ヘイゼル・ローレンベルグ & 舞島・巫斗

●『二人だけの聖なる夜』

 雪がちらつくクリスマス。ヘイゼルと巫斗は、巫斗がかつて借りていたマンションの一室にいた。二人でベッドの上に座り、互いに手を繋ぎあって。寒い部屋の中、互いの体温を感じるかのように。二人で、寄り添っていた。

 巫斗の使役ゴーストであるサキュバスの紗紀は、今日は一人で出かけてしまった。どうやら、クリスマスはヘイゼルと巫斗の二人きりにしてあげようと思って、気をつかったらしい。
 能力者である巫斗と、サキュバスである紗紀。結ばれることの無い運命だとわかっていても、彼らはずっと傍にいた……。
 そんな折に出会った、ヘイゼル。ヘイゼルは、巫斗に愛情をもって接してくれる。だからこそ、紗紀もヘイゼルに巫斗を任せようと考えたのだろう。今だって、ヘイゼルは巫斗の隣で微笑んでいる。そして、巫斗も穏やかな表情をしているのだから。

「寒くないかい? 何か温かい飲み物でも飲むか?」
「ん……それじゃ、温かいハーブティーでも……」
「なら、僕が淹れてくるよ」
「……あっ……」
 巫斗がヘイゼルの手を離して立ち上がり、台所に向かおうとすると、ヘイゼルがその手をぎゅっと掴んで引き止める。そのことに、巫斗は少し驚いたが……穏やかに微笑んで、再びヘイゼルの隣に座る。
「これじゃ、ハーブティー淹れられないな」
「ん……ごめん……。離れたく、なくて……」
 ヘイゼルは、巫斗の手を離そうとしない。だから、巫斗もその手をそっと握り返す。そして、そのまま再び立ち上がる。
「じゃあ、一緒に台所に行こう。それなら、ハーブティー淹れられるし、離れることもないだろ」
「あ……うん」
 ヘイゼルも、立ち上がる。ちょっと恥ずかしそうに、うつむきながら。

 ハーブティーを淹れて、二人でベッドに並んで座って。他愛の無い話をして。手に互いの体温を感じながら、時々見つめあって、笑いあって。そうして、二人きりの時間は過ぎていく。
 自分の相手への想い。そして、相手の自分への想い。それを、互いに感じながら。



イラストレーター名:ほてやみつえ