時間を見つけては、穏やかな時間を過ごしていた。
最近はお茶を飲むだけの僅かなものとはいえ、何気ない日常の一幕が確かな活力を生んでいる。
レイラはそんな友人に心の中で語りかける。
(「かつて貴女は望んだものではない重荷を背負う事になりましたね、でも今度は貴女自身が望んで背負ったんですよね」)
目の前にいる苦労人は疲れてはいるが、決して悔いてはいない。
(「だからいつか言ったように私は背負えないから手を伸ばして掴みますからね……いろは」)
今そうしているように。
これからも、レイラは手を伸ばすだろう――。
卒業による生活の変化が、彩峰・悠衣(惡乃華・b00005)にも訪れていた。
目標であった教師になることが既に決まり、今はその準備の真っ最中だ。
(「あと、必要なのは……」)
リストアップしたものを確認しながら収納箱の中を確認する。
中には学園生活で得た思い出の品々が――、
(「これまで色々あったけど……凄く楽しかった。これからこんな想いを、私も子供たちに教えてあげることが出来るかな……頑張らなきゃ」)
これから赴任する小学校の生徒たちにも同じように楽しい思い出を。
(「そして、いつかは銀誓館で教鞭をとれたら……」)
夢を胸に、彼女の新しい生活が始まろうとしていた。
春の息吹が見えるようになった頃。
大学で三年目を迎えた、総六・逸(葉片風・b02316)は、愛良・向日葵(元気二百パーセント・b62143)がアルバイトをしている喫茶店を訪れていた。
彼女から連絡を受けて来たものの……どうにも様子がおかしい。
顔を合わせても、いつもとはちょっと違う。
「………」
凄く一生懸命に、こちらへ何かを伝えたそうな……そんな向日葵に少し不思議な感じを受けながらも間をきらさないように、逸は話題を提供していく。
この前会った人のことや、ゼミの話とか。
自分のことを話ながらも興味は、ちょっとおかしな向日葵の様子に向いている。
短大を卒業した後に自分のお店持つため、アルバイトに精を出していたはずなのだが……一体どうしてしまったのだろう?
「あのね……どーしても伝えたい事があったの」
話をしていると、向日葵が意を決したように口を開いた。
自ずと、逸も黙って次の言葉を待つ。
沈黙。
言葉を選んでいるのだろうか?
向日葵の口からは次の言葉が出ない。代わりに頬が少し紅潮しているように見える。
「……それはね、大好きです!」
出てきた言葉を直ぐに咀嚼できず、逸は目の前にある紅茶へと手を伸ばす。
口元に含んで返すべき言葉を探す。
だが、上手くまとまらない。
向日葵の顔をじっと見つめて、浮かんでくる思いを紡ぎ出す。
「告白は本当に嬉しいと思ってる……ありがとう」
まずは感謝を伝え、そして自らの進路を伝える。
「卒業したら地元が心配だからもどるけど、chaserや、anandaの仲間、銀誓館で出会った友人と、ずっと繋がり続けていきたい――」
ティーソムリエとの交流は今後も続けて行きたいことなど、話していることは少し取り留めがない。
でも、向日葵はポツポツと語られる逸の話を真剣に聞いてくれている。
「俺はこういう道を歩いていこうと思ってる。愛良の夢をもう一度聞かせてくれないか?」
「わかったよ」
二人の未来を繋ぎ合わせるように。
描くものは言葉になって。
逸はその語らいの中、クルクルと明るい表情で夢を語る、向日葵をじっと見つめる。
仲間の事を思って、怒ったり、笑ったり……泣いたり。
そんな表情が可愛い、と思う。
とても大切で。
だから、その笑顔が曇らないように。
大切にしたい、とそう思える。
「全部、解ったよ」
答えが出たのは、向日葵が先。
今ははっきりと言葉にならなくても、きっと未来は交わっている。
そう思えたから。
「ゆっくり考えていこうねっ。逸ちゃんの話した事、全部受け止めるよ」
だから、逸にも求める。
「あたしのも、受け止めてくれるかな? で、荷物をはんぶんこしよ♪ えへへ」
いつものように明るい笑顔が、向日葵に浮かぶ。
焦らなくても大丈夫。
二人はきっと離れたりしない。
逸も確かにそれを感じる。
「あのね、聞いて、ふたりで、みんなで良かったねって時間たっくさーん作ってこ! 少しずつ、前に進んでいこ♪」
だから、向日葵が言うように進んでいこう。
これからが、輝くように。
ゆっくり、ゆっくりと、この先を刻んでいこう。
少しずつ、分け合って。この先も、歩いていこう。
「ありがとう」
逸の口から感謝がこぼれる。
向日葵の顔には満面の笑みが浮かんでいた。
銀誓館学園の在校生たちもまた日々の生活を送っている。
(「高校に進学してから、急に勉強が難しくなりましたの」)
問題集を前に、芽亜は心の中でぼやく。
現代の政治経済であったならば、いくらでも講義できるというのに……学生は覚えることが多過ぎる。
(「数学は先輩が得意でしたわね。機会を見て教えていただきましょうか」)
浮かんだアイデアに満足しつつ、芽亜は携帯を取り出す。
こうして迎えた期末試験は理数系が低空飛行であったものの、無事に赤点を回避できた。
というわけで晴れて、自由の身。
「今日くらいは自分にご褒美をあげましょう」
つぶやいて空を見れば、もう夏の雲が浮かんでいる。
「もうすぐ夏休みですわねー。その前に学園祭。今年の水着はどうしましょう? なじみのお店が閉店してしまいましたし」
まだ、あと三年。
彼女の学園生活はこれからだ。
同じように、鈴鹿・小春(万彩の剣・b62229)も勉強に勤しんでいた。
法学部を受験しようと思っているだけに今からしっかりと準備しなければ間に合わない。
なので、今日も学園の図書館でせっせと励んでいるわけだが、
「おや……ひなたセンパイ?」
視線が窓の外に逸れたところで、ひなたの姿が見えた。
確か海外に行っていると聞いたのだが……?
(「卒業したのによく学園で見かけるけど、バステトから何か変な技術を学んだのかな?」)
予想を立ててみるが、奇想天外なことばかり起こすだけにもっと凄い秘密がありそうな気もする。
(「また何か素敵なイベント起こしてくれるのかなー」)
そして、淡い期待も混じった。
「ちょっと聞きに行ってみよー」
学生の本分は勉強。
銀誓館学園の能力者であるならば、それにゴースト退治も入ってくる。
身近な人たちを守りつつ、ティセ・パルミエ(猫ふんじゃった・b34291)は今日も学園生活を送っていた。
「とはいえ、先立つものも必要なのです」
開いた通帳はかなり厳しい数字を示している。
それで、彼女は猫喫茶でアルバイトを始めたわけだが……猫っぽいというか、魔弾というか……まあピッタリな職場であったのは間違いない。
「楽ちんぷいなのです、ごろごろにゃ〜ん」
背を伸ばして今日も彼女のアルバイトが始まる。
「いらっしゃいませにゃ〜ん」
鎌倉の山中に、鳴子・九郎(未来を紡ぐ・b70826)は庵を構えていた。
去年の夏から、レオナ・ダオレン(ひかり守り・b71278)と、鳴子・十三(生粋の戦士・b84724)の三人で暮らしている。
一年ほど暮らして、ここでの生活にだいぶ慣れたとはいえ、自然の力はやはり大きい。
特に冬の寒さが酷いときには身に堪えるわけで……。
「昨日は酷く冷えたな……」
囲炉裏の火を絶やしていないとはいえ、九郎は寒さのせいでいささか睡眠不足だ。
見れば朝食を食べている、レオナと、十三も眠そうな仕草をしている。
「九郎さん、良ければ一緒に寝ませんか。寒いし、眠くて……」
レオナの提案に今日の仕事を考えてみるが――畑の手入れは朝食前に済ませた。
頭の中で目算を立て、今日ぐらいは休んでも大丈夫だろうと結論づける。
「いいだろう。今日はゆっくりと休もう」
それを聞くと、十三は重くなった目蓋に耐えながら自分の布団に戻っていく。
ゴロ寝して目を瞑れば、九郎も微睡の中に。
(「去年までは、穏やかに眠れる事など無かったのだがな……」)
意識がゆっくりと落ちていく。
穏やかに寝息を立てたのを見て、レオナはケルベロスオメガのヨルを手招きする。
意を介したのか、ヨルがそっと九郎の傍にやってきて丸くなった。
これで少しは暖かくなっただろう。
「……あら」
いつの間にか九郎の手が、レオナをぎゅっと抱きしめている。
少し驚いたものの、微笑を浮かべてレオナも応えるように手を回す。
すると後ろに気配が。
「……布団を持ってきて、私も一緒に寝ても良い?」
話しかけてきたのは、十三。
眠そうに眼をこすり、今にも寝落ちしてしまいそうだ。
「いいよ、おいで」
手招きされて嬉しそうに、十三が潜り込む。
「やっぱり、一緒に寝た方が暖かいです」
「良かったね」
冬の寒い一日もそう捨てたものではない。
何より、ここはとても温かい場所だ。
●2013・同窓会
霜月・秋野(時の迷子・b21044)が店に入ると既に多くの仲間たちが集まっていた。
しかし、本当に会いたかった人たちには連絡がついていない。
中でも思いを交わした相手には……。
「また、逢えなかったわね」
寂しくはあった。
だが、それでもどこかで元気にしているのだと信じている。きっと、世界のどこかで活躍している、と。
「待つ女なんて、趣味じゃないのよ」
いつか再会する人たち、もう逢えない人たち、そして大切な人へ。
元気で、と心の中で祈る。
「霜月さん、こっち」
「お久しぶりね」
呼ばれて人の輪に入ると、秋野は先ほどまで浮かんでいたものを振り払っていた。
●2014・卒業式
卒業式がつつがなく終わった。
体育館を出ると、見知った顔がそこにはあり、
「あ、百地先輩」
「卒業おめでとう、ヒナタ」
安心院・ヒナタ(金曜日に降る雨・b51011)が声をかけると、いろはは笑顔を浮かべ祝辞を送る。
「今日はスーツなんだね。よく似合ってるよ」
「はは。普段の慶事は和装なのでスーツなんて初めて着ました」
「どうだった、銀誓館の学園生活は?」
「中学、高校と激動の日々でしたから……この一年くらいじゃないでしょうか。穏やかだったのは」
「だろうね、二年前は酷い有様だったから」
「そうですね」
二人して思い返すと、ついつい顔に笑みが浮かぶ。
懐かしき、激動の日々。
「ところで、ヒナタはこれからどんな進路を?」
「これから、ですか? まずは大学で4年間を。その間、世界の事を勉強します」
きちんと進むべき道が決まっているようで返答に迷いはない。
「その後、九州に帰るつもりです。銀誓館の分校を造りに。あ、その時は手伝って下さいね」
「もちろん、心強い限りだよ。しっかりね」
「はい、よろしくお願いします」
「長いようで、短い学園生活じゃったのう」
セジリオラ・アースティリ(満ちたる炎鏡・b84288)が銀誓館学園の校舎を仰ぎ見た。
嵐の王として目覚めたのが高校一年生の時。
(「それから洒落にならん事態が、立て続けに起こっておったの」)
思い起こせば、本当にいろんなことがあった。
(「だからなのじゃろうが思った以上に、学園生活を満喫する、ということをしておらぬ気がするんじゃ」)
少しだけそれが名残惜しい。
しかし、それよりも彼の胸を占めているのは、
(「やっぱり、寂しいのう。会えぬわけではないが、会い辛くなるのじゃから」)
まだ、銀誓館に通う思い人のことである。
思いが通じているとはいえ、距離はやはり確かな壁なのであった。
●2014・日常
セジリオラは卒業後に直ぐ海外の大学へと進学する。
世界を巡って守りたいから、それの準備も兼ねているため、絶対に海外には行かなくてはならない。
……しかし、いざ引っ越しの準備を進めていると決意が揺るぎそうになる。
ふて腐れながら、こちらを見つめるアリティア・セレスティーニ(欠けたる氷鏡・b82562)の視線に。
(「妾が眠りにつく前は、うっとうしいほど、それこそ戦地で会う度に求婚してきたくせに、何じゃ」)
もう、アリティアの胸はもやもやして仕方がない。
しかし、この感情に答が出ない。
結局のところ答えを出せぬままに、旅立ちの日がやってきた。
「拙者は、必ず帰ってくるからの!」
「帰ってこんかったら、承知せぬぞ!」
二人は互いに秘めた感情を表に出せぬまま、一旦の別れを迎える。
離れていく二人の距離……。
(「求婚は諦めたわけではない。今は成長を待たねば」)
恨めしそうな目で見るアリティアに、セジリオラは心の中で答える。
(「一目惚れを忘れるはずが無かろうて」)
今はこれで通じていると思いたい。
対して、アリティアは未だにもやもやした感情に答えを出せないでいた。
(「今度会うときまでに、答えを見つけられればよいのじゃが」)
すれ違った二人はこれからそれぞれの道を歩み始める。
いつか交わるのだと、強く信じながら。
秋野は自宅のアトリエで銀細工を作りながら、銀誓館学園の美術教師を務めていた。
だが、その授業風景は独特のものである。
「美術は、人生に『役立つ』ものじゃないわ。だから、さぼりたければ偽身符でも使えば良い」
そう言ってヤスリで磨いた銀の髪飾りに息を吹きかけ、削りカスを飛ばす。
「けれど、美しいものを美しいと感じる。胸を張って美しいと言える。まだそこまでの自信がないなら、授業を受けておきなさい」
教えるのは彼女の柄ではない。
だから彼女自身の姿勢を見せる。
そして、そんな彼女の授業は思いのほか好評であった。
●2015年・日常
卒業式を終えた、籐村・御美子(おばあちゃんのぽたぽた焼き・b41315)の足は人気のない河川敷に向かっていた。そこで待ち合わせをしているのである。
もうひとつの卒業式。
いつか超えなければいけないものを超えるために。
そう、河川敷で待っていたのは彼女の師匠――平良・虎信(荒野走駆・b15409)。
「師匠、本気で戦って欲しいのじゃよ、儂の全てを受け止めて欲しいのじゃ!」
「面白い、本気でやれと言うのならば応えてやろう!」
二人は言葉と共にイグニッション。
双方ともに手加減などするつもりはない。
これは真剣勝負。互いに全力を尽くすのみ!
