<リプレイ>
●みにくいアヒルのこ とある村から、ちょっと離れたところにある森の中。 この真ん中くらいにおっきな池があるそうです。 そこを目指して歩いている人たちがいました。 能力者の皆さんです。 「アヒル、か。かわいいっていっても、人を食べるなんていったら醜いよな」 芹沢・恭介(紅遠らぶりー・b03759)くんは、まわりをキョロキョロしながら歩いてました。 この森の中に妖獣がいるらしく、皆さんはそれをやっつけにきたのです。 姿はアヒルの子で、ちょっとラブリーですが、色がなんと迷彩柄! 森の中だと見にくいですね。 恭介くんはいきなりおそわれないように、気を配ります。 「いくらかわいくても倒さなくてはいけません……けれども……」 はぁ……鈴峰・彩夏(失くしたモノを求めて・b51393)ちゃんは、おおきなため息をしました。 かわいいものをやっつけるというのは、ちょっぴりせつないこと。 でも、人が食べられちゃうことは、もっとせつないことと自分に言い聞かせる彩夏ちゃん。 「アヒルさんって、とっても見にくいんですよね……」 遊馬崎・祭(緋色の桜・b42565)ちゃんも心配しながら、池の方を目指します。 能力者の皆さんは、後衛の人を取り囲むように円陣を組んで、慎重に歩きました。 敵陣へ乗り込んでいくわけですから、ちょっと注意しないといけません。 しばらく歩くと、前方におっきな池が見えてきました。 「きれいなお池ね。お魚さんとか、いるのかな……」 姫咲・ルナ(桃色仔猫と三日月の子守歌・b07611)ちゃんが池に近づこうとしたそのとき、矢車・千破屋(悲劇的喜劇・b53422)くんが突然叫びます。 「いたあっ! そこだああ!」 ビシッ! と、茂みの中を指差す千破屋くん。 ガサガサ……たしかに、茂みの中から、変な音がします。 イグニッションして、身構える能力者の皆さん……。 ピョコ。 顔を出したのは、違う動物でした。 「キツネ……さん?」 祭ちゃんは、ちょっと拍子抜けしちゃいました。 キツネさんは、ビクッ! と、震えると、森の中へ逃げていきます。 「スマン、違ったみたいだ……って、おわっ!」 千破屋くんが振り向くと、いつの間にか、後ろの方に三匹のアヒルさんがいました。 「うっは、超可愛いけどみにく……いやほんとマジでみにくい! なにコレ!」 ちょっとおっきくて、体が迷彩柄。 そぉーっと隠れながら、おいしそうな皆さんをねらっていたのでしょう。 「マ、マジで迷彩柄のアヒルたん!」 瀬崎間・亮(こいくまんごー・b21102)くんは、その姿にドキッ! と、してしまいます。 なんだか、アヒルさん好きの自分を、そのままそっくり表現したみたい。 あぁ、アヒルたんに突進されて、囲まれて、突っつかれて……隙あればもふったり……。 「そ、そんなよこしまなこと、考えてなんていないんですからねっ!」 我に返って、突然ツンデレ口調で言う亮くんに、他の皆さんは頭に「?」を浮かべるのでした。 「ご飯にありつくために、こんなファッションをしないといけないんですね」 せちがらいごじせーです……桑原・はねず(雪迎えの巫女・b24706)は、ちょっと大変そうだななんて思ったりしましたが、今、そのご飯が皆さんなわけです。 とってもごうかなご飯を前に、うれしそうなお顔のアヒルさん妖獣。 食べられないように、がんばらないといけません。 「ミリタリーなアヒルさんですね。ファンシーさとカッコよさのバランスがとても素敵です」 国府津・里香(鮮血礼賛・b38820)ちゃんは、ゴソゴソと何かを取り出しました。 手にしたのは、赤色のスプレー缶。 「でも、見にくいのはちょっと困りますから、すこしカラフルになってもらいます」 「かわいいけど、見にくいと意味ないじゃーん! だから、見やすくしてあげるよっ!」 琴吹・紗枝(お気楽極楽トラブルメーカー・b49528)ちゃんも、青色のスプレー缶を持ちました。 ……でも、かわいいと戦うのに躊躇しちゃいそうだし、見にくいほうがいいのかな? うーんと考えますが、しょうがないでしょう。 「本当にみにくいのー。アヒルの子は、やっぱり黄色が似合うと思うんだが」 黄色を持ってるのは御東間・益零(かもしてころすぞ・b14954)くん。 能力者のみなさんは、考えました。 見にくいなら、見やすくしちゃえ! 目立つ色のアヒルさんにしちゃえばいいのです。 三人は前に出ると「えいっ!」と、一斉にスプレーを噴射! 「「「がーっ!」」」 迷彩柄のアヒルさんは、青と黄と赤の三色アヒルさんになっちゃいました。 「みにくいあひるさんが、ぴかぴかのあひるさんに!」 はねずちゃんもビックリ、とってもカラフルなアヒルさんのできあがり。 「うまく色がついたの」 ルナちゃんは予備としてスプレーを持ってきてましたが、大丈夫だったようですね。 横に並んでいたら、まるで信号機のようです。 とっても、わかりやすいですね。 アヒルさん妖獣は、羽をバタバタ動かして怒っているような感じでした。 怒ったアヒルさん妖獣は、皆さんを食べようと襲い掛かってきます。
