≪雑談喫茶〜Dream Caf〜≫薔薇の令嬢としもべ達


<オープニング>


 霊園を散歩していたはずなのに、気付いたときには、古風な洋館のゴージャスでワイドなエントランスに立っていた。
「広くて立派なお屋敷……です……」
 普段通りのぼんやりした口調で凍夜・夢流(夢と現を舞う小鳥・b45667)が感想を述べたそのとき。
「ヨウコソ……ヨウ……コソ……」
 エントランスの中央、豪奢なシャンデリアの真下に、たおやかな美少女が現れた。結い上げた黒髪と裾の広がったロングドレスの胸元に、枯れてカサカサに乾いた白薔薇を飾り、レースの手袋で能力者たちを手招きしている。
「私ノ……新シイめいどト執事……ヨウコソ……」
「私たちのことを言っているのでしょうか?」
 銀・紫桜里(魔を秘めし剣持つ戦乙女・b30535)が、銀の髪を揺らして首を傾げる。
「そのようです、あのお嬢様は、紹介状を持たない私たちを、素性も確かめずに雇うつもりなのでしょう」
 七瀬・悠斗(高校生符術士・b39983)が、苦笑する。
「いきなりメイド呼ばわりとは、失礼なことだ」
 蒼氷・麻凛(蒼銀なる柩の守護・b42218)の声に、無数の靴音が重なった。
 カツン、カツン……
 大理石の床を踏んで、メイドたちが主人を中心に半円形に並んだ。膝下丈の黒いスカートに白いエプロンをつけた彼女たちの数は、20名。最奥にいる3人だけは、襟元にリボンを結んでいる。
「あの3人は、他のメイドたちとは、別の役割を与えられているようだな」
 アルスセリア・カーライル(雨夜月・b45933)の警戒に、涼風・ユエル(太陽と風の申し子・b47845)が頷く。
「うん、回復役かもしれないね。気をつけよう!」   
 最後に、くるぶしまで隠れる裾の長いシックな黒い服を着たメイド頭が、主人の向かって右斜め後ろで、白いナプキンを構えた。下の方を持っているだけで、三角形の崩れないところをみると、ただの布ではないらしい。
「あれは、おそらく、自由に形状を変えることのできる刃物のようなものですわね」
 マクシミリアーネ・ヴィッテルスバッハ(水面に映る虹・b50361)の繊細な指が、メイド頭のナプキンを指さす。
「絶対に油断すんなよ、『見掛けに騙されるな』って、師匠が言ってたぜ!」
 暗都・魎夜(未熟な熱血守護剣士・b42300)が、オレンジの瞳で美少女を睨みつけながら、イグニッションカードを取り出した。
「サア……コチラヘ……イラッシャイ……」
 床を滑るように、美少女が優雅な一歩を踏み出す。
「「「イグニッション!!!」」」
 8人の能力者たちは、一斉に叫んだ。

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参加者
銀・紫桜里(魔を秘めし剣持つ戦乙女・b30535)
七瀬・悠斗(高校生符術士・b39983)
蒼氷・麻凛(宵闇に在りし蒼銀之月・b42218)
暗都・魎夜(真っ赤に燃え滾る血潮・b42300)
凍夜・夢流(夢と現を舞う小鳥・b45667)
アルスセリア・カーライル(雨夜月・b45933)
涼風・ユエル(太陽と風の申し子・b47845)
マクシミリアーネ・ヴィッテルスバッハ(水面に映る虹・b50361)