虎信が初手に虎紋覚醒。
やはり手加減など一切無し。全力で叩き潰すという意気込みがありありと伝わってくる。
(「パワーと技量は流石に師匠が上じゃが、回復と粘り強さはこちらにある」)
ならば当然、長期戦を狙うべきだが……、
(「じゃが、短期決戦に持ち込むのじゃ!」)
自ら踏み込んで、御美子は龍顎拳を放つ。
意表を突いたと思われた一撃は思わぬ反撃を受けた。
「んぐ!? 初手で腕がいった……じゃと!?」
読まれていたのか、それとも反応したのか。
分かったのは攻勢防御によって、御美子が逆にやられたということだ。
「どうした、拳を構えんかッ! お前の渾身の力を俺様に叩き込んでみせい!」
怯んだのを見て取り、虎信が咆哮のように言い放つ。
(「師匠は本気じゃ、本気で戦ってくれておる。いつもの修行の手習いではない、肌にピリピリと感じるのじゃ……このままじゃと、死ぬ」)
それほどまでに今の虎信からは殺気を感じる。
死中に活を求めるほどでなければ、何も出来ずに終わる。
それは、それだけは、
「うぁああぁぁぁぁ!!」
叫び、御美子は跳躍。
回転を加え、無心で蹴りを放っていく――息の続く限り、ただ攻め続ける。
「……ッ、ぐ!」
初めのうちはさばけていた。だが、執拗な攻撃に虎信も次第に守りが厳しくなっている。
そこに、更に鋭い一撃が!
「……うむ、良い一撃だ! もう俺様を師と呼ぶ必要はなさそうだな!」
蹴り抜かれた姿勢のまま、虎信が語りかけるが、もう御美子の耳には届いていない。
全力で力を振るった代償か。
彼女は気を失いかけている。
「その身でしっかり歩んで行けよ、御美子!」
ただ、虎信が初めて自分の名を呼んでくれたことを薄らと覚えているのみであった。
季節は巡り、春。
さとるは銀誓館所属の能力者としての立場のまま、オーストリアのウィーンのマヨイガ結社『六芒会』を拠点に魔弾術士として世界各地のゴースト事件の解決に回っていた。
「――そこっ!」
撃ち込んだ魔弾が爆ぜ、妖獣を霧散させる。
「ふぅ……これで報告にあったゴーストは退治できたでしょう」
ロッドをしまい、傍らの相棒に労りの言葉を。
「お疲れ様」
すると、ケットシー・ガンナーは帽子を取って丁寧に礼を返した。
「もう少し、後進が育ってくれると助かるんですけどね」
そうは言っても、どこもこの手のことには困っている。
まだまだ、さとるの手が必要なようだ。
「それにしても柊先輩、今頃どこで何をしてらっしゃるのかな」
連絡を取ろうとしているのだが、一体どこにいるのやら。
春らしい温かい場所に居るのだろうか……?
そんな予想とは裏腹に、草楼は地球の最北端たる北極にいた。
もう季節など関係ない。
あるのは極寒の寒さと、どこまでも続く氷の大地、そしてシロクマが目の前にいた!
「俺の歌を聴くが良い!」
何を隠そう、草楼が来たのはシロクマを見るため。
「脈絡がないかもしれないが……俺はシロクマちゃんが、大好きなのでね……」
ニヒルなつぶやきはシロクマの咆哮によって掻き消えた。
どうやら演奏を威嚇と取ったらしい。
「くっ、俺の演奏が通じないとは……!」
そりゃ、シロクマですから。
「というわけで逃走!」
でも、後からついてくる〜♪
「いや、というか猛追してくるぞ?!」
これは……逃げきれない!
「ああ……ハニーったら今頃なにしてるかしら」
思わず現実逃避。
奇しくも同じことを考えていたなんて、知る由もなく……。
「ぎゃあああああああ!」
「文献漁りでもダメか」
ぼやきながら、鈴木・風子(高校生真月のエアライダー・b64185)は手にした本を捨て置いた。
次の宇宙へ行く方法を探して既にいろいろなものを調べきた。
修学旅行で手にした数々のメガリス、更には未発見のメガリスの調査。
そして、世界各地の文献など。
「見つからねえな」
だが、黙っていった恋人を追いかけるためにも諦めるわけにはいかない。
次の宇宙へ行って、一発でも『黙って行ったこと』に対して殴ってやらないと気がすまないのだ。
それに……、
「……寂しい………なんて言えるか! あークソ!」
様々な思いを胸に今日も、風子は探し続ける。
「書庫が残ってりゃぁなぁ、簡単に聞けんのによ」
ぼやきもついついこぼれる。
でも、向こうでも待っていてくれていると思うからこそ――。
「どうせ、一人じゃなんにもできないでございましょうから風子さんの手伝いに来ましたわ! オーホッホッホッホ」
「お前……」
ここで入ってきたのは悪友、佐藤・陽子(高校生太陽のエアライダー・b77231)。
ひとりでは限界を感じていただけに涙さえ出そうになる。
でも、口から出たのは別の言葉だ。
「ふっふん! お前の手を借りずとも大丈夫さ! どっどうしてもというなら手伝わせてやるよ」
「相変わらず素直ではありませんね。だからツンデレと言われますのよ」
「……ツンデレ言うなー! というか、お前に言われたくない!」
途端に賑やかになって、
「ディアボロスランサーから戻ってきた人が出てきた穴とか歪とかございませんこと? 帰ってきた人から位置や場所を聞いたらどうでしょう?」
「ちょうど今からそれをやろうと思ってたんだよ!」
こうして、素直じゃない二人の探索が始まった。
向かうのは、次の宇宙!
