骸骨堂


<オープニング>


●骸骨堂
 新宿の寂れた路地裏に、『骸骨堂』と呼ばれる骨董品屋があった。
 『骸骨堂』で売られているのは、他では値がつけられないものばかり。
 店内にはとても貴重な品からガラクタまで、ありとあらゆるものが置かれており、店主の気分で値段がつけられていた。
 そのため、実際の値段よりも高い品物も数多く、トラブルが絶えなかったようである。
 この骨董品屋が廃墟と化してから、早1年。
 最近、この場所で偏屈な老人の地縛霊が確認された。

「みんな、集まったな。それじゃ、話を始めるか」
 運命予報士、王子・団十郎(高校生運命予報士・bn0019)。
 今回の依頼は彼の口から語られる。

 かつて骸骨堂と呼ばれた場所で、偏屈な老人の地縛霊が確認された。
 この地縛霊は骨と皮しかないほどやつれ果てており、かすかに聞こえるような声でブツブツと愚痴をこぼしている。
 地縛霊の作り出した特殊空間の中では、みるみるうちにやつれ果てていくような感覚に陥るため、早く退治しなければ見るも無残な姿になってしまう。
 もちろん、特殊空間から出る事さえ出来れば元に戻る事が出来るから、地縛霊を倒すまでの辛抱であると考えてくれ。
 ただし、地縛霊はここぞとばかりに鏡を見せてくるから、ある程度の覚悟をしておかないとショックで立ち直れないかも知れない。
 しかも、地縛霊は店内に置かれたガラクタを武器にして攻撃を仕掛けてくるから、相手が老人だからと言って甘く見ない方がいいだろう。
 また、店内にはリビングデッドと化した犠牲者達がウロついており、ガラクタの中に埋もれた高価な皿や壺を抱えてウロついている。
 彼らは高価な皿や壺を持っている限り、攻撃を仕掛けてくる事はないが、万が一途中で割れてしまった場合は、烈火の如く怒り狂って襲いかかってくるらしい。
 ちなみにリビングデッド達はとてもビクビクしているので、ちょっとした事でも驚いて高価な皿や壺を割ってしまう。
 遅かれ早かれ戦う事には変わりないから、自分達が戦いやすいように作戦を考えてくれ。

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参加者
神元・道孝(事象を歪める者・b01249)
東堂・琢己(黒白の天風・b05744)
マイト・ミツルギ(不破の御釼・b08065)
如月・蘭(猫まっしぐら・b11296)
鬼一・法眼(超魔生物・b14040)
セシェム・シストルム(轢る獣・b17883)
竜胆路・絣(白雪纏燐戦姫・b20394)
日前・葉里(銀星ロンド・b31570)
姫宮・心(夢は誰でも使える魔法なの・b42378)
緋神・琉紫葵(黒翼咆哮・b42772)
皆月・弥生(誰が為にその剣を振るうのか・b43022)
光・歌穂(晴れのちハレ・b46005)