<リプレイ>

 8人の能力者たちは、素早く移動し、作戦通りの陣形をとった。
 前衛に出るのは涼風・ユエル(太陽と風の申し子・b47845)、暗都・魎夜(真っ赤に燃え滾る血潮・b42300)、アルスセリア・カーライル(雨夜月・b45933)。
 中衛に位置するのが蒼氷・麻凛(宵闇に在りし蒼銀之月・b42218)。
 後衛につくのが、マクシミリアーネ・ヴィッテルスバッハ(水面に映る虹・b50361)と、彼女に寄り添う使役ゴーストで真サッキュバス・キュアのシェッツヒェン、凍夜・夢流(夢と現を舞う小鳥・b45667)、七瀬・悠斗(高校生符術士・b39983)、銀・紫桜里(魔を秘めし剣持つ戦乙女・b30535)だ。
「クランは前衛なの……です」
 夢流の使役ゴーストであるモーラットピュアのクランは、彼女に命じられた通り、ぴょんぴょんと跳ねながら、前衛へと向かった。
 マクシミリアーネが、使役ゴーストの真サッキュバス・キュアを連れて、後方へと移動する。
「今回は、わたくしの傍で皆様方の援護いたしますよ、一緒に頑張りましょう」
「ちょっと数が多いですね。ですが、私達なら倒せない相手ではありません。油断せずいきましょう。まずは、3人衆、それからメイド頭、最後にお嬢様ですね」
 と、悠斗が皆に呼びかけ、倒すべき順番を確認する。
「順番どうりに行くかは私達次第です、しっかりと連携していきましょう」
 幼少の頃からの訓練のせいか、悠斗の声は普段通りで、油断も気負いも迷いもない。
「メイドになってぇ……たまるかぁッ!」
 メイド3人衆を巻き込める位置を探りながら、典型的な熱血少年の魎夜が、心の叫びをそのまま口にする。
 中衛の麻凛も、前に出過ぎぬように、と注意しながら、第一の目標のメイド3人衆に暴走黒燐弾が届く円周内へと移動する。
「さて、最後の舞踏会と行こうか……?」
 黒燐奏甲を発動し、纏わせた黒燐蟲で狼牙を強化したアルスセリアの狙いは、戦闘力の低い20数名の雑魚メイドの駆逐だ。
(「魅了から回復出来るのは私しかいないからしっかりしないと」)
 紫桜里は、誰が魅了されてもすぐに対応できるように、全体を見渡せる場所を立ち位置を決めた。
「……いきます」
 自分を奮い立たせるように、呟くその顔からは、普段の若干天然気味な温和な表情は消えている。
 リフレクトコアを召還したマクシミリアーネが、真サッキュバス・キュアに、コスチュームプレイを指示する。
「シェッツヒェン、今回は、メイド服で戦ってください」
 頷いたシェッツヒェンは、黒い膝下丈のお仕着せに、白い清楚なエプロンを付けた愛らしいメイド姿へと衣装を変えた。
 仲間たちの背後から、赤いリボンを揺らして、前衛の先頭に素早く飛び出したユエルが、積極的に、メイド頭を狙う。
「ほらほら、お嬢様ばっかり気にしてる暇は無いよ!」
 ユエルは、お嬢様の間合いには、踏み込まないように気をつけながら、素早い足運びで待ち受ける敵たちを翻弄し、渾身のクレセントファングを放った。
 超高速の蹴りが、美しい三日月の残像を残して、メイド頭の白髪混じりの頭を直撃!
 まるで合唱隊のごとく、一斉に、回復の歌を唱えはじめたメイド3人衆に向かって、夢流が枕を投げ、それと連携した麻凛の暴走黒燐弾が、3人衆の手前に着弾して弾けた。
 ぶわっと広がった黒燐蟲が、数人の雑魚メイドを貪りながら、3人の回復手のうちの2人を倒す。
「ごめんなさい、でもこれがわたくしの出来る最善のやり方だと思いますので……」
 マクシミリアーネの背後に十字架型の後光が出現し、体内から放たれた清浄なる裁きの光が、ペーパーナイフを手にした雑魚メイドたちに、ダメージを与えていく。
「ぞろぞろと鬱陶しいな、散れ」
 アルスセリアの通常攻撃が、近寄ってきた雑魚メイドを次々と叩き斬り、
「邪魔なメイドの皆さんには、早々に退場してもらいましょう」
 と、タイミングを見計らって、悠斗が上げた地獄の叫びが、メイドたちを確実に倒して、道を開く。
「悠斗サンに続けてッ!」
 魎夜が、バッドストームを唱え、無数の吸血コウモリが雑魚メイドたちに襲い掛かる。
 さらに、紫桜里のダークハンドが毒を与え、シェッツヒェンが絡みついて精気を奪い取り、その数をまた減らした。
「いつまでも他のメイドを回復されると非常に厄介ですからね、一気に畳み掛けて倒してしまいしょう」
 弱り切った3人衆の最後のひとりを、コンパクトガンナイフの射程に捕らえた悠斗が言い、頷いた夢流が、枕投げの体勢に入った瞬間。
「ホーッホホホホホーッ!」
 お嬢様の威厳ある高笑いが、館に響き渡った。
「ホホホ……サカラウナ……新シイ……めいどタチ……」
 詠唱兵器の回転動力炉が停止し、それぞれの武器が、攻撃力を失う。
 すかさず、紫桜里が、浄化の風を起こす。
 だが、アルスセリアと麻凛の武器が封じられたままだ。
「私ニ……尽クシナサイ……」
 戦場を見渡すお嬢様が、高貴なる視線での魅了を狙う。
「そう易々と従えられると思ったら、大間違いだ」
 不敵に笑い、暴走黒燐弾を撃ち出す麻凛。
「俺達を使用人にしてぇなら倒してからにしな? ま、そう簡単にはいかねぇがな」
 と、こちらも笑いながら、封じられた武器を手に、雑魚メイドを阻む壁となって対抗するアルスセリア。
 しかし、残ったメイドたちは、まるで体当たりのような勢いで、捨て身の撃を繰り出してくる……!
「そんなにこっちを見たって、ボクは屈しないぞ!」
 ユエルは、お嬢様と視線を合わせないようにしながら、アルスセリアに押し寄せる雑魚メイドを、通常攻撃で潰していく。
「お嬢様は、人の上に立つものとして、何かが欠けている気がいたしますね」
 と、後衛からマクシミリアーネが放った光の槍が、3人衆の最後のメイドを貫いた。
「メイドさんになるのはダメなので、やっつけちゃって下さいなの……です」
 と、メイド頭とお嬢様が射線に入る位置に移動した夢流が、ナイトメアランページを放つ。
 前衛は、混戦となっていた。
「ふふ、結構効くねぇ」
 黒燐奏甲で自身を回復しようとしたアルスセリアに向かってきたメイド頭が、ダンスを踊り出したような華麗な動きで、白いナプキンを繰り出してきた。決して油断したわけではなかったが、三角形がほどけて長く伸びた刃が、アルスセリアの肩に届く。
「アルスさん!」
 思わず声を上げた魎夜の背後に、すっとお嬢様が歩み寄る。
 魎夜が振り返った途端……
 ぺしっ!
 お嬢様の平手打ちには、手袋のレースが、頬に軽く触れた程度の威力しかなかったが……
「メイドはいやだ……執事で良ければ喜んで……」
 と言う魎夜のオレンジの瞳が、力を失っていく。
「お嬢様……なんなりとご命令を……です……わ……」
 姿は変わらないが、中身は、嫌がっていたメイドにされてしまったらしい。
(「注意を私に向けるぐらいなら……」)
 と、止めに入った悠斗へ、魎夜の剣が向く……
「メイドになっちゃいけません! ダメですってば!」
 間一髪の瀬戸際で、紫桜里の浄化の風が、魎夜を正気に戻した。アルスセリアと麻凛の武器も、攻撃力を取り戻す。
「もきゅっ!」
 クランが、ぴょんぴょんと寄っていき、治りかけたアルスセリアの肩の傷を、ぺろぺろ舐めた。
「さぁ、鉄拳制裁の時間ですよ、お嬢様?」
 暗い笑みを唇に浮かべた麻凛が、フロストファングを放つ。
「素直ニ……従ワナイ……ツモリ……カ……」
 魔氷に侵され、美しい顔を歪めるお嬢様に、メイド頭が、お嬢様の頭から、ふわりとレースのベールを被せる。主を回復させると同時に防御力を上げる、ゴーストアーマーによく似た技だ。
「この瞬間を待ってた! 悪いけど、少し黙ってて貰うよ……!」
 チャンスを見逃さず、ユエルが、お嬢様に退魔呪言突きを仕掛けた。
「ク……」
 優美な巻き毛を靡かせたままの姿で、お嬢様が石化する。
「作戦成功♪ みんな、一気に畳み掛けるよ!」
 ユエルの呼びかけに応えるように、悠斗の治癒符と、紫桜里の浄化の風が、最後の総攻撃へと向かう能力者たちを癒す。
 まず、シェッツヒェンを伴ったマクシミリアーネの光の十字架が、雑魚メイドの残党を掃討した。
 メイド頭には、夢流のナイトメアランページが襲い掛かり、クランのパチパチ花火が追い打ちをかける。
「銀誓館のメイドは強いんだよ! ……っじゃなくて、え〜っと、暗闇斬り!」
 自分のセリフにあせりつつ、魎夜が黒炎剣で、メイド頭にとどめを刺した。
「絶対零度に焼かれて朽ちろ!!」
 と、麻凛が、
「楽しませてもらった礼だ。氷華に抱かれて逝け」
 と、アルスセリアが、フロストファングの氷に覆われた武器で、石化したままのお嬢様を倒した。