どんなことをしてでも辿り着いてみせると二人は誓を新たにするのであった。
目の前の道化師が操るのは、人間サイズになった人形たち。
推理小説仲間であり、探偵騎士のエリーから連絡を受け、なつきと、夏美が駆けつけたときには既にゴーストたちが出現したあとであった。
「説得できそうですか?」
「……此方の話は聴いてくれそうにないわね」
「……残念です」
可能であれば、戦いたくはなかったのだが……、
「悪いけれど、倒す!」
なつきが天の沼琴を奏でれば、人形たちは繰り出された致命電光によって一掃されていく。
かろうじて残った人形にも、夏美の放った隕石が炸裂した。
この間、僅か数十秒。
あの激動の日々から、更に能力者たちも腕を上げていた。
「夏美ちゃん! 久しぶりに大技、行くよっ!」
「わかりました、なつき先輩!」
呼吸を合わせれば、二人の展開した魔方陣が重なり合うように前方に展開。
そこから放たれた二条の蒼の魔弾がひとつになって道化師を撃ち抜く。音を立てて消えていくのを見て、二人はほっと息を吐き出した。
「マヨイガが各地に繋がって便利になってきたけど、忙しくもなったわね」
「でも、お蔭でなつき先輩にも直ぐに会いに行けます」
と、夏美が答えたところで携帯が鳴り始めた。
着信は、いろはから。
メールを見るに、どうやら向こうで大きな事件が起こり始めているらしい。
「何か事件?」
「ええ、四国で何かあったみたいです」
「じゃあ、行こうか」
「はい!」
さて、この頃になると四国に作られた能力者組織『白い翼』も大きくなっていた。
……しかし、それを上回る勢いでゴーストや能力者が起こす事件も増えている。世界結界の消失が近くなった影響であろう。ゆえに、それに対処する者たちは多忙な日々を送っていた。
それを支えているのは白い翼の寮を切り盛りしている、翠と、奈々の二人。
加えて、経験ある能力者として事件の解決にも奔走している。
「終わったようですね」
「お疲れ様です、翠ちゃん」
ちょうど、今もひとつの事件を終えたところで、
「ねえ、奈々ちゃん。せっかくだから高松まで足を延ばしてみませんか?」
翠の手に握られているのは讃岐うどんの名店を紹介したガイドブック。
最近の翠の流行はうどん作りである。時間があれば、うどんを食べ歩いているわけだが、
(「翠ちゃんといっしょにいられるのは、とっても楽しいのですが……」)
さすがに飽きというものがある。
美味しいのは認めるけど、そろそろ別の物にも手を伸ばしたい。
「……では、行きましょうか」
で、苦笑と共にこぼれた返答は、優しく肯定を示すものであった。
秋葉原にはメガ盛りカフェが開店していた。
真和・茂理(一閃華烈な蹴撃乙女・b44612)が喫茶soleでの厨房経験と人脈を生かして、開いたものである。カルトでマニアックなイベントによって着実にファンを増やしているのだとか。
「茂理も頑張ってるみたいだね」
近くまでやってきた、いろはは紹介された雑誌を手にお店の前までやってきた。
「巨大肉まん、巨大稲荷寿司、苺パフェ5倍とチョコバナナクレープ5倍、出るよー」
店内からは馴染みの茂理の声。
どうやら、本当に繁盛しているようだ。
「忙しそうだね……邪魔するのも悪いか」
このまま立ち去ろうとしたいろはの耳に、
「いろはぷりん、出るよー!」
「ちょっと待て!」
「あっ、いろは」
「なんて物を出してるんだ!」
「安心して、これの売り上げはちゃんと白い翼に募金してるから!」
「だからと言って許せるか!」
こんなのもきっと賑やかな風物詩だろう……たぶんね。
愛知県にあるゴーストタウン、ホテルいちご貴族。
若い能力者たちが経験を積むため、この場所を探索していた。
だが、経験の乏しさから思わぬピンチを生み……、
「うぁ……」
能力者がひとり倒れた。
すかさず詰め寄ってくるゴーストたち。
必死に立て直そうと若い能力者たちは動くが、ゴーストは倒れるどころか増えていく一方で……。
「ま、まずいぞ」
どうにもならない。
「下がって!」
声と共に戦場に広がる白い霧。
これが魔蝕の霧だと分かったときには、真月・マサト(中学生月のエアライダー・b47415)が走り込んでいた。エアシューズで疾風のように駆け、群がっていたゴーストを次々と刈り取っていく。
更に先ほど霧を生み出した、香坂・弓弦(流れ星の矢・b61057)も光の槍で支援を。
見る見るうちにゴーストはその数を減らしていく。
「これが異形と戦った先輩たちの強さ……」
若い能力者たちの視線がそれを追いかける。
「いまです!」
「そこッ!」
マサトの声に合わせて、ゴーストたちの中心で弓弦の放った光が爆ぜた。
まばゆい光が消え去ったときにはもう敵の姿はなく。
ハイタッチを交わす二人の姿だけがそこにあった。
物陰からそっと、織兎・ラジェリ(深遠より来たる・b74133)が何かを探している。
ストーキング行為ではない。
(「姉上どこにいるのかなー」)
家出をした姉を探しているだけなのだ。
まあ、隠密行動しながらけど……。
付け加えるなら、ラジェリ自身も姉からも探されている。むしろラジェリも家出同然の状態なのであった。
そんなことは露知らず、ラジェリは色々なものを見聞きして、探すだけでなく今を楽しんでいる。
「レッツゴーゴー! 超いい天気かもー!」
こうして今日も、ラジェリは神出鬼没にぶらぶらしていくのであった。
子供たちの声が保育園から漏れている。
どうやらお歌の時間のようで、明るく元気な歌声であった。
「はい、いくよーっ。ちょうちょちょうちょ〜♪」
音頭をとっているのは、桐原・真夏(太陽のリズムで踊ろう・b50014)。
体全体でリズムをとって園児たちと一緒に楽しそうに歌っている。
保育園での仕事も少し慣れてきたかなと感じられるようになったのは、ごく最近になってから。
しかも、家に帰ってからはまた別の仕事が待っている。
「もきゅー」
「はふーっ、ただいま、みかん〜♪」
玄関を開けるなり飛んできたモーラットをぎゅっと抱きしめると慌ただしく夕飯を食べ、次は4コマ漫画の原稿に取りかかる。
まだ全然売れてないけど、保母さんと漫画家、両方の夢を追ってすごく充実した毎日だ。
「あ、年末だし年賀状に私の絵を使おうかな」
ごそごそと年賀状のリストをパソコンから起動する。
その間に、みかんが膝に乗ってきて遊んでほしいとじゃれついてきた。少し脱線したものの、ようやくディスプレイに住所録が展開される。
「ひなちゃんって今住所何処だっけ……大ちゃんに聞こうっと!」
携帯を取り出してぽちぽちと操作する。
それに反応した、みかんの妨害にあったのはいうまでもない。
「もきゅ!」
郊外にひっそりと建てられた小さな屋敷。
一見すれば、普通の住居に見えるが、ここが草壁・那由他(闇と光の魔弾術士・b46072)の魔道屋敷であった。日々、魔法の研究に勤しみ。知人や後輩の魔弾術士が助力を求めてくこともしばしば。
今日もひとり来客を迎えて、お茶を勧めているところだ。
「それで今日はどうしたの?」
「実は術式に関する考察でどうにも腑に落ちないところがありまして」
話をすること約三十分。
「ありがとうございました」
「いえいえ、どういたしまして」
客人を見送って、大きく背を伸ばす。
研究に入る前に休憩をいれようと、どら焼きを片手にテレビのスイッチをオン。
『ぎゃああああ! とっても大変なことになったんだよ!』
テレビのモニターに映し出されたのは、ひなたで。
「あら……ちょっとひなちゃん何やってるの!?」
いつの間にか海外でリポーターになっていたらしく、体験取材を慣行しているところであった。
「まあ……ひなちゃんだから、なるようになるでしょ」
というか何とかするだろう。
こと、自分の好きなことに関してなら。だから、那由他も心配していない。
「それにしても……HINACHANの名前で売り出すとは」
呼びなれているだけにちょっと妙な感じを受ける、那由他であった。
年の瀬も迫ってきたある日。
新の家に、凪流が訪ねてきた。
だが、来た途端に書類と睨めっこしている……。
(「というか、ウチに来てそれはどうなんだ?」)
少し思案して、新は心配交じりに声をかけてみる。
「根をつめんでたまには俺を構えよー?」
それに合わせて頭を撫でる。
数年前よりもずっと近くなった距離。
あと、一歩という距離まで近づいているような気もするが、凪流の気持ちは未だによく分からない。
対して、凪流は新の言葉を頭の中で咀嚼する。
(「たまには構えか。ふむ……それもそうだな」)
では、あの計画を実行しようと、カチカチとメールを打ちながらつぶやく。
「構う……そうだな、少し旅行にでも行こうか、具体的には新の実家まで」
「……えっ、俺の実家?!」
予想外の答えに、新が戸惑いを見せたところへ畳み掛けるように部屋のドアが開く。
待ってましたとばかりに現れたのは、ヒスイ。
いくら隣に住んでいるとはいえ……先ほどのメールで呼ばれたにしては早すぎではないだろうか?
「いよいよ、あらたんの実家に突撃やんね」
「何がどうしてそうなったァッ!! ヒスイも準備万端かよ!」
「そら。あれやん……? そんなんさぷらいずに決まってるやんね? ナルちゃん」
「もちろんだ」
何ということだろう!
既に退路はなさそうだ!!
「せやからほら、はよお家に電話し? 『未来の嫁と旦那を連れてきます』って」
「あぁああああ!」
困った。
実家にどう説明すればいいんだ?!
悩む、新に詰め寄る二人。
「……あぁもう腹は括ってんだ。最後まで付き合ってやるよ」
ヒスイの頬をつまみ、凪流の肩を組むようして二人を捕まえると、新は携帯へと手を伸ばした。
●2016・日常
「白い翼も随分と大きくなった気がするな。これも百地の人徳か?」
「おだてても何も出ないよ」
竜宮寺・武(闇を纏いし守護の剣・b44628)がレンジャー(自然保護官)と白い翼の支援要員という二足の草鞋を履いて早くも三年の月日が流れた。
ディフェンダーでとりまとめ役をやってきたこともあって、実戦部隊の指揮を任されることが多い。
(「こうした組織運営の場面で役に立つとは、何がどう転ぶか分からないな」)
あの辛い戦いの日々であっても、今はこうして役に立っている。
それは、いろはも同じだろう。
「一人で背負う必要はないだろうさ。その為に仲間がいる。……まあ、今の百地にならあらためて言う必要もないだろうけど」
「うん、ありがとう。頼りにしてるよ」
向けられたのはとても自然で、魅力的な笑みであった。
(「責任感の強さがプレッシャーになっていたこともあったが、だいぶ柔らかくなったな」)
それを支えてきた、武はもう戦友と呼べる存在になっているのだろうか。
(「少なくとも信頼されていることは確かだな」)
口元に少し笑みが浮かぶ。
「とはいえ、挨拶は『長』の仕事だな」
「うっ……こればっかりは慣れないな」
笑みは苦笑に変わりながらも、やはり自然なままだ。
そんな気を許しているいろはを見て、武も肩の力を抜く。
(「所々の抜けはあっても数年間一緒にやってきた戦友だ。だからもう少しの間は一緒にやっていこう」)
これから先がどうなるかは分からない。
しかし、確かな絆が二人を結んでいた。
●2016・同窓会
「久しぶりだね」
「やっほー!」
「あんま変わんねえな」
「それ取って」
今日は、結社【だべり場】のメンバーに何故かひなたも加わって同窓会が開かれていた。
まずは互いの近況報告を。
「俺は大学通いつつ家業を、って男共は揃って跡継ぎ?」
「うん、今日は『他の組織の長との交流』という名目で何とか抜け出して来れたよ」
「そういえば、萌芽は以前にもそんなことを言ってたかな?」
「いや、事実だから! 疑問形はいらないから!」
凪流はそんな遣り取りに苦笑する。
「ウチは音大生してるんけど。あれやんね、オトコノコは大変やなー、家を継ぐとか何とかにゃ。ウチ女の子でよかったわー」
続けた、ヒスイの言葉についつい頬が緩む。
もう、新なんて声を上げて笑っている。
変わっているところもあるが、変わってない面も多くあって、凪流は内心でほっとしていた。
「なんだ、お前達も大変だな? 俺でよければ相談に乗るからな、先輩として」
「(ナルちゃんはどこまで行っても先輩なんやねー、ちっこいのに)」
小声で言って、ヒスイが笑い出す。
無言のままで、凪流は顔の向きを変えた。
「聞こえてるんだからなっ!? あと、萌芽もいまうなずいただろう!?」
逆鱗に触れて大爆発。
「ごめん、許して!」
猛り狂う彼を止めるためにしばしの時間が流れた。
「そういえば萌芽は恋人とかできたのか? 居たら……なぁ?」
にやっと、新は不敵な笑みを浮かべる。
「恋人? い、居るとも言えるかな……」
何せ、恋人=仕事。
これを吐かされた瞬間、仲間たちが同情の視線を投げかけ、ぽんっと肩を叩いていく。
「うぉおおおお! そういう君はどうなんだ?! 君にいるなら一発だけ殴るね!」
萌芽が吠えると、新は視線を逸らす。
「俺? あー……二発殴っていいぞ」
「な、なんだって?!」
驚愕の事実!
あまりのことに、萌芽は崩れ落ちた。
復活するまで当分かかりそうだ。
「おっ、そうだ。六年前にひなたが作ってくれた縁で引き取った猫は今も元気だぜ」
「ほんと、どんな感じ〜」
その間も他のメンバーは和気藹々としている。
「はっ! そうだ、初瀬部さんに言わなければいけないことがあったんだ」
「「おっ?!」」
途端に空気が変わる。
みんなの視線が、萌芽へと集まる。
「学生時代にはこんな事を言う日が来るなんて夢にも思わなかったよ」
ドキドキ。
これは……もしかして、もしかする?!
