私とともに死の踊りを


<オープニング>


 日本のクリスマスは不思議だ、と目を忙しなく動かしていたのも、ちょうど去年の今頃だった。
 彼と出会って二度目のクリスマスは、前回と異なる大切な記念日となることだろう。
 予約したホテルでは、クリスマスシーズンということもあってか24日から27日まで、ホールでダンスパーティが行われる。二人とも、そのパーティに参加するつもりで。
「リョーコ、眩しいのキライって言ってたからネ。ボクははしゃぎたかったけど」
「ありがとルイージ」
 短く礼を述べリョーコが口付けると、ルイージと呼ばれた男性が頬も目も緩ませる。
 その笑みの合い間を縫って、リョーコは彼の唇へ噛み付いた。八重歯が唇の皮を剥き、吸い付くようなキスで滲み出てきた鮮血を舐める。
 そして、唇が乾くね、と笑う彼を艶かしい眼差しで見つめた。


 井伏・恭賀(高校生運命予報士・bn0110)は、女性のリビングデッドが現れたと能力者達へ話した。
 リビングデッドの名はリョーコ。
 彼女には、大学で知り合ったイタリア人の恋人ルイージがいる。彼から血をもらうことで、普段と変わらぬ日常を暮らしている。しかし、リビングデッドはその欲を抑えることができなくなる。血肉をもっと、もっと多くの血が欲しいと考えるようになるのだ。
 そうなれば、リビングデッドと知らずにその人を愛している人を、食い殺してしまうことになるだろう。そうなる前に、リョーコを止めなければならない。
「二人は26日の夜にやるダンスパーティに出るよ〜」
 家族連れも何組か存在するため、小学生がいても問題は無い。会場の隅にはテーブルが並んでいるため、そこでダンスを眺めながら軽食を取る人もいるようだ。
 ただ参加者のほとんどは夫婦や恋人同士、互いに気がある友情以上恋人未満の二人となる。踊りに参加するなどして紛れ込むのであれば、その辺を考慮する必要が出てくるだろう。
 参加者はおよそ50名。そのほかに給仕に徹するスタッフや、案内役なども存在する。
 スーツやドレス、正装であればまず入場を断られる心配はない。ただ、他の服装次第では、人を惹き付けたり誘導することもできるだろう。リョーコたちに下手な警戒心を持たれるのも厄介だが、そこは作戦次第だ。
「そこ、外国人はともかくイタリア人は他にいないから、二人を探すのは簡単だと思うよ〜」
 ルイージは本当にラテン系らしい顔立ちをしている。初対面で声をかけても笑顔で応じてくれるため、怪しまれない限り、彼と接触するのは容易いだろう。
 しかし、ルイージも立派な男だ。恋人であるリョーコに身の危険が迫っていると察知した彼がどんな行動に出るか――大方想像がつく。
「パーティをやるホールは、地下一階にあるね。階段もエレベータもあるし」
 地下は一階までしかなく、構造は一般的なホテルと同じだ。
 ちなみに、リョーコとルイージが予約した部屋は三階にある『305』号室。既に荷物類も置かれており、カードキーでロックされている。もし、侵入する作戦を取るのであれば、それなりに方法を考えなければならない。
 ホテルの外には散歩のできる庭園が広がっている。その周りをぐるりと雑木林が覆っていて、夜には人気もほとんど無い。
「リョーコさんはその辺の物を振り回してくるし、何処からか鳩のリビングデッドも出てくるんだ」
 鳩は高く飛ぶこともなくつついてくるだけだが、一般人にとっては充分脅威となる。
 一羽のみではあるが、きちんと退治しておく必要があるだろう。
「そういうわけだから、急ぎの用だけど気をつけていってらっしゃい」

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参加者
藤野・沙羅(夜桜に抱かれる恋色の華桃・b02062)
天浦・雨禅(リベラリズム・b03384)
リオン・テイラー(どこでもいっしょ・b04317)
久遠寺・紗夜(光龍の蒼月姫・b05369)
九重・倭(淡光・b20966)
薔薇・茨癒(月夜の微笑み・b25129)
氷采・陸(瑠璃色ニュートラル・b28712)
水瀬・凛華(彩雲を告げる水の華・b39893)
河盛・ロンド(全力で踊れ・b41758)