<リプレイ>

●骸骨堂
「骨董品、か……。生憎とワシには縁の無い物故、精々壊さぬよう気をはらう事しか出来んなぁ。しかしまぁ、ずいぶんと好き勝手に生きたようじゃのぉ。その上、化けて出るとは……年月を経て輝く物を扱っていたとは、到底思えぬのぉ」
 しみじみとした表情を浮かべながら、鬼一・法眼(超魔生物・b14040)が廃墟と化した骸骨堂に視線を送る。
 骸骨堂は戦前からこの場所にあったらしく、痩せ細った老人が店を切り盛りしていたらしい。
 しかし、近所の評判はとても悪かったため、店の主人が亡くなっても、誰ひとりとして悲しまなかったようである。
「それにしても、薄気味悪い名前の骨董品屋だな……」
 おどろおどろしい看板を眺めながら、セシェム・シストルム(轢る獣・b17883)がボソリと呟いた。
 骸骨堂の看板は骨董品屋と言うより、お化け屋敷を彷彿させるデザインで、辺りには不気味な雰囲気が漂っている。
「ひょっとしてスケルトン発祥の地だったりするんでしょうか? もちろん、冗談ですけれど……。店内には偽物と本物があるようなので、戦闘の後にどれだけの被害額になっているのか怖いところですね」
 苦笑いを浮かべながら、神元・道孝(事象を歪める者・b01249)が汗を流す。
 骸骨堂の店主は父親の跡を継いで骨董品屋になったのだが、本物を見極めるだけの鑑定眼を持ち合わせていなかったため、どんなに価値があるものでも安く売り、逆に価値のない物を高く売っていたようである。
 もちろん、本人は全くその事に気づいていなかったため、何度か客とトラブルになって警察沙汰になったらしい。
「それなりに価値のある物が置いてあったようですが、鑑定する人間の目が節穴では宝の持ち腐れですね。まさに店主が骨董品だったと言うべきでしょうか。何と勿体無い事でしょう」
 残念そうに溜息をつきながら、東堂・琢己(黒白の天風・b05744)が骨董品屋に入っていく。
 途端に大量の埃がぶわっと舞い上がり、琢己達がゲホゲホと咳き込んだ。
「しかし、何が心残りで化けて出たのか不明、というのはどうにも据わりが悪いな」
 険しい表情を浮かべながら、マイト・ミツルギ(不破の御釼・b08065)が辺りを見回した。
 それと同時にリビングデッド達がヒョッコリと現れ、高価な壺や皿を抱えてマイト達を睨む。
 どうやら彼らはマイト達を泥棒だと思い込んでいるらしく、高価な壺や皿を守るようにして抱き締める。
「……悪いけれど私には縁も興味も無いのよね。人の趣味をどうこう言うつもりは無いけど、犠牲者を出す存在に成ってしまったのなら、遠慮なく滅ぼさせてもらうわ」
 リビングデッド達をジロリと睨みつけ、皆月・弥生(誰が為にその剣を振るうのか・b43022)がイグニッションをした。
 それに合わせてリビングデッド達が後ろに下がり、警戒した様子でゴクリと唾を飲み込んだ。
「妄執に取り付かれた存在はさっさと無に返すのがお互いのためなのです。細かい事は気にせずに、とにかくがんがん撃ちまくります!」
 ジリジリと間合いを詰めながら、光・歌穂(晴れのちハレ・b46005)が瞳をキラリと輝かせる。
 そのため、リビングデッド達が激しく首を横に振り、『これ以上、近くに来るな』と警告した。
「やはり間違った思いに縛られた人を解放するのが、私の役割! 悪い人はおしおきです!」
 なるべくリビングデッドを刺激しないようにしながら、姫宮・心(夢は誰でも使える魔法なの・b42378)がキッパリと言い放つ。
 だが、リビングデッド達は高価な壺や皿を守るのに必死で、全く攻撃を仕掛けてこなかった。