「付き合って欲しいんだ……」
「「おおっ!!」」
「語学の勉強に!」
「「………」」
「そんなことだろうと思ったぜ」
「期待外れだ」
「がっかりやわー」
もう避難の雨あられ。
「ちょっと待ってよ!」
で、ここからが萌芽の言い訳タイム。
「多様化する能力者組織とその歴史と、銀誓館が紡いできた歴史なんかを編纂するのがオレの選んだ道なんだ。そこから課題が見えてくる事もあるだろうしね。それで今度、海外の組織と会合があるんだけど語学がちょっと……」
「「………」」
「だめだな」
「もう有罪レベルだ」
「だめやわー」
「アウト!」
全員からダメ出しを受ける萌芽であった。
ちなみにその後で何とか、ひなたから教えてもらったのだが、
「……ダ、ダメだ。初瀬部さんの勉強法では」
神秘系でヤマカンに頼る、ひなたの学習法は習うより慣れろであったそうな。
●2017・日常
南極戦役も無事に終結。
帰還した、芽亜を待っていたのは遅れ気味になっている大学の勉強だ。
レポートやら欠席した授業の補修やら。
友達にノートを写させてもらったり、他にも色々と駆使して何とか乗り切ろうとしている。
(「大学一年の間に起こってくれた分、まだましでした。卒論とタイミングがぶつかっていたらどうなっていたことか」)
こういうところは能力者の辛いところだ。
とはいえ、自分だけが弱音を吐けない。同じように今日も世界の各地で能力者たちは戦っている。
負けてはいられないと、保育士の勉強を進めて三時間。
そろそろ集中力も切れてきたので休憩も兼ねてテレビのスイッチを入れる。
芽亜が見ているのは基本的に海外のニュースだ。
だが、テレビに映し出されたのは見知った顔であった。
「あ、今日はひなた様がレポーターですわね。どんな事件が起きたのやら?」
くすりと笑って紅茶の準備を始める。
ちょうどいい息抜きができそうだ。
南極戦役の話は、佳太の耳にも届いていた。
(「世界中で銀誓館の皆が頑張ってる。俺ももうすぐ父親になるんだから頑張らないと」)
部屋に飾られたカレンダーには赤い丸で囲まれた日付があった。
(「思い返せば、ここに来るまでにも色々とあったな」)
だが、今は仕事も順調で、恋人とは長い交際期間を経て結婚し、もう直ぐ子供も生まれる。
(「母さんもすっかり元気になった」)
若い人には負けてられないと、パートにも出始めている。
最近の口癖は「母さん一人でも大丈夫だからね?」と、こちらに気遣いまで見せてくれる。
(「俺も何かすべきかな……」)
世界結界が無くなっていくにつれ、事件も増えてきている。
まだまだ目は離せない。
(「白い翼に協力することはできないかな」)
手には、いろはから届いた年賀状が。
そこには彼女の近況と共に白い翼のことも綴られていた。
さて、どうするか?
佳太の胸にはもう答えが出かけていた。
夏の日差しが照りつける。
耳には潮騒と、楽しそうな声。
マサトと、弓弦は、夏休みを利用して一泊二日で海に来ていた。
別々の大学に進学しただけに、こういったデートは本当に貴重なものになっている。
波間で遊んだり、海で泳いだり。
二人で遊びまわっているうちに、弓弦の方が先に疲れを見せて浜辺で小休止。
座り込めば、隣にマサトもやってきた。
思いのほか距離が近い。
特に意識していないようだが……こちらに顔を向けたところで軽く口づけを。
そして、弓弦はえへへと照れ笑う。
「だって、ここしばらく会えてなかったじゃないですか。恥ずかしながら、ちょっとさみしくてですね……」
「僕も……寂しかったです……えへへ、一緒でしたね」
顔を真っ赤にする弓弦、照れて目を逸らすマサト。
「今日明日はずーっと一緒ですからね、一杯遊びましょうね!」
「はい」
ここまで来るともう言葉はいらない。
マサトがそっと肩を抱いて引き寄せると、弓弦も目を瞑って身を任せる。
優しくそっと唇を重ね合う。
幸せを噛み締めながら、今度は長いキスとなった。
晴天の空にパンパンと花火が上がる。
今日は運動会ということもあって、多くの人が我が子の活躍を見ようと詰めかけていた。
その中に、悠衣と、虎信の姿もある。我が子、衣虎の応援にやってきたのだ。
二人を見つけて、衣虎の手が大きく振られる。
「衣虎ちゃーん頑張ってー!」
「うん! お母さん見ててね!」
で、そんな光景を、虎信がカメラに収めているわけだ。
なんとも仲睦まじい親子の姿。
しかし、虎信が大人しいのが少し気にかかる……。
(「虎信さんならもっとはしゃぐのかと思ったけど?」)
そんな悠衣の懸念はしばらくしてから現実となった。
父兄参加のリレー。
虎信の鍛えられた体を見て、当然のようにエントリーされたわけだが、
「良く見ておけよ、我が娘ッ! 鍛錬を欠かしておらぬ父親の勇士をッ!」
「うん、お父さん。頑張ってー!」
もう気合が入りまくっている。
(「虎信さん御祭好きだしハメを外しすぎなきゃいいんだけど……」)
悠衣のそんな不安をよそに、虎信はやる気十分。
リレーのアンカーに入って「なぁーっはっはっは!」と高笑いを上げている。
そしてバトンを受け取ると一気に前を走る者たちを抜き去っていく。
更に余裕を見せて、バク転でゴールを飾るおまけ付き。
「ああ、やっぱりやっちゃった……恥ずかしいなぁ、もう。もうちょっとどうにかならないのかな」
「お父さん一番!」
「そうね。お父さんが一番よ」
でも、まあ今日ぐらいは大目に見よう。
なにせ、衣虎はこんなにも喜んでいる。
関東のとある水族館を、緋薙・悠(緋月・b52942)が訪れていた。
ベビーカーには1歳になった娘の桜が乗っている。
「まだまだわからないかもしれないわね」
でも、こういったものも一杯見せておきたい気がしている。
これも親心というものだろうか。
「……着ぐるみのネタにもなるしね……と、いけない」
溜息をつき、夫の趣味に徐々に汚染されていく自分に微苦笑を浮かべる。
「桜は染まっちゃだめですよ?」
果たして分かっているのやら。
きゃっきゃきゃっきゃと、桜ははしゃぐばかりだ。
こうして、悠は桜に話しかけながら順に水族館を回っていく。
で、イルカショーの会場に目的の人物の姿があった。
「こんにちは、働く姿が様になってますね♪」
話しかけた相手は、大五郎。
臨時職員ということで、この水族館に勤務しているのだ。
「久しいな。……それに子供か?」
「はい、娘の桜です。ただいま1歳」
ほらほらと、悠は桜の視線を大五郎に誘導する。
逆に大五郎は怯えられるのではないかと及び腰だ。
「大丈夫ですよ。動物に好かれる大五郎さんだから桜も警戒してないみたい」
ほらと、まばゆい笑顔の桜を近づけて見せる。
「子猫もいいですけど、子供もいいものですよ」
世話は比べものにならないですけど……という言葉は胸の奥にしまっておこう。
「大五郎さんのそんな話も聞いてみたいところですけど……?」
「生憎と浮いた話には縁がないな」
今度は大五郎が苦笑。
縁がありそうで遠い。まあ、大五郎自身が焦ってもいないのでもうしばらくはかかりそうだ。
「あと、子育ての傍らちょこちょこ執筆もしているんですけど、まぁ売れませんねー」
そう言って、悠はからからと笑う。
絵本・童話作家になるのが彼女の夢。
「ま、見る人が見て、ちょっとでも感動してくれたら御の字ってことで」
「いつかなれるといいな」
「まあ気楽に行きます。ところで、まだ能力者には目覚めてないんですよね?」
「ああ、こればかりはいつになるやらな」
「私はいつか目覚める人たちに……絵本や童話で少しずつ世界の真実を伝えていくつもりです」
「そうか、お互いに頑張らんといかんな」
「ですね。焦らず頑張っていきましょう」
銀誓館学園は未だにゴーストと戦う最前線だ。
ならば、そこに身を置くアリティアも勉強と戦いに追われる日々を送っている。
「セジリオラは今頃どこにいるのじゃろうな?」
便りが無いのは良い知らせというが、時には不安に感じることもある。
(「妾はちゃんと帰ってくる場所を守っておるのじゃ。元気にしておるか?」)
身長もだいぶ伸びた。
再会したとき、セジリオラはどんな顔をするだろうか。
「むっ……!」
教室のテレビに運命予報士の姿が映った。
また新たな事件だ。
「さて、行くとするのじゃ」
今日も能力者には多忙な日になりそうである。
●2017年・同窓会
「確か、この辺りのはず……」
きょろきょろと辺りを見回し、衛姫は目的の居酒屋を見つけた。
念のために送られてきた同窓会の案内と見比べてみる。
うん、間違いない。
ガラガラとドアを開けて店内に入れば、衛姫の姿に店員がぎょっという顔をした。
「……はっ」
冷静に考えてみれば、着の身着のまま、野戦装備(薄汚れ)のままでここに来ていた。
「衛姫。こっちだよ」
そこに、いろはの声が割って入る。
「あ、百地先輩、お久しぶりです! 結社ではお世話になりました〜」
笑顔を浮かべて敬礼。
「ほんとに久しぶりだね。元気にしてた?」
「はい、所属部隊の任務にも慣れて、生活環境も落ち着いてきた所です」
「大変な仕事みたいだし、頑張ってね」
「それはもちろん。百地先輩はどうですか?」
「私のところはね――」
話は尽きることなく、夜が更けるままに思い出話に花が咲いていく。
「あと里帰りついでに、佐世保にもよって。結社にも挨拶がてら塹壕を掘る訓練をしていく予定です」
「うん、それはやめよう。色々と迷惑だから」
「えっ何でですか?!」
それはある夏の日こと。
結社【アプリコット・ルーム】の部室には懐かしい顔が揃い始めていた。
「あれ? まだこれだけ?」
尋ねた真夏の他には、大道寺・雅(チロンノプカムイ・b73795)と、ラジェリの姿があった。