<リプレイ>

●パーティ
 散りばめられた星が、続く世界を見下ろしている。
 月明かりさえ、窓越しに溢れる人々の生活を羨むように眺めていた。
 年の瀬、クリスマスシーズンに催されるダンスパーティは、温かなひとときを与える。
 煌く光の粒も、跳ねては消え、消えては弾む音の流れも。その度に足を動かし、手を取り合う声も。
「ダンスパーティーは何時の世も、華やかで良いものだね」
 徐に手の甲を口元へ寄せる。嬉々とした感情が零れてしまうのを防ぎ、河盛・ロンド(全力で踊れ・b41758)がそう呟いた。
 襟元を正しふと傍らを見遣れば、彼と一緒に行動するリオン・テイラー(どこでもいっしょ・b04317)の姿がある。先ほどから何やら指を折りたたみ、祈るような仕草でまぶたを伏せていて。
 ――しーちゃん、ごめんね。
 心の中で、遠くにいるであろう誰かに謝っていた。
 会場の賑わいも刻々と過ぎる時間の中で増し、一組のきょうだいもまた会場へ足を踏み入れる。
 よそ行きのワンピースが少々落ち着かないのか、水瀬・凛華(彩雲を告げる水の華・b39893)が若干浮つく。会話を弾ませる感じでいいのかな、と不安げに仲間へ視線を移せば、九重・倭(淡光・b20966)が薄く微笑むのが見えた。
「ルイージさんがイタリア人ってこともあって、二人が一層華やかですね」
 並べられた食事へ手を伸ばしつつ、倭は話のきっかけを生む。さすがにホテル開催のダンスパーティということもあってか、口へ運ぶ料理も美味だ。
 二人と一緒に訪れた藤野・沙羅(夜桜に抱かれる恋色の華桃・b02062)は、ドレスを汚さぬよう気を遣いながらいた。
(「ちゃんとお姉ちゃんっぽくしなくちゃ……」)
 仮にもきょうだいでの参加を装っているのだから、と張り切って会場内を見回す。ルイージらしき青年のノリにつられている女性が、恐らくリョーコだろう。ルイージに至っては満面の笑みがこぼれてばかりで、それを愛おしそうに見つめる女性の眼差しもまた、冬を忘れてしまう程に温かい。
 嗚呼、と思わず出かけた嘆きを沙羅は飲み込んだ。心苦しいと表現するには、あまりに切なすぎる。青白いリョーコの指先や顔色を見れば、やはりリビングデッドなのだと思い知らされているようで。
 ――彼との二度目のクリスマス……か。沙羅と同じ……。
 ふと腕時計へ視線を落とし、沙羅が瞳を闇に隠す。このまま何事もない生活が続けば、ルイージとリョーコにとっては幸せなのかもしれないと、叶わぬ望みさえ抱く。
 けれど、二人がこのままでいられないことは、能力者の誰もが知っていた。