●カラフルなアヒルのこ 「「「ガーガー!」」」 プンスカと怒りながらアヒルさん妖獣は、飛び掛ってきました。 赤いアヒルさん妖獣は、里香ちゃんをくちばしで突っつきます。 「ガー!」 「色がついたらファンシーですけど……怒るとちょっと怖いです」 黄色いアヒルさん妖獣は、益零くんを思いっきり蹴っ飛ばします。 「ガー!」 「なかなかの脚だな。油断できんのー」 青いアヒルさん妖獣は、紗枝ちゃんに体当たり。 「ガー!」 「いったーい! やったなぁ!」 三色のアヒルさん妖獣は大暴れ。 でも、能力者の皆さんも負けてはいられません! 「アヒルさん……ちょっと、止まっててください……」 祭ちゃんは三色のアヒルさん妖獣を止めようと、蜘蛛の糸を投げつけました。 「「「ガーッ!」」」 糸は運良く青いアヒルさん妖獣に巻きついて、きつーく縛り付けます。 これで、しばらくはおとなしくしてくれるでしょう。 「あの体当たりすげぇ……って、べ、別にちょっとうらやましいなんて思ってなんか……!」 攻撃を受けてる皆さんを見ながら、千破屋くんはちょっぴりうらやましそうなお顔をしていました。 いえ、そうではなくて、回復回復! すてきな舞を披露して、皆さんを元気付けます。 「蟲さん蟲さん、ちょっと力を貸してくださいな」 ルナちゃんは白燐蟲さんの力を借りて、みなさんに協力です。 「守護の盾……私を護って……お願い……」 「シャズナは前でみんなを助けてくれ」 彩夏ちゃんと亮くんはリフレクトコアを召喚。 シャーマンズゴーストのシャズナちゃんは、マスターの指示を受けて前に飛び出ました。 「ちょこまかと動き回って、狙いにくいな。まぁ、相性がよくなさそうだし、仕方ないけど」 恭介くんもブンブン剣を振り回して構えると、アヒルさん妖獣に狙いを定めます。 ターゲットは……赤いアヒルさん妖獣! 「あおいあひるさんが止まるのも変ですけど……あかいあひるさんからですし、仕方ないですね」 はねずちゃんが赤いアヒルさん妖獣に向かって、ちっちゃな声でなにか言ってます。 それは、とってもこわーい呪いの言葉。 赤いアヒルさん妖獣は、それを聞いてビクッ! と、震えます。 シャズナちゃんもいきおいをつけると、アヒルさん妖獣に向かって突進! ぼふっと体にめりこんじゃいました。 「赤いアヒルさんからだね。赤いと、やっぱり怒ってるみたい」 「これだけ大きいと、かじりごたえがありそうだな」 紗枝ちゃんと益零くんは、それぞれパワーアップすると、赤いアヒルさん妖獣に攻撃。 せわしなく動くアヒルさん妖獣を見切って、紗枝ちゃんの素早い蹴りが決まり、そこへ益零くんが思いっきり「ガブリ☆」と噛み付きます。 ガミガミとアヒルさん妖獣をかじってる益零くんですが……。 「うは、塗料マズっ」 ぺっ、ぺっとつばを吐き出しちゃいました。スプレーのにおいも、きつかったようです。 「ガーガー!」 おや、赤いアヒルさん妖獣のようすが……。 ぷりぷり怒りながら走り回っているのですが、そのスピードがみるみる速くなっていきます。 そして……超ハイパーなアヒルさん妖獣にパワーアップ! 「ハイスピードならぬ、敗スピードですね」 ちょっと、石になってくださいな……里香ちゃんは、耳元でささやかれたら、ぜったいにおどろくような言葉をつぶやきながら、天輪の一撃を赤いアヒルさん妖獣へ見舞いました。 すると……。 カチーン。 アヒルさん妖獣は石になっちゃいました。 それを見た他のアヒルさん妖獣は「ビクッ!」とおどろき、お顔が青ざめます。 能力者の皆さんは、パワーアップしたときの対策も考えていたのです。 「アヒルたんの石像も……なかなかいいな。新しいコレクションの候補にしよう」 亮くんの視線は石になったアヒルさん妖獣から、青いアヒルさん妖獣に。 大好きなアヒルたんがみんなを傷つける……それが、一番つらいこと。 全力でアヒルさん妖獣を光の槍で攻撃です。 「俺の家にもプラスチックのあひるサンがおるし、おまえらには親近感湧くんやけどな……」 千破屋くんも思うことはありますが、心を鬼にして破魔矢を撃ちます。 「青色のアヒルを狙いますっ、貫いて、極光の槍よ!」 「みなさん、お怪我もないみたいなのね。私も……」 亮くんと同じく彩夏ちゃんも光の槍を投げ、ルナちゃんはビリビリとってもしびれそうな魔弾で、青いアヒルさん妖獣を攻めました。 「蹴ったときの感触はいいんだけど、さすがにもふりにいったら危ないかなー」 イタイイタイなお顔をしている青いアヒルさんの体に、紗枝ちゃんのキックが炸裂! そこへ、さらに祭ちゃんが炎を宿した宝剣を振り下ろします。 