「皆さん、忙しいのでしょうか?」
連絡が来てないか、雅は携帯を確認。
と、そこに部室のドアを勢いよく開けて、ティセが駆け込んできた。
「……お、お待たせしたのです」
着ているのはおそらくバイト用のミニのメイド服で、肌には薄らと汗をかいている。
「そんなに慌てなくても良かったのに」
とりあえず、勧められるままに椅子に座ってクーラーのよく当たる場所へ。
ふぅと、ひと息。
「それにしても……えへへ、お久しぶりな方もいて……嬉しいです」
仲間の変わらぬ様子に、雅が微笑む。
「みんな久しぶりかもー!」
ラジェリもだらだらしながら賛同。
偶に顔出している、真夏もうんうんとうなずいている。
「こういうのって形が大事だよね? にゅふふ!」
そう言いながら、真夏が鞄を机に置いて中から大量のお菓子を机にどさーっと広げる。
ちょうど、同じタイミングでドアの向こうから馴染みの声が。
「此処に来るんもえっとぶりやな」
扉を開けて入ってきたのは長身の髭面の男。
「誰ッ!?」
「……ん、何や不審者を見る目で……って、あかん忘れとった」
慌てて、中川・始(オルタナティブ・b22310)は自分の免許を取り出す。
「何だ、始くんか」
「他のみんなはあんまし変わらないように見えましたけど……これはかなり変わったのです」
「すまんな、後で剃ってくるわな」
まあ、とりあえずはと始が持ってきたアイスボックスを机の上に置く。
「お待たせ……」
更によろよろと、十六夜・瞳(宵闇狂謳・b02156)もやってきた。
「やっとデスマーチを乗り越えてきた……」
確かプログラマーをやっていると聞いていたが……噂以上に厳しい職場らしい。
おまけに腹が減ったと腹の虫まで鳴いている。
「ひとみお姉ちゃんもお疲れ様なのです。いっぱい食べてなのですよ〜」
ティセから机に広がったお菓子の提供を受け、オレンジジュースを飲んでようやく瞳も落ち着いた。
「大変そうやな。アイスも食べるか?」
始がアイスボックスを開けば、中には一杯になるまで詰められたアイスクリームが入っている。
遅れてきたのはこれを買い込んでいたからだ。
「私もあるよー♪」
瞳も自分のアイスボックスからジェラートを取り出す。
「やっぱり夏といえば&アプリといえばこれですなぁ♪」
「アプリらしく、ここはアイスパーティですねっ」
「アイスだばー!」
「本場イタリア現地直送だぜー! アプリといえばアイスだよね♪」
結社【アプリコット・ルーム】独自のお約束を前にして、口々に感想がもれる。
「……あ、昔みたいにマヨアイスとか、タバスコアイスとかはちょっと……」
「そういうのがいいなら準備するよ〜!」
「た、食べませんっ。食べませんよ……! そういうアイスは、真夏さん担当と決まってるのですっ」
「が、がーん、そんなふうに思われてたなんて……でも明るくなったね〜」
「……え? 私、明るくなりましたか?」
「うんうん」
「当然です、もう19歳のお姉さんですからっ」
雅と、真夏がそんな話をしている間に、他でも旧交が温められている。
「あわ、あたしの指は食べられないのですよ」
「今日は無礼講ー♪」
「ジェラートもあるし、今日はアイス祭り的な感じかもー! ……辛いかも〜」
「おっ、それはロシアン用の塩ジェラートだ! 入手経路は秘密だよ〜♪」
こうして賑やかに同窓会が始まった。
互いの近況やらを語り合っているうちに夜も更けてくる。
「……また自己紹介が必要なんか?」
頃合を見てようやく髭をそってきた、始。
次いでに雰囲気出しにとノンアルコール系の飲料も買い揃えてきた。
「さて、名誉部長の桐原、挨拶をどうぞ!」
「乾杯―!」
「挨拶は抜きか?!」
「「乾杯!!」」
始の提案は軽くスルーされ、ノンアルコール飲料を手に雰囲気だけの酒盛りモードへ切り替わる。
(「5年経っても皆、根っこは変わってないね」)
瞳が笑って、真夏とグラスを合わせる。
ちなみに彼女だけはちゃんと持参した本物のお酒だ。
「しかし、ジェリちゃんも雅ちゃんもまだお預けか! 雅ちゃんは来年? そしたらまたお祝いかな?」
「ほやな、また酒が飲めるようになったら集まらんで?」
今度は、始の提案も無下にはされなかったが、
「だからさ……彼氏出来ないんじゃなく作らないだけなの! むしろ皆私の嫁なわけ!」
ノンアルコールビールで酔っ払っている、真夏を見ると自重した方がいいような気もしてくる。
「まぁまぁーどうぞもう一杯!」
ラジェリが注いだジュースを一気飲み。
「……真夏さん、まだ身を固めてなかったんですね……」
「彼氏いなくても彼女とか愛人とか隠し子的にグローバルに色々出来ちゃう時代じゃないかなー」
雅と、ラジェリの後輩二人に励まされている辺り、本当にどうなんだろう。
「皆わかってないのよ!」
「わ、分かりましたっ、分かりましたから絡まないで下さい〜!」
ああ……とうとうあんなことまで。
「(あぁでもやっぱこのノリいいな……私幸せだったんだ……)」
「な、何か言いましたか?」
「何でもないよ〜」
と、まあこんな感じで進んでいるわけだが。
「確かこんな……感じだったのです〜」
うっかり本物のお酒を飲んだ、ティセが一口でへべれけになった。
ある意味でらしいといえば、らしいのだが……だいぶカオスになってきた。
「あの時の学園祭と同じトッピングなのです〜」
ティセがふらふらしながら用意したものを机に並べる。
ミートソース、胡麻だれ、ケチャップ、ポン酢、カレー、ハバネロソースなどなど。
ダーツを使って当たったものをアイスにトッピングするという罰ゲームじみたお馴染みの企画である。
「やろっか、ろしあんダーツ!」
「ジェリはこのコーンポタージュを推しておくかも!」
「ダーツは懐かしいな、いつも色んな意味で大当たりやったで」
試しに、始が投げてみる。
……ハバネロソース。うん、腕というか悪運は落ちてない。
「さあ、一気にどうぞ」
「うぉおおお!」
もう、ついつい爆笑してしまう。
こうしていると昔に戻ったみいだ。でも、楽しい時間はあっという間に過ぎていくわけで――、
「……あ、あれ? 困りました、相変わらず泣き虫、で……」
時計を見て、雅の顔が曇る。
「みんな、帰っちゃうんですね。時間が過ぎるの、早いです……」
いつしか日付は変わろうとしている。
「でも、今の私や今の皆さんがあるのは……今までの時間のお陰だと思うんです。また、会いましょうね。……絶対……!」
ティセがそれにこくんとうなずいて、
「はい。前も楽しかったけど、今も幸せなのです」
仲間たちの顔を見る。
「だってこんなにも平和なのですから、いつまでも、一緒なのです〜」
「そうだね。この時間、続けよう。私達が望む限りいつまでも……!」
そんな様子を、瞳が携帯のカメラで写真に収める。
写った画像には紛れもない笑顔が並んでいた。
●2018・卒業式
卒業式もつつがなく終わり。
九郎と、レオナは校門の辺りで十三が出てくるのを待っていた。
(「……もう卒業か」)
これもひとつの節目とはいえ感慨深いものがある。
(「俺は案外子煩悩なのかも知れんな」)
九郎は振り返り、この六年間のことを思い浮かべる。
色々なことがあっという間に通り過ぎていったというのが正直なところだ。
「お父さん、お母さん」
大きく手を振りながら、十三が駆けてくる。
卒業後の進路はもう聞いているが、少し不安だ……。
駆け寄ってきた十三の頭を珍しく撫でてやるとくすぐったそうに目を細める。
「決意は揺るがんか……?」
「はい。私の尊敬するあの人みたいに、立派な先生を目指します」
迷いのない答え。
九郎も変わっているとは思っていなかった。
既にレオナにも説得され、十三の選択を認めている。
今のは九郎自身の迷いのようなものだ。
「新しい生活にはいろいろ準備も必要だろうから、近々一緒に買い物にいこう」
「お願いします」
十三はこれから教職を目指して都会の大学に通う。
おまけにひとりで、だ。
「家事も出来るし、護身も出来るから大丈夫。それに私が家を出れば夫婦水入らずなんだし、仲睦まじく暮らせば良いですよ」
安心させるように、十三が笑顔を見せる。
そして、「行きましょう」と二人をうながした。
「随分心配しているけど……きっと大丈夫さ」
レオナが九郎の肩に手を置く。
「十三は、私達が思っているよりずっと逞しいみたいだからね」
「そうだな、十三なら一人でも問題無く暮らせるだろう……しかし、家が少し寂しくなるな」
「仕方ないよ。子供はいつか出ていくものさ」
「ああ、なら……子どもを作るのも悪くはない、か」
返答代わりにレオナは口元に笑みを作り、
「お父さん、お母さん」
呼びかけてくる十三に応えて、歩き出した。
●2018・日常
「さて、そろそろ迎えが来るはずなんやが……」
駅の中にある喫茶店で、始は人を待っていた。
連休を利用して親戚の潦家へと行くことになっていて、今は迎えを待っているところだ。
「しかし、この辺も変わってもうたな。……もう六年か」
友人たちもそれぞれの舞台で活躍している。
顔を合わす機会は少なくなったが、近況が聞こえているから寂しくはない。
「ほういうたら初瀬部、あれには驚いたな」
海外に行ったと思ったらいつの間にか、ひなたはリポーターになっていた。
何をするか分からない奴だったが、未だに予測不可能だ。
「ガンバレよ、初瀬部」
まぁ、向こうは忘れているかもしれないが……と心の中で付け加え、コーヒーカップをテーブルに置く。
そして、慌てて周りをきょろきょろと。
(「つい口に出てもうたが誰も居らんやろな?」)
とりあえず、大丈夫そう……いや!