「お二人もカップルですか……?」
 スーツ姿の薔薇・茨癒(月夜の微笑み・b25129)がおずおずと、休憩のためホール中央から離れたルイージとリョーコへ声をかける。内心パーティの緊張で弾けてしまいそうな茨癒は、僅かに胸元を抑えて。
 ショールを羽織った氷采・陸(瑠璃色ニュートラル・b28712)も、そんな彼に寄り添っていた。
 声をかけられたルイージが、若き二人に目を瞬かせた後、表情に花を咲かせて。
「ジャポネーゼ、やっぱり可愛い!」
 挨拶としての褒め言葉を投げたルイージの腕を、リョーコがぐいっと引き寄せる。
「さっきからココにいる女の子みんなに目がいっちゃってもう。困ったもんよね」
 茨癒や陸に同意を求めた彼女に、ルイージが母国の言葉で何事か囁いている。彼女もやきもちゆえか口を尖らせてはいたが、本気で嫌がっているようには見えずに。
 そんな二人のやり取りに、茨癒も陸もくすくすと笑うしかなかった。
 思いのほか賑やかそうな二人とは、会話も少しばかり弾む。リョーコは何処となく茨癒たちから離れたがったものの、ルイージが気さくに話すものだから、なかなか距離を保てずにいる。
 不意に、二人のスタッフがそんな彼らの許へ目を輝かせ近寄ってきた。一人のスタッフが、結い上げた銀の髪をふわりと揺らし四人の顔を覗き込む。
「すみません、協力していただけませんか?」
 久遠寺・紗夜(光龍の蒼月姫・b05369)だ。スーツを纏った彼女に、四人の視線が同時に振り向く。
「おお、またカワイイ子が来……」
「ほら話の途中でしょ」
 リョーコがルイージの口を咄嗟に塞いだ。唐突すぎて首をかしいだ紗夜も、すぐに我へと返り、天浦・雨禅(リベラリズム・b03384)へ視線を流す。
「ベストカップルを決めるアトラクションをやることになりまして……」
 雨禅の一言に、ルイージとリョーコがまばたく。
「見たところ素敵な恋人同士。是非、ご参加いただけないでしょうか?」
 声を弾ませて続けた雨禅は、ノリが良さそうなルイージを見遣った。
「ふふ、こんな催しがあるだなんて。楽しみね」
 くすぐったそうに笑みを零したのは陸だ。砕けた口調で、寄り添う茨癒へ反応を求める。
 僅かに戸惑った素振りを見せ、茨癒はすぐに提案を受けるべくルイージたちを誘う。
「僕らも一緒ですし、記念に行きましょう……?」
 でも、と渋ったのは案の定リョーコだった。ルイージの方はといえば、ベストカップルという響きが気に入ったのか、何やら歌を口ずさんでいる。
「是非、あなた方ならと思いまして」
 念を押す紗夜に、リョーコもそう長くは続かず折れた。
 そこで漸く雨禅はバッジを手渡し、紗夜が先ずルイージと茨癒を誘導する。
「準備の都合上、男女別々にご案内いたします」
 ぴくりと、微かにリョーコの眉が釣りあがる。極力離れたくないのだろうか、歩き出そうとしたルイージの袖を摘み、うつむいてしまった。
 立ち止まってしまったルイージを知り、能力者達に緊張が走る。そして、次にリョーコの発した声は、彼らの耳朶を冷たく打った。
「……いかないで」
 今にも消えてしまいそうだ。
 声どころか、彼女の存在さえも。
「私も彼と離れてるのは嫌ですから、早く合流するようにしましょう」
 自分より年下の陸に諭され、リョーコは思わず苦笑いを刷いた。
 ルイージもそんな恋人の頬へ口付けを寄せ、
「終わったらすぐ飛んでくるよ。リョーコが何処にいても」
 太陽の下が似合う明るさを帯び、彼はリョーコの元を離れていった。

●断つ
 相変わらず、会場内の流れは一定だ。
 他者を気にかけるでもなくそれぞれが自分と、そして自分と共に過ごす相手にばかり意識を傾けている。ダンスパーティとはいえ、夫婦や恋人同士、家族連れなどが多いのも理由の一つだろう。
 まるで能力者達やリョーコの存在だけ、切り取られたかのようだ。
「では、準備がありますのでこちらへ」
 先ほどの出来事もすっかり消えうせたのか、平然としているリョーコを雨禅が促す。陸もその誘導に従い、ホールを抜けていった。
 行き来する人も珍しくない入り口を見遣り、きょうだいを演じていた倭たちが顔を見合わせる。
「……そろそろ、だね」
 凛華が倭へそう呟き、沙羅がそんな二人を導くように歩き出した。
 片隅で雰囲気を味わっていたロンドとリオンも、仲間の足取りを追うようにそれぞれ離れていく。リオンは細い胸が締め付けられる感覚に、無意識に眉根を寄せる。
 ――大切な記念日になるはずだったのに、楽しみにしてたはずなのに……ごめんなさい。
 こうすることでしか救えないもどかしさは、誰が持ってもおかしくないものだ。そして、掻きむしられる痛みを振り払いゴーストに立ち向かわねばならないことも、頭では理解している。
 生前愛した大切な人を、理不尽な蘇り方をしたその手で殺してしまう前に。