●リビングデッド
「キミ達がそれを持っているという事は、とても価値があるって事だよね。それじゃ、逆にこの辺りに置かれているのは、まったく価値のないガラクタって事か」
 ゆっくりと店内を見回しながら、セシェムが黒燐奏甲を発動させる。
 リビングデッド達は自分達の持っている高価な壺や皿を自慢げに見せつけ、『この中では一番価値のある物はこれだ』と答えを返す。
 しかし、リビングデッド達によって価値観が違うため、自分の持っている骨董品の方が価値のあるものだと喧嘩をし始めた。
「えーっと、お楽しみのところ申し訳ないけど……!」
 派手にマントを翻して容赦なくスラッシュロンドを放ち、日前・葉里(銀星ロンド・b31570)がリビングデッド達に攻撃を仕掛けていく。
 次の瞬間、リビングデッド達が持っていた骨董品が次々と割れ、辺りに凄まじい悲鳴が響き渡る。
「よりによって高価なものを……面倒だ。身の丈に合ったガラクタを持っていれば良いものを……」
 呆れた様子で頭を抱え、琢己が深い溜息を洩らす。
 リビングデッド達の持っていた壺や皿はどれも価値のある物で、市場に出れば数万から数十万ほどの価値があるもの。
 何とか骨董品を受け止めようとして、勢いよく走り出したところまでは良かったが、そのままリビングデッドにタックルしてしまい、目の前には割れた壺の欠片が散らばっている。
「ああ……、価値あるものが壊れる音……っ。付喪神とかいたらどうしよう。後でちゃんと供養するから許してくださいっ! でも、遠慮していたらまともに戦えないし、値打ちがあるものと、そうじゃないものを仕分ける余裕ないから……、ごめんなさい。わっ、リビングデッドがすごく怒ったわっ!」
 申し訳なさそうな表情を浮かべ、葉里が辺りにある物を割っていく。
 そのため、リビングデッド達の表情がみるみるうちに険しくなり、鬼のような形相を浮かべて襲いかかってきた。
「……まぁ、斬り合いの最中に驚くも驚かないもあるまい」
 一気に間合いを詰めながら、マイトがリビングデッドに紅蓮撃を放つ。
 その一撃を喰らってリビングデッドの身体が魔炎に包まれ、半ばパニックに陥った様子で店内を駆け回る。
 そのたびガツンガツンとブチ当たり、次々と骨董品が軽快な音を立てて割れていく。
「……骨董品の価値なんて分からないから、それを依り代に動き回るゴーストには、はっきり言って興味は無い。全力で叩くだけだ」
 迷う事なく暴走黒燐弾を撃ち込み、緋神・琉紫葵(黒翼咆哮・b42772)がリビングデッドを倒す。
 それでもリビングデッド達は我が身を犠牲し、僅かに残った骨董品を守り抜く。
「夢の力をたっぷり載せて、夢の中から走り出せ! まじかるランページ!!」
 可愛らしくポーズを決めながら、心がナイトメアランページを放つ。
 それと同時に疾走したナイトメアが壺を蹴り上げ、リビングデッド達の前に叩き割った。
 途端にリビングデッド達の悲鳴が響き、その壺が店で一番高価なものだった事を悟る。
「これで邪魔なものはなくなったな。その命、漆黒の闇に還す。闇に飲まれて弾けて消えろ!!」
 見せつけるようにして骨董品の欠片を踏みつけ、琉紫葵がリビングデッド達に暴走黒燐弾を撃ち込んだ。
 だが、リビングデッド達は何も失うモノがないため、黒燐蟲に襲われながら琉紫葵に殴りかかっていく。
「無駄な足掻きを……。俺達を殴ったところで、何も変わりはしないのに……」
 疲れた様子で溜息をつきながら、マイトが紅蓮撃を叩き込む。
 そのため、リビングデッドの身体が魔炎に包まれ、拳を振り上げたままガックリと膝をつく。
「それじゃ……、おやすみ」
 リビングデッドに囁きながら、セシェムがナイトメアランページを放つ。
 次の瞬間、リビングデッドが血反吐を吐き、壺の欠片を掴んだまま動かなくなった。
「こんな物欲なんてあるから、死んでも死にきれないんだろ?」
 凍るように冷たい視線を送り、琉紫葵がリビングデッドに語りかける。
 しかし、リビングデッドは既に肉塊と化しており、何をしてもまったく動こうとしなかった。
「物を大切にするのも、自分の感性を大切にするのも、いい事だけど、こうなっては台無しね……」
 色々な物が壊れてしまった店内を眺め、葉里がしゃがみ込んで欠片を拾っていく。
 こうなってしまっては骨董店な価値もゼロだが、だからと言って放っておくわけにもいかない。
「きっとここで壊れる運命だったのでしょう」
 辺りに散らばった欠片を箒で掃き取り、琢己が近くにあったゴミ箱まで捨てに行く。
 先程の戦いで骨董品の大半が壊れており、すべて片付け終わるまでしばらく時間が掛かりそうだ。
「ところで、ここのおじいさんが地縛霊になっちゃった理由ってなんだったのでしょう?」
 不思議そうに首を傾げながら、心がハテナマークをピコンと浮かべる。
 だが、それを知るためには、あまりにも情報が足らなかった。

●地縛霊
「……なるほど。これが地縛霊の作り出した特殊空間ですか」
 全身の水気を吸い取られるような喉の渇きを覚え、道孝が警戒した様子でスカルロードに合図を送る。
 それに合わせてスカルロードが道孝を守るようにして陣取り、不意打ちに備えて愛用の大鎌をギュッと握り締めた。
「まぁ、良い。ワシはワシに出来る事を成すのみよ。……往くぞ、皆鶴」
 旋剣の構えを発動させながら、法眼がサキュバス・ドール(皆鶴)に声をかける。
 それと同時に地縛霊と化した老人が現われ、法眼達を見つめてニンマリと笑う。
「我が名は竜胆路絣……、『東方青龍の守護者なりっ!』ですわ!!」
 自ら名乗りを上げて薙刀を構え、竜胆路・絣(白雪纏燐戦姫・b20394)が白燐奏甲を発動させる。
 そのため、地縛霊が絣をマジマジと見つめ、消え去りそうな声で『安物だな』と呟いた。
 もちろん、地縛霊に薙刀の価値が分かるわけがないので、適当な事を言っているだけなのだが、それでも腹立たしかった事は間違いない。
「……困ったわね。時間が経つにつれて、喉の渇きと酷い飢え……。これじゃ、戦闘どころじゃないわ」
 青ざめた表情を浮かべながら、如月・蘭(猫まっしぐら・b11296)が魔弾の射手を発動させた。
 それに反して地縛霊はみるみるうちに元気になり、肌までツヤツヤになっている。
「筋力が衰えて武器が重くて持てなくなる、という事は無いようね。……詰めの甘い事」
 次第に細くなる自分の腕を眺めた後、弥生が軽く振って具合を確かめた。
 しかし、いつまでその状態が保てるのか分からなかったため、黒燐奏甲を発動させて攻撃力をアップさせる。
「どちらにしても時間がないわ。早くケリをつけましょう」
 魔弾の射手を発動させながら、蘭が一気に間合いを詰めていく。
 次の瞬間、地縛霊が辺りに置かれていた壺を操り、クルクルと回転させて身を守った。
「……無念は骨董か。それとも残りし財故にか……。その無念……、刈り取らせていただきますわ……!」
 白燐奏甲を発動させながら、絣が地縛霊に斬りかかっていく。
 だが、無数の壺が邪魔をして、地縛霊を傷つける事が出来ない。
「お前なんか火葬にしてやる―――っ!」
 壺の割れる音が響く中、歌穂がフレイムキャノンを放つ。
 その一撃を喰らって地縛霊がバランスを崩し、近くに飾られていた日本刀を掴む。
「……まさかそれで私達と殺り合うつもり?」
 地縛霊が攻撃するよりも早く黒影剣を放ち、蘭が地縛霊の持っていた日本刀を弾く。
 そのため、地縛霊が悔しそうな表情を浮かべ、蘭達の生気を一気に吸い取った。
 それに合わせて地縛霊が手鏡を取り出し、いやらしい笑みを浮かべて蘭達の姿を映し出す。
 そこに映っていたのは、醜くやつれ果てた蘭達の姿。
「人の事をとやかく言う前に、まず自分の身を省みた方が良いと思うけど?」
 黒燐奏甲を発動させながら、弥生が地縛霊の手鏡を壊す。
 それと同時に地縛霊が悔しそうな表情を浮かべ、弥生達を睨んでギチギチと歯を鳴らす。
「例え己の骸を晒されようとも、戦場で動揺する訳にはいかん。意思と覚悟で捻じ伏せて、ただ撃ち貫くのみ、よ」
 クールな表情を浮かべながら、法眼が地縛霊にダークハンドを放つ。
 しかし、地縛霊は最後のあがきとばかりに壺の破片を操り、能力者めがけて弾丸の如く飛ばしていった。
「……これは効きますね。それじゃ、これはお返しです」
 スカルロードを盾代わりにしながら、道孝が地縛霊に雑霊弾を叩き込む。
 それに合わせて地縛霊が壺の破片を操り、高速で自分のまわりを回転させて、ダメージを軽減させた。
「これで終わりだよっ!」
 壺の彼らが力なく床に落ちた瞬間を狙い、歌穂がフレイムキャノンを撃ち込んだ。
 その一撃を喰らって地縛霊の身体が魔炎に包まれ、呪いの言葉を残して消し炭と化した。
「あーあ、ガラクタだらけになっちゃったねー。まあ、もともと価値があったのかどうかもわかんないけど……」
 ガックリと肩を落としながら、歌穂が残念そうに溜息をつく。
 地縛霊が倒れた事で特殊空間が崩壊し、どうやら元の場所に戻ってきたようである。
 だが、仲間達が派手に戦っていたらしく、店内に飾られていた骨董品が壊れていた。
「さて、戻る前に皆で軽く祝杯でもあげましょうか? 未成年ですのでジュースですけどね」
 爽やかな笑みを浮かべながら、絣が一緒に戦った仲間達を食事に誘う。
 そして、能力者達は店内を綺麗に片づけ、絣に連れられ食事にむかうのだった。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2008/09/02
得票数:カッコいい13 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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