「始先輩〜♪」
「げっ、初瀬部?!」
呼ぶよりそしれか(?)。
トレードマークのポニーテールを揺らしながら、ひなたが駆けてくる。
その後ろには始の待ち人が。
どうやら、奇しくもひなたと目的地が同じであったらしい。
「茂理っ!」
「やあ、いろは」
「やあ、じゃない……これはどういうことだ!」
いろはの手には自費出版されたと思わしき本が握られていた。
「気に入ってくれた? レイアウトにもかなり凝ってみたんだよね」
対して胸を張る、茂理。
「凝ったとかそういう問題じゃない! どうして、私の詩集が勝手に販売されているんだ!」
「よくぞ聞いてくれた。これぞ、いろはデビュー計画! 既にボクの築いた人脈を生かして各方面に宣伝してあるよ。新進気鋭正体不明の謎のポエム詩人として話題にもなり始めてるから安心して」
「安心できるか!」
「売り上げは白い翼に寄付するから」
「ダメなものはダメだ!」
「じゃあ、これはどうかな?」
と言って、茂理が取り出したのは何通かの手紙。
「送られてきたファンレターなんだけど読みたくないのかな?」
「ぐっ……」
「かなり気に入ってくれたみたいだよ」
「ぐっ………」
「ほらほら」
ちなみにこれが、いろはの作家デビューするきっかけとなる。
当人は頑なに否定しているが。
●2018・同窓会
久しぶりに顔を合わしたこともあって、あちらこちらから懐かしむ声や驚きの声が上がっている。
「結婚式に参加、か、お互いまさか結婚するとはね」
「おいおい、僕だって家庭を持つ権利はあるだろう?」
穂村・煉司(紅蓮旋刃・b57176)と、時守・癒太(夢幻世界投影者・b52874)もその中に。
「勿論、いつか言ったけど優しくて真面目なただの子供だ、成長したのならその権利はあるに決まってる。ま、世界が変わろうとすべきことは変わらないさ」
「ああ、愛する妻と子ども達がいる世界を守る為行う事はあまり変わらないな」
「ただ守るものと一緒に戦う同胞が増えた。たったそれだけの話だよ」
おどけるように始まった話題であったが、結論に至るとちょっとしみじみとしたものを感じてしまう。
これも互いに人生を歩んできたということだろうか。
「そういや癒太はこれからどうする?」
「今後か? 今は銀誓館の教師となる為に大学で勉強しているけど、将来は訓練組織で教官をしてみたいな。もちろん家族を守りながら戦っていくよ」
「それでこそだ。そんじゃ今後とも頼りにしてるよ相棒」
「こちらこそよろしく♪ 相棒♪」
互いにグラスを合わせて乾杯。
今日は楽しい時間が過ごせそうだ。
●2019・日常
結婚式が始まるまであと1時間ほど。
新婦とは違い、新郎は準備も少ないことから癒太は来賓の相手に回っていた。
まあ、友人たちと談笑しているだけなのだが、
「癒太の子供が出来た……だと!?」
新婦が既に身籠っていることを教えれば、周りからは驚きの声が漏れ出した。
「いや、問題ないけどさ、うん、昔っから早熟だとは知っていたけど、まぁ、あれだ、なにはともあれおめでとう」
「煉司が遅いだけだよ♪ 僕達よりも早く氷山さんと付き合っているんだし、そろそろ子作りしてみたら?早いと後が楽らしいよ♪」
「おおぅ、色々悟ってるねぇ、ま、その辺は考えとくよ。うん身を固めるのもあるかもだね。しかしあの癒太も1児のパパかぁ、長年一緒に戦ってきた戦友がパパになるとはなんとも感慨深い、末永く幸せにね」
「ありがとう煉司もね」
「あ子供の名前なんていうの?」
「名前? どうやら女の子らしいから柚月と命名する予定だよ。生まれたら知らせるよ」
「ちなみに、ちょこちょこ遊びにいっていい?」
「家へ遊びに? ああ、もちろんOKだよ♪ 家族揃って歓迎するよ♪」
そこでアナウンスが流れる。
どうやら式が始まるようだ。
「そろそろだな」
「ああ、それじゃあ後で」
結婚式の前のちょっとした一幕。
でも、きっとこれも大事な思い出のひとつだ。
●2020・日常
1月1日、元旦。
新しい年を迎えた、いろはは九州の大分県に来ていた。
「ようやく、此処まで来ました」
ヒナタが言っているのは九州では珍しい雪景色の中に映えている、真新しい校舎。
銀誓館学園の分校である。
「四国での借り、8年越しですが返して頂き、ありがとうございます。百地先輩」
「いや、私は何もしてないよ。これもヒナタの尽力の賜物だ」
本当にここまで来るのに色々とあった。
九州地方の平穏はヒナタの望みであり、銀誓館学園の分校を大分県に作るのが学生時代からの夢であった。
「まぁ、もう一つの夢は……もう少し後で、ですね」
「確かゴーストと人間の共存だったよね?」
「はい、悪路王さん達と交流を深める事で、その道を見つけられればいいのですが」
「きっと、ヒナタなら見つけられるよ」
「彼らは東北。僕は九州。会いに行くのは簡単ではないですけど、勉強会の縁故で手紙のやりとりは続けています。僕は僕なりのやり方で人魔共存を続けていきますよ。その果てに、きっとその道が」
「そうだね。人魔共存の道か」
「傍らにいるヒミコと僕のように……」
そのためにももう少し頑張らないと、とヒナタは思う。
「まあ、無理はしないようにね」
「ええ、お互いに頑張りましょう」
春の息吹が見えるようになった頃、草楼はヨーロッパに来ていた。
ギター1本であちらこちらを巡ってきたが売れない……。
ただひたすらに弾いて回ったが、未だに売れないギタリストのままだ。
「そういえば、ハニーはどこにいるのだったか?」
草楼がヨーロッパに来た目的はハニーことさとるに会いたかったこともある。
それで情報を集めていると、仕事は順調、実績も積み上げてきて、少しは名の知れた存在になっているようだ。住んでいる場所も大体わかったのでその場所に行ってみると、
「やぁああああ!」
ゴーストを一撃で撃破するところに出くわした。
「相変わらず素敵に無敵でビューティプリティーだな、ハニー。会いたかった!」
ストライプ地のパンツスーツを着こなした、さとるの姿を見つけて、草楼が喜びを露わにした。
「……柊先輩?!」
「久しぶりだな。そして、婿にもらってください」
かなりカッコよく言ったつもりだが、どうだろう?
「なら、ずっと一緒に居て欲しいって我侭言ってもいいですか?」
一番褒めて欲しい人の傍らでいたい。
さとるはずっと前からそう感じていた。
そして二つに分かれていた二人の道が再びひとつに繋がる。
「もうずっと一緒ですよ」
「ハニーがそれを望むのならな」
桜が咲く季節になった。
真新しい制服を着た新入生が、今年も銀誓館学園の門を叩く。
「しかしこうして銀誓館に来るのも久々だな!」
「うん、ちょっと久しぶりだね。見知った顔も頑張ってるみたいだし、そっちと合えることも楽しみ」
虎信と、悠衣は娘の衣虎の入学式に出席するために銀誓館学園を訪れていた。
「ああ知り合い数人が確か教師をやっていたか? まァ挨拶は後でするとして、衣虎も小学生とはな!」
「ほんと、もう衣虎も小学生なんだね……子供の成長は早いなぁ」
二人の脳裏に衣虎の成長していく姿が浮かぶ。
「子供の成長とはこうも早いモノなのか?」
もう思い返そうとしてもテレビの早送りを見ているような感じだ。
「しかし銀誓館に入ったならば、本格的に鍛えてやらねばな! この俺様の娘だ、やはり強くあらねばなるまいッ!」
「虎信さん、鍛えるのはいいけど衣虎は女の子なんだから程々にしてくださいね?」
悠衣がそれに「手加減ってものを知らないんだから」と付け加えれば、
「……いや、まァ限度は弁えているぞ? 悠衣が怒らん程度に、と言うヤツだな!」
返答にやや間のある辺りが怪しい。
「やりすぎたら暫く晩御飯抜きですから覚悟してくださいね」
「う、うむッ!」
そこに式典を始める旨の連絡が校内放送から流れた。
「急がないといけませんね」
「確か体育館はあっちだったな!」
店の看板にはこうあったファンシーショップ『なつみ』と。
扉を開ければ、自作ぬいぐるみやお花がまず目に飛び込んでくる。
「いらっしゃいませ♪」
「開店おめでとう夏美ちゃん! 素敵でかわいらしいお店で、夏美ちゃんにぴったりね!」
久々の再開に、なつきは思わず抱きついた。
「あ、ありがとうございます」
褒められてふにゃふにゃと喜ぶ、夏美。
ちなみに来店したのは他にも、
「お久しぶりね、夏美さん。本当に、素敵なお店よ」
「おめでとう、夏美。いいお店だね」
秋野や、いろはと、開店の葉書を受け取った人たちが集まってプチ同窓会状態だ。
「すっかりレディになったけれど、お人形好きは変わらないわね。私には、少し可愛らしすぎるかもしれないけれど……。あら」
ティンカーベルのメリスを見て、秋野の視線が止まる。
「メリスちゃんには最近会っていないけれど、懐かしいわね。いくつも作ったなら、一つ、私にもいただけるかしら」
「はい、大丈夫ですよ。これだけ作りましたから好きなのを選んで行ってください」
「ありがとう」
商品を眺めたり、夏美の入れたお茶を飲みながら思い出話に花を咲かせたりと。
楽しい時間が過ぎていく。
「これなら『彼』も喜んでくれそう。可愛いもの好きだし……」
店内を見ていた、なつきが可愛らしいねこのアクセサリーを見つけた。
「あっ、誰に渡すんですか」
それはペアになる形のものだ。
となれば、渡す相手との関係は自然と推察できる。
「え、渡す相手? それは……いつか教えてあげるわね」
「はい、楽しみに待ってますね」
こうして、ファンシーショップ『なつみ』は開店した。
多くの人の祝福を受けながら。
そして、これからも多くの人と共に歩んでいくことだろう。
「お先に失礼します」
パートの時間が終わり、沢北・夜水(沢北家の魔女・b62531)が仕事をしている書店を後にする。
ちなみに2年前に結婚して姓は環(たまき)になっていた。
子供もひとり生まれて、忙しい毎日だ。
もっとも、これにまだひとつ――イラストレーターとしての仕事も持っている。
画風は幅広く、ポップな物から繊細な物まで描き、教科書や専門書から、ライトノベル等の挿絵も手掛けている。ペンネームは使っていないので、何気なく手に取った本の表紙や奥付に名前が載っていることもちらほらと。
とはいえ、売れっ子にはまだほど遠い。
(「それでも皆が正しく力を使い、幸せに過ごせるように」)
能力者組織向け冊子や、能力者にまつわることについて書籍の挿絵など、普及活動にも携わっている。最前線でこそ戦うことはなくなったが、ゴースト事件には今もかかわっている。
「あら……?」
仕事を始める前にメールボックスを開くと見慣れない出版社からメールが来ていた。
どうやら……仕事の依頼のようで。
今度デビューする新人がどうしても夜水にイラストを頼みたいのだと。
作家の名前は――百地いろは。
それを見て、夜水は直ぐに返信をしたためる。
――どんな内容でも百地さんは勿論、見た人を満足させる絵を描き上げて見せます、と。
12月24日、クリスマスイブ。
街はクリスマス一色に染まり、楽しそうな親子連れや幸せそうなカップルであふれていた。
マサトと、弓弦もその中に。
二人が歩いているのは付き合って最初のクリスマスにデートした場所。
当時のことを話しているとモミの木の辺りまでやってきた。
既に夜の7時を回って冷え込んできたことから人気も少なくなっている。
「ここ覚えてます?」
「もちろん。もう……8年? 大人になるわけですね」
二人とももう23歳になっていた。
(「八年前の夏の告白は緊張して赤くなっていたけれど」)
そういえば、そのあとにキスをしたのだった。
今はどうだろうか?
顔は赤くしなっていないだろうか?