 案内するには不自然な場所だった。
 非常階段という空間に、ルイージが忙しなく視線を彷徨わせる。
 紗夜はそんな彼が目を逸らした隙に、カードを掲げ起動を終えた。恰好が一変した彼女に目を見開いた刹那、ルイージは暗闇に呑まれていった。呪符のもたらした深い眠りが、彼の身を崩したのだ。
 倒れて怪我をしてしまわぬよう、紗夜と茨癒が彼を支える。そのまま座り込ませれば、二人だけの世界にも、或いは介抱している光景にも思える。
「ルイージさんを……よろしく……ね」
 茨癒は静かに頭を下げ、仲間達の待つ庭園へと駆け出していった。
 ふと、紗夜は夢に包まれたままのルイージを見遣る。
「貴方から、リョーコ様を奪ってしまう事になりますけれど……」
 もう並んで生きることはできないからと、少女は天を仰いだ。

●私とともに死の踊りを
 散歩のため造られた庭園は、雑木林に囲まれ独特の静けさを漂わせていた。
 昼であれば陽射しもよく、まさしく散歩に相応しい情景が広がっていただろう。今の時間帯なら、蛍などが舞えばまた違った趣もあっただろうか。鼻がツンと痛むほどの外気の冷たさは、長居する場所ではないと伝えているようで。
 息が白く昇っていく。もはや己の体温にも疎くなったのか、手をこすりもせずついてきたリョーコは、後背の気配に振り向いた。
「ごめんなさい、リョーコさん」
 道を塞いでいたのはリオンだ。物憂げな瞳が、雨禅たちの傍にいる女性を射抜く。
 雨禅もすかさず白燐蟲の煌きを武器へ宿し、準備を整えた。
「依頼じゃなかったら、パーティに普通に参加していきたいところだわ」
 軽い空気を吐き出した彼を、リョーコがじっと見据える。
 刹那、何処からともなく一羽の鳩が飛び出す。くるっくー、と威嚇するかのように鳴き、飛ばないまま羽をばたつかせ、リョーコに近かった雨禅をつついた。
 到着したばかりの茨癒も、肩を上下させたまま白燐蟲の光を得物へ灯して。
「ルイージさん、を、殺してしまう前に……貴方を、止めさせて下さ……い」
 リビングデッドと化した彼女や鳩を哀れみ、吐息を零す。二人の紡いできた過去のためにも、そしてこれから続く未来のためにも、これで終わりにしなければならない。そう、強い決意を噛み締めて。
「私を倒さなければ、ルイージさんに会えませんよ」
 陸の宣言に、リョーコが瞳を眇めた。不愉快だとでも言わんばかりに殴りかかり、道を切り開こうとする。そんな彼女を、陸も雨禅が押さえ込む。
「離して! 離せッ!」
 ルイージ、ルイージと叫びが木霊した。けれど、彼が助けに来る気配は無い。
 庭園の入り口では、魔法陣を生み出したロンドと、光を指先に紡いだ倭が行く手を阻む。さすがに雑木林を塞ぐことはできないが、出入りを難しくしただけでも効果はある。
 震えた拳は迷わない。沙羅が光り輝くコアを旋回させて守りを固め、リョーコを視界に映した。
 ――恋人の傍にあり続けたい気持ちは、わかるの。わかるけど。
 沙羅の想いは、喉から上へ迫らない。
「ボク達がすることは、間違ってない。でもこれは、彼女達を傷つけることだから」
 先ほど謝罪の言葉を向けたリオンが、術式を編みこむ。言い訳ではない。否、リョーコからしてみれば言い訳かもしれない。それでも、気持ちの整理をつけるには瞳を濡らすしかなくて。
 魔弾は雷を伴い、鳩を叩いた。
 直後、丸まった凛華の身体が半ば囲う形を保ったままリョーコへ突撃する。着地と同時にリョーコを見上げれば、苦痛に歪む表情が見えた。
「……ごめんね。ボクは強くなって大切な人たちを守りたいの」
 リョーコが死してなお恋人の傍を離れなかったのと同じように、凛華もまた譲れないものがあるのだ。
 その時ごうと音を立てて、滾った炎が空に舞う。
「クリスマスだが、鳩のローストはもう間に合っているよ」
 ロンドの手を離れた魔弾が鳩を焦がし、短い命を終わらせた。
 倭と沙羅の細い指先が光を結い上げ、リョーコ目掛け撃ち出される。
「思い出とともに、もう眠って下さい……!」
 沙羅の訴えは閃光に乗り、相手の命を貫いていく。
「……じ、ルイージ……っ」
 膝を折り庭園へ沈んだリョーコが、這うように何処かへと腕を伸ばす。そこには無いはずの姿を求め、あるはずのない温もりを願う。
「血が、血を……もっと、ルイージ……」
 生者の血肉に喰らいつき、縋り、平穏の中で生き延びようとするリビングデッド。
 リョーコもまた、その性に違わなかった。