 現れたときと同じように、唐突に洋館は消えて……
 8人は、霊園の静寂の中に立っていた。
「何か疲れたのう、多種多様な意味で……抹茶が飲みたい」
 麻凛が、小さなため息をつく。
「厄介な相手だったな……何で生まれたのかは分からないけど、手は合わせておくか。後で、ドリカフェで美味しいお茶でも飲みたい所だな」
 と、魎夜。
「では皆様方、カフェに戻りましてささやかな祝勝会といたしませんか?」
 と、マクシミリアーネが言い、紫桜里が、嬉しそうに頷いた。
「んー、とっとと帰って珈琲でも飲みたいねぇ」
 アルスセリアは、カフェで、メイドにされた魎夜をからかうつもりのようだ。
「当分、メイドの方を見るのは遠慮したいですね。メイドの方に罪はないんですけどね」
 と、悠斗。
「ボクも、メイドはしばらく見たくないかも……にしても、何でこんなゴーストになっちゃったんだろう……? よっぽどメイドに思い入れが有ったのかな?」
 ユエルが首を傾げるが、皆、「さあ……」と、不思議がるばかりだ。
 わからない答えをさがす代わりに、夢流が、パンパン手を合わせてお祈りした。
「あの世でメイドさんが雇えると良いの……です」
 館のあったあたりには、物言わぬ墓石の群だけが、冴え冴えとした月明かりに照らされていた。


マスター:関口元 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/01/20
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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