マサトは脳裏にそんなことを浮かべながらも、弓弦を真っ直ぐに見つめる。
それに気付いた、弓弦はドキっとして動きを止めた。
いつしか互いの視線が交わっている。
胸の鼓動も速くなってきた。
「結婚してください……ずっと貴女と一緒にいたい。愛してます、弓弦さん」
マサトは言葉と一緒に小さなケースを差し出す。
蓋を開ければ、中には指輪が。
プロポーズだと分かるのに、僅かに時間がかかった。
「嬉しいです。わたしも、愛してますよ」
弓弦が答えながら両手で包み込むように指輪を受け取る。
もう頬が緩んでしょうがない。
「あっ……寒いと思ったら雪ですよ」
「本当ですね」
マサトは弓弦の肩を抱くとそのまま抱き寄せて、唇を近づける。
雪が降り始める中、二人はしばらく寄り添ったままであった。
●2020・同窓会
「ファンの声を聞いたらきっと納得してくれると信じていたよ。このまま埋もれさせる訳にはいかないと思った辛さ。この恥ずかしがり屋さんが」
「うるさい……」
同窓会の会場の隅で、茂理と、いろはが向かい合っていた。
片やご機嫌で、片やふて腐れている。
まあ単純に茂理の思惑通りになってしまったのが、気に入らないのだ。
「これでボクの荷も下りたよ。作家活動頑張って」
「……そういう、茂理はどうなんだ?」
「そうだね。メガ盛り喫茶は安定してきたし、能力者としての戦いや後進育成も継続中」
指折り数える、茂理。
「相変わらず、凄まじいバイタリティだ……」
「大丈夫! いろはのファンクラブもちゃんと運営するから」
「それは止めてくれ!」
●2021・日常
癒太は銀誓館学園の教師になっていた。
生徒を指導しつつ、運命の糸が繋がった事件をきっちりと解決する。
そんな日々の中、今日は煉司とゴースト退治だ。
「さて、幸福な生活続きで腕はなまっちゃあいないかい戦友?」
「なまったか? それは愚問だな!」
返答とともに癒太は周りのゴーストをブラックヒストリーで薙ぎ払う。
煉司がヒューっと口笛を吹いた
「さっすが1児パパさんは違うねぇ」
応えながらも取り残したゴーストに炎を放って焼き尽くす。
「もうすぐ2児の父になるつもりだけどね」
「って増えるんかい!?」
雑談を交わしながらも攻撃の手は緩めない。
「こちとら十代から地獄を一緒に行きぬいたんだこの程度の敵じゃあ相手にならないよ」
まったくその通り。
向かえどもゴーストは相手にならず数を減らしていくのみ。
「そういえば、煉司こそ嫁さんの具合はどう? そろそろ安定期かな?」
「そ、そんなもんなのか」
「油断はいかんよ煉司」
「何事も油断大敵だね」
言うに事を欠いてとは、正にこのこと。
ここでゴーストの反撃でも来れば言葉通りになるのだが……二人の会話が終わったときにはもうゴーストたちは消え去っていた。
「ところで大五郎センパイは何のジョブに覚醒したんですか」
「ああ、ゴーストチェイサーになった」
小春と、大五郎はパシフィッククイーン号を訪れていた。
能力者として目覚めたばかりの大五郎の特訓を兼ねてのことである。
「そういえば、子供が生まれたそうだな」
「はい。昨年長女が生まれてしあわせいっぱいですよー」
「いいことだ」
大五郎がパイルバンカーを振るう。
「うわぁ、結構様になってますね。やっぱりハンターは体が資本ですか?」
「まあそうだな。妖獣と戦うこともあるしな」
「今度詳しく聞かせてくださいね」
「分かった」
二人は振り向きざまに攻撃を打ち込む。
後ろから接近していた地縛霊はそれであっさりと霧散した。
「お待たせ」
「いろはもだいぶ名前が売れてきましたね」
サイン会を終えたいろはを、レイラが車で拾った。
そのまま二人でドライブへ。
景色と雑談を楽しみながらしまなみ海道を走っていく。
「そういえば、いろは宛のラブレターを預かっているんですけど」
「……えっ、え?!」
「そんなに驚かないでください」
落ち着くのを待って、レイラはラブレターを手渡す。
いろはがまず名前を確認すると、白い翼の初期メンバーからのものだった。ただし、今は好青年へと成長しているが、結成当時は少年であったことを考えると年齢差はかなりのもののはずだ。
「あの子もまたどうしてこんなものを……」
「ふふふー、恋に歳の差なんて関係ないですよ? あの子凄く真面目で誠実な子だったし……いいと思うなぁ……」
「それは分かるけど……ねぇ?」
「まあまあ、いきなり付き合うとはいかなくても、お返事出してあげましょうよ」
それにこのままスルーすることもできないんでしょう、とレイラが続ければ反論は途切れる。
「いい機会だと思うなぁ。それにね、私の自慢の、大切な大好きな友達が、いつまでも独り身なんて、悲しいですもん。ちょっとだけ考えてみましょう」
「はあ……この手の話ではレイラには敵わないな。分かった真剣に考えてみるよ」
「しっかりね、いろは」
●2022・日常
日本の世界結界は消失した。
そのため銀誓館学園にはゴースト事件に素早く対応するため、多くの能力者が集まっている。
誰が提案したのか、一同はみな屋上へ。
見上げる夜空は星々の輝きを称え、いつもと同じように見えるが。
「もうこの空に世界結界は無いんですね……」
「ああ……そう思うと何か寂しいものがあるね」
レイラと、いろはもその中に。
「今までありがとう、さようなら世界結界……そして、お帰りなさい神秘達……」
カードをかざして、レイラはイグニッションする。
手にしたものは剣へと変わり、詠唱銀の浮かぶ空の下に誓いを立てる。
「私はレイラ・ミツルギ……望む存在が平和を謳歌出来る世界を護る為の剣です!」
さすれば、同じように続く者が。
みんな分かっている。
この日より、世界は新たなるステージへと進むことを。
「ストレリチアさん次のご予定は?」
「早くも次の映画のオファーが来ているということですが?」
ストレリチア・スティレット(銀花玉狼・b59811)の後を追う、人だかり。
時折たかれるフラッシュで眩しそうに眼を細めながらも、ストレリチアは目的の人物を見つけた。
「こっちなのじゃ」
「お久しぶりですわ」
空港のロビーで待っていのは、シルビア・ブギ(カオスの素・b45276)。
「あっ、『来訪者大使館』の」
「ということは、これから里帰りか何かですか」
「これ以上はオフに願いますわ。でないと、次は取材拒否をいたしますわよ」
ストレリチアがそう言うと執拗にコメントを求めていた記者たちもすごすごと引き下がる。
「大人気じゃのぅ」
「忙しくてオフを作るのに半年も掛かってしまいましたわ」
まあ、残り半年をオフにするために仕事を詰め込んだともいう。
「ところで宣伝の方はあれで良かったのですか?」
「うむ、問い合わせも多いのじゃよ。この前来た来訪者などはのぅ――」
と、互いに近況を語りながら飛行機へ。
海外を巡り、まだ見ぬ来訪者たちを探しに向かおうというのだ。
世界結界が弱まるにつれて、世界各地で新しい来訪者が確認されている。
「――というわけで、南米から回ってみたわけじゃが……これまたすごい奴らがいてのう」
日本に帰国したときにはかなりの大所帯になっていた。
で、ここは来訪者大使館。
三ヶ月に渡って世界を巡り、その武勇伝をシルビアが子供たちに語っている。
「ついでに猫と犬も拾ってきたのじゃ」
「はい、こっちですわ」
後ろではストレリチアが籠を持った係員たちを誘導中。
しかも世界各地で拾ってきただけに、その数も半端ではない!
「ここもだいぶ手狭になってきた気がするのう」
「大丈夫ですわ。もう新しい土地は手に入れていますから早く工事に入らせることにいたしますわね」
「節子お姉ちゃん」
「あら、元気にしていましたか? 訓練も怠っていないでしょうね?」
そうこうしているうちにストレリチアも子供たちに囲まれた。
見ていると人間と来訪者が混ぜこぜだ。
世界中から孤児を集めていることもあるが、来訪者と人とが互いに力を合わせて、仲間同士という認識を持つように育てようという、シルビアの考えによるところが大きい。
もちろん、ここを出て銀誓館学園に入った者もいる。
シルビアといろはの縁で、白い翼に参加した者もいる。
あくまでここは生きるための基礎を教える場所で、子供たちの進路はそれぞれに委ねられていた。
「さあ、そろそろお昼の時間よ」
「「はーい!」」
その声で子供たちから解放されて、二人はちょっとひと息。
楽しそうに駆けていく子供たちの後ろ姿を見ながら、
「ちびっ子どもはとてもとても愛しい家族ゆえ、全力で愛し、そして守るぞ。一緒に沢山遊んで、沢山食べて、一緒に生きていくのじゃ。それが家族な?」
「ええ、みんなとっても愛しい家族ですもの。一緒に笑って一緒に泣いて、一人前になるまで傍にいますのよ!」
子供たちに教えることは多い。
避難の仕方や、身の守り方。学園の能力者にSOSを送る方法。
仲間と力を合わせること、弱き者を助けること、私利私欲で力を振るわないことなど多くある。
「自分の身は自分で守れるように仕込んでおくのじゃ」
「ええ、鬼教官ばりに子供達に教え込みますわ!」
これからの世界を作っていく新しい力を育むために、二人はこれからも力を尽くしていくだろう。
対象の動きを目で追い、衛姫は無線を手にする。
『E(エコー)2-1(ツーワン)よりH(ホテル)へ、対象に行動なし、異常みられず、over』
視線を外すことなく対象の監視を続行。
どうやら、このまま何事もなく終わりそうだ。
衛姫は今、欧州で軍の特殊任務(山岳偵察等)を忙しくこなす傍ら、学園や欧州の人狼騎士団などの情報収集や討伐にも個人的に協力している。
今やっていることもその一環だ。
「先輩方は元気にしてますかね〜……」
学生時代のことを思い出して、口元に僅かな笑みを作った。
そして、再び監視任務に戻る。
きっとまたどこかで会えるだろう、進む先は同じなのだから。
「ふぅ、こんなものですかね」
自らの管理する社の掃除を終えて、雅は少し背を伸ばす。
両親亡き後、金儲けのための教団と化した実家を復興させるのに時間はかかったもの、今では一人前の神主になった。
「大道寺さん、これどうしましょうか?」
「ああ、それなら裏の蔵に片づけておいてもらえますか」
「分かりました」
おどおどと引っ込み思案だった性格も明るくなり、笑顔も多くなった。
「皆さんは今頃どうしていますかね?」
時折は鎌倉におもむき、アプリコット・ルームのメンバーや親しい人との交流を続けている。
「マヨイガのお蔭で行き来は楽なんですけど……きゃああああ!」
「……どうしました?!」
雅の悲鳴に近くにいた人が駆け寄ってきた。
「……あっ、すいません。目の前に蜘蛛が下りてきたもので……」
恥ずかしそうにうつむく。
怖がりなのと泣き虫なのは相変わらずなままであった。
これも改善したいと思っているが、なかなか難しいものである。
●2023・日常
いろはが引退しても『白い翼』はその後も活動を続けていた。
その寮では変わらず、翠が寮母を続けている。
「翠ママとか言わないでくださいです!?」
「ええ、ママだよね?」
「ねえ?」
ふざけて走り去る若い二人の符術士の背にお小言をかけていると、
「すっかり寮母さん役も板に付いたね」
「もう奈々ちゃんまで」
「ふふ、ごめんなさい。そういえば今日はいろはさんが来るんでしたね」
「そうですよ。奈々ちゃんにも会いたいって言ってましたから早く帰ってきてくださいね」
「わかりました」
「では、いってらっしゃいです」
「今日もいってきます、なのですっ」
そうして、奈々は今日もゴースト事件の解決に向かう。
ふと、空を見れば澄み切った青空が広がっていた。
(「きっと、いまも、これからも、ずっと忘れないよ」)
奈々が胸に秘めるのは銀の少女との『約束』。
世界の選択がこうなった以上、果たすのは難しいかもしれない。そう思っても、忘れることはできないし、果たしたいという気持ちは変わらない。
だから限界までがんばろう、と奈々は走り出すのであった。