●私とともに死の踊りを
 供えられた花が月明かりに映え、雑木林の合い間を抜ける風に遊ばれる。
 ――彼とのダンスは楽しめましたか?
 それが最期の手向けとなるならと、沙羅が引きつっていた頬の筋肉をようやく緩めた。
「ルイージさんを傷つけたりはしないから、大丈夫だよ」
 リオンもまた、向こうの世界があるのなら安心してそこへ旅立てるよう、永き眠りについた命を見下ろす。
「会場で見たお二人、とても幸せそうに見えました」
 ほんの少し前の光景をよみがえらせて、倭が呟く。
 リビングデッドにさえならなければ――そう考えてしまう心は、当然あるものだろう。いずれにせよ彼女の死という現実を思い知らされる。とはいえ、意味に微妙な差があるようにも思えた。
 どうか安らかに。祈りを零す凛華の唇は穏やかに、そしてきゅっと結ばれる。
 立ち去り際、ロンドは一度人の温もりに触れた青い薔薇を差し出し、弔った。
「君の愛した人が絶望の闇に沈まない様、君も祈っていてくれるね?」
 思い出は穢れない。誰かの手で荒らされることもない。
 だからこそ、ルイージの前途は明るくなければならないのだ。

 駆けつけた雨禅からの知らせを受け、紗夜はルイージの傍をそっと離れた。
 押し上げられたまぶたの奥、真実を知らないルイージの瞳が茨癒と陸を捉える。状況が把握できず肩を震わせて、寒そうに腕をさすった。
「何か、あった?」
「それが……姿の見えなくなった貴方を探しにいったっきり、彼女を見ていない」
 苦そうに眉根を寄せ、雨禅がそう伝える。
 彼女、と聞いて気付かぬほどルイージも呑気ではない。いなくなったと知れば尚更驚き、そんなまさかと笑い直す。
「きっとホテルかパーティへ戻ったんだネ。自分で探すよ」
 悪いことが彼女の身に起こったなどとは考えない。気楽な思考は性格ゆえか、それとも。
 一人で大丈夫かと尋ねてみれば、ルイージが迷わず頷く。
「何処にいても飛んでくって言ったから。アリガトウでした?」
 何故か疑問系で礼を述べ、彼はさっさと居合わせた能力者達に背を向けてしまった。
 足早に賑やかな場所へ舞い戻る彼を見送り、残された側は溜め息すら零せずにいる。
「……大切な人が急にいなくなるなんて、考えたくもないけど」
 雨禅の喉が震えたのは、寒さの所為だけではない。
「考えもしないことなのかもしれないわね、彼にとっても」
 青年が奏でていた靴音も、言い終える頃には聞こえなくなっていた。


マスター:鏑木凛 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2008/12/31
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