「かわいいけど、ごめんね……」 その炎が体に燃え移って、アヒルさん妖獣は「アッチッチ!」と走り回りました。 シャズナちゃんも火を噴いて、こんがりと焼き上げていきます。 「まさに焼き鳥だのー。これなら、ちょっとうまそうだな」 とってもおいしそうといったお顔の益零くんが、いきおいよくかぶりつきました! ガブッ☆ 「またすばしっこくなったみたいだ。気をつけてくれ」 恭介くんは影の腕で、走り回る青いアヒルさん妖獣をつかまえようとしましたが、にげられちゃいました。アヒルさん妖獣はスピードをつけて、みなさんにおかえしとばかりに、突っ込んできます! 「じんせー、急ぎすぎは良くないんですよっ」 と、そんなアヒルさん妖獣へこわーい言葉をささやくはねずちゃん。 すると、青いそのお顔と体は、さらに青ざめていき……。 「ガァ……」 とうとう、動かなくなっちゃいました。 そうなれば、しめたもの。 みなさんは、一斉に飛び掛ってポコポコ叩きます。 それには耐え切れず、青いアヒルさん妖獣はバッタリと地面に倒れました。 「残るは黄色の正統カラーのアヒルたん!」 亮くんが「ビシッ!」と指を差します。 妖獣じゃなかったら……いろいろ妄想がふくらみますが、ゴーストですし、仕方ありません。 「残念ですけど……これも、私達のやるべきことです」 彩夏ちゃんも光の槍を手にしました。 二本の槍の穂先が、黄色いアヒルさん妖獣を睨みます。 「ガー!」 黄色いアヒルさん妖獣は、最後の力をふりしぼって恭介くんに体当たり! ドン☆ 「いてっ! でも、これくらい!」 「私の蟲さん、傷ついた仲間を助けてあげて……」 でも、すぐにルナちゃんが回復してくれたので、大丈夫。 恭介くんは再び影の腕をのばして、アヒルさん妖獣を攻撃です。 投げつけられた光がその体を貫いて、千破屋くんの放った破魔矢がブスリ☆ そこへ、益零くんが噛み付いて、紗枝ちゃんが蹴り飛ばします。 追い討ちとばかりに祭ちゃんが斬りつけ、フラフラになったアヒルさん妖獣は、パワーアップしようとしますが……。 キラーン☆ 里香ちゃんとはねずちゃんの目が光ります。 ビクリと震えるアヒルさん妖獣。 ここでパワーアップしちゃったら、石にされたりヒドイことに……。 まさに「詰み」状態です。 「ガーッ!」 かくごを決めたアヒルさん妖獣は、能力者の皆さんに両方の羽をあげながらバンザイ突撃! ……そして、見事に玉砕したのでした。
「サムライの魂を感じたぜ。さらば、あひるサン」 お前らのコトは決して忘れねぇ……千破屋くんはお空に向かって敬礼しました。 キラリ☆ 目のあたりに浮かぶ汗が、激しい戦いだったことをものがたっています。 「ゴーストとはいえ、アヒルたんを殺めるのは……」 亮くんもお顔に汗を滴らせながら、お墓をつくっていました。 えぇ、これは汗です。 けっして涙では……。 目をゴシゴシして、汗をぬぐうと、石を削ってつくったアヒルさんを置きました。 今度は……かわいいアヒルの子になって生まれてきてほしいですね。 その横で彩夏ちゃんも、ちょっぴり落ち込んだお顔をしていました。 「義兄さんが猫になったときの方がちょっとだけ可愛い……かも……」 かわいいアヒルの子をやっつけてしまって、せつない気持ちでしたが、別のかわいいものを思い浮かべて心が晴れた彩夏ちゃんでした。 「可愛いあひるさんは兄弟連れだって、仲良くおうちに帰っていきました……めでたしめでたし、なの」 ルナちゃんもアヒルさん兄弟は、池の向こうにあるおうちに帰っていきましたと思っておきます。 もう姿はありませんが、手を振って見送るのでした。 「これで、人も動物さんも襲われなくなってめでたしめでたし、だねー!」 ちょっともふりたかったなぁ……少し残念そうなお顔の紗枝ちゃん。 でも、無事に任務は終了。 「なんか腹減ったな。焼き鳥でもくいにいかんか?」 益零くんは、マイペース。 よっぽど、鳥さんのことが頭から離れないのでしょうか。 「寒いし、そろそろ撤収するか」 恭介くんは、帰ってあったかい食べ物でも作ろうかなんて考えました。 まだまだ、お外は寒いですし、風邪を引かないように、あったかい食べ物で元気付けてくださいね。
これで、ひとつの妖獣退治のおはなしはおしまいです。 おつかれさまでした。
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参加者:10人
作成日:2009/01/19
得票数:楽しい6
泣ける7
ハートフル14
せつない1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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