「臨時ニュースをお知らせします」
テレビの画面が変わり、アナウンサーが映し出された。
「南雲レイジ外務次官がテロリストに襲われる事件が発生した模様です」
次いで映し出されたのは窓から白煙を立ち上らせる高層ビル。
「本人の安否は不明です。犯人は反能力者主義のテロリストではないかと――」
次いで、レイジの経歴が延べられ、当選二回ながらも前回首相選挙の二番手候補だったこと、中国・アメリカ・EUとの独特の能力者関係のパイプから新内閣で外務次官になったことが語られていく。
「あら……ちょっとレイジくん何やってるの!?」
で、それを見ていた那由他は右手に持っていたせんべいを口に入れると準備に取り掛かる。
詠唱兵器にアビリティ。
「念のため本気で固めたけど、大丈夫かな?」
不安は残るが、行くしかない。
事前に探偵騎士から報告を受けていて本当に良かった。
急ぎ駆けつければ、そこは正に鉄火場。
四方から襲い掛かってくるテロリストに、レイジが追い詰められていた。
(「ほんと何やってるのよ……」)
柱の陰に隠れて、蒼の魔弾を。
すぐさま移動して場所をさとらせないようにする。
再び、狙いをつけて。
「こ、これは」
テロリストたちを打ち倒していく魔弾に、レイジは見覚えがあった。
頼もしい仲間が来たことに感謝しつつ、動揺しているテロリストに反撃を開始する。
歴戦の強者が二人。
にわか仕込みのテロリストに対処する術はなく、事件はあっさりと幕を下ろした。
駆け付けてきたSPや警察によってテロリストは連行されていく。
こっそりその場を後にしようと思っていた、那由他ではあったが、
「待ってください、草壁さんですね」
見つかってしまい、今度はSPたちから感謝の言葉を送られることになった。
「さすが草壁さん」
「当たり前よ私を誰だと思ってるの?」
そこに奥から、レイジもやってきて。
「ありがとう、那由他」
「……レイジくん」
「プロポーズにはまだ時間がかかりそうだ、那由他、まだ待っててもらえるか?」
レイジの気持ちは変わらない。
あの日、那由他と出会ってからずっと。
「愛している、那由他」
多分これが101回目のアイラブユー。
「その言葉、受け取っておくわね」
応えた、那由他は朱に染まった顔を見られないようにして、その場を後にする。
頭に浮かんだ理由はいくつもあった。
でも、それを口にするのはまた今度でいいだろう。
二人の物語はまだこれからも繋がっているはずだから。
●2024・日常
桜の花びらが風に舞っている。
「……人生って何が起こるかわからないね」
瞳の生活は銀誓館学園での6年間により様変わりした。
未だに裏社会で暗躍する仕事を続けているものの、ゴーストの保護を目的とした仕事、携帯などのプログラマー、モデルのボディガードといった副業にも精を出している。
表には出ない裏仕事一本だったころと比べれば、この世界にも少しは実りをもたらしていることだろう。
「にゃーにゃー」
近づいてきた茶虎と白の混じった猫の頭を撫でて、酌をとる。
「そうだな、少なくとも前より平和に近づいた世界に乾杯。あと――」
亡くなった友人・知人へ変わらぬ思いを共に捧げる。
そして、私は幸せに生きていると付け加えた。
「いらっしゃいませ」
「「いらしゃいませぇ」」
小鳥遊・祐理(結雪花・b36865)の後に続いたのは、彼女の双子の娘である、結実と、愛理だ。
主人と共に開いた喫茶店も順調で、家庭も円満。
「可愛らしいウェイトレスさんだね」
「ママが作ってくれたの」
「そりゃいいねぇ」
子供たちもお手製の制服でお手伝いをしてくれる。
たぶん、幸せな光景とはこういうことを言うのだろう。
「あっ、あのひとみたことある!」
テレビに映し出された人物を見て、結実が声を上げた。
「ふふ……ひなちゃん、頑張ってますね……♪」
祐理の言葉に、結実は不思議そうに首を傾げる。
そこにカランカランと新しいお客様が。
「さあ、次のお客様が来たわよ」
優しく笑って、祐理は子供たちをうながす。
「いらっしゃいませ」
「「いらしゃいませぇ」」
喫茶店が定休日のときには、親子四人で汗を流すことにしている。
祐理は既に第一線からは身を退いているが、それでも降りかかる火の粉を払う程度の力は維持しておきたい。まだまだ、平和とは呼べないほどにゴースト事件は残っている。
愛用している神薙を一振りして、まずは簡単にウォーミングアップ。
「さぁ、二人とも……全力でかかってきていいですよ♪」
にこりと、祐理は笑っているが子供たちは結構慄いている。
「一太刀も浴びせられなかったら特訓メニューを一つ増やしますからね♪」
ちなみにはらはらした表情で見守っている主人には軽くウィンク。
「やあっ!」
打ち込みを、巧みに払い除ける。
二人合わせて十合ほど。
こうしてウォーミングアップが終わると子供たちも個々の特訓へ。
「やぁ!」
「えぃっ」
と、元気な声が響いた。
総括してみれば、まだまだ二人とも心許ない。
「でも、二人ともそれなりに自衛の手段は備えてきましたね」
「確かに」
昼間のことを語り合いながら、祐理はベッドの上で主人に甘えていた。
優しい匂いに抱きしめられて幸せで一杯だ。
「あれから12年……時が経つのは早いですね」
うつらうつらと夢心地のまま、少しだけ昔に想いを馳せる。
楽しいことも、悲しいことも、嬉しいことも、辛いことも、本当にたくさんあった。
きっと、これからも色々とあるのだろう。
「あの子達も手が掛からなくなってきましたし、そろそろ三人目が欲しいですね……♪」
祐理はくすりと悪戯に笑って、唇を奪った……。
「お母さん」
「どうしたの?」
近づいてきた我が子の髪を、夜水が優しく撫でる。
もう片方の手では眠そうにしているもうひとりの子供をあやすように添えていた。
イラストレイターとしての仕事も順調で名前もそれなり売れている。
子育てが忙しくなったため、遠くまで営業に行くことは無くなったが、絵を描く仕事はこれからも続けていくことだろう。
そして、近所でゴースト事件が起これば、それを解決するベテラン能力者としても。
「あら……」
携帯がコール音を鳴らしている。
しかもゴースト事件が起きたときの着信音だ。
「お仕事?」
「うん、ちょっと行ってくるわね」
優しく声をかけてイグニッションカードを手に、夜水は現場へと向かう。
「自分に起きた事は全部受け入れてこれたと思う。だから、これからも」
――彼女は戦い続けるだろう。
「いつ来てもここは変わらないですね」
街はだいぶ様変わりしているが、十三の懐かしき我が家は記憶に残ったままだ。
裏庭の畑は広くなり、小さい鶏舎も増えているが他は同じ。
でも、そこで暮らす人たちはきちんと時間の変遷をたどっている。
「お帰り」
出迎えた、レオナの傍らには、黒っぽい紫の髪の女の子と白い髪の男の子が、ヨルと一緒になって遊んでいた。
「ただいま、お母さん。紫苑と真白も久しぶりですね」
「丁度良かった。少し手伝ってもらってもいい?」
「うん、お母さん、子どもの面倒見させてね。あ、家事も手伝うよ」
「よろしく。その間にお父さんと鳶を呼んできますね」
そうしてしばらくすると、九郎と鳶、それに蜘蛛童がやってきた。
「あれ、また蜘蛛童を見つけたの?」
「ああ、良く子どもの相手をしてくれている」
「そうですか、鳶の方は?」
「この子はあまり器用ではないが、真面目だな」
先ほどまでの畑仕事を労って、九郎が頭を撫でてやるとくすぐったそうな仕草をした。
「そういう十三の方はどう?」
「世界結界消滅後、私の学校では戦闘実技の授業が増えてその分忙しくなりました」
「そうか、ゴースト事件も多くなったが……随分と幸せになれたものだ」
「本当に。積もる話はあるだろうけど……兎に角、元気そうで何より」
そう言って、ご飯にしましょうとレオナは台所へ向かう。
「レオナには幾ら感謝しても足りんな」
「はい」
幸せな時間が過ぎていく。
変わっていくものも、変わらないものも、折り合わせて。
(「私達は変わりながら未来へ進んで行く……」)
●2024・同窓会
7月20日。
小春の呼び掛けに応じて、銀誓館学園では同窓会が行われていた。
「おっ、小春くん見っけ!」
「ひなたセンパイ、お久しぶりですー」
「元気にしてる……っと、この子は?! さらってきたの!」
「違いますよ、僕の娘です!」
「おおっ初めしてなんだよ」
「はじめまして」
小春の隣で少女が礼儀正しくお辞儀をした。
「まだこの下にももうひとり男の子がいますよ」
「おおっ、幸せ一杯って感じだね」
「はい、大好きな家族のために日々頑張ってます」
この頃には子供が大きくなったためか、一緒に連れてくる者もそれなりにいた。
他の場所でも、
「ほら、さくら、いぶき、ご挨拶は?」
「「お久しぶりです」」
真冬にうながされて頭を下げたのは双子の姉妹。
「うん、久しぶり」
それを受けて、いろはが微笑みながら応える。
「それにしても本当にそっくりだね」
「ええ、能力の方も継承したみたいで」
雪女としての力を既にかなり使えるのだとか。
「二人とも将来有望だね」
「いろはちゃんに名前を付けて頂きましたから」
「……それを言われると少し恥ずかしいね」
「感謝していますよ。それにしても、この子達が見る未来はどんな世界なのでしょうね」
世界に平和は訪れた。
だが、ゴースト事件はまだ起こり続けている
「新しい未来はこの子達が自分で切り開く必要があるのでしょうね」
「そうだね」
「私達の世代はこれで役目を終えますが私達の魂はきっと次の世代に受け継がれます」
だから、今のこの笑顔を作ってくれたたくさんの魂に、真冬は感謝を捧げる。
歳月は色々なものに変化をもたらしたようだ。
人の関係などはその最たるものだろう。
「妾、セジリオラの子を身ごもっておるのじゃ」
「あああアリティア、大切なことは先に言っておけと!」
アリティアの言葉に、セジリオラは慌てふためいた。
既に結婚はしているし、そういうことがあっても別段不思議ではないのだが……何も同窓会で告げられるようなことではない。
何より、そんなことは露と知らなかったので、最近も一緒にゴーストたちと戦ったではないか!
「ということで、よろしくじゃよ、お・ち・ち・う・え・ど・の?」
「むう、ますます頑張らねば……」
困惑ばかりしていられない。
「ならば余計に、次の世代も、子々孫々のためにも、今できることをやっておかねばならぬ」
「うむ、頑張るのじゃよ」
そして、感慨にふける者もいる。
激動の時代から十二年。
ある意味で、今年は節目の年でもあった。
「世界結界の終焉、か」
武が能力者としての道を選んでから十数年、かつては世界結界を守るために戦いもした。
それが今年、世界中から失われた。
人類は遂に世界結界という守りを失い、自分たちの力のみで世界と向き合わなくてはならなくなった。
(「ここまで来たら、能力者家業も簡単には降りられないのかも知れないな」)
空を見上げながら、武はそんなことを思う。
「……また忙しくなりそうだ」
つぶやいた通り、能力者たちの仕事はまだ終わってはいない。
終焉を迎えるのはいつの日か。
それは誰にも分からないが、武は最後までそのために力を振るうことだろう。
「じゃあ、撮りますよー」
タイマーをセットした、小春が慌てて輪の中に戻った。
そして、シャッター音が鳴り響く。
映し出されたのは幾人もの能力者の笑顔。
混迷の時代を乗り越え、新たな秩序を築こうとする者たちの一端だ。
この場には居ない者もかなりいる。
それでも、それぞれが思い描いた夢を追い、同じ空の下で懸命に生きていることだろう。
銀の雨が降るこの世界で――。
マスター:
てぃーつー
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作成日:2012/